日本脳炎(Japanese encephalitis; JE) 診断

寄稿原稿です:thanks a lot by 管理人

はじめに
日本脳炎(Japanese encephalitis; JE)は極東から東南アジア・南アジアにかけて広く分布しているが、日本では、1966 年の2,017人をピークに減少し、1992年以降発生数は毎年10人以下。
しかし、若年層と高齢者層では抗体保有率が下がっており、夏季の流行地(西日本)における脳炎患者については特に注意する必要がある。

病態・疫学
フラビウイルス科に属するJE virus感染しておこるが、感染してもJEを発病するのは100-1,000人に1人程度であり、大多数は無症状に終わる。(フラビウイルス科は、日本脳炎ウイルス,デングウイルス,ウエストナイルウイルスなど,全世界で公衆衛生学的問題となる感染症を起こす病原体を多く含む)
日本などの温帯では水田で発生するコガタアカイエカが媒介し、ヒトからヒトへの感染はなく、増幅動物(ブタ)の体内でいったん増えて血液中に出てきたウイルスを、蚊が吸血し、その上でヒトを刺した時に感染する。
潜伏期は6-16 日間。
JE virusは塩基配列により、5つの遺伝子型(I型からV型)があり、一般的に抗体価の検査を行うJaGAr株、中山株、北京株は全てIII型に属する株である。

疫学
年間発症率、ブタの抗体保有状況等は、国立感染症研究所(NIID)の感染症発生動向調査(IDWR)が参考になる(http://www.nih.go.jp/niid/ja/idwr.html)、PDF:疫学情報への到達方法詳細のまとめ

症状
典型的な症例では、数日間の高い発熱(38-40度あるいはそれ以上)、頭痛、悪心、嘔吐、眩暈などで発病する。これらに引き続き急激に、項部硬直、光線過敏、種々の段階の意識障害とともに、神経系障害を示唆する症状、すなわち筋強直、脳神経症状、不随意運動、振戦、麻痺、病的反射などが現れる。

検査

    末梢血:血白血球の軽度の上昇がみられる。RT-PCRと中和抗体については下記。
    尿:急性期には尿路系症状がよくみられ、無菌性膿尿、顕微鏡的血尿、蛋白尿などを伴うことがある。
    髄液:髄液細胞数は初期には多核球優位、その後リンパ球優位となり10-500程度に上昇することが多い。1,000以上になることは稀である。蛋白は50-100mg/dl 程度の軽度の上昇がみられる。RT-PCRと中和抗体については下記。
    MRI:視床,黒質,大脳基底核,橋,小脳などで T2FLAIR で異常信号が認められることが報告されている(この疾患も同様の病変分布を取り、鑑別に重要かもしれません)。なかでも両側性の視床病変は日本脳炎に特徴的で臨側頭葉病変を主座とするヘルペス脳炎と鑑別するうえで重要である[このサイトも参考になりそうです]。


臨床画像 Vol.28, No.4増刊号, 2012より抜粋しました。これほど、広範な病変でなく視床などに限局している場合もあります。

診断
夏季の流行地(西日本)における脳炎患者については特に注意する必要があります。
四類感染症、診断した場合には、診断した医師が、最寄りの保健所に届け出てください。
海外渡航歴のある患者については西ナイルウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルス感染も考慮する必要があります。

検査方法 検査材料
分離・同定による病原体の検出 血液、髄液
PCR法による病原体の遺伝子の検出
IgM抗体の検出 血清、髄液
中和試験又は赤血球凝集阻止法又は補体結合反応による抗体の検出
(ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇)
血清

1.RT-PCRについて
第7病日までの死亡例の脳組織から、ウイルス分離、RT-PCR による遺伝子の検出が可能である。しかし、発病初期の血液・髄液からのウイルス分離は、稀に成功することがある程度である。
2.中和抗体について
1) CF法 (補体結合法)
HI法に比べ感度が悪いためメリットは特になし
2) HI法 (赤血球凝集抑制試験)
トリ(ガチョウあるいはヒヨコ)の血球と血清を混ぜて、トリの血球凝集抑制の程度を見て、血清中の抗体価を測定する。2-メルカプトエタノール(ME)処理した場合と処理しない場合とで抗体価を比較し、2ME処理した場合の抗体価が処理しない場合の抗体価に比べ低くなっていれば、IgM抗体が存在すると考えられる。結果が出るまで1週間弱かかる。
3) IgM ELISA法
メリット:日本脳炎ウイルスに対するIgM抗体を検出する方法で、1〜2日で結果が出るという点が最大の長所
デメリット:交差反応による偽陽性の可能性あり。他のフラビウイルス(デングウイルスやジカウイルスなど)感染でも上昇する。
4) 中和試験法
メリット:最も特異性が高い検査。
デメリット:急性期と回復期のペア血清で行う必要がある。結果が出るまでに時間がかかる(最低でも1週間程度)。急性期と回復期の血清とで比較して回復期で抗体価が上がっている(4倍以上)ことで診断するので、急性期の診断には使うことができない。

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