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Fisher症候群, Bickerstaff脳幹脳炎 診断

概念
1956年、Fisherにより、Guillain Barré症候群の亜型として報告された疾患です。Guillain Barré症候群と同様に、上気道炎、下痢などの感染症状改善数週間後に症状が出現し、抗糖鎖抗体の関与が強く疑われますが、症状がGuillain Barré症候群とは全く異なります。
一般的に、呼吸筋麻痺は合併しないことが多いので、GBSよりも機能予後はよく、多くの場合完治します
再発はしないのですが、稀に再発例も報告されています

症状
以下の症状が、亜急性の経過で、つまり数日の単位で出現、進行します

    外眼筋麻痺(末梢性):すべての方向で障害されます
    運動失調:四肢より、体幹の失調が目立ちます
    四肢腱反射消失:入院し消失していなくても、翌日は消失しているかもしれません

以上が、3大徴候ですが、その他、以下のような症状も見られます

    対光反射消失、散瞳、眼瞼下垂
    末梢性顔面神経麻痺:なぜか、遅れて出現することが多い印象があります。両側が多い
    四肢末梢の異常感覚
    四肢よりむしろ体幹の振動覚の低下または消失
    筋力低下:GBSとの合併など
    軽度の頻脈など自律神経症状

検査

    脳MRI:脳幹脳炎、脳幹梗塞などの除外のため、Fisher症候群では脳MRIで陽性所見はありません
    髄液検査:蛋白細胞解離の有無、感染性疾患の除外
    血液検査:ビタミンB1測定はWernicke脳症との鑑別のため必須です
    抗糖鎖抗体測定(近畿大学神経内科などへ依頼):特にGQ1b抗体(GT1aと交叉反応を示す)が検出されます
    末梢神経伝導速度検査:GBS合併の除外のため
    感染症:サイトメガロウィルス、C jujuni感染の有無の検索

Bickerstaff型脳幹脳炎
Fisher症候群に、脳幹障害や意識障害を合併したような病態です
つまり、上部脳幹を主病変とし、急性の意識障害、眼筋麻痺、顔面神経麻痺、小脳性運動失調、錐体路症状などが亜急性の経過で進行します。
成因は免疫学的機序が考えられていて、Fisher症候群と同様の治療、あるいはステロイドを使用します

Fisher症候群、Bickerstaff脳幹脳炎

1.神経免疫疾患治療ガイドライン:ギランバレー症候群の項目の一部に記載されています。
2. Cochrane

どちらも、自己抗体が検出されることがありGuillain-Barre症候群と発症メカニズムが似ていることを考えると、ステロイド治療というよりはむしろ、IVIg大量静注療法や単純血漿交換が治療法として適していると考えられます。しかしながら、特にFisher症候群はほとんどが単相性の経過をとり予後良好のことが多いためこのような治療が必ずしも必要とは言えません。さらに、信頼の置けるRCTの治療成績の報告もありません。症状に応じて、治療法を選択することになると考えられます。

1.免疫グロブリン大量静注
2.単純血漿交換

感染性脳幹脳炎(infectious brainstem encephalitis) 診断

はじめに
ウィルスや細菌などの感染性の病原体により主に脳幹が障害された病態で、脳幹を主な障害部位とすることの多い病原体がいくつかあります。用語として、brainstem encephalitisあるいはrhombencephalitisが混在しています。
鑑別としては、以下のような病態が上げられます

原因

    細菌性:リステリアが最多
    ウィルス性:HSV-1/-2、Enterovirus 71 > VZV、EBV、CMV、HHV-6、日本脳炎など
    その他:結核性、真菌性、マイコプラズマ

検査

    血液検査:抗糖鎖抗体、抗神経抗体など
    髄液検査:病原体の検索のため最も重要です
    脳MRI:出来れば造影MRIを
    Blink reflex:V, VIIに関しては、核下性/核上性のどちらの障害なのかを類推できます

