1.脳卒中治療ガイドライン 2009:書籍
2. Guidelines for the Prevention of Stroke in Patients With Stroke and Transient Ischemic Attack: A Guideline for Healthcare Professionals From the American Heart Association/American Stroke Association. Stroke. 2014 May 1.
脳梗塞、一過性脳虚血発作の発症二次予防に関するガイドライン 2014年度版
脳梗塞危険因子の修正
以下の因子が脳卒中発症のリスクをあげますので、修正可能なものは適宜修正が必要です。危険因子が重なると、段階的に脳卒中の発症率は上昇してしまいます。
脳卒中危険因子 | |
---|---|
高血圧 | 高感度CRPの持続上昇 |
心疾患(特に心房細動) | メタボリックシンドローム |
脂質異常症 | 非活動 |
喫煙 | 慢性腎疾患(CKD) |
糖尿病 | 睡眠無呼吸症候群 |
多量飲酒 | 感染症罹患 |
抗血小板療法、抗凝固療法
大まかな分類では、心原性脳塞栓はワーファリンあるいは新規抗凝固薬(非弁膜症性心房細動のみ)、それ以外の病型は抗血小板薬という選択になります。つまり、この脳梗塞は心原性か否かということが最も重要です
脳血栓、ラクナ梗塞症例:抗血小板薬内服
- アスピリン(バイアスピリン1T1X)
プラビックス(75mg1X)
プレタール
心原性脳塞栓症
- ワーファリン:目標INR値2〜3
ただし、70歳以上の高齢者では出血性合併症のriskも高くINR2.0前後程度のmildなワーファリゼーションも推奨されています
新規抗凝固薬(NOAC):ダビガトラン、アピキサバン、リバーロキサバンなど
降圧治療
降圧療法が脳梗塞二次予防に有用であるという仮説を検証したstudyはいくつか報告されています。脳循環不全を示唆する症状が出現しない限り、正常血圧レベルを目指し慢性期にはゆっくり降圧するべきと考えられています。
- ACE阻害薬
ATII受容体拮抗薬
サイアザイド系利尿剤
β‐Blocker
など
外科的治療法
- 頸動脈内膜剥離術(CEA)
ステント留置術(CAS)
弁膜症に対する外科治療
難治性持続性心房細動に対するアブレーション治療
疾患の説明のポイント、生活指導
重症な脳血管障害では、脳ヘルニア、合併症の併発などにより生命にかかわることがあり非常に危篤な状態である。また、急性期には十分な治療にもかかわらず神経症状が入院後も悪化することがあり、さらに心原性塞栓症では急性期再発率が高い。脳血管障害にて損傷された中枢神経は再生することはなく、後遺症は残存し長期的なリハビリテーション、看護が必要である。という情報を本人、家族に理解していただき、急性期治療のみでなく長期的な看護も視野に入れ指導する。
また、脳血管障害の治療は損傷された中枢神経を再建することは今のところ不可能であり、また、脳卒中初回発作後の再発率は発症率の約9倍と言われており、再発予防が最も重要である。動脈硬化のrisk factorとなる疾患を有する症例も多く、その生活指導は徹底していただく。再発予防のために内服する、抗血小板薬、ワーファリン(食事指導、内服指導は重要)の内服継続の必要性は十分に説明し、抜歯や手術が必要な際は主治医と相談が必要である。
自然経過、予後
脳血管障害の死亡率は、近年日本では低下傾向(死亡率 1.2%, 1988-1996年, 久山町研究)にあるが、患者数はむしろ増加している。また、致死的な状態を免れた場合も、長期に残存する後遺症に対する対策、生活指導を行うことが重要である。
脳梗塞の再発リスク評価
Essen Stroke Risk Scoreで、3点以上がハイリスクとなります
危険因子または疾患 | スコア |
年齢 65歳未満 65-75歳 75歳- |
0 1 2 |
高血圧 | 1 |
糖尿病 | 1 |
心筋梗塞の既往 | 1 |
その他の心疾患 | 1 |
末梢動脈疾患 | 1 |
喫煙習慣 | 1 |
TIAまたは脳卒中の既往 | 1 |