好気性運動負荷試験 方法

目的
好気性負荷試験(aerobic exercise test)は、ミトコンドリア内膜電子伝達系のNADH oxidationの障害を調べる検査で、具体的にはKSS、MELAS、MERRFなどのミトコンドリア病の検索の目的で行われます

背景
ミトコンドリア内膜電子伝達系に障害があっても、嫌気性解糖から乳酸生成までは異常なく行えます。しかしながら、乳酸から電子伝達系によるATP産生が行えないため、乳酸及びそれと平衡状態にあるピルビン酸が蓄積・増加することとなります。
乳酸、ピルビン酸の蓄積、増加はミトコンドリア病では恒常的に認められることもありますが、多くの疾患では飢餓・運動などの負荷がかかった状況ではじめて認められることが多く、そのため本テストをするまでは乳酸・ピルビン酸の基礎値が正常でも安心できません。

準備
エルゴメーター、乳酸・ピルビン酸測定用除蛋白液入りスピッツ6本、CK測定用スピッツ3本、ヘパリン生食入りシリンジ、採血用シリンジ6本、太いサーフロー針、延長チューブ、駆血帯、三方活栓

方法
1.何度か採血が必要ですので、肘などの太い静脈に、太目のサーフロー針を留置して、サーフローに三方活栓をじかに付け、三方活栓に延長チューブをつけて、ヘパ生で満たし、いつでも採血ができるようにします。ここで、運動前の基礎値用の採血をします(満たされたヘパ生を捨ててから採血)。
2.準備が完了したら、エルゴメーターを15ワットにあわせます。患者さんに、「ペダルはゆっくり踏めば重く、軽く踏めば軽い」ことを説明し、その後15分間の運動を行ってもらいます。
3.以下の表に示した時間に、それぞれ採血をしてください。この場合、なるべく駆血はしないでください、強い駆血は嫌気性負荷を掛けることになってしまいます。採血後は当たり前ですが、凝血しないようにヘパ生で満たします。
4.採血後、乳酸、ピルビン酸スピッツは、除蛋白液と十分に混和させることが肝要です。
5.血清CKは、運動前と運動終了時(15分後)に測定することもありますが、必ずしも必要はありません。

乳酸 ピルビン酸
  (9-16 mg/dl) (0.3-0.6)
運動前    
運動開始5分後    
運動開始10分後    
運動開始15分後(運動終了)    
運動開始20分後(運動終了10分後)    
運動開始30分後(運動終了20分後)  

結果の判定
正常では、乳酸・ピルビン酸はこの程度の運動で殆ど上昇しません。
ミトコンドリア異常では、運動開始10-20分後あたりをピークに、少なくとも運動前の値の2倍以上は上昇します

4 Responses to 好気性運動負荷試験 方法

  1. くり より:

    いつもHPみて勉強させて頂いております.都内で神経内科医をしているものです.
    かなり以前の記載に突然恐縮ですが,ご質問がありコメントさせて頂きました.
    現在勤務している病院でも慣習的に15ワットで15分間のプロトコールで検査行なっていますが,出典を探しています.
    ご存知あれば教えて頂ければ幸いです.

  2. Bill and Ben より:

    コメントありがとうございます。このページの情報は、以前、神経内科医が記載した日本語の学術誌を参考にしたものになります。最近では、このテストを行うことは少なくなってきましたが、、、ミトコンドリア病の論文では骨格筋のNADH oxidationの障害を指し示すために、同様の負荷のテストを行ってる論文をまだまだ見かけますね。
    参考にした学術誌には正常の方のグラフなども記載されていましたが、なにぶん昔の学術誌なので特異度、感度を示してはいませんでした。英文誌での報告は私は知らないのですが、以下の論文にも、感度、特異度の問題点を指摘されてしまってますね。
    http://www.bcmj.org/articles/diagnosis-and-management-patients-mitochondrial-disease

  3. くり より:

    お忙しい中さっそくありがとうございます.
    ミトコンドリア病でない人でも乳酸値があがってしまい解釈に困る症例が続いていて,検査特性を検討していました.
    英文だと以下のようなオーストリアのグループからの論文ばかりで30Wでやっていたのですが,当院でも15Wでやっていたので,その学術誌などを参考に日本では慣習的に15Wでやっている施設が多いのかもしれませんね.
    とても勉強になりました.本当にありがとうございました.
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11858534

  4. Bill and Ben より:

    ありがとうございます。Can J Neurol Sciは、カナダの臨床神経みたいな立ち位置の論文ですね。
    是非、キチンとしたプロトコールと日本人母集団で検討いただき、先生の後輩が同様の問題を感じることないよう、適切なcut offが設定出来るよう頑張っていただけると嬉しいです!
    管理人

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