傍腫瘍性脳幹脳炎 診断

Hu抗体関連脳幹脳炎の総説[ref]
Ma2抗体関連脳幹脳炎の総説[1, 2, 3]

概要
多くの場合肺小細胞癌に伴う、Hu抗体やMa2抗体などにより亜急性に脳幹障害症状が進行する疾患です。それらの抗体では脳幹以外(辺縁系など)にも障害をきたし売りますが、障害の中心が脳幹の場合に傍腫瘍性脳幹脳炎(paraneoplastic brainstem encephalitis: PBE)と呼ばれることがあります。

    抗Hu抗体(antineuronal nuclear autoantibody type 1: ANNA-1):肺小細胞癌との関連が強く、下位脳幹,延髄が主病巣となることが多いため、球症状や中枢性低換気などがあります。PBEではMRI異常は乏しいことが多いと思われます。
    抗Ri抗体(ANNA-2):乳癌・肺癌との関連が強く、オプソクローヌスが有名ですが、眼球運動障害、顎ジストニアなどの報告があります
    抗Ma2抗体:中脳間脳レベルが多く、核上性眼球運動障害、パーキンソン症状、ナルコレプシーなどの報告があります。過去の報告も含めてMRI異常が見つかることが多い印象があります。
    抗NMDAR抗体:卵巣奇形腫と関連し、意識障害,自律神経障害、中枢性低換気などを呈します
    抗GABAB受容体抗体
    など

症状

    中脳病変:眼球運動障害、核上性垂直方向性眼球運動障害、複視、眼瞼下垂、パーキンソン症状、ナルコレプシー
    橋病変:VI麻痺、VII麻痺、垂直性眼振、進行性めまい、歩行失調、複視、オプソクローヌス
    延髄病変:嚥下・構音障害、中枢性低換気、喉頭攣縮

鑑別診断

ギラン・バレー症候群、フィッシャー症候群 update

Bickerstaff brainstem encephalitis and Fisher syndrome: anti-GQ1b antibody syndrome. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2013;84:576-83.
Bickerstaff脳幹脳炎とフィッシャー症候群に関する総説

Risk of Guillain-Barré syndrome following H1N1 influenza vaccination in Quebec.JAMA. 2012 Jul 11;308(2):175-81.
2009年のパンデミックインフルエンザA(H1N1)ウイルスに対するワクチンでは、非接種群に比べてワクチン接種群では4週時点と8週時点の両方でGBSの相対リスクが有意に高かった(それぞれ2.75、1.80)

Electrodiagnostic criteria for Guillain-Barrè syndrome: A critical revision and the need for an update. Clin Neurophysiol. 2012 Aug;123(8):1487-95.
ギランバレー症候群のサブタイプの電気生理学的な分類には、経時的なNCSの変化やdispersionの定義などを再検討するとよいのかもしれない

Prediction of respiratory insufficiency in Guillain-Barré syndrome. Ann Neurol. 2010;67:781.
GBSの入院時の発症からの日数やMRC合計スコア,顔面や球麻痺をスコア化することにより,最初の1週間に人工呼吸器を必要とするかを予測できる.

p>Distinguishing acute-onset CIDP from fluctuating Guillain-Barré syndrome: A prospective study. Neurology 2010 74: 1680-1686.
ギランバレー症候群では治療に伴う症状の変動は発症8週間以内に1?2回生じることがあり、変動のないものと比較してより重症で感覚障害が目立ち、急性発症のCIDPは人工呼吸器使用や脳神経麻痺が少ないなどの特徴からある程度区別できるかもしれない

Axonal variant of Guillain-Barré syndrome associated with Campylobacter infection in Bangladesh. Neurology 2010 74: 581-587.
バングラデシュ人民共和国では下痢を先行感染症状とするC. jujuni感染による軸索障害型GBSの頻度が90%以上と非常に高い

Autoantibody-Mediated Dysfunction of Sympathetic Neurons in Guillain-Barré Syndrome. Arch Neurol. 2010;67(2):203-210.
ギラン・バレー症候群から精製した血清IgGは、培養交感神経のノルアドレナリンレベルを上昇させ、心筋細胞の心拍変動を来たす

Pharmacokinetics of intravenous immunoglobulin and outcome in Guillain-Barré syndrome.Ann Neurol. 2009;66:597-60
ギランバレー症候群のIVIg後の免疫グロブリンの薬物動態には個人差が大きく,効果とも関連している(血中濃度が高くなる方が,効果が高い).

