蘇生後脳症(無酸素脳症、低酸素脳症) 治療

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参考
アメリカ心臓協会(AHA)による心停止後症候群の治療に関するガイドライン 2015年度版

治療概要
低酸素状態、循環不全状態をいかに短くとどめるかが重要ですので、速やかに心肺蘇生を行いつつ、低酸素状態、低灌流状態の原因を特定して、輸液や血管作動薬等で循環状態を安定化させましょう。一般的に、蘇生時に於ける初期リズムがAsystoleの場合や、非心原性心停止、30分以上の心停止時間、bystander CPR無し、蘇生中のetCO2値が10mmHg以下などは予後に関連するとされています。
ある程度低酸素状態が続くと、引き続き心停止後症候群(post cardiac arrest syndrome)と呼ばれる多臓器障害が生じますので、中枢神経障害だけでなく、あらゆる合併症の管理が必要となります。そのため、集中治療室での管理が必要です。
第一選択となる治療法は低体温療法ですが、低体温療法の適応とならない場合は、病態に応じた対症療法を行います。

1. 脳保護療法
低体温療法

    治療効果が知られてるのは心停止後の低酸素脳症の場合です。体温を速やかに32-34℃に低下させ、24時間維持し、ゆっくり復温します。
    具体的な冷却の方法としては、体外から冷却ブランケットなどで冷却する体表冷却式が一般的ですが、PCPSなどを利用し体内から冷却する方法もあります。冷却時には筋肉による熱産生を抑えるために筋弛緩薬の投与が必要となります。
    合併症:血小板減少、低カリウム血症、不整脈・血圧低下、脱水、感染症など
    禁忌:頭蓋内出血、大量出血、昇圧薬に抵抗性の低血圧、重症敗血症、妊娠など

2. 一般治療
脳圧、脳血流のコントロール

    脳血流、循環:平均動脈血圧を80-100mmHgに上昇させます
    具体的には、PCASでは敗血症に類似した全身性炎症反応症候群を来す事が知られていますので、心機能が保たれていれば敗血症に準じた大量輸液(Early-goal directed therapy)の適応はあると思います。それでも循環を保てない場合、カテコラミンの投与を行いましょう。
    血糖:144-180 mg/dLに管理
    PaCO2:35-45mmHg程度を目標に呼吸回数を10-12回/分に設定。
    具体的には、SpO2が94〜96%を保つ事が出来る最小のFiO2で人工呼吸を行います。過剰な一回換気量設定は人工呼吸器関連肺傷害の原因となりますので、一回換気量は身長から計算された理想体重当たり6ml/kgとするべきと思われます。
    脳浮腫:頭部を30°にベットアップし、静脈潅流を改善させてください。あるいは、以下の投与を行います。
    D-マンニトール注 200ml/回 30-60分で点滴静注 1日2-4回
    グリセオール注 200ml/回 30-60分で点滴静注 1日3-6回

痙攣発作に対する治療

    10-40%の症例でけいれん発作が出現します。
    こちら参照

ミオクローヌス

    リボトリール 1.5-6.0 mg/日 経口
    デパケンR 600 mg/日 経口

3. 合併症に対する治療
敗血症、発熱

    発熱は、中枢神経への代謝性障害を来すため速やかに是正しましょう。心停止による免疫制御系の障害と消化管の血流不全の遷延化等により、消化管では粘膜の透過性が亢進して,腸内細菌が血中に侵入しやすくなりますし、人工呼吸管理での肺炎や低体温療法復温中での敗血症がしばしば起こります。

深部静脈血栓症、肺塞栓症、その他の血栓塞栓症

消化管潰瘍の予防

4. その他の特殊な病態に対する治療法
Autonomic storms

    心停止後に、発作性に高血圧、頻脈、発汗過多、高体温などの自律神経症状が見られることが報告されています。インデラル、セルシン、リボトリール、パーロデル、フェンタニル、クロニジン(本邦未承認)などの効果が知られています

Delayed post-hypoxic leukoencephalopathy

    低酸素脳症や一酸化炭素中毒による昏睡状態から改善した数日から数週間後に白質のびまん性脱髄が生じる希な病態が知られています。
    脳MRIでは白質のびまん性高信号が見られ、意識障害、認知機能障害、パーキンソニズム、寡動などの症状が出現するようです。
    有効な治療法は確立されていないのですが、認知機能障害に対するアリセプト、メマンチン、シンメトレルの投与、パーキンソニズムに対するレボドパ投与の症例報告が一応あります

予後
院内での心停止であっても、退院可能なのは30%以下と予後不良な疾患で、死因は2/3が神経障害により、1/3が多臓器不全です。

生活指導
原因を特定し、再発予防策を立てる。可能な限り正確な予後予測を行った上で、家族には、死亡率の高い疾患であり、救命し得たとしても非常に強い神経障害が残存することが多いことをよく説明してください。さらに、介護者に対するメンタルケアは不可欠と考えられます。

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