MRS(magnetic resonance spectroscopy)と神経疾患

はじめに
MRS(magnetic resonance spectroscopy)は、生体内にある分子の中にある原子核の磁場の共鳴周波数の違いによる化学シフト効果(chemical shift)に基づいて、生体内の分子の種類や成分などを調べる検査です。具体的には、神経細胞内に存在するNAA (N-acetyl acetate)などの特定の部位に存在する物質を信号強度として半定量化します。
通常のMRIやCTの画像に現れない細胞の代謝活動を調べることが可能です。神経系では、脳腫瘍、脱髄性疾患、脳梗塞、MELASによるStroke like lesion脳膿瘍などの鑑別、病状評価に用います。

読影
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実際の画像です。真ん中のFLAIR高信号病変にROI (region of interest)を設定したMRS画像が左です。右は正常側同部位にROIを置いたMRS画像です。
注;ROIは比較的大きいため、小さな病変では解析が不正確になります。
それぞれのMRS画像には、横軸にスペクトル数が記載されています。スペクトルは右(0 ppm)から左(4 ppm)へ向かって読影します。
正常部位のMRS画像(右図)では、いくつかのピークが見られますが代表的なものは、図に示したNAA、Cr、Choで、ピークの高さはNAA>Cr>Choの順になります。
病変部位(左図)では、正常部位と比較して、NAA低下、Cho上昇及び、この3つのピーク以外のピークの出現(この場合はlactate peak)が主な変化と考えられます。

各ピークの意味合い

    1. Nアセチルアスパラギン酸塩(N-acetyl aspartate: NAA)
    スペクトル:2 ppm
    特徴:正常ニューロンのマーカー
    2. クレアチン(Cr)
    スペクトル:3 ppm
    特徴:エネルギー代謝のマーカー
    3. コリン(Cho)
    スペクトル:3.2 ppm
    特徴:膜の破壊再生のために悪性腫瘍で上昇します
    4. 乳酸(Lactate)
    スペクトル:1.3 ppm
    特徴:嫌気性代謝のマーカー

疾患とMRS

    脳梗塞、MELAS:急性期には乳酸ピークが上昇します。特にMELASで所見が強いと思います。
    充実性腫瘍:Choが上昇しNAAが低下します。さらに、壊死も加わると、脂質も乳酸も上昇するようです。ちなみに、Cho/NAAは悪性腫瘍に高い感度を示しますが、特異度は低く、同じパターンは腫瘤状多発性硬化症と急性散在性脳脊髄炎でも認められます
    多発性硬化症:病期により様々ですが、Cho上昇は脱髄による細胞膜破壊により上昇、Lac上昇は炎症細胞の代謝を反映、NAA低下は障害の強さと相関、などの報告があります [参考]
    脳膿瘍:NAA、Cr低下、Cho上昇、lactate上昇

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