Bill and Ben

多発単神経障害(Multiple mononeuropathy)or 多発単神経炎(Multiplex mononeuritis) 診断

はじめに
神経内科では、血管炎、腫瘍性、肉芽腫性、血栓性疾患でこのタイプの末梢神経障害を経験することが多いかと思います。
体の別の部位にある2本以上の末梢神経に同時に機能不全が起こる病気です。多発「単」神経障害では、通常、体の別々の領域にある2-3本の神経だけが障害され、障害神経支配領域の筋力低下、感覚障害が出現します。
これに対して、多発神経障害(polyneuropathy)では体の両側のほぼ同じ領域にある多数の神経が障害されます。しかし、多発単神経炎が多数の神経に生じている場合は、多発神経障害と同様にglove and stocking型の感覚障害に見えることもあることから、区別が困難なことがあります。
その場合でも細かく診察すると左右差や神経差が検出できることもありますし、末梢神経伝導速度検査の所見を吟味することで障害の神経差が見つかることもあります。

診察
多発単神経障害の診察では、感覚障害はデルマトームと一致しませんし、glove and stocking(length dependent)型にも「通常は」なりません(稀にはあります:上記)。このページにあるような、末梢神経の支配領域の分布に一致した感覚障害の分布を示しているかの確認が必要です。筋力低下も感覚障害から類推される障害末梢神経の支配筋のみに出現するはずです。
以下に原因疾患を示しますが、局所的な痛みの有無、皮疹を懸命に探す、凝固異常の有無、リンパ節腫大は?など全身をくまなく診察することが重要です。

多発単神経炎の原因疾患


refより抜粋

ESUS or Cryptogenic stroke update

Nonstenotic carotid plaque on CT angiography in patients with cryptogenic stroke. Neurology. 2016 Aug 16;87(7):665-72.
潜因性脳梗塞に対してCTAで頸動脈を評価した所、病変部の同側は反対側と比較して有意に多くのプラークが検出された

Embolic strokes of undetermined source: the case for a new clinical construct. Lancet Neurol. 2014 Apr;13(4):429-38.
ESUSの定義やetiologyに関するランドマーク的総説

[エオジン好性] 核内封入体病(Neuronal intranuclear inclusion disease; NIHID) update

Clinicopathological features of adult-onset neuronal intranuclear inclusion disease. Brain. 2016 Dec;139(Pt 12):3170-3186.
成人発症核内封入体病の臨床/病理学的特徴と診断基準作成の試み

Neuronal intranuclear inclusion disease cases with leukoencephalopathy diagnosed via skin biopsy. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2014 Mar;85(3):354-6.
皮膚生検にて核内封入体病と診断した3例報告

ミトコンドリア病とてんかん

てんかんとは
「種々の原因により引き起こされる慢性の脳疾患で、大脳の神経細胞が過剰興奮による反復性の発作を主体とするもの」と定義されている。
いずれの年齢層においても生じる疾患であり、患者数は全国で約5千万人、本邦でも60-100万人と言われている。原因疾患もさることながら症状・重症度も多岐にわたり幼少期に発症し成長とともに自然消失するものから難治性で頻回に発作を繰り返すものまである。てんかん診断は大きく情報聴取と脳波検査から成されるが、多彩な臨床像を呈する故に診断が困難な例もあり、特に発作の情報から既往歴、生活歴などの十分な聴取が重要である。治療開始にあたり診断に続いて重要なのはてんかん病型診断であり、これに準じて治療薬を選択する。
「てんかん発作型分類」における背景病因の分類は、「素因性(genetic)」「構造性・代謝性(structural-metabolic)」「原因不明(unknown)」となる。「素因性」は一部のてんかん病型における遺伝学的基盤の存在が明らかになった事により設定された概念で、てんかん診療の進歩が反映されている。「構造性・代謝性」は遺伝子異常に起因するものと区別するために分類された概念である。ミトコンドリア病のてんかん発症機序は未だ不明な点が多数あるが「素因性」「構造性・代謝性」両者の背景を有し、今後その解明に伴いより詳細な分類群の作成が期待される。

