神経痛性筋萎縮症(Neuralgic Amyotrophy; NA)

はじめに
主に上位腕神経叢を含む急性・有痛性神経障害として1918年より報告されている疾患で、Parsonage-Turner症候群、brachial plexus neuritis、idiopathic brachial neuritisなど様々な名称が使われてきました。孤発性の疾患ですが、最近では、SEPT9遺伝子変異が関連したHereditary NA (HNA)の報告もなされています。
45-53%で何らかの誘因があって、数時間〜1ヶ月後にNAを発症(52%は1週間以内)します。外傷、心理的ストレス、運動、外科手術、妊娠/出産、ワクチン、感染症 などです。

病態
何らかの誘因や遺伝的素因はあるものの病態は不明です。しかしながら、画像の進歩により2000年ぐらいから以下の様な多発する神経の収縮や捻転が検出される様になってきました。以前から、NAはbrachial plexusに病変の主体があると考えられてきましたが、plexusのみの障害では説明できない様な筋力低下の分布を取ることが知られていました。現在では、plexusの神経幹やそれ以遠の神経も含んだ多発単神経障害と考えられる様になっています。病態解明や新たな治療に向けたパラダイムシフトが起こりつつあります。

J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2020 Jun 2;jnnp-2020-323164.

症状
なぜか利き手側に多い、非対称性の疼痛と上肢の筋力低下、筋萎縮です。ただし、腰仙神経叢や脳神経系などの腕神経叢支配領域以外の筋力低下が合併することもあります。
Painful phase:90%が急性発症のの疼痛で発症する、典型的には肩帯(肩甲骨・鎖骨)を含んだ領域に生じる重度の堪え難い神経性疼痛が続きます
Phase of weakness/amyotrophy&sensory complaint:急性疼痛に引き続き筋力低下(近位筋障害の頻度が高い)出現して、筋萎縮は通常2-6週で出現します。
Recovery phase:75%は6ヶ月〜3年で回復しますが、後遺症が残ることも良くあります

検査

血液検査:特異的所見はありませんが、抗ガングリオシド抗体陽性例の報告はあります。両側性の症状や肝機能障害がある場合はE型肝炎ウィルスの検査を行いましょう
MRI:近位型では罹患側の神経根〜神経幹にかけてSTIR異常信号が見られることがありますが、遠位型NAでは共通するMRI異常所見は少ない様です。
末梢神経MRI:多発するconstrictionの部位を同定します(multiple hour-glass [砂時計] like constrictions)
神経超音波:constrictionの部位を同定します
針筋電図:脱神経所見の有無で障害分布を特定します
NCS:多くは運動神経の軸索障害で、感覚神経に異常は見られないことが多い様です。稀にCBを検出した報告もあります

末梢神経に多発するconstrictionを認めます。J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2020 Jun 2;jnnp-2020-323164.

治療
A. 外科的治療
絞扼部位があれば考慮します。neurolysisや神経移植など
B. 薬物療法
発症1ヶ月以内であれば、2週間のステロイド内服は疼痛持続期間と一年後の回復を改善することが示されています。IVIgなどを用いた報告もあります。
また、神経障害性疼痛の治療を行っても良いかもしれません。

J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2020 Jun 2;jnnp-2020-323164.

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