はじめに
脳膿瘍は、脳組織内の炎症と細菌などの病原体によって脳が圧迫、占拠された状態です。脳への感染経路は以下が主要なものです。10万人に一人程度の発生率で稀な疾患です。
血行性に伝播(感染性心内膜炎、肺、腎などから)
近傍の感染から伝播(副鼻腔、耳、歯科領域、側頭骨や硬膜など)
外傷や手術に続発
起炎菌として、連鎖球菌が最多、ブドウ球菌、嫌気性菌も多く検出されます。単一菌による感染が多いですが、混合感染にも注意が必要です。
また、免疫不全症例は特殊な起炎菌に注意が必要です。
HIV:トキソプラズマ
ステロイド:リステリア
海外渡航歴:寄生虫
肺病変の存在:ノカルジア(抗酸菌培養)、アスペルギルス
症状
病変部位により多彩な症状を来すのは、脳梗塞や脳腫瘍と同様です。
頭痛、発熱、神経脱落症状など
検査
最大の目標は診断の精度を上げることと、原因菌を同定することです。確定診断は、原因菌が検出されない場合でも、膿汁を確認することになります。
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- 培養検査:血液培養、髄液培養、尿培養、膿瘍自体の培養など
- 髄液検査:
- 感染症検査:QFT、細菌、ウィルス、真菌、抗酸菌のPCRや抗原検査
- 造影脳CT:膿瘍以外に、副鼻腔や内耳の状態も確認
- 造影全身CT:肺AVMの検索などなど
- 心エコー:感染性心内膜炎の有無を
- 血液検査
- 造影脳MRI:脳膿瘍を脳腫瘍や脳梗塞と鑑別するのに有用な検査です(下記)
脳膿瘍のMRI
脳膿瘍に比較的特徴的な所見として、拡散低下(DWI高信号、ADC低信号)、リング状造影増強、T2 hypointense rimの3つがあります。基本的には動脈支配領域に一致しない拡散低下病変を認め、ring-enhancemnetされるときには悪性リンパ腫やグリオーマ、脳膿瘍などが鑑別となりますが、T2 hypointense rimは比較的脳膿瘍を疑う根拠になると思われます。
特にT2画像は進展ステージとともにMRI所見も変化します
- Early cerebritis:辺縁不明瞭なT2WI高信号
- Late cerebritis:中心はT2WI高信号で、辺縁T2WI低信号(T2 hypointense rim)、さらに浮腫を伴う
- Early capsule:T2 hypointense rim
- Late capsule:浮腫やmass effectの減少
