血管炎性末梢神経障害 診断

はじめに
血管炎を来す全身性の疾患に続発する末梢神経障害です。一般的には、隣接しない2本以上の末梢神経障害を来す、多発単神経炎の所見をとります。全身性の血管炎疾患が除外でき、末梢神経のみに血管炎が限局している場合には、non systemic vasculitic neuropathyと診断を行います。
血管炎性ニューロパチーの多くは、血管炎症候群や膠原病などの自己免疫疾患によって生じた全身性血管炎の一症状としてみられます。その機序は、末梢神経の栄養血管に炎症反応が生じ血栓が形成、供給領域が虚血に陥った結果生じる末梢神経の損傷(虚血性ニューロパチー)によるものと考えられています。このような虚血損傷が、急速かつランダムに生じるため、臨床像は急性発症の多発単神経炎型を示すことが多くなります。
血管炎の原因疾患により治療がやや異なりますので、原因疾患の確定が重要と思われます。

原因となりうる疾患
1. 血管炎症候群(原発性全身性血管炎)
血管炎症候群は罹患血管のサイズにより分類されます。その中で末梢神経障害の原因になるのは、特に小動脈、細動脈と言った小型血管炎です。すなわち、顕微鏡的多発動脈炎(MPA)、Churg-Strauss症候群(CSS)、Wegener肉芽腫症(WG)、多発動脈炎(PAN)が代表的なものです。

2. 続発性全身性血管炎
膠原病は,続発性に全身性血管炎を生じることがありますが、その内末梢神経障害の合併が多い疾患として、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、Sjögren症候群(SjS)が代表的です。RAによる末梢神経障害は、圧迫性や薬剤性が一般的ですが、難治性の重篤な病態として小中型血管の壊死性血管炎(リウマトイド血管炎)を生じ血管炎性末梢神経障害を併発することがあります。
その他,HCVに関連したクリオグロブリン血症、HIV、CMV、CAEBV、サルコイドーシス、Behçet病、傍腫瘍症候群なども血管炎性ニューロパチーをきたしうる疾患になります。

3. 非全身性血管炎性ニューロパチー
non-systemic vasculitic neuropathy (NSVN) Diabetic Lumbosacral Plexopathyなどが含まれます。

臨床症状
全身症状:発熱、体重減少、易疲労感、関節痛、筋痛などが非特異的にみられます
神経症状:多発単神経障害による非対称性の運動感覚障害と、遠位部優位で下肢の障害が目立ちます。典型的には、突然の手足の痛みで発症、それに引き続いて運動障害が出現します。感覚障害は、痛みなどの異常感覚が感覚低下とともにみられ、振動覚や位置覚などの大径の感覚線維も障害されるため、よくall modalityの感覚障害などという内輪の用語も用いられます。
その他:全身性血管炎の場合は原疾患ごとに標的となる臓器障害が異なりますので、例えば小血管が主体の血管炎では共通に皮膚潰瘍や紫斑がみられる、MPAでは腎障害、CSSでは喘息や腹痛(腸管の血管炎)、WGでは肺病変といった疾患特異的症状を示します。

検査
血液学的検査
血算,一般生化学,血沈(ESR)を非特異的な炎症反応や臓器障害などの評価に行い、原疾患の鑑別診断に対応して種々の特異的な血液学的マーカーを測定します(ANCA、抗核抗体、リウマトイド因子(RF)、CCP抗体、抗dsDNA、Sm、SSA/SSB抗体など)。その他、クリオグロブリン、HBs抗原、HCV抗体、HIV抗体、リン脂質抗体、各種ウイルス感染の有無など。

電気生理検査
臨床症状が多発単神経炎型を示すことに対応し,神経伝導検査では神経ごとに電気生理学的にも障害度の差がみられます。基本的に軸索障害のパターンですのでCMAP振幅の低下を示しますが、発症から間もない急性期に伝導ブロックを呈する例の報告もあります。このような伝導ブロックは、虚血のごく初期にみられ、経過を追うと遠位側がWaller変性し軸索障害パターンとなることが多いため、偽性伝導ブロックといわれます。針筋電図では,軸索障害を反映し、支配筋での脱神経所見(fibrillation, positive sharp wave)がみられます。

神経筋生検
最も重要なことは、腓腹神経生検による血管炎つまり神経外膜の小動脈,細小動脈における炎症細胞の血管壁貫通像を証明することです。
凍結H&E標本はは、簡便迅速に切片を作製することが可能で、早期診断につながり有用です。同時に短腓骨筋を生検することにより血管炎検出感度があがります。しかしながら,臨床的に疑われる場合であっても病理標本内には明らかな血管炎の所見を指摘できない例も少なからずみられますので、パラフィン包埋切片を含めたより詳細な血管病変の観察、エポン包埋トルイジンブルー染色切片による神経線維の変性の形態変化を詳細に観察することも必要です。
凍結あるいはパラフィン包埋切片では,急性期には血管壁への炎症細胞浸潤、フィブリノイド壊死、内弾性板の破壊(EVG染色を行う)、血栓形成など。慢性期には、血管内膜の肥厚や中膜や外膜の線維化などを観察できます。
エポン包埋トルイジンブルー染色切片は、個々の神経線維の形態を観察しましょう。血管炎では閉塞血管の支配領域に依存して虚血損傷が生じるため、神経束間や神経束内でも場所により障害度に差が生じることが特徴です。障害された神経線維の変化は軸索変性が主体で、急性期に軸索内部の変化やミエリン球が多発している所見、慢性期に軸索再生所見がみられ、疾患の経過も推測できます。

Appendix:原因となる疾患

原因疾患の頻度

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