進行性核上性麻痺 診断

はじめに
1964年にSteeleやRichardsonにより、核上性眼球運動障害、項部ジストニア、仮性球麻痺、認知症などを呈し、病理学的に基底核、脳幹、小脳などに神経脱落や神経原性変化を認める症候群と定義されました。現在では、様々な臨床病型が知られています。

概念
脳内のタウ蛋白の蓄積により、パーキンソン症状を来たす疾患でタウ蛋白loadの量と分布により以下の三つの亜型に分類されます

    1. Richardson症候群(PS):Steeleらの原著例に近いNINDS-SPSP criteriaのprobableにほぼ対応
    2. Progressive supranuclear palsy-parkinsonism (PSP-P):左右非対称の発症、振顫、L-dopaに対する部分的な反応などが特徴(臨床的にPDに類似した部分もある一群)
    3. Unclassifiable PSP(分類不能)
     Pure akinesia with gait freezing
     Cerebral cortical sign(CBS; PSP syndrome):alien hand、apraxiaなどを伴う
     Predominant frontal presentations:executive dysfunstionなど
     Cerebellar ataxia:小脳失調症状を伴う一群[ref]

検査

    血液検査、髄液検査
    脳MRI:中脳背側部(中脳被蓋>中脳蓋)の萎縮に伴うHummingbird sign、第3脳室の拡大、前頭葉萎縮、上小脳脚交差の信号変化
    脳SPECT
    眼球運動検査(ENG)
    MIBG心筋シンチ:パーキンソン病との鑑別のため

psp
脳MRI矢状断 T1強調画像(左:PSP、右:正常対象者)
赤矢印:PSPでは矢状断MRIで中脳吻側部分が水平あるいは下に凸に変化します。正常対象者やパーキンソン病では、上に凸です。萎縮した中脳正中吻側部がハチドリの嘴に見えるためHummingbird signとも呼ばれています
黄矢印:それぞれ四丘体の上丘を指しています。PSPでは、四丘体上丘の萎縮が見られることもあります。本例ではあまりはっきりしませんが、、、

診断基準
1. 国際的な診断基準は、NINDS-SPSP criteriaが使用されています

2. 古典的な診断基準は以下の通りです
進行性核上性麻痺診断基準
1 主要項目
(1) 40 歳以降で発症することが多く,また,緩徐進行性である。
(2) 主要症候

    垂直性核上性眼球運動障害(初期には垂直性眼球運動の緩徐化であるが,進行するにつれ上下方向への注視麻痺が顕著になってくる)
    発症早期(概ね1-2 年以内)から姿勢の不安定さや易転倒性(すくみ足,立直り反射障害,突進現象)が目立つ。
    ほぼ対称性の無動あるいは筋強剛があり,四肢末梢よりも体幹部や頸部に目立つ。

(3) その他の症候

    進行性の構音障害や嚥下障害
    前頭葉性の進行性認知障害(思考の緩慢化,想起障害,意欲低下などを特徴とする)

    (4) 画像所見(CT あるいはMRI)

      進行例では,中脳被蓋部の萎縮,脳幹部の萎縮,第三脳室の拡大を認めることが多い。

    (5) 除外項目

      L-ドパが著効(パーキンソン病の除外)
      初期から高度の自律神経障害の存在(多系統萎縮症の除外)
      顕著な多発ニューロパチー(末梢神経障害による運動障害や眼球運動障害の除外)
      肢節運動失行,皮質性感覚障害,他人の手徴候,神経症状の著しい左右差の存在(皮質基底核変性症の除外)
      脳血管障害,脳炎,外傷など明らかな原因による疾患

    (6) 判定
    次の3 条件を満たすものを進行性核上性麻痺と診断する。
    (1)を満たす。
    (2)の2 項目以上がある,あるいは(2)の1 項目および(3)の1 項目以上がある。
    他の疾患を除外できる。
    2 参考事項
    進行性核上性麻痺は,核上性注視障害,姿勢反射障害による易転側性が目立つパーキンソニズム,及び認知症を主症状とする慢性進行性の神経変性疾患である。神経病理学的には,中脳と大脳基底核に萎縮,神経細胞脱落,神経原線維変化,グリア細胞内封入体が出現する。
    初発症状はパーキンソン病に似るが,安静時振戦は稀で,歩行時の易転倒性,すくみ足,姿勢反射障害が目立つ。進行するにつれて,頸部の後屈と反り返った姿勢,垂直性核上性眼球運動障害(初期には眼球運動の随意的上下方向運動が遅くなり,ついには下方視ができなくなる),構音障害や嚥下障害,想起障害と思考の緩慢を特徴とする認知症や注意力低下が出現する。徐々に歩行不能,立位保持不能となって,寝たきりになる。抗パーキンソン病薬への反応は不良である。一時的に抗うつ薬やドロキシドパで症状が改善することがある。
    非定型例として「純粋無動症」と呼ばれる病型があり,パーキンソン病に似て,歩行障害,すくみ足,易転倒性を特徴とするが,筋強剛や振戦を欠く。眼球運動障害も末期になるまで出現しないことが多い。

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