Bill and Ben

SESA症候群(subacute encephalopathy with seizures in alcoholics)

はじめに
未だ明確な基準は作られていませんが、アルコール依存症歴のある症例で見られる亜急性の脳症で、意識障害、認知機能障害、可逆性の運動障害、部分発作から痙攣重積発作などの症状をきたします。禁酒数日後あるいは禁酒とは関係なくみられる病態で、禁酒1-3日後にみられる巣症状のない全般発作であるアルコール離脱とは異なると考えられています。
重積状態のない状態では、focal NCSE(non-convulsive status epilepticus )が病態と考えられていますが、微小血管障害の合併も疑われています。
多くの症例では、大脳半球の片側に痙攣重積発作で見られるような、主には大脳半球(皮質から皮質下)や視床の高信号(DWI、T2、FLAIR)が見られ、一部は可逆性です。
脳波ではlateralized periodic discharges (LPDs)、同部位の脳血流の増加が見られることも多いことから、抗てんかん薬により治療が行われます。
しかしながら、病変側の大脳半球の萎縮が徐々に進行する予後の良くない場合も多くみられます。

脳内石灰化をきたす鑑別疾患

はじめに
脳CTを行なった際にしばしばみられる頭蓋内(脳内)石灰化病変ですが、脳実質あるいは血管へのカルシウム沈着により生じます。おそらくカルシウムを貪食した単球系細胞が沈着することにより生じるのだと思います。
多くは無症候で、加齢によっても基底核(淡蒼球が多い)や松果体、脈絡叢には生理的に沈着(Physiologic/Age-Related Intracranial Calcifications)します。
その他、脳腫瘍や感染症では非対称性の石灰化を来しますが、神経内科医がしばしば鑑別を行う対称性の石灰化は以下のような原因をまずは把握しておきましょう。
その他の疾患も含めて、この総説(J Radiol Case Rep. 2019; 13: 1?18.)はとても参考になります。

脳室周囲石灰化

  • HDLS:脳室周囲や脳梁の細かな石灰化
  • TORCH症候群
  • 結節性硬化症
  • Krabbe病:内包や放線冠
  • Sturge Weber症候群:Tram track appearance, double-lined gyriform pattern
  • 甲状腺機能低下症

基底核に石灰化

その他

非腫瘍性中脳水道狭窄症(LIAS、LAMO、LOVA)

はじめに
特に高齢者では、認知機能障害、失調症状、尿失禁などの症状で脳MRIを撮像した時に脳室の拡大が検出されると、症状も合わせて特発性正常圧水頭症をまず考えると思います。ですが、特発性正常圧水頭症の割に脳室拡大が強く、というよりも第三脳室や中脳水道上部も拡大していて、シルビウス裂もそれほど開いていない。。。正常圧であっても特発性正常圧水頭症ではなく、中脳水道が狭窄していることによる水頭症であろうと考えることが出来れば、この疾患に辿り着くと思います。
特発性正常圧水頭症と本疾患は、治療法が異なりますので鑑別が非常に重要です。一部は遺伝性で1歳児に好発するなど小児科疾患でもありますが、神経内科では、思春期以降で発症する場合が多いかと思います。

原因
とにかく中脳水道が狭窄あるいは閉塞することが根本的な原因です。閉塞様式としては、arachnoid websだったりadhesions(上髄帆の癒着)だったりと、画像的には表現されます。

