Bill and Ben

振戦(tremor)診断

はじめに
振戦とは、体の一部に起こる不随意運動ですが、律動的で拮抗筋が交互に収縮するという特徴があります。この拮抗筋収縮の交互性を表面筋電図で示せれば証明できます。

分類
以下の4つに分けられますが、企図振戦、動作時振戦はオーバーラップすることがあります。

  安静時振戦(resting tremor)
  姿勢時振戦(postural tremor)
  企図振戦(intention tremor)
  動作時振戦(action tremor)

姿勢時振戦
例えば両上肢を前方に挙上して保持したり、肘を曲げて胸の前で両示指を付き合わせる様に保持させるなど、重力に抗する程度の姿勢で、よく見られます、。筋肉の長さを変えない収縮(等尺性収縮)による振戦です。上肢に多く、休息中や運動中はあまり見られません。
Hyperkinesies volitionnelles(意図動作時運動過多)という特殊な激しい振戦も、姿勢時振戦の1つの様です。
原因となりうる疾患:本態性振戦、生理的振戦、甲状腺機能亢進症、慢性アルコール中毒、Wilson病、尿毒症など

企図振戦
例えば、指鼻試験などで人指し指が目標に近ずいた時に見られる測定障害による小脳性の揺れが有名です。その他、何か運動をしようとすると実際に運動が始まる前から始まる企図・動作時ミオクローヌス、Charcotの記載した遅い姿勢時振戦が含まれる様です。

抗てんかん薬 副作用

抗てんかん薬は長期に内服することが多く、副作用の理解が重要です。薬剤により差はありますが、以下のような副作用が有名です。また、併用薬剤との相互作用も良く見られます。新世代の抗てんかん薬は大分、副作用が軽くなりました。

  1. 体質による副作用
    皮疹:Stevens-Johnson症候群、TEN、薬剤性過敏症症候群(DIHS)
    血球異常:汎血球減少
  2. 用量依存性副作用:血中濃度は測定しましょう
    中枢神経症状:めまい、ふらつき、認知機能障害、眼振、複視、眠気、精神症状
    消化器症状:悪心、嘔吐、下痢、便秘、肝機能障害
    その他:QT延長、発汗減少
  3. 長期服用に伴う副作用
    体重変化、多毛、脱毛、尿路結石、小脳萎縮(主にフェニトイン)、歯肉増殖(主にフェニトイン)、酵素誘導作用のある薬剤(下図)は、コレステロール値上昇、骨粗鬆症など。
酵素誘導作用のある抗てんかん薬による影響

薬剤誘発性サルコイドーシス(DISR:drug-induced sarcoidosis-like reactions) 

総説:1

薬剤により、サルコイドーシスに非常に類似した(病理学的にサルコイドーシスと区別の出来ない)肉芽腫が出現することがあります。特に、TNF-α阻害薬はサルコイドーシスの治療に用いられますが、不思議なことにTNF-α阻害薬により、サルコイド病変が出現することがあります。
最近の症例報告では、サルコイドーシスはアクネ菌感染が原因の1つと考えられていますが、DISRの病変にもアクネ菌に特異的な蛋白(Propionibacterium acnes抗体(PAB抗体))が検出されています。

症状と診断
最も重要なことは、以下の薬剤を開始数ヶ月から数年後に、サルコイドーシスを疑わせる症状が出現したかどうかです。症状や診断は、サルコイドーシスと同様です。

原因薬剤

  • 免疫チェックポイント阻害薬
  • TNF-α阻害薬
  • インターフェロンα及びβ
  • HAART(Highly active antiretroviral therapy)
  • BRAF阻害薬
  • その他、薬剤ではなく人工デバイスによるものも報告されています
総説より抜粋https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29698718

治療法

  1. 原因薬剤の中止
    まずは本疾患に気づき、いかに早く薬剤を中止出来るかが重要です。一方で、DISRの症状が軽微であり、元々の疾患の活動性を抑えるために原因薬剤の中止が難しければ、継続、あるいは、同種の他の薬剤に変更することもあります。
  2. 免疫療法
    確立した治療はありませんが、DISRの症状が強い場合、ステロイドパルス療法や免疫抑制剤治療が行われます。

パーキンソン病 排尿障害

パーキンソン病では、過活動性膀胱(OAB: overactive bladder)が多く見られます。まずは、パーキンソン病による排尿障害か否かを鑑別し、その後、治療を考慮します。こちらのページも参照下さい。

Neurourol Urodyn 35: 551-563, 2106

パーキンソン病治療ガイドライン 2018には以下のような回答がなされています

  1. 過活動膀胱には非薬物療法、ドパミン補充療法を行う
  2. 膀胱選択性(M3)の高い抗コリン薬(ベシケア、ウリトス、トビエース、トルテロジン)を考慮:口渇、認知機能障害などに注意
  3. 抗コリン薬の有効性が確認できない場合は、ミラベグロン(ベタニス:選択的β3アドレナリン受容体作動薬)
  4. 排尿困難(低緊張性膀胱)の場合:アドレナリン遮断薬ウラピジル(エブランチル)、その他、タムスロシン(ハルナール)、ナフトピジル

