多発性硬化症(MS) 治療

1. 多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン2017

治療はもちろん稀な進行型MSを除けば、急性期治療と再発予防治療に分かれます。
急性期治療は、第一選択薬は今でもやはりステロイドが使用されます。ただし、ステロイドが長期的な予後を改善するかどうかは明確な証拠がないため、むやみに使用することは避けるべきと考えます。血漿交換療法は、ステロイドの反応性の悪い場合に考慮します。
再発予防治療防は、大きく分けると免疫調整薬で免疫抑制作用の少ないABC(IFNβ1a, IFNβ1b, コパキソン)と、免疫抑制作用のあるジレニア、テクフィデラ、ナタリツマブに分けられます。当然、免疫抑制作用なく再発予防が得られることが理想的ですので、ABC(IFNβ1a, IFNβ1b, コパキソン)から治療の導入を行い、効果が乏しい場合には、テクフィデラ、フィンゴリモド、難治例にはナタリツマブの使用を考慮します。
一方で、診断当初より造影病変が多発していたり、EDSSが高かったり、認知機能障害や脳萎縮が見られるなど活動性が高いMSに対しては、ABCをスキップしてジレニア、テクフィデラから開始、あるいは、最も効果の高いナタリツマブで導入して活動性が落ち着いたら、よりmildな治療へ変更する治療戦略も考えられています。

急性期治療
1. 高用量ステロイド療法
2クール施行しても効果が乏しい場合、血漿浄化療法も考慮します
2. ステロイド経口投与
短期的、長期的な有効性を示すデーターはありません。上記のパルス療法の後療法として用いられることもあります。一方で、最近はステロイドパルス療法のみの場合も増えてきました。プレドニゾロン40-60mg/日から徐々に減量し、2-4週間で中止。
3. 血液浄化療法
単純血漿交換 3回を1クールとして 1-2クールなど

再発予防
1. インターフェロンβ
ベタフェロン(IFNβ1b):800万国際単位、隔日、皮下注
あるいは
アボネックス筋注用シリンジ30μg 週1回投与、筋注

再発予防効果が乏しい場合には、血中のIFNβ中和抗体を東北大学で測定いただいていた時期もありましたが、最近は、他の再発予防薬が充実してきたためインターフェロンに拘る必要が少なくなり、測定することもほぼなくなりました。
IFNβ中和抗体は陰性化することもありますが、持続的に数年間消失しない場合には中止。これらで再発効果の乏しい場合は他の免疫調整剤の使用を考慮します。視神経脊髄炎に投与すると再発を誘発するため禁忌ですので、区別がつかない場合は使用が難しい例もあります。
RRMSに対してのベタフェロンnon-responderに対しては、最近ではRio scoreあるいはmodified Rio scoreで評価することが多いと思います[ref 及び ガイドライン参照]。
その他の禁忌、相対的禁忌は>こちら

2. コパキソン
グラチラマー酢酸塩が成分名ですが、L-グルタミン酸、L-アラニン、L-チロシン、L-リシンから構成される人工のポリペプチド混合物で、ミエリン塩基性パンパク室と類似の構造をしています。毎日皮下注が必要ですが、胎児危険度分類はFDAでカテゴリーBに分類されるため、挙児希望のMS患者さんに対しては候補となります。ですが、やはり妊娠中は治療上の有益性があまりに高いということでなければ中止します。

3. テクフィデラ(カプセル)
2017年より本邦でも処方可能となりました。フィンゴリモドよりも免疫抑制系の副作用がやや少ない印象もあります。白血球数(あるいはリンパ球数)が低下する方と、ほとんど低下しない方に分かれるようです。一般的には、リンパ球数が500を下回ると易感染性となり、他薬への切り替えも考慮します。

4. フィンゴリモド(ジレニア)
IFNβと異なり経口内服薬であるという利点があります。さらにTRANSFORM試験では、IFNβによる再発予防効果の乏しい症例に対して、IFNβの継続よりもより効果的な再発予防効果を認めました。ただし、Tumefactive MSに対しては、本薬剤の投与で返って病変を再発させてしまう報告もありますので、使用は難しいかと考えます。一般的には、リンパ球数が500を下回ると易感染性となり、他薬への切り替えも考慮します。

5. ナタリツマブ
脳血管内皮細胞の細胞表面に発現する血球接着因子に対する中和抗体(抗α4 インテグリン抗体)で、非常に強い再発予防効果を持ちます。特にJCウィルス中和抗体保持者は、炎症性PMLやIRIS発症の可能性も高くなるため注意深い観察が必要です。

6.ミトキサントロン
最近はほとんど使用されなくなりました。

7. その他の免疫調整剤
MSの再発予防薬がインターフェロンのみであった時代には、免疫抑制剤が用いられることもよくありました。また、進行型MSに対してもメソトレキセートを用いるような慣習もありました。最近は、エビデンスのある再発予防薬が多く使用可能となったため、使われることは殆どなくなっています。
アザチオプリン:2-3mg/kg/日
シクロフォスファミド(内服、あるいは定期的にパルス)
メソトレキセート

8. その他
スタチン:再発予防効果が昔報告されたことがあります
リツキサンNMOへの効果は確かだが、MSにも効果ある?[ref]

対症療法
痙性しびれ神経痛排尿障害などによる治療
有痛性強直性痙攣(painful tonic spasm)に対しては、メキシチールがとても効果的です

進行型MSの治療は可能なのか?
治療法は確立されていませんが、2次性進行型MSに対して、メーゼントが承認されました。
シクロホスファミドのパルス療法が試みられ、有効であったとの報告も昔はありました。2020年の総説では、候補となるのはミトキサントロンフィンゴリモド、フィンゴリモド類似の作用機序のsiponimod(未承認)、ocrelizumab(未承認)、リツキサン、あたりかと思います。この中で、MS治療薬として本邦で承認されているのは、フィンゴリモドのみです。
expert opinionでは、ステロイドパルス 3日間、月に1回行い進行を防ぐ場合もあるようです。

多発性硬化症 DMT(疾患修飾薬の作用機序)
Nat Rev Neurology 2016より抜粋

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