脳空気塞栓症(cerebral air embolism) 診断

はじめに
最近では、中心静脈カテーテルの損傷、座位で引き抜くなどでの報告が多いかと思います。動脈に侵入した空気が脳梗塞のように脳動脈を多発性に閉塞する場合(動脈系)、静脈に空気が入り、侵入した空気が逆行性に脳静脈に侵入してうっ血を起こす場合(静脈系)、があるかと思います。
稀な疾患ですが、時に重篤な症状をきたしますし、この疾患の特徴を知らないと見逃されることもあることから、病態の理解は重要です。

原因

    手術:脳外科/耳鼻科/整形外科/心臓血管外科/婦人科など
    静脈へのカテーテル挿入
    胸腔ドレーン:IPなどの変化が強い場合
    放射線手技:造影剤注入や関節造影など
    外傷
    陽圧換気
    減圧症

症状
閉塞血管により様々ですが、意識障害、巣症状、痙攣発作など

検査

    脳CT:小さな気泡は瞬時に吸収されます。発症後速やかに施行し、点状に真っ黒に抜ける空気塞栓サインを見逃さないことが重要です。一つでも発見することが確定診断につながります。
    脳MRI:急性期は脳梗塞と異なり、しばしば痙攣発作による画像所見と類似したDWI皮質高信号を認めます。亜急性期は、白質FLAIR高信号、皮質T1WI高信号(laminar necrosis?)、Hyperperfusionなどの報告があります



急性期脳空気塞栓症の画像所見[ref]。上段脳CT:点状の黒く抜ける異常陰影が皮質に沿って見られます。軟膜動脈でしょうか?このような点状のサインは脳実質内(白質など)に出現することも多いです。見逃さないように!!!
下段脳MRI(DWI):急性期は皮質優位にDWI高信号が見られることが多いです。

病態
空気が血管を閉塞させるのですから、脳梗塞と同様の病態が引き起こされるはずです。しかしながら、画像所見は全くことなります。皮質の画像所見は、蘇生後脳症痙攣発作に類似します。
単なる血管閉塞による低酸素/低グルコースによる病態のみならず、gas bubbleと血管内皮細胞のinteraction(凝固系や補体・キニンを含む様々な血漿蛋白が活性化、凝固活性の亢進、多核球の活性化と接着)などが併発する病態であろうと類推されています。

治療
高圧酸素療法(Hyperbaric oxygen: HBO)
特に動脈系の塞栓をきたした重症例で考慮されます。発症数時間以内に導入が望まれます。一方で、HBOには無治療の気胸など禁忌が存在しますので、施行前に確認下さい。

HBO禁忌

    気胸(未治療)
    眼科治療・術後(網膜はく離などで眼内ガスC3F8、SF6を使用した場合)
    未熟児(満期新生児は治療可能)
    妊娠(緊急の場合は治療)

注意すべき薬剤

    塩酸ドキソルビジン(アドリアマイシンなど):抗癌剤
    シス-ジアミンジクロロ白金(シスプラチンなど):抗癌剤
    二酸化テトラエチルチウラム(ジスルフィラムなど):禁酒剤

相対的禁忌:禁忌ではないですが、risk-benefitを換算してください

    ブレブ、ブラ
    COPD
    上気道/副鼻腔感染
    最近の耳や胸部の手術
    制御できていない発熱

コメントを残す