神経梅毒 診断

はじめに
T.pallidum(トレポネーマ・パリドム)による中枢神経の感染症の総称です。初感染後初期から晩期までどの時期においても生じる可能性があります。T.pallidum は感染後3から18ヶ月以内に中枢神経系に侵入しますが、必ずしも潜伏感染する訳ではないようです。最近、見かけることは少なくなっていますが、HIV症例での感染も問題になっていて、HIV症例ではペニシリン治療のみでの治癒が困難になっています。

症状
1. 無症候型神経梅毒

    髄液細胞数・蛋白の上昇やVDRL陽性など異常を認めるますが、症状のない状態です。それでも、治療の必要性はあります。

2. 髄膜血管型神経梅毒

    髄膜血管型はさらに、髄膜型、脳血管型、脊髄髄膜血管型に分類されることもあります。
    頭痛、嘔吐、意識障害、脳神経症状(髄膜型)や血管炎により脳梗塞(脳血管型)が起こりえます。
    典型的には髄液細胞数がリンパ球主体で200〜400cells/ulで、蛋白は100〜200 mg/dL程度です。

3. 実質型神経梅毒
多くの場合、感染から15から20年以上経過した後に発症する病態で、治療の反応性は最も悪く、中には髄液細胞、蛋白増加も軽度の燃え尽き型もあります。また、視神経、網膜、ぶどう膜、脈絡膜などの眼病変を来すこともあります[ref]。

    進行性麻痺(progressive paralysis)
    脳実質に炎症が波及した状態で、治療可能な認知症の病態の一つとしても重要です。つまり、Treponemaによる炎症や直接の神経細胞破壊により、記憶障害、多彩な精神症状などを呈します。
    未治療の場合は、数年で死亡することもあります。
    脊髄癆(tabes dorsalis)
    梅毒に感染した3-9%を占め、後索性失調性歩行、電撃痛、Romberg徴候陽性、排尿障害、感覚障害、内臓クリーゼなど脊髄障害による症状を来します。Argyll Robertson瞳孔やシャルコー関節(関節の無痛性腫大)など特徴的な所見が検出されることもしばしばあります。
    辺縁系脳炎様神経梅毒
    Saundersonらの側頭葉内側病変を呈した神経梅毒の24症例の報告では、46%で痙攣発作、認知機能障害、人格変化が報告されていて、時に急性発症型もあることから他の辺縁系脳炎との鑑別が難しい場合があります。なかなか画像的変化が捉えづらい神経梅毒ですが、このタイプでは側頭葉内側の高信号病変や萎縮などを認めるようです
    ゴム腫(gumma, gummatous neurosyphilis)

検査
梅毒を培養によって直接検出することは難しく、昔ながらの梅毒反応から類推します。おおよその診断基準は1. 髄液VDRL陽性、2. 髄液細胞あるいは蛋白増加、3. 髄液FTA-ABS陽性です。

    血液検査:まず血清FTA-ABS法およびTPHA法を行います
    髄液検査:RPR法やVDRL検査が陽性であれば神経梅毒と診断します。髄液FTA-ABSが陰性の場合には神経梅毒は通常否定されます。細胞数(単核球)軽度上昇、蛋白上昇、IgG上昇が一般的だが様々です
    MRI:病型により様々ですが、造影MRIを含めても異常病変をとらえられないことも多い印象があります。髄膜の造影病変(髄膜型)、梗塞病変(血管型)
    脳波
    SPECT:進行麻痺などでは、SPECTによる血流低下所見が得られることもありますが、いずれにせよ非特異的変化です。
    FDG-PET

参考
血清で梅毒反応が陽性であれば、髄液での梅毒反応の検査を行います。
梅毒反応は主に以下の二種類で、特異性はトレポネーマ抗原法が高い一方で、STSの抗体価の変動は臨床症状とよく一致します。治療により陰性化するのもSTSの抗体価です。
非Treponema抗体試験(非特異的検査法、STS (serologic tests for syphilis))
カルジオリピン-レシチン-コレステロール抗原複合体に対してIgGおよびIgMを測定する方法で、SLEや慢性肝疾患、RAなどでも上昇します(生物学的偽陽性)。

    ガラス板法
    RPR法(rapid plasma reagin)
    VDRL法(venereal disease research laboratory)

Treponema試験(特異的検査法、トレポネーマ抗原法)
T.pallidum抗原、またはその組換え抗原に対する抗体を測定します。過去に治療を行っていたとしても既往があれば、生涯陽性になります。

    FTA-ABS(fluorescent treponemal antibody absorption、蛍光トレポネーマ抗体吸収検査)
    TPPA(treponema pallidum particle agglutination assay)
    TPLA (treponema pallidum latex agglutination)
    TPHA (treponema pallidum hemagglutination、梅毒トレポネーマ血球凝集検定法)

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