GM1/GalNAc-GD1a complex: A target for pure motor Guillain-Barre syndrome. Neurology 2008 71: 1683-1690.
GM1/GalNAc-GD1a複合体陽性のGBSでは急性の脱髄性運動性末梢神経障害がおこり、感覚障害や脳神経障害は目立たない

Cerebral Glucose Metabolism in Fisher Syndrome. JNNP 2008 Dec 9. [Epub ahead of print]
Fisher症候群の急性期ではグルコース代謝PETで小脳虫部や半球,橋被蓋部,前頭葉下部の亢進が見られ,自己免疫疾患による炎症をの影響かもしれない.

Clinical predictors of mechanical ventilation in Fisher/Guillain-Barre overlap syndrome. JNNP 2008 Oct 23. [Epub ahead of print]
Fisher症候群から四肢麻痺が出現しGBSに移行するような患者では,GBSに比べて人工呼吸器管理を要することが多い.

Recurrent Guillain-Barre syndrome. JNNP 2008 Oct 17. [Epub ahead of print]
再発するGBSは,30歳以下の若年や軽症例,MFSで多く,再発時も初発時と同様の症状を呈することが多い.

Clinical features, pathogenesis, and treatment of Guillain-Barré syndrome. Lancet Neurol. 2008;7:939-50.
GBSについてのレヴュー

Acute ophthalmoplegia (without ataxia) associated with anti-GQ1b antibody. Neurology 2008 71: 426-429.
抗GQ1b抗体陽性の失調のない急性眼筋麻痺では、外眼筋麻痺.だけでなく内眼筋麻痺も合併することがあり、また片側のみの症状のこともある

GD1b-specific antibody induces ataxia in Guillain-Barre syndrome. Neurology 2008 71: 196-201.
GD1bに真に特異的な抗体が失調型GBSの原因となる

Economic cost of Guillain-Barre syndrome in the United States. Neurology 2008 71: 21-27.
米国でのGBS発症後の治療費用は全体で年間$17億、一人当たり$30万とかなり高額である

Immune responses to myelin proteins in Guillain-Barré syndrome.JNNP 2008 79:664-71
GBSでミエリン蛋白(PMP22, P0,P2)に対する抗体の出現は多くないが,これらの蛋白に対する血液単核球のIL-10反応は多くでみられ病態に関与していると考えられる

Ocular Flutter, Generalized Myoclonus, and Trunk Ataxia Associated With Anti-GQ1b Antibodies. Arch Neurol. 2008;65:659-661.
眼球粗動、ミオクローヌス、体幹失調が出現し、抗GQ1b抗体が原因と考えられた37歳女性例

Guillain-Barre syndrome: Incidence and mortality rates in US hospitals. Neurology 2008 70: 1608-1613.
米国でのGBS年間発症率は約1.7人/10万人で死亡率は2.58%、呼吸器系合併症、気管内挿管などが死亡予測因子である

Ganglioside complexes containing GQ1b as targets in Miller Fisher and Guillain-Barre syndromes. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2008 Mar 13 [Epub ahead of print]
フィッシャー症候群やギランバレー症候群で眼球運動障害がみられる症例の約半数の血清に,GQ1bやGT1を含むガングリオシド複合体に対する抗体が認められる.

Eculizumab prevents anti-ganglioside antibody-mediated neuropathy in a murine model. Brain 2008 131(5):1197-1208
マウスMFSモデルにヒト化抗 C5 モノクローナル抗体(エクリズマブ)を投与することで、C5aとC5b-9をブロックし呼吸筋麻痺と神経終末の形態学的変化が予防できた