概要
パーキンソン病の診断は脳MRIでもMIBG心筋シンチでも不可能で、特異的診断マーカーはありません。左右差のあるパーキンソン症状といった臨床徴候と、抗パーキンソン病薬に対する反応性がすべてです
定義
黒質緻密層ドパミン神経細胞の変性を主病変とし、緩徐進行性に運動4徴候(安静時振戦、固縮、運動緩慢および無動、姿勢反射障害)を発現する特発性、進行性の疾患です
疫学
通常孤発性で、家族発症例は約5%程度です。日本における有病率は人口10万人に対して110人程度、欧米白人の有病率はわが国の約1.5〜2.5倍と高いようです
発症年齢は50歳代後半から60歳代にかけてが最も多いのですが、20歳代から80歳代まで幅広く見られます
パーキンソン病発症の危険因子は例えば以下のものがしられています[ref]
パーキンソン病の家族歴あり
振戦の家族歴あり
便秘
喫煙歴なし:喫煙者には朗報ですね!
病理
黒質緻密層のドパミン神経変性が最も顕著で、肉眼的に黒質の黒褐色の色調が失われます。光顕ではメラニン含有神経細胞の変性・脱落、グリア細胞の増殖がみられて、残存した神経細胞質のなかにエオジン好性のLewy小体が出現しますし、青斑核、Meynertの前脳基底核、迷走神経背側核にもLewy小体が出現するようです
また、黒質緻密層のドパミン神経の変性によって、そのおもな軸策投射部位である線条体でドパミン含有量が著明に低下します
症状
基本は、初発症状は一側性に見られることが重要です
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運動症状の4大徴候
安静時振戦:4〜6Hzの規則的な震え
歯車様固縮
運動緩慢および無動
姿勢反射障害
自律神経症状:便秘、脂漏性顔貌など
精神症状:うつ傾向、認知機能低下(稀)
その他
仮面様顔貌や瞬目の減少
流涎
Myerson徴候
検査
血液、脳脊髄液検査、やMRI画像では疾患特異的な異常はなく、他のパーキンソン症状を来たす疾患の除外のために主に行います
- 脳MRI
MIBG心筋シンチグラフィ
イオフルパン (123I) SPECT
脳波
PET、SPECT
髄液検査、血液検査
鑑別診断
少なくとも以下の疾患は鑑別してください
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脳血管性パーキンソン症候群:MRIで鑑別可能
薬物性パーキンソン症候群:向精神病薬、プリンペラン、ドグマチールなどが
正常圧水頭症(NPH)
脳炎後、中毒性(一酸化炭素、マンガンなど)
進行性核上性麻痺:体幹に強い左右差のないパーキンソニズムと核上性眼球運動障害
皮質基底核変性症:左右差のある高次機能障害
Lewy小体病
本態性振戦:これは動作時の振戦であることが特徴です