  • 遺伝性
  • 特発性
  • 出血後
  • 感染後

症状
若年では、頭痛などの症状が多いですが、晩年に発症するタイプは正常圧水頭症様の症状(認知機能障害、失調症状、尿失禁)を呈することが多い様です。

名称と分類
中脳水道橋作症は状況によって以下の様な病名が良く使用されます

  • Late onset idiopathic aqueductal stenosis(LIAS):晩発性に中脳水道狭窄をきたした病態
  • Late onset aqueductal membranous occlusion(LAMO):arachnoid websによる狭窄(先天性も後天性もある)
  • Longstanding overt ventriculomegaly in adults(LOVA):先天的な中脳水道閉塞で、大人になってから発症する水頭症
臨床神経 2011;51:590-594より抜粋。上段のMRIでは、側脳室、第三脳室の拡大は強いですが、第四脳室の拡大はなく、中脳水道の狭窄が疑われます。下段のFIESTA画像では中脳水道の下部に膜様の構造物がみられ、中脳水道の近位部が確証しています。第四脳室も拡大が見られる場合には、Blake’s pouch cystなど他の疾患を考えていきます。

治療
狭窄している中脳水道の形成が難しい場合は、ETVが行われることが多くなってきました。

  • 第三脳室開窓術(endoscopic third ventriculostomy、ETV)
  • 中脳水道形成術(endosopic aqueductoplasty)
  • 脳室-腹腔短絡術 (V-P shunt)
第三脳室開窓術(endoscopic third ventriculostomy、ETV)のイメージ図

頭頂葉てんかん(Parietal lobe seizures)

はじめに
頭頂葉に焦点を持つてんかんは、知覚異常発作として1863年にJacksonによって記載されています。頭頂葉の体性感覚野は3つに大別されますが、頻度が多いのは中心後回にある一次感覚野由来の発作です。
知覚症状を主体とする一側性の症状の時に疑いますが、顔面は両側性支配ですので、症状も両側に見られることもあります。また、焦点が二次感覚野にある場合は、四肢から体幹でも両側性の発作や、同側性の発作を示すことがあるので注意が必要です。
さらに拡散すれば、強直発作、間代発作に進展します。

症状
以下の様な発作が有名です。

  • 体性感覚発作
    うずきやしびれなどを伴った知覚鈍麻です。時に皮下に何かが這う様な感じを訴えることもあります。通常は顔面や四肢の一部から始まって、次第に体全体に広がっていきます。多くは末梢から中枢の方向に広がります。
    対側の中心後回または二次感覚野由来と考えられます。
  • 疼痛発作
    痛みの性状は明瞭(刺し込む様な、押し込む様な、激しい、尋常でない)で持続時間は短く、部位も限局していて、手の指、顔面、下肢の順です。
    対側の中心後回由来と考えらえれています。
  • 身体図式(bodyimage)の障害
    劣位半球の3次感覚野に原因が想定ていますが、比較的まれな症状です。 体が空中に浮いている、ねじれている、体がバラバラになっているなどと表現されるます。体が変形している感じ、四肢の一部が伸びたり縮んだり、膨張/収縮する感覚が認められます

Sjogren (シェーグレン)症候群 脊髄症(ミエロパチー)

はじめに
SjS患者の20-35%において脊髄病変の合併が報告されるなど、比較的頻度は高いようですが、病型は急性または慢性進行性の経過が多い様です。典型的には、LETM(longitudinally extensive transverse myelitis lesions)で頸髄〜胸髄に好発しますので、NMOSDによる脊髄症との異動が問題になります。
実際にNMOSDの2%で症候性のSjSを合併して、16%でSS-A/SS-BなどSjSに関連した抗体が検出されます。

Brachial plexopathy(BP):腕神経叢障害

はじめに
腕神経叢とは、C5からT1にかけての神経根からの末梢神経からなる神経叢で、trunks、divisions、cords、branches、nervesに分けられます。上肢/上肢帯の障害筋をしっかり同定して、神経根症や多発単神経障害などとの鑑別が必要になります。

