EBウイルス(EBV)に関連した神経疾患 診断

はじめに
EBVは、Human herpesvirus 4(γヘルペスウイルス)に分類される直線状二本鎖DNAウイルス(105×10^6Da)で、ゲノムterminal repeatの繰り返しの回数はウイルスごとに異なっているため、臨床的には、この違いを利用してEBVのclonalityの有無を判定することができます。
内科的には伝染性単核症以外に、悪性リンパ腫や慢性活動性EBウイルス感染症など、神経内科では脳炎、末梢神経障害、NMOの発症、血球貪食性リンパ組織球症の治療などで登場することが多いと思われます。多くの日本人は既感染ですので、再活性化が成人の病態に関与しています。宿主内(B細胞が好きなようです)では、潜伏感染か溶解感染かの形をとります。

    潜伏感染:限られた遺伝子のみを発現。latency type 0-3に分類されることが多く、それぞれウィルス遺伝子や蛋白に違いがあるためマーカーにも用いられます(下図)
    溶解感染:ウイルスの全ての遺伝子を発現、強力なウイルスDNA合成によって子孫ウイルスを産生

EBV再活性化について
潜伏感染から溶解感染へ切り替わることを再活性化といいますが、再活性化の病態については不明な点も多いようです。EBVは再活性化するとエピソームが開裂して線状になり、感染力のあるウイルス粒子として細胞外に放出されますが(lytic/replicative phase)、このとき100種類以上の遺伝子とその産物を産生します。
ebv

refより抜粋

EBV関連神経疾患

昔からEBVが原因あるいはEBVが発症に関与したと考えられている神経疾患が多くあります。特殊な病態としては、CAEBVやEBV-HLHに関連する神経障害も多彩な神経症状を引き起こします。以下のようなものが代表的と思われます。

    髄膜炎:髄液VCA-IgGの上昇は感度/特異度が高くないためPCR検査が重要です。PCRも偽陽性の問題がつきまといますが、、、
    脳炎や脳症HSV脳炎類似、嗜眠性脳炎、ADEMなど多様な病型の報告があります
    小脳炎:造影MRIで小脳髄膜に異常な増強効果を認めることがあります
    脊髄炎、神経根炎:稀ですが幾つか報告があります
    末梢神経障害Guillain-Barre症候群の原因になりますし、CIDP類似、多発単神経炎(血管炎? リンパ増殖性? 自己免疫性?)、顔面神経麻痺などの脳神経麻痺の報告もあります。
    NMO:血清抗EA-IgG抗体価と抗AQP-4抗体価の相関の報告がありまして、一部で再発時への関与が疑われています
    MTX-LPD:病変が神経系に分布する場合
    PTLD:移植後リンパ増殖症(post-transplant lymphoproliferative disorder)は、免疫抑制による細胞障害性T細胞の機能障害に関連した、EBV感染B細胞の増殖です。腎移植後の報告が多いかと思います。皮質下白質や基底核に多発する病変の報告などがあります。
    悪性リンパ腫:Burkittリンパ腫、EBV陽性びまん性大細胞型Bリンパ腫、混合細胞型古典的Hodgkinリンパ腫

明確な区別は困難ですが、神経障害発症のメカニズムとして以下の3つが代表的です

    EBV初感染や再活性化:神経組織へのウイルスの直接浸潤
    自己免疫的機序:EBV感染リンパ球や反応性のリンパ球の浸潤、抗原抗体複合体の沈着
    EBV感染細胞の腫瘍性増殖:腫瘍性病変の浸潤、圧迫

検査
 血液/髄液検査:EBVの抗体は複数あって難しいのですが、EBNA、VCA-IgG、VCA-IgM、EA-IgGの4種類は提出が必要かと思われます。特に再活性化はEA-IgG(EA-DR IgGともいう)の上昇が見られることが多いと思います[参考サイト]。
 組織検査:リンパ節生検などにより、免疫染色やISHでEBVに関連した蛋白や遺伝子を検索し、latency typeの分類にも役立ちます
 PCR:血清、髄液、採取組織などからEBV遺伝子を検出します

