ギラン・バレー症候群 診断

ギラン・バレー症候群、フィッシャー症候群診療ガイドライン〈2013〉:日本神経学会のガイドライン

概念
GBSは、神経内科医が見逃すわけにはいかない疾患です。急性発症の腱反射低下・消失を伴う四肢の筋力低下を主症状として、先行感染の存在と単相性の経過を特徴とする自己免疫性末梢神経疾患で、人口10万人あたりの年間発症率が1〜2人と比較的頻度が高いようです。糖鎖抗体との関連が示唆されています。
先行感染後に四肢筋力低下、嚥下障害などを来たしているかという病歴が重要です。高齢者は発症が少ないように思います。
発症数日から数週間前に風邪、下痢をしていますか?鳥のささ身などを食べましたか?キャンピロバクター、サイトメガロウィルスが原因として多く、前者はAxonal typeを引き起こし重症化する場合があり、後者は脳神経系も犯されることが多い特徴があります。
同様に、急性発症の末梢神経障害は下記の診断基準に掲載されている稀な鑑別診断のほかに、VitamineB1低下の可能性もあります。除外してください。

サブタイプ
電気生理学的には、以下のサブタイプに分類されます。
脱髄障害が主体のもの

    急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(AIDP):CMV感染やGM2抗体と関連?

軸索障害が主体のもの

    急性運動軸索型ニューロパチー(AMAN):IgG抗GM1抗体の陽性率が高い。Campylobacter jejuniの先行感染が多い。重症化する。その他は、GM1b, GD1a, GalNac-GD1a抗体と関連。
    急性運動感覚性軸索型ニューロパチー(AMSAN):GM1, GM1b, GD1a抗体と関連

その他、抗GT1a抗体は咽頭・頸部・上腕の筋力低下を特徴とするサブタイプとの関連が知られ、IgG抗GQ1b抗体はFisher症候群との関連が知られています。ただし、抗GQ1b IgG抗体はGT1aと交叉反応する抗体が多く、咽頭・頸部・上腕の筋力低下にFisher症候群の症状を併せ持ったような臨床上を示すことがあります。

検査

    血ガス、心電図:呼吸筋麻痺と自律神経障害の有無の検索は最も重要です
    髄液検査:発症数日後からは蛋白上昇、細胞数の上昇は乏しい(蛋白細胞解離)
    末梢神経伝導速度検査:伝導遅延、伝導ブロック、振幅低下など、SNAPよりCMAPに強い
    血液検査:サルコイドーシス、膠原病など他疾患の除外のため。ついでにCMV IgG&M測定なども
    血清抗ガングリオシド抗体検査:IgG抗GM1抗体、抗GQ1b抗体は、平成19年8月1日より保険適応となりました。その他は、近畿大学神経内科へ依頼可能
    MRI:他疾患の鑑別が難しければ、適宜脳MRI、頚椎MRIなど
    便培養:C jujuni検索

GBS の診断基準
診断に必要な特徴

    A. 2 肢以上の進行性の筋力低下.その程度は軽微な両下肢の筋力低下(軽度の失調を伴うこともある)から、四肢、体幹、球麻痺、顔面神経麻痺、外転神経麻痺までを含む完全麻痺まで様々である.
    B. 深部反射消失.全ての深部反射消失が原則である.しかし、他の所見が矛盾しなければ、上腕二頭筋反射と膝蓋腱反射の明らかな低下と四肢遠位部の腱反射の消失でもよい.

