はじめに
神経内科では、血管炎、腫瘍性、肉芽腫性、血栓性疾患でこのタイプの末梢神経障害を経験することが多いかと思います。
体の別の部位にある2本以上の末梢神経に同時に機能不全が起こる病気です。多発「単」神経障害では、通常、体の別々の領域にある2-3本の神経だけが障害され、障害神経支配領域の筋力低下、感覚障害が出現します。
これに対して、多発神経障害(polyneuropathy)では体の両側のほぼ同じ領域にある多数の神経が障害されます。しかし、多発単神経炎が多数の神経に生じている場合は、多発神経障害と同様にglove and stocking型の感覚障害に見えることもあることから、区別が困難なことがあります。
その場合でも細かく診察すると左右差や神経差が検出できることもありますし、末梢神経伝導速度検査の所見を吟味することで障害の神経差が見つかることもあります。
診察
多発単神経障害の診察では、感覚障害はデルマトームと一致しませんし、glove and stocking(length dependent)型にも「通常は」なりません(稀にはあります:上記)。このページにあるような、末梢神経の支配領域の分布に一致した感覚障害の分布を示しているかの確認が必要です。筋力低下も感覚障害から類推される障害末梢神経の支配筋のみに出現するはずです。
以下に原因疾患を示しますが、局所的な痛みの有無、皮疹を懸命に探す、凝固異常の有無、リンパ節腫大は?など全身をくまなく診察することが重要です。
多発単神経炎の原因疾患
- 血管炎:Churg-Strauss症候群(EGPA)、non systemic vasculitic neuropathy、クリオグロブリン血症、結節性多発動脈炎、SLE、シェーグレン症候群、関節リウマチなど
腫瘍性:傍腫瘍性及び浸潤性、双方のメカニズムがあります。肺癌、悪性リンパ腫などの血液系腫瘍でよく見られます
血栓性 or 血管性:APS、Livedo、Protein C/S欠損症など
肉芽腫性:サルコイドーシス、ウェゲナー肉芽腫症
血液疾患:NK cell lymphocytosis、アミロイドーシス、MGUS/MM(非常に稀:通常はpolyneuropathy)
感染症:結核、ライム病、HIV感染症、EBV、ハンセン病など
遺伝性:HNPP
代謝性:糖尿病(稀:通常はpolyneuropathy)
薬剤性:見逃されがちですが、ミノマイシンを始め血管炎を続発する薬剤がいくつかあります
自己免疫性:MMN、MADSAM(特殊な病態のため多発単神経障害には含まないことが多い印象があります)
refより抜粋