ミトコンドリア病とてんかん
ミトコンドリア病はてんかんの合併率が高く、ミトコンドリア機能異常が確認された症例のうち約35%〜60%でてんかんが認められたと報告されている。ミトコンドリア病におけるてんかん発作型は全般発作が多いが、純粋な全般発作だけではなく同一症例でも複数の発作が混在している場合がしばしばある。基本的に特異的な脳波所見や臨床症状はない。また80%以上の頻度で発達障害、失調症状などの他の症状が痙攣に先行して生じる点も診断を困難にしている理由の一つである。
中にはミトコンドリア病の一つAHS(Alpers Huttenlocher Syndrome)のように難治性・持続性部分てんかんなどの臨床症状や後頭葉優位てんかん性放電の脳波所見といった特徴を有するものもある。AHSはmtDNAの複製をコードするPOLG遺伝子(POLG: Polymerase DNA gamma)が責任遺伝子である事が判明しており、他にいくつかの病型を含みPOLG関連疾患と呼ばれている。POLG関連疾患はてんかんを合併するものが多く、またバルプロ酸の導入による悪化が顕著であるという特徴がある12)。てんかん合併が高率なMELASやLSで酵素複合体?の異常が多く確認され、てんかんとの関連が疑われている。しかしながら、ミトコンドリア病は特定の病型に分類できない例も多く、臨床像に加え遺伝子と生化学的異常の把握の蓄積が今後の病態解明、最適な治療法の開発に重要である。

ミトコンドリア病におけるてんかん治療
ミトコンドリア病におけるてんかんは薬剤抵抗性を呈す場合が多く、複数の抗てんかん薬にて治療されていることが多い。他の原因によるてんかん治療と同様、てんかん型に準じ薬剤選択を行うが、一部の抗てんかん薬は症状を悪化させる可能性があり注意が必要である。例えば、バルプロ酸は治療スペクトラムが広く多く用いられる薬剤であるが、ミトコンドリア病においてはクエン酸回路や酸化的リン酸化を阻害しミトコンドリアの構造変異やCOX阻害を来たす事により症状を悪化させ得るため、使用は避けるべきとされている。
一方、比較的安全に使用できミトコンドリア病のてんかんで最も多く使用されていたのは新規抗てんかん薬のラモトリギンやレベチラセタムで単剤治療例も多数見られる。動物モデルでは、てんかん発作後に抗酸化作用を有するグルタチオンや酵素複合体?活性が低下したが、ラモトリギンやレベチラセタムは活性の低下を防ぐと報告されており、ミトコンドリアの機能障害に伴うてんかん発作に対し保護的に作用している可能性がある。てんかんとミトコンドリアの機能異常は互いに悪影響を及ぼす関係にあると考えられている。呼吸鎖の障害により細胞ホメオスタシスの障害やエネルギーの不均衡などによりてんかんが誘発される。てんかん発作は神経細胞の過剰な興奮であり、多量のエネルギーを消費から活性酸素を生成する事により再びミトコンドリア機能異常を引き起こす。この間にも神経細胞の障害は徐々に進行し細胞死を招く。
この悪循環を断ち切る事がてんかんだけでなくミトコンドリア病の進行抑制においても重要であり、抗てんかん薬以外に、ミトコンドリア機能異常の補助(呼吸鎖構成要素の補給)、抗酸化療法、食事療法が行われている。

1.呼吸鎖構成要素の補給
呼吸鎖の構成要素であるcoenzyme Q、L-carnitine、ビタミンB群などの補充療法が行われており、特にこれらの併用を「ミトコンドリアカクテル療法」と呼ぶ。中でも特に重要なのは酵素複合体?,?から?への電子担体のcoenzyme Qである。頻度は低いものの、生化学的にcoenzyme Q減少が証明されたてんかん症例はcoenzyme Q補充により比較的良好な治療反応性を得られる。また抗酸化作用も併せ持つ点、副作用が少ないという点も使用しやすい理由である。てんかんだけでなく、中には血清の乳酸濃度の低下や骨格筋の労作耐久性を改善させたという報告もある。

2.抗酸化療法
抗酸化作用を有する薬剤として、アスコルビン酸(ビタミンC)、α-tocopherol(ビタミンE)、free radical scavengerがある。他薬剤と併用し使用される事が多いが、有効性については明らかでない。