EBVの抗体
ウイルスカプシド抗原(Viral Capsid Antigen:VCA)、早期抗原(Early Antigen-Diffuse and Restrict complex:EA-DR)、EBV核内抗原(EBV Nuclear Antigen:EBNA)が良く測定されます。これらは、IgG、IgA、IgMクラスが存在して、一部はサブクラス別の測定可能です。感染stageによる違いは>[参考サイト]

もう少しマニアックな話
EBVは唾液などを介して咽頭、扁頭より侵入してB 細胞に直接感染する。EBVはB細胞に感染後、核内に潜伏し、B細胞を形質転換し、芽球化・増殖させる作用があります。芽球化/増殖したEBV感染B細胞はNK細胞、EBV 特異的細胞障害性T細胞などにより排除されます。その後、芽球化したB細胞の一部はメモリーB細胞へと分化、潜伏感染を維持するようです。
EBVの初感染は、小児の場合多くは不顕性感染、もしくは軽微な非特異的上気道感染症に終わりますが、時に伝染性単核症に進展します。EBVはほとんどの健常人に潜伏/持続感染をしていて、時に再活性化しますが、細胞性免疫能が正常であれば通常臨床症状を示すことはありません。
AIDSや移植時など、細胞性免疫が損なわれた状態では、メモリーB細胞に感染していたEBVが再活性化して、細胞が再び芽球化します。また、EBVはBurkittリンパ腫、EBV陽性びまん性大細胞型Bリンパ腫、混合細胞型古典的Hodgkinリンパ腫などのB細胞腫瘍にも潜伏感染していることから、これらの腫瘍において発がんとの関連が示唆されています。
EBVは、一部の宿主においては、B細胞ではなくTあるいはNK細胞に感染し、増殖を誘発することにより、慢性活動性EBV 感染症(chronic active EBV infection:CAEBV)やEBV 関連血球貪食性リンパ組織球症(EBV-associated hemophagocytic lymphohistiocytosis:EBV-HLH)などを引き起こします(EBV 関連T/NKリンパ増殖性疾患)。CAEBVおよびEBV-HLHは圧倒的に日本を含めた極東からの報告が多く、民族集積性があるため、これらの疾患になんらかの遺伝的背景が存在しうることが示唆されています。

EBV-HLH
血球貪食症候群(hemophagocytotic Syndrome:HPS)や血球貪食リンパ組織球症(hemophagocytotic lymphohistiocytosis:HLH)などの用語がよく使用されます。HLHは、ウィルス感染、膠原病、悪性腫瘍などに続発しますが、ウィルス感染では約7割はヘルペスウイルスによるもので、さらにその約8割はEBV-HLHと言われています。また、ウイルス感染細胞のクローナルな増殖が示されているのはEBV-HLHのみのようです。
EBV-HLHの病態は、EBVのT細胞(主にCD8陽性細胞)への持続感染により、活性化T細胞から産生されるIFN-γ、TNF-α、IL-2などのサイトカインが組織球を活性化し、血球貪食が引き起こされるというものです。発症様式としては、以下のようなものが代表的です。

    伝染性単核症が急速に進行して発症
    CAEBVの経過中に発症
    EBV陽性T/NK細胞リンパ腫の経過中に発症

EBV-HLHは、症状のみでは重症伝染性単核症と区別が難しい場合がありますが、感染細胞の検討やサイトカインプロファイリングで鑑別できることもあるようです。EBV-HLHでは、CAEBVとは違ってIL-1αの遺伝子多型が発症に関連するとの報告があります。EBV-HLHの診断では、まずHLHの診断基準を満たして、かつEBVの関与を示す必要がありますが、約2/3の症例では抗体価のみでは確定できないため、末梢血液中のEBV定量PCRが必要です。

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