Bill and Ben

慢性炎症性脱髄性多発根神経炎 (CIDP)

1. 慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー、多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン〈2013〉
2.総説

CIDPに対して効果が報告されている主要な治療法は以下の三つです。血漿交換、免疫グロブリン大静注療法の効果は数週から2ヶ月持続します(Class I-II)。また、初期治療としてステロイドよりも血漿交換、免疫グロブリン大静注療法の方が効果の発現が高いことを考えると、まず免疫グロブリン大静注療法(あるいは血漿交換)を行い、反応を見てからステロイド経口投与を行う方法がよいと考えられます。上記総説1を参考にしてください。
1.ステロイド経口投与60mg/日から開始し徐々に減量
2.免疫グロブリン大静注療法(0.4g/kg 5日間)
3.血漿交換療法

ステロイドSparingあるいは難治性の症例には以下の薬剤の投与も報告されています(Class IV)。しかしながら、エビデンスレベルは低く、明らかな効果が証明された薬剤はありません。

    リツキシマブ (Anti-CD20)
    アザチオプリン:RCTで効果なしですが、小数の有効例が報告されています
    シクロホスファミド:エンドキサンパルス月1回が有効であった報告があります
    シクロスポリン
    Etanercept
    インターフェロンα:300万単位、週3回、6週間の投与で改善が見られた報告があります
    インターフェロンβ1a
    Mycophenolate mofetil
    自己末梢血幹細胞移植(Auto-PBSCT):有効だった症例報告はあります

ギラン・バレー症候群 治療

1. ギラン・バレー症候群、フィッシャー症候群診療ガイドライン〈2013〉:日本神経学会のガイドライン(書籍)