診断を強く支持する特徴
A. 臨床的特徴(重要順)

    1. 進行:筋力低下は急速に出現するが、4 週までには進行は停止する.約50%の症例では2 週までに、80%は3 週までに、90%以上の症例では4 週までに症候はピークに達する.
    2. 比較的対称性:完全な左右対称性は稀である.しかし、通常1肢が障害された場合、対側も障害される.
    3. 軽度の感覚障害を認める.
    4. 脳神経障害:顔面神経麻痺は約50%にみられ、両側性であることが多い.その他、球麻痺、外眼筋麻痺がみられる.また外眼筋麻痺やその他の脳神経障害で発症することがある.(5%未満)
    5. 回復:通常症状の進行が停止した後、2 から4 週で回復し始めるが、数ヶ月も回復が遅れることがある.ほとんどの症例は機能的に回復する.
    6. 自律神経障害:頻脈、その他の不整脈・起立性低血圧・高血圧・血管運動症状などの出現は診断を支持する.これらの所見は変動しやすく、肺梗塞などの他の原因によるものを除外する必要がある.
    7. 神経症状の発症時に発熱を認めない.

非定形例

    1. 神経症状の発症時に発熱を認める.
    2. 痛みを伴う高度の感覚障害
    3. 4 週を越えて進行.時に4 週以上数週にわたって進行したり、軽度の再燃がみられる.
    4. 症状の進行が停止しても回復を伴わない.または、永続的な重度の後遺症を残す.
    5. 括約筋機能:通常括約筋機能は障害されない.しかし、症状の進展中に一時的に膀胱麻痺が生じることがある.
    6. 中枢神経障害:GBS は通常末梢神経の障害と考えられている.中枢神経障害の存在は議論のあるところである.小脳性と考えられる強い運動失調、構音障害、病的反射、境界不明瞭な髄節性感覚障害などの症状が時にみられるが、その他の所見が典型的であれば診断を除外する必要はない.

B. 診断を強く支持する髄液所見

    1. 髄液蛋白:発症から1 週以降で髄液蛋白が増加しているか、経時的な腰椎穿刺で髄液蛋白の増加がみられる.
    2. 髄液細胞:単核球で、10/mm3 以下

亜型

    1. 症状の発症後1-10 週の間に髄液蛋白の増加がみられない.(稀)
    2. 髄液細胞が11-50/ mm3 の単核球

C. 診断を強く支持する電気生理学的所見

    経過中ある時点で症例の80%に神経伝導速度の遅延あるいは伝導ブロックを認め、伝導速度は通常正常の60%以下となる.しかし、症状は散在性であり、全ての神経が障害されるのではない.遠位潜時は正常の3 倍にまで延長していることがある.伝導速度検査は発症数週間まで異常を示さないことがある.F 波は神経幹や神経根近位での伝導速度の低下をよく反映する.20%の症例では伝導速度検査で正常を示す.伝導速度検査は数週後まで異常を示さないことがある.

診断に疑いをもたせる特徴

    1. 高度で持続性の非対称性の筋力低下
    2. 持続性の膀胱直腸障害
    3. 発症時の膀胱直腸障害
    4. 髄液中の単核球が、50/ mm3 以上
    5. 髄液中の多核球の存在
    6. 明瞭な感覚障害レベル

診断を除外する特徴

    1. ヘキサカーボン乱用の現病歴(揮発性溶剤:n-ヘキサン、メチルn-ブチルケトンなど).塗装用ラッカー蒸気や接着剤を吸入して遊ぶことを含む.
    2. 急性間欠性ポルフィリン症を示唆するポルフィリン代謝異常.尿中へのポルフォビリノーゲンやδ-アミノレブリン酸の排泄増加がみられる.
    3. 最近の咽頭または創傷へのジフテリア感染の既往または所見.:心筋炎はあってもなくてもよい.
    4. 鉛ニューロパチーに合致する臨床所見(明らかな下垂手を伴った上肢の筋力低下、非対称性のことがある.)および鉛中毒の証拠.
    5. 純粋な感覚神経障害のみの臨床像
    6. ポリオ、ボツリヌス中毒、ヒステリー性麻痺、中毒性ニューロパチー(例えばニトロフラントイン、ダプソン、有機リン化合物)など.これらはしばしばGBS と混同される.

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