可逆性白質脳症 (PRES) 診断

概念
PRES(posterior reversible encephalopathy syndrome)は、その名の通り主に後頭葉白質に可逆性の病変を来す疾患です。もともとは、1996 年にHincheyが、高血圧性脳症や産褥子癇、免疫抑制剤の使用を背景として、可逆性で特徴的な臨床症候と画像所見を呈した15 症例をもとに提唱した疾患概念です。
その後、血液関連疾患や一部の膠原病をはじめ、様々な 背景因子がPRESの原因として報告されています。

病態
背景因子をもとに血管内皮細胞の障害、血液脳関門の破綻がおこり、血圧上昇が加わることによって血管原性浮腫が生じてPRESの像を呈する。という説が有力のようです。
一方で、一部の症例で経過中に可逆性の脳血管攣縮をみとめたとの報告もあって、脳血管攣縮による細胞障害性の浮腫が血管内皮や血液脳関門の破綻を助長させる機序も推測されています。
なぜ,posteriorなのか?ということに関しての明確な答えはありません。直接の証拠はないものの、椎骨脳底動脈系では内頚動脈系に比べて脳循環の自動調節能に重要な交感神経系の支配が乏しいため、脳循環自動調節能の破綻により生じる血管原性浮腫が生じる場合には椎骨脳底動脈系が好発部位となると説明していますが、、、

原因

    高度の高血圧症
    腎障害
    高度の貧血に対する輸血
    子癇
    肝不全,肝移植
    薬剤:シクロスポリン、タクロリムス、シスプラチン、メソトレキセート、シタラビン髄注
    膠原病・自己免疫疾患:SLE、TTP、MPN 、ウェジナー肉芽腫症
    血液系悪性腫瘍
    内分泌・代謝疾患:褐色細胞腫、高カルシウム血症
    頭部外傷

症状
基本的には急性発症の、頭痛、意識障害、痙攣発作などが多く見られます

    頭痛
    意識障害
    痙攣
    視力障害:後頭葉病変位よる半盲以外に、高血圧による網膜剥離の合併例もあります
    など病変部位により様々

鑑別診断

    静脈洞血栓症:脳静脈系の評価、d-dimerの評価が重要です
    脳梗塞:動脈支配に一致しているかどうかですね
    可逆性脳血管連縮 (RCVS) :時に合併します
    急性発症の疾患なので、鑑別に苦慮することは少ないですが、PML多発性硬化症、悪性リンパ腫なども鑑別になるかとは思われます。

PRESの脳MRI
pres

発症時脳MRI:左からFLAIR、DWI、ADC画像
FLAIR:両側後頭葉白質、左半球優位に高信号を認める
DWI:白質病変はDWIの高信号は目立たない、今回の場合、皮質はやや高信号を呈している
ADC:白質病変はADCの上昇を認める。今回の場合、皮質はややADCは低下している
pres post

降圧5日後の脳MRI:左からFLAIR、DWI、ADC画像
FLAIR画像では白質高信号病変の改善を認め、DWIではほぼ異常を検出できない

小脳/脳幹PRES
典型的にはテント上の側頭、頭頂、後頭葉を中心とした皮質、皮質下白質にMRI(特にFLAIR画像)で高信号を呈する疾患ですが、小脳や脳幹に限局したPRESの報告もあります。動脈支配に一致しない脳幹や小脳の多発性の病変分布などの特徴を把握し、特に脳梗塞との鑑別はしっかり行う必要があります。
テント上のPRESよりも重度の高血圧を伴い、痙攣よりも頭痛、嘔気・嘔吐、意識障害、運動失調などの症状が多い様です。後頭蓋窩はスペースが少ないため、PRESであってもその血管性浮腫により水頭症を来した報告もあり、死亡例も報告されています。降圧薬により予後は一般に良好ですが、小脳梗塞・出血と同様に水頭症をきたしやすく、外科的介入を要する場合があることは念頭に置きましょう。

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