脳アミロイドアンギオパチー 診断

概念
1938年Scholzによって提唱された脳アミロイドアンギオパチーは、脳血管へのアミロイド沈着が病態で、巨舌や末梢神経障害などを呈する全身型のアミロイドーシスを合併することはほとんどありません。
一方で、高齢者やアルツハイマー病でしばしばみとめられ、特に後者では80-90%と高率に検出されます。孤発性がほとんどですが、家族性(HCAA)の報告もあります。アミロイド前駆蛋白の変異ではLeu34Val変異が常染色体優性遺伝型CAAで有名です。

病態
高血圧や高脂血症など全身動脈の粥状硬化との明確な関連はあまりなく、アミロイド前駆蛋白(APP)の分解産物であるアミロイドβ40が脳皮質・軟膜血管の中膜・外膜および内腔表面に沈着するとされています。それにより、微小動脈瘤・中膜の裂孔による微小・脳葉型出血、脳梗塞・白質病変などが出現します。
以下のような血管障害を来します

    脳葉型の大脳出血(特に前頭葉)
    二次性くも膜下出血:脳表シデローシスを続発することもあります
    小脳出血
    白質脳症
    皮質小梗塞や視床出血

CAAの危険因子

    ApoEε4:孤発性の場合で、HCAAでの関連は低いようです
    ApoEε2:CAAの対立遺伝子として存在すると言われていますが、meta analysisでは関連は否定的
    presenilin-1:ADでAβ-42産生にいていますが、CAAとの関連は否定的

検査
診断基準は、Boston criteriaを使うことが多いと思われます

    脳MRI:CADASILなどの深部白質の微小出血よりもむしろ、皮質下に多発する微小出血が特徴ですので、T2*あるいはSWIは必須です。また、炎症性アミロイドアンギオパチーが疑われる場合には造影MRIによる髄膜の増強効果の有無の確認が必要となります
    髄液検査:Aβ増加などの報告はあります
    遺伝子検査:家族性の場合は必要です

caa
CAAのT2*強調画像
黒く点状の多発する異常信号病変(脳微小出血)が皮質、皮質下に多発してみられます。また、後頭葉優位に見られるのがCAAの特徴の一つです。
病理
現在6つの代表的なタンパク質が知られています

    プリオン蛋白(PrP関連アミロイド)
    アミロイドβ蛋白
    シスタチンC
    トランスサイレチン
    ゲルゾリン
    ABri/ADan

血管壁の重複化(double-barrel lumen)、内膜の閉塞性変化及びヒアリン化、微小動脈瘤様の拡張、フィブリノイド壊死などの血管変化が見られ、特にフィブリノイド壊死が脳出血と強く関連しています

炎症性脳アミロイドアンギオパチーについて(CAA-RI)
CAAでは組織学的にアミロイドβが沈着すことが病態の本質ですが、CAAの中でも血管の炎症を伴うものが見つかるようになり、ABRA(Aβ-related angitis)、CAA-RI(Cerebral Amyloid Angiopathy-Related Inflammation)という概念が出来てきました。
つまり、アミロイドアンギオパチーではあるものの、微小出血に加えて髄膜の造影増強効果と白質病変を来し、病理学的に髄膜や髄膜の動脈周辺にリンパ球浸潤が認められる病態の報告が増えています。急激な認知機能障害が左右非対称性の白質病変の拡大とともに出現した場合、念頭に置きましょう。
特に、ステロイドなどの免疫療法により白質病変が改善する可能性があり、見逃しは厳禁です。
ちなみに、アミロイドβと関連のない脳血管炎はPACNS(Primary angiitis of the central nervous system)ですので、混乱しないようにしましょう。ABRA、CAA-RIの違いは?私にはわかりませんが、病理学的には、ABRA(血管壁に多核巨細胞を伴った単核球の浸潤、血管壁破壊による周囲の出血、一部類上皮細胞の出現を伴う肉芽腫性血管炎様の所見) vs. CAA-RI(アミロイド沈着血管周囲の単核球および多核球の浸潤、血管壁に多核巨細胞を認めても、ABRAに比較すると炎症細胞浸潤は少なく、血管周囲炎の所見をとる)といった報告があるかと思います。

病態
抗Aβ抗体(Aβモノクローナル抗体:bapineuzumab)の臨床試験において無症候性に画像上、血管性浮腫(ARIA-E)/微小出血(ARIA-H)を認める症例があること、及び、CAA-RIのCSF中の抗Aβ抗体を検討した論文では、コントロール群と比較してCAA-RIで有意に抗Aβ抗体が高値であったことなどから、CAA-RIの発生と髄液中の抗Aβ抗体が病態機序に関与している可能性が示唆されているかと思われます。



左:FLAIR画像、右:T1Gd造影画像
急速に認知機能障害が進行した高齢男性。白質病変はPRESも鑑別に浮かぶ画像ですが、島皮質下、左右非対称性な変化はややPRESとしては典型的でない部分もあります。Gd造影では後頭葉中心に軟膜の造影増強効果を認めます。この方は、最終的に炎症性アミロイドアンギオパチーと診断され、ステロイドにて白質病変は消失しました。

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