抗NMDAR抗体陽性脳炎 診断

概念
主には、卵巣奇形腫を持つ女性に発症し、NMDA受容体抗体による自己免疫性のメカニズムによって辺縁系症状を来す疾患です。現在では、免疫関連性脳炎の2番目の頻度を占めると言われています

症状
大きく分けて、early stageの症状と、late stageの症状に分けられます
Early stage

    前駆症状(25%-70%):頭痛、発熱、吐き気、下痢、上気道炎症状
    数日以内に精神症状:不安、不眠、おそれ、幻視、被害妄想、マニア、社会性の低下、短期記憶の低下、発語の低下、反響言語(精神科を受診することも多い)
    痙攣発作(82%):部分発作や全般発作
    不随意運動のためてんかんと認識されないことや、逆に不随意運動をてんかんと誤って診断されることがあるので注意が必要です

Late stage

    意識の低下、異常運動、自律神経異常が出現
    異常運動として口・舌・顔面のdyskinesia、四肢のchoreoathetosis、dystonia、rigidity
    自律神経障害として高体温、除脈-頻脈、唾液分泌亢進、高血圧、排尿障害、勃起障害、低換気
    意識障害などを呈さない軽度の症状で改善する例も報告されています

検査

    血液検査:抗NMDAレセプター抗体測定(Dalmauのlabに依頼)、腫瘍マーカーも
    髄液検査:軽度のリンパ球増加、蛋白は正常から軽度上昇、OCB陽性率は60%、抗NMDAレセプター抗体陽性
    脳波検査:50%にてんかん波(早期)、後期には、徐波、Slow continuous rhythmic activity delta-theta rangeなど
    脳MRI:異常所見が検出できるのは10-50%程度ですが、海馬、小脳、大脳皮質、島、基底核領域に異常信号を認めることがあり、自然に消退することが多いようです
    脳SPECT
    脳PET
    骨盤CT、骨盤MRI、超音波、PET:卵巣奇形腫をしつこいほどに検索しましょう

合併する腫瘍の特徴

    26%-60%の症例が卵巣奇形腫を合併し、最多です
    抗NMDAR抗体陽性辺縁系脳炎を発症した数カ月から数年後に奇形腫が明らかとなる症例もあります
    他に精巣腫瘍、胸腺腫、neuroblastoma、ホジキンリンパ腫などの合併が報告されています

NMDAレセプター抗体とは?

    グルタミン酸レセプターの一種です
    いくつかのsubunitがありヘテロ4量体を形成しています
    NMDA-R抗体辺縁系脳炎ではNR1、NR2B複合体の細胞膜表面に対する抗体が検出されます
    NR1はびまん性に、NR2Bは前脳に発現しています
    生理的には神経回路形成、記憶学習、シナプス可塑性などに関与しているようです

歴史
1997年Nokuraらが卵巣奇形腫摘出後に著明に症状が改善した辺縁系脳炎を報告しました。その後も若年女性に好発し遷延する非ヘルペス性脳炎が(Acute juvenile female non-helpetic encephalitis; AJFNHE)として報告されていました。最終的に、Dalmauらが2005年に同様の症例を8例報告(7例が卵巣奇形腫の合併)し、2007年にこれらの症例(+8例)からN-methyl D-aspartate receptor(NMDAR)特異抗体を検出し、新たな傍腫瘍症候群として提唱されました。

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