BPの原因疾患

  • 外傷性
    成人:高エネルギー外傷(引き抜き損傷(自転車など))
    新生児:分娩時の損傷
  • 胸郭出口症候群(Neurogenic thoracic outlet syndrome)
  • 炎症性
  • 神経痛性筋萎縮症(Neuralgic Amyotrophy; NA)
  • 遺伝性:SEPT9遺伝子、HNPP
  • Idiopathic hypertrophic brachial neuritis:CIDP, MMN
  • 腫瘍性
    原発性 (neurofibroma, Schwanomma)
    転移性 (肺癌、乳癌、メラノーマ、悪性リンパ腫など)
  • 放射線性(radiation-induced) :乳癌、肺癌に対する放射線療法
  • 糖尿病性(diabetic-related BP)
  • 医原性

神経痛性筋萎縮症(Neuralgic Amyotrophy; NA)

はじめに
主に上位腕神経叢を含む急性・有痛性神経障害として1918年より報告されている疾患で、Parsonage-Turner症候群、brachial plexus neuritis、idiopathic brachial neuritisなど様々な名称が使われてきました。孤発性の疾患ですが、最近では、SEPT9遺伝子変異が関連したHereditary NA (HNA)の報告もなされています。
45-53%で何らかの誘因があって、数時間〜1ヶ月後にNAを発症(52%は1週間以内)します。外傷、心理的ストレス、運動、外科手術、妊娠/出産、ワクチン、感染症 などです。

病態
何らかの誘因や遺伝的素因はあるものの病態は不明です。しかしながら、画像の進歩により2000年ぐらいから以下の様な多発する神経の収縮や捻転が検出される様になってきました。以前から、NAはbrachial plexusに病変の主体があると考えられてきましたが、plexusのみの障害では説明できない様な筋力低下の分布を取ることが知られていました。現在では、plexusの神経幹やそれ以遠の神経も含んだ多発単神経障害と考えられる様になっています。病態解明や新たな治療に向けたパラダイムシフトが起こりつつあります。

J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2020 Jun 2;jnnp-2020-323164.

症状
なぜか利き手側に多い、非対称性の疼痛と上肢の筋力低下、筋萎縮です。ただし、腰仙神経叢や脳神経系などの腕神経叢支配領域以外の筋力低下が合併することもあります。
Painful phase:90%が急性発症のの疼痛で発症する、典型的には肩帯(肩甲骨・鎖骨)を含んだ領域に生じる重度の堪え難い神経性疼痛が続きます
Phase of weakness/amyotrophy&sensory complaint:急性疼痛に引き続き筋力低下(近位筋障害の頻度が高い)出現して、筋萎縮は通常2-6週で出現します。
Recovery phase:75%は6ヶ月〜3年で回復しますが、後遺症が残ることも良くあります

検査

血液検査:特異的所見はありませんが、抗ガングリオシド抗体陽性例の報告はあります。両側性の症状や肝機能障害がある場合はE型肝炎ウィルスの検査を行いましょう
MRI:近位型では罹患側の神経根〜神経幹にかけてSTIR異常信号が見られることがありますが、遠位型NAでは共通するMRI異常所見は少ない様です。
末梢神経MRI:多発するconstrictionの部位を同定します(multiple hour-glass [砂時計] like constrictions)
神経超音波:constrictionの部位を同定します
針筋電図:脱神経所見の有無で障害分布を特定します
NCS:多くは運動神経の軸索障害で、感覚神経に異常は見られないことが多い様です。稀にCBを検出した報告もあります

末梢神経に多発するconstrictionを認めます。J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2020 Jun 2;jnnp-2020-323164.

治療
A. 外科的治療
絞扼部位があれば考慮します。neurolysisや神経移植など
B. 薬物療法
発症1ヶ月以内であれば、2週間のステロイド内服は疼痛持続期間と一年後の回復を改善することが示されています。IVIgなどを用いた報告もあります。
また、神経障害性疼痛の治療を行っても良いかもしれません。

J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2020 Jun 2;jnnp-2020-323164.

