アテローム血栓性脳梗塞 治療

脳卒中治療ガイドライン2015〔追補2019対応〕

はじめに
アテローム血栓性脳梗塞では、入院中に症状が悪化することも多く、発症早期の神経症状悪化を呈する症例(early neurological deterioration; END)も多く、best medical treatment(抗血小板薬・スタチン・血糖管理・エダラボン・水分管理)を行うように心がけます。
また、抗血栓療法のみならず血行再建術(頚動脈ステント留置術 [CAS]、頚動脈内膜剥離術 [CEA])が必要となることもあります。
一方で、強い抗血栓療法を行う際には、個々の症例で脳梗塞再発/悪化のリスク、出血リスクを十分考慮しましょう(脳出血リスク [脳出血既往やMRI-T2*での脳微小出血の有無]、消化管出血リスク)。

急性期治療
アテローム血栓性脳梗塞に関しては、軽症例では2種類の抗血小板薬(DAPT)を速やかに効かせる必要がありクロピドグレルのloadingが良いかと思います。それより重い重症度では、クロピドグレルのloadingのエビデンスなく、通常のDAPT療法になるでしょうか。また、アルガトロバンやキサンボンも長年使われてきましたが、アテローム血栓性脳梗塞の予後を改善させたという論文やガイドラインはなく、使用は推奨されません。

  • スタチン製剤
    LDLコレステロールは70mg/dl未満を目標に、入院時よりロスバスタチン2.5mg分1もしくはアトルバスタチン10mg分1より開始し、適宜増量
  • 血糖管理
    高血糖は是正し、血糖値140-160mg/dlの範囲での血糖コントロールを目指す(低血糖に注意:血糖値60mg/dl以下の血糖は直ちに補正する)。常用中のSGLT2阻害薬は中止し、スライディングで血糖値の管理を行う。ただし、漫然としたスライディングによる血糖管理は行わない。
  • エダラボン(ラジカット)
    eGFR>60ml/分/1.73m^2と腎機能が保たれている症例で、さらに、発症24時間以内の脳梗塞に対しフリーラジカルスカベンジャー(ラジカット)の投与を行います。
    処方例:ラジカット注30mg 1A+生食100ml(1日2回)5-14日間
  • 水分管理
    細胞外液で脱水の補正を十分に行う(60?80ml/hr)。特に血行力学性の病態が考えられる場合には、十分な補液を行う。ただし、心機能の評価を行い、心不全には十分注意する。
  • 血圧管理
    原則、脳梗塞急性期は降圧を行わず、可能な範囲で常用中の降圧剤も一旦中止する。収縮期血圧>220mmHg又は拡張期血圧>120mmHgの高血圧が持続する場合や、大動脈解離・急性心筋梗塞・心不全・腎不全などを合併している場合は慎重な降圧を検討する。DAPT中では特に出血リスクが高くなるため注意を要する。血圧推移をみながら適宜調整できるニカルジピン持続点滴を使用する。
  • PPIあるいはH2受容体阻害薬
    脳梗塞では、病型にかかわらず消化管潰瘍の予防を入院時より行う。PPIを第一選択とするが、コラーゲン層形成大腸炎 (collagenous colitis)、肝障害、血球減少など副作用が出現する場合には、速やかにH2受容体阻害薬へ変更する。
  • 安静度管理
    急性期の安静度についてはControversialであり、決まった方法はない。個々の症例ごとに血圧低下に注意して安静度を上げていく。目安としては、発症24時間以内はベッド上安静臥位での管理を行う。トイレも基本ベッド上とし、食事の際のヘッドアップは致し方ないが、30-60度程度に留めておく。脳血管の狭窄度や病状に合わせて発症後2-7日に徐々に安静度を上げていく。
  • 抗血小板療法
    基本的にはDAPTが推奨されますが、出血リスクの高い症例でDAPTのしようが難しい場合には、アスピリン単剤で治療を行うこともあります。
    NIHSS≦3点の軽症脳卒中
    入院日:アスピリン 100 mg分1とクロピドグレル 300 mg分1(ローディングあり)
    翌日以降:アスピリン 100 mg分1とクロピドグレル 75 mg分1
    発症22日目以降:クロピドグレル 75 mg分1単剤へ変更
    NIHSS≧4の場合(中〜重症例)
    入院日以降:アスピリン 200mg分1とクロピドグレル 75mg分1(ローディングなし)
    発症15日以降:アスピリン 100 mg分1(減量)とクロピドグレル 75 mg分1
    発症22日目以降:アスピリン 100 mg分1 あるいは クロピドグレル 75 mg分1単剤へ変更

入院後症状が進行する症例
入院3日間以内にNIHSS 4点以上増加した例はearly neurological deterioration(END)と呼ばれることもあります。本邦では、内輪用語で進行性脳卒中などと非国際的な用語を用いることも多く見られます。基本治療を行っても、NIHSSの増加を認める場合、頭部MRI検査を撮像して病変の悪化の有無を確認しつつ、以下の治療を適宜追加しましょう。

  • アルガトロバン点滴を追加する(最初の2日間:アルガトロバン60mg/日を持続点滴、その後の5日間:アルガトロバン10mg/回を1日2回)
  • 血行力学性の要素が強い場合には、低分子デキストラン(20ml/hr)を追加する。
  • 内科治療抵抗性のアテローム血栓性脳梗塞として、速やかに血行再建術も検討する(脳神経外科に連絡する)

慢性期治療(再発予防)
何より重要なのは、記載しませんが動脈硬化の危険因子をしっかりと治療することです。
1. 抗血小板療法
いかに症状が進行することが多く、しっかりとした抗血小板療法を行う事の多いアテローム血栓性脳梗塞とはいえ、再発予防としてのアスピリンとプラビックスの併用は、出血リスクが高くなるため、ステント留置などの特殊な状況がある場合以外は推奨されません。発症数週間以内に、抗血小板薬は単剤へ減量しましょう。

2. 外科的治療
内頚動脈狭窄に対して
  頸動脈内膜剥離術(CEA)
  ステント留置術(CAS)
中大脳動脈狭窄に対して
  バイパス術(STA-MCAなど):広範な脳梗塞がなく、脳血流予備能がStageIIと低下している場合に適応
  中大脳動脈へのステント留置術は、積極的内科治療を上回る効果は認められていません

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