はじめに
特徴的なMRI所見を有する白質脳症の原因疾患の一つとして知られています。1980年代にSung, Haltiaらが中枢神経系に広汎に分布する神経細胞内のエオジン好性ですりガラス状に染色される核内封入体を確認した剖検例を報告しました。孤発例・家族歴ともに診断時の年齢は60-70歳代が多いため、神経内科医が係ることが多いですが、原因遺伝子は2019年に報告されました[ref]。
症状
検査
皮膚生検:脳生検は侵襲が高いため、皮膚生検がしばしば行われます。診断に必須の検査です。皮下脂肪組織の脂肪細胞、線維芽細胞、皮膚付属器の汗腺、毛嚢を構成する細胞にも核内封入体が高頻度に観察されます。
MRI:DWIで遷延化する、皮髄境界に沿った高信号が特徴的です。進行に伴い白質は萎縮し、びまん性に広がるT2WI/FLAIR高信号が出現します。大脳白質のみならず大脳皮質、脳幹、小脳にも信号変化を認めることがあります。
NIHID 脳MRI画像[Sone et al., JNNP. 2014:354-6.より転載]。右の拡散強調画像(DWI)で見られる皮髄境界に沿った高信号が特徴的とされています
神経病理所見
大脳白質での髄鞘脱落、海綿状変化が報告されています。その海綿状変化はU-fiberにアクセントを持って見られ、DWI高信号と対応すると考えられています。
封入体は円型でエオジン好姓を示し、HE染色でも観察できます。疾患名と異なり神経細胞だけでなくグリア細胞やシュワン細胞でも様々な頻度で検出されます。電子顕微鏡では封入体は錯綜する線維性および顆粒状構造物の集簇からなり、限界膜は持たないようです。封入体は、抗ユビキチン抗体が一般的に用いられて、陽性になります。
核内封入体が神経細胞主体に観察される幼児・若年型に対して、成人型ではグリア細胞主体に核内封入体が認められる傾向があるようです。
急性発作を呈する場合があるようですね。
臨床神経 2016;56:439-443ではataxiaを繰り返した症例が報告されていますが、同報告を含めて4例の急性発作が報告され、うち2例は脱力発作、2例はataxiaの報告だそうです。
DWI高信号はスポンジ状の変化と関連するようだという報告がありました。
Pathological background of subcortical hyperintensities on diffusion-weighted images in a case of neuronal intranuclear inclusion disease.
Yokoi S, et al. Clin Neuropathol. 2016 Nov/Dec.
プリオン病に似たような変化を画像で拾っているのでしょうか。皮質と白質の違いはありますが。
いずれにしても興味深いと思われます。
不思議な病気ですよね。TIAと間違えないように知識を入れておく必要が有ります。早く原因が判明すると良いですが。
TIAの重要な鑑別、として、今後は教科書にも載ってくるかもしれませんね。また気が付いたことがあったらコメントいれます。