アレキサンダー(Alexander)病 診断

はじめに
Alexander病は、病理学的に髄鞘化の障害と、Rosenthal fibersと呼ばれるアストロサイト内の細胞質封入体の蓄積を特徴とするまれな進行性白質脳症で、臨床的には乳児型、若年型、成人型に分類されます。かつては 病理学的にRosenthal fibersを見つけることが唯一の確定診断でしたが、2001年にBrennnerらによって、Alexander病の責任遺伝子がGFAP遺伝子であることが明らかにされました。

分類

    乳児型:2歳までに巨脳症、てんかん発作、精神運動発達遅滞、球麻痺など発症し、10歳までになくなられる方が多い
    若年型:4歳?10歳で発症し、球症状、仮性球麻痺、痙性麻痺、小脳失調などを呈する。白質病変はある場合もない場合もある。乳児型に比べて経過は緩徐で、中年期まで生存する例もある
    成人型:症状は若年型に似るか、さらに軽度で、無症状で剖検ではじめてRosenthal fibersが見つかる例もある。口蓋ミオクローヌスが見られる例がある

MRIによる診断基準
2001年にKnaapらにより、Alexander病のMRIによる診断基準が提唱されました。本疾患の特徴として、以下のものが上げられています。

    1.前頭葉優位の白質病変、
    2.T1WIで高信号、T2WIで低信号を示す脳室周囲に沿った異常信号、
    3.大脳基底核、視床の異常信号、
    4.脳幹病変(とくに中脳、延髄)
    5.造影増強病変

このうち4つを満たす必要があるとされていますが、成人型に関しては満たさない例も多く認められます(下記)。この白質病変、視床・基底核・脳幹の異常信号が、過形成・肥大したアストロサイトとRosenthal fiberの沈着によるものと考えられています。

成人型アレクサンダー病(Adult onset Alexander Disease(AOAD))
Alexander病がGFAP遺伝子の異常によるものと分かってから、成人でもAlexander病と診断が出来るようになりましたが、成人型の脳MRIは上記のKnaapの基準のような所見を呈さないことが多く、また臨床像も脳幹〜脊髄由来の症状が目立つ例が多いことが分かってきました。

    発症年齢:13-62歳。家族内発症例もあり、その場合は常染色体優性遺伝
    症状:脳幹障害(眼振、複視、仮性球麻痺 [構音障害、嚥下障害]、顔面神経麻痺)、痙性麻痺、小脳失調、膀胱直腸障害、口蓋ミオクローヌスなどです。感覚障害や認知機能障害ほとんどありません。進行は緩徐で、中には症状を呈さない例もあります。
    MRI:延髄から上部頚髄の萎縮や異常高信号がほぼ全例に見られます。延髄、頸髄が萎縮して橋の萎縮が目立たないと、saggitalでみて「おたまじゃくし」のような形に見えます。皮質脊髄路・内側毛帯、小脳歯状核の異常信号、側脳室周囲の白質病変は約7割に見られます。造影効果しばしば陽性となります。経過とともに萎縮は進行しますが、高齢発症では白質病変を認めない例が多いようです。
    電気生理検査:MEP、SEP、ABRで中枢伝導時間の延長が見られる例があります。
    髄液、血液検査:異常は目立ちません。

F1.medium

AJNR Am J Neuroradiol. 2008;29:1190-6.より引用

GFAP遺伝子について
GFAP蛋白はグリア系細胞の中間径フィラメントの成分で、他の細胞骨格蛋白と連結して細胞の機械的な強度や統一的な機能に関与していると考えられています。
GFAP遺伝子は、ランダムコイルを呈するN末のhead domain、C末のtail domainに隣接してcentral rod domainがあります。そのCentral rod domainは4つのα-helical segment(1A、1B、2A、2B)から構成されています。特に1Aと2Bの端の配列は、中間径フィラメントの間でよく保存されているようです。
gfap

Clin Genet. 2007;72:427-33.
GFAPの遺伝子変異は、GFAP蛋白の1A、2A、2B(exon 1, 4, 8)のcentral rod domainに多く、乳児例など含めHot spotとしてはR79, R88, R239, R416が知られています。患者で見られるGFAP遺伝子変異はheterozygousで、de novoの変異と考えられることが多いようです。また以下のようにdominant mannerで作用すると考えられています。
変異GFAP蛋白はGFAP蛋白の可溶性を低下させて、αB-crystallineやHSP27とともにRosenthal fibersを形成して沈着、それが神経毒性を発揮してアストロサイトの機能異常を引き起こすと考えられてます。一方で臨床的に最も障害が高度な延髄錐体にRosenthal fiberが乏しいなど、矛盾する報告も見られます。

病理所見
肉眼的には延髄から頸髄、胸髄の著明な萎縮と染色性の低下で、他の部位は大きな異常を認めません。
顕微鏡的には、両側の延髄錐体とその周辺が強く障害されて、神経線維は脱落、アストロサイトもほとんど見られず空庖化して、泡沫化マクロファージなども見られます。
髄鞘変性の強い錐体や下オリーブ核周辺ではRosenthal fiberはむしろ少ないようです。延髄背外側も障害されますが、その中で舌下神経は比較的保たれます。
Rosenthal fibers:好酸性で、GFAP、ubiquitine, βcrystallineに陽性です。程度の差はありますが、大脳白質、側脳室周囲の白質で血管周囲、軟膜下などに、また視床、海馬、視神経などにも見られます。髄鞘の脱落はおおむねRosenthal fibersの沈着の程度に一致していようです。脊髄では、前・外側皮質脊髄路がアストロサイトの増多とマクロファージ浸潤を伴って変性しますが、この部位でもRosenthal fibersが認められます。

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