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はじめに
以前より、淡蒼球の破壊などによりParkinson症状が改善されることが知られていたため、パーキンソン病に対する定位脳手術は薬物療法よりも早い1947年に開始されています。しかし、1967年にL-DOPAが臨床応用されると、その劇的な効果の前に手術を受ける患者は激減しました。しかし、L-DOPAの使用期間が長くなるに連れて、wearing-off現象や不随意運動など長期服薬に伴う副作用が問題になりました。
これらの副作用に対する対策として,1980年代に後腹側淡蒼球破壊術が,そして1990年代には脳深部刺激療法(DBS: deep brain stimulation)が開発されました。
適応
現在DBS治療が保険医療の対象となっている疾患は以下の二つです
- パーキンソン病
本態性振戦
パーキンソン病とDBS
パーキンソン病に関しては、大前提としてdopa-responseがあることが重要です。その中で、日内変動が強い例や、ジスキネジア(や精神症状)のためL-dopaの増量が難しい例、治療抵抗性の強い振戦が見られる例などが、良い適応となると考えられます。
一方で、認知症がある場合、薬剤と関連のない精神症状を有する症例、著明な脳萎縮(DBSを挿入する部位のtargetingが困難)、on時の突進やすくみなどの運動症状が目立つ場合は適応は乏しいと考えられます。
基本的には、両側の視床下核(STN)をtargetとすることが多いですが、左右差があまりに目立つ場合は、Unilateral subthalamic nucleus(STN)-DBSの報告もあり、電極の反対側の症状改善とともに同側の症状も改善したとの報告もあります。
改善が期待される症状
- 日内変動
ジスキネジア
振戦
固縮
無動・寡動
off時におけるすくみ足や痛み
改善が期待しづらい症状
- 構音障害・嚥下障害
姿勢反射障害
on時のすくみ
感覚障害
自律神経症状
薬剤と関連のない精神症状
DBSの積極適応となる条件<例>
- 若年発症である
罹病期間が短い
on-offで差が運動症状の差が激しい
L-dopaによる副作用が強い(薬剤性dyskinesia/精神症状)
DBSのtarget部位と効果
- 視床中間腹側核(Vim):振戦以外の症状の改善が期待できない
淡蒼球内節(GPi腹側):難治性ジスキネジアに対する高い効果あり。しかし、薬剤の減量効果が低い
視床下核(STN):適応症状はGpiと同等だが、L-DOPAの減量効果が高いとされている
合併症
手術手技に伴う合併症:頭蓋内出血(慢性・急性)、Deviceや創部からの感染、創部のびらん・潰瘍形成
PDの運動症状に及ぼす合併症:術後早期のジストニア・ジスキネジア、開眼失行、構音障害(視床下核前外側の皮質脊髄路障害)
直接的・間接的な精神症状:うつ、アパシー、自殺企図/自殺