筋萎縮性側索硬化症と認知症

認知症を伴うALSに関しては、1964 年に湯浅が「痴呆を伴うALS」として邦文で最初に報告、その後、三山らが1979年に「MNDに合併する初老期認知症」として欧文報告 [ref]、以前より本邦から独立した疾患群であることが提唱されていました。
つまり、ALSでは時に人格変化、感情障害、行動異常、言語機能障害などFTLD様の症状を合併することがあります。
その後2006年に、Neumannや新井らにより前頭側頭葉変性症(FTLD)とALSに共通して出現する封入体の主要構成成分としてTDP-43が同定されることになります。さらに、2008年には家族性および孤発性ALSにおいてTDP-43 の原因遺伝子であるTARDBP遺伝子変異が見つかったことで、両者の病態が共通の病理基盤に基づくものであると想定されるようになり、ALSの基礎研究が大きく前進しています。
FTLDは、臨床的には以下の3つの亜型に分類されます

    bvFTD(behavioral variant of frontotemporal dementia)
    SD(semantic dementia)
    PNFA(progressive non-fluent aphasia)

ALSを合併するのは、多くがFTDですが、SDやPNFAの報告もあります。ALDを合併したFTDの変異遺伝子は、以下のものが同定されています。
TARDBP、SOD1、NEFH、DCTN1、CHMP2B、ANG、FUS、OPTN、VCP、SPG11、UBQLN2、SIGMAR1、C9ORF72

C9ORF72遺伝子
なかでも、2011年に報告されたFTD-ALSの家系において9番染色体短腕のC9ORF72遺伝子第1エクソンの63塩基セントロメア側イントロン内にGGGGCC 6塩基反復配列が同定され注目を集めています。
北欧に多い遺伝子変異ですが、この遺伝子変異の浸透率は、35歳以下でほぼ 0%、58歳で約50%、80歳ではほぼ100%と年齢依存性が認められ、何らかの遺伝素因や年齢依存性の遺伝子座のメチル化などが原因として考えられています。
臨床的には、女性に多く、球麻痺型が多いなどとの報告もありますが、実際には精神症状、記憶障害、小脳失調、錐体外路症状など多彩な症状を同一家系内でも取り得ることが知られています。
病理像はTDP-43の広範な蓄積、海馬錐体細胞や小脳顆粒細胞におけるユビキチン陽性かつTDP-43陰性の封入体が存在することが特徴とされいるようです
発症メカニズムは明らかではありませんが、変異例では異常伸長したリピートの転写産物が前頭葉や脊髄の神経細胞の核内に蓄積していること(gain of function)、また、C9ORF72の転写効率が50%以下に低下していること(loss of function)が報告されています

ALS+ADとの鑑別
高齢者のALSでは、アルツハイマー型認知症を合併することも少なくないので、認知機能障害が検出された場合にはAD+ALSなのかFTD+ALSなのかが臨床的には問題になるかと思います。以下の3つがよく鑑別で考慮される点だと思われます。

    臨床症状、臨床経過:つまり記憶障害が主体(AD)なのか、人格変化、行動障害などが主体(FTD)なのか?
    脳SPECT、脳MRI
    髄液Aβ値

コメントを残す