3.ケトン誘発食
高脂肪、低炭水化物食により生成されたケトン体の代謝の過程で生じるacethyl-CoAがKrebs回路を介しエネルギー産生を促進する。実際にはケトン誘発食の導入により、てんかんを抑制させたという報告がある一方で、重大な副作用として代謝性アシドーシスや低血糖を生じた症例もあり、現時点ではミトコンドリア病における有効性は不明である。

Radiologically isolated syndrome (RIS) 治療

初回MRI撮影時に見つかったRISの治療-つまりRISに対してインターフェロンやコパキソンなどのDMTを導入するかどうか-に関しては統一した治療方針を決定するエビデンスもなく、今後の検討が必要です[ref]。
治療を待つのか、画像のフォローを行うのか、積極的に治療を導入するのか?MSへの進展のpredictorにより治療を検討するのか?必ず、受け持った場合には最新の動向をチェックしてください。

Radiologically isolated syndrome (RIS) 診断

はじめに
Radiologically isolated syndrome(RIS)は多発性硬化症を示唆するMRI所見はあるけれども、無症状の患者と定義されています。以下のような診断基準が提唱されています。
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refより抜粋[original ref]

特徴
有病率は、0.06%-0.7%程度。
頭部MRIを撮影する機会となった症状で一番多いのは頭痛
認知機能障害が指摘されることもあり、MRIでは脳萎縮もは多発性硬化症と同様認められる

多発性硬化症への進展

    臨床症状及び画像的な進展
    More than nine T2 lesions
    Gadolinium contrast medium enhancing lesions
    臨床症状の進展
    Cervical spine lesions
    Infratentorial lesions
    A higher number of lesions
    Patholological VEP
    Younger age

Clinically isolated syndrome(CIS) 診断

はじめに
初発の多発性硬化症の85%は視神経、脳幹または脊髄などに単一の脱髄性症状で発症します。つまり、時間的な多相性を特徴とする多発性硬化症ですが、初発の病巣の場合、多発性硬化症と診断できる時間的な多相性が臨床的にもMRI上も明らかでない場合があります。このような状況で、多発性硬化症以外の疾患が適切な検査などで除外されている場合、CIS(Clinically Isolated Syndrome)と呼ぶことがしばしばあります。
CISは臨床的に単巣性病巣あるいは多巣性病巣のものに分類したり、MRIで無症候性病巣があるものとないものといった分類をすることがあります。

    単巣性病巣:単一の病巣による神経症状、例えば視神経炎発作など
    多巣性病巣:複数の病巣、例えば視神経炎と足のしびれなど

多発性硬化症への進展
CISではその後MSに移行する場合と、しない場合があります。初発の際にMRIで多発性病巣がみとめられた場合には、CISに続いて二回目の脱髄性症状を発症して多発性硬化症へと進展する可能性が高いと報告されています。

水痘帯状庖疹ウイルスと神経疾患 診断

水痘帯状庖疹ウイルス(VZV:varicella-zoster virus)は幼児期に初感染し水痘を発症させた後、何年も感覚神経節に潜伏感染します。その後、数十年経過してから宿主の免疫機能低下などを機会に再活性化されて感覚神経を下行して皮層に帯状庖疹を発症します。VZVは神経節に潜在する神経向性ウイルスですので、多彩な神経合併症を呈するため、神経内科領域では良く遭遇するウィルスです。
VZVは神経節に潜在する神経向性ウイルスであり,多彩な神経合併症を呈する。大きく分けて以下の3つに分類されます。
1. 水痘に関連するもの 2. 帯状疱疹に関連するもの 3. 皮疹を認めずに神経系の合併症を呈するもの(無疹性)

1. 水痘 2. 帯状庖疹 3. 無疹性
急性小脳失調
脳炎
無菌性髄膜炎
脊髄炎
Reye症候群
視神経炎
NMO
Guillain-Barre症候群
血管炎
肉芽腫性血管炎、脳血管炎
髄膜炎
脳炎/小脳炎
帯状庖疹後神経痛
脊髄炎
視神経炎
脳神経麻痺
顔面神経麻痺(Ramsay Hunt症候群)
Zoster paresis
神経因性膀胱
Plexonopathy
NMO
Guillain-Barre症候群
筋炎
肉芽腫性血管炎
無菌性髄膜炎
脳炎
多発神経炎
脊髄炎
髄膜神経根炎