全身性硬化症(強皮症)(Systemic Sclerosis)

全身性強皮症(SSc)は皮膚および各種臓器の線維化と血管内皮細胞増生による血流循環障害を特徴とする疾患です。典型的な症状を示す「びまん皮膚硬化(diffuse)型全身性強皮症」と「限局皮膚硬化(limited)型全身性強皮症」の2つに分けることが多い様に思います。

2004年全身性強皮症診療ガイドライン

限局皮膚硬化型全身性強皮症(lcSSc)の中で皮下石灰化(Calcification)、レイノー現象(Raynaud’s phenomenon)、食道病変(Esophageal involvement)、末端皮膚硬化(Sclerodactyly)、毛細血管拡張(Telangiectasia)を伴う場合にCREST症候群と呼びます。

強皮症と神経合併症
多彩な神経症状を合併しますが、頻度の高いのもののみ記載します

末梢神経系:末梢神経障害、CTS、脳神経麻痺(三叉神経が多い)、神経根症
中枢神経系:頭痛、認知機能障害、てんかん、脳血管障害、うつ症状、基底核の石灰化
その他:ミオパチー、傍脊柱筋のミオパチー、TGA、血管炎によるもの

強皮症と末梢神経障害
強皮症は末梢神経障害の原因としては稀です。多発単神経障害あるいはsensory motor neuropathyの報告など一貫しないため、以下の様な病態が類推されている様に思います。治療やステロイドや免疫抑制剤が重症例では用いられています。強皮症にステロイド使用するときには、腎クリーゼの病態も頭の片隅においておきましょう。

  1. 血管炎:CREST症候群およびシェーグレン症候群を伴う全身性硬化症の患者は、血管炎を発症するリスクが高い
  2. endoneuriumやperineuriumのコラーゲン線維の増加:コラーゲン組織の異常な産生による有髄線維の圧迫によって引き起こされるとする論文はいくつかあります
  3. 石灰化沈着に伴う単神経障害

Foreign accent syndrome (FAS)、外国人様アクセント症候群

はじめに
Monrad-Krohnが1947年に報告したノルウェーの女性例が有名で、同じ母国語を使用する第三者が「外国語のようだ」という違和感を持つような発語障害を特徴とした症候群です。プロソディー(音声の韻律的な特徴で、高さ、強さ、速度、アクセントなど)の異常が目立つ状態ですが、語彙や文法機能はほぼ正常に保たれます。
日本人の報告例では、多くは韓国語、中国語、英語へ変化しています。

原因

  1. 器質疾患によるもの(neurogenic FAS):原因疾患として脳血管障害が最多。頭部外傷、脳腫瘍、神経変性疾患(FTD、PNFA)、多発性硬化症、脳炎など。病巣部位としては左大脳半球が67例と最多ですが、基底核や皮質下、さらに右半球や小脳、脳幹の報告もみられます
  2. 学習障害によるもの(developmental FAS
  3. 精神疾患によるもの(psychogenic FAS):解離性障害、統合失調症、難治性脅迫障害、双極性障害など

脳卒中後精神病(Poststroke psychosis)

はじめに
本邦では脳卒中後のうつ症状に関心が集中しているためpoststroke depressionという言葉が良く用いられています。
脳卒中に伴う精神症状は、患者全体の33%が併発するとも言われていて、QOLに支障をきたす症状です。病変部位との関連は以下の様に報告されています [Stangeland H, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry 2018;8:879-885.]。
右半球が40.2%、左半球が7.2%、両側3.4%と右に多い。
右前頭葉が11.4%、右側頭葉が9.8%、右頭頂葉が15.2%
右尾状核が5.3%
脳幹梗塞でも報告されています。

症状
気分障害:うつ、アパシー
せん妄症状
統合失調症様症状

治療
症状が疑われた場合はなるべく早く治療を開始して、症状改善後はなるべく早く薬物治療を中止しましょう

  1. リハビリテーション
  2. 運動やレジャー
  3. 薬物療法
    うつ症状に対して
    三環系抗うつ薬:ノリトレン、トラゾドン
    SSRI
    SNRI

    せん妄症状、統合失調症様症状に対して>こちら参考