封入体筋炎  診断

歴史
1967年にChouが、慢性筋炎患者の筋の核内にmyxovirus様のフィラメント様封入体をみる疾患を報告した後に、1971年にYunisとSamahaが慢性の筋炎像に類似し病理的に細胞質内のrimmed vacuole(縁取り空胞)と細胞質内および核内のフィラメント様封入体をみる疾患をinclusion body myositis (IBM)と名付けました。
炎症性疾患なのか変性疾患なのか病態理解が難しい疾患ですが、cytosolic 5′-nucleotidase 1A(cN1A, NT5C1A)抗体など比較的特異的な自己抗体も報告されつつあります。

疫学
成人の炎症性筋疾患の中でIBMの占める割合に関しては16-30%と言われてもいて、 高年期にみられる筋力低下の原因として常に念頭に置く必要がありますが、個人的にはそれほど頻度の高い疾患ではないと思います。
男性に多く、50%以上の症例が50歳以降に発症ますが、どの年齢からの発症もありえます。
大部分のケースは家族歴をもちません

症状

    ステロイド治療抵抗性の緩徐進行性の全身あるいは四肢の筋力低下です
    遠位筋、近位筋どちらの筋が優位の場合もあります
    大部分は左右対称性ですが、非対称性のこともあります
    一般に手首や手指の屈曲が障害されて、前腕掌側の萎縮は特徴的です[ref]
    大腿四頭筋も障害されやすい筋の一つです
    呼吸筋の障害は希です
    約1/3の症例に嚥下障害がみられます

検査

    血液検査:抗NT5C1A抗体が時に検出されます。その他、自己免疫性疾患の合併の有無。多発筋炎と異なりCK正常から軽度上昇(正常値の10倍未満)
    針筋電図:時に神経原性の変化が目立つこともありますのでALSとの区別が時に問題となりますが、early recruitment(早期の運動単位の増員)が検出されることがIBMの診断に重要です
    筋MRI:前腕深部屈筋群の強い障害や,大腿四頭筋の中で大腿直筋のみが選択的に障害されない所見が見られることがあり,特徴的とされています.
    筋生検:rimmed vacuoleが2-70%の筋繊維に陽性+筋内鞘の炎症細胞浸潤。炎症細胞はCD8陽性T細胞とマクロファージが主体ですが、炎症細胞浸潤が目立たない例もあります。
    また、筋疾患にも関わらず小群集萎縮や小角化線維が認められること、rimmed vacuoles周辺にCongo red陽性の物質の存在(蛍光染色の方がCongo redよりも感度が良い)、筋膜にMHC-Iの発現、p-tau (SMI-31)陽性のinclusionなどの所見も特徴的です



ibm
上段:T1強調画像、中段:T2強調画像、下段:STIR画像
大腿四頭筋にT2高信号病変を認め、同部位はSTIRでも高信号ですので、脂肪変性と言うよりは浮腫あるいは炎症を反映した変化と考えられます

病理


筋の大小不同が見られますが、group atrophyはありません。炎症細胞は軽度見られています。左のH&E染色でもvacuoleが1ヶ所で見られますが、右のGomoriトリクローム染色の方がはっきりと描出されます。この封入体周辺にはアミロイドの沈着が見られることもあります。

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