ニュープロパッチ外用薬 皮膚症状の対応

経皮吸収型製剤による刺激性接触皮膚炎なのかアレルギー性接触性皮膚炎なのか、まずは判断します。特に、以下のような特徴が見られるアレルギー性接触性皮膚炎は頻度は稀ですが、出現した場合は中止や皮膚科への相談が望まれます。

中止基準(アレルギー性接触性皮膚炎の特徴)

  1. 明らかな水泡/丘疹が見られる場合
  2. パッチのサイズよりも広範囲に炎症が見られる場合
  3. 時間とともに炎症(赤み、かゆみ)が酷くなる場合

刺激性接触皮膚炎の予防と対応

  1. スキンケアを行いながら治療継続
  2. ステロイド外用薬(かゆみを伴う場合は抗ヒスタミン剤)
  3. 軽快しない場合は休薬
  1. どのようなスキンケアを行う?
    貼付部位を毎日変更する
    剥がす際はゆっくり丁寧に
    貼る前に皮膚の健康状態を確認する
    入浴時は皮膚を傷めない優しい洗い方をする
    皮膚の乾燥を防ぐ(保湿剤は入浴直後など皮膚が潤っているときに使用する)
  2. ステロイド外用薬の選択
    経皮吸収型製剤使用時に見られる皮膚症状の治療にはStrongあるいはVery strongクラスの使用が基本となります、Strongestは効果は高いのですが、局所の副作用も生じやすいそうです。

後天性銅欠乏症(銅欠乏性脊髄神経障害)

銅欠乏症を検索(PubmedGoogle scholar)

はじめに
銅は生体内では鉄、亜鉛に次いで多い微量元素です。チトクロームCオキシダーゼ、チロシナーゼ、Cu/Znスーパーオキシドジスムターゼ (Superoxide dismutase; SOD)などの銅酵素の活性中心に結合することによって、エネルギー産生や細胞呼吸、鉄の代謝、活性酸素除去の抗酸化作用、神経伝達物質の産生、結合組織形成など生体の基本的な機能に関与すると言われています。
銅の吸収と排泄は、銅輸送システムによって厳密に管理されているため、ウィルソン病などの先天的な銅代謝異常がある場合を除いては銅過剰による組織への過剰沈着は非常に稀で、臨床的には欠乏症が問題となります。
銅欠乏症では、脊髄、末梢神経障害、特にVitB12欠乏による亜急性連合性脊髄変性症に類似した神経症状を来すことがあります。

銅の吸収と排泄
経口摂取した銅の一部は胃・十二指腸から、大部分は小腸近位部より吸収されます。以下のようなトランスポーターが有名です。

  • CTR1 (copper transporter 1):小腸絨毛の腸管細胞に存在する銅トランスポーター
  • ATP7A:銅輸送ATPase、メンケス病に関連した蛋白です
  • DMT1 (divalent metal transporter 1)

吸収された銅は門脈を介して肝臓に取り込まれ、血液中では90%以上がセルロプラスミンと結合して存在します。銅の体内貯蔵量は少ないようで、大部分は肝臓から胆汁を介して体外に、一部は腎臓から尿中に排泄されます。

銅欠乏症の原因
通常、成人では経口摂取が可能であれば銅欠乏症を呈することは極めて稀です。
  • 先天性銅代謝異常:メンケス病
  • 後天的な要因:上部消化管手術(最多)、亜鉛の過剰摂取、消化器疾患による吸収障害(セリアック病など)、薬剤性(銅キレート剤やノベルジン )
銅欠乏症による神経障害
脊髄症 (myelopathy)、脊髄神経症 (myeloneuropathy)、末梢神経障害 (neuropathy)が多く報告されています。ミトコンドリアの電子輸送に関わる酵素であるチトクロームCオキシダーゼやメチレーションに関わる銅依存性酵素の機能不全が神経障害の原因として推定されています。
  • 深部感覚障害:振動覚・位置覚低下、Romberg徴候陽性
  • 下肢痙性
  • 末梢神経障害:polyneuropathyパターンが多い
  • 後根神経節障害:報告はあるが非常にまれ
  • 視神経障害:霧視やVEPでのP100潜時の延長
  • その他:嗅覚異常、味覚異常、小脳失調、ミオパチー、認知機能障害
検査所見
  • 血液検査:血球減少、血清銅低下、血清セルロプラスミン低下、赤血球SOD活性低下、血清亜鉛値。(ただし、銅やセルロプラスミンは、妊娠、感染症、血液疾患、心疾患、悪性腫瘍、炎症性疾患や術後などの種々の要因で増加してしまい低下の度合いの評価が難しいこともあります)
  • 尿検査:尿中銅は血中のセルロプラスミン非結合銅を反映しますので、24時間蓄尿中の銅排泄量は銅欠乏症では低値のこともあれば、正常のこともあります(感度低い)
  • 髄液検査:正常から軽度の蛋白上昇
  • MRI:頸髄から胸髄にかけて後索にT2高信号が検出されることもあります
  • 骨量測定:骨粗鬆症の有無を確認する
  • NCS:CMAPやSNAPの振幅低下
  • SEP:中枢感覚伝導時間(central somatosensory conduction time; CSCT)延長、N9-N13潜時が延長
  • 腓腹神経生検:有髄線維密度減少、ミエリン球(myelin ovoid)や軸索の再生像と言った急性と慢性期の軸索変性の所見。稀に、神経周膜血管周囲に単核細胞の浸潤を認たという報告もあります。
頸髄MRI:治療前は脊髄後索中心にT2高信号がみられます(A, C、矢頭)。銅補充後は異常T2高信号が消失しています (B, D)
治療

銅欠乏症による神経症状は、VitB12欠乏による亜急性連合性脊髄変性症と比較すると、治療に対する反応性乏しく、後遺症が残存する症例が多い印象があります。早期に診断して、原因を取り除くことが重要です。
また、血清銅、セルロプラスミンの値をモニターしながら銅補充を行う必要があります。明確なガイドラインはありませんが、銅の吸収障害がある場合には経静脈的(エレメンミックなど)に、その他は経口での補充になるかと思います。厚生労働省の報告では、成人男性で0.9-1.0 mg/日、女性 0.7-0.8 mg/日が推奨量とされています。
その他、免疫抑制剤やステロイド、免疫グロブリン療法、血漿交換療法などの免疫療法をを行なった症例報告はありますが、有効性は明確ではありません。
治療開始より、1ヵ月で銅のバランスが正常化、約2ヵ月で血液像の改善、約10ヵ月で脊髄MRIでの異常信号が改善するようです。

Ocular neuromyotonia

Ocular neuromyotoniaを検索(PubmedGoogle scholar

はじめに
外眼筋が自発的に攣縮して発作的な複視や斜視を来す稀な疾患です。そもそも発作的に複視が生じる疾患は非常に稀ですが、特に注視によって誘発される特徴があります。一度診断すると二度と忘れることのない特徴的な症状ですが、重症筋無力症と誤診されていることもあります。1966年にClarkらにより症例報告されて、1970年にRickerらがOcular neuromyotoniaと命名しました。
主には放射線治療後(2か月〜20年後)に、脳神経(動眼神経>外転神経>滑車神経)の過興奮が生じることが原因です。

原因

  • 放射線治療後:原因の60%を占める最多の病態です。上咽頭癌など眼窩が照射部位に含まれることが多いように思われます
  • 血管による脳神経の圧迫
  • 甲状腺眼症
  • 動脈瘤
  • などなど

    症状
    注視や過呼吸などによって誘発される外眼筋の攣縮によって、発作的な複視、斜視が生じます。両側性は稀で、ほとんどが片側性で、発作時間は約1分です。
    下の動画では、注視後に正面視すると右眼が勝手に「発作的」に外転し複視が生じています。

    治療
    脳神経の過興奮はNaチャンネルが関連しているため、Naチャンネル遮断薬(カルバマゼピン、メキシレチンなど)が用いられ、多くの例で著効します。ビムパットも効くかもしれません。
    原因が放射線療法語の場合は、脳神経系の障害は 放射線性神経障害の一種と考えることも出来ます。つまり、放射線性神経障害で報告のあるステロイド、抗凝固療法などがpartialに効果を発揮する可能性もあるかと考えられます。

    脊髄性筋萎縮症(SMA) 治療

    運動ニューロン疾患に対する進行予防治療は、SBMAに対するリュープリンに引き続き2つ目になります。
    主にSMN1遺伝子変異による脊髄性筋萎縮症と確定診断された場合には、核酸医薬の一種であるスピンラザ髄注によって、疾患修飾治療が可能となります。今後も同様のSMAに対する核酸医薬品は、数種類発売されるかもしれません。

    治療
    1. スピンラザ髄注:成人は12mg/回、維持期は4ヶ月ごと
    SMAではSMN1遺伝子からSMN蛋白質を作ることができません。残存したSMN2遺伝子も通常はSMN1のバックアップ遺伝子と呼ばれ、機能的なSMN蛋白は少量しか産生出来ません。スピンラザは、SMN2遺伝子から機能的なSMN蛋白を作り、進行を予防します。
    このような作用機序から、SMAの中でもSMN1遺伝子の欠失または変異を有して、SMN2遺伝子のコピー数が1異常であることを確認できた場合のみ、投与可能となります。
    また、核酸医薬ではOff target effect(目的とする遺伝子以外にもハイブリダイズして発現に影響を与える)が見られます。場合によっては副作用を生じる可能性もあり、スピンラザでもoff target遺伝子候補の解析を継続しています。

    関連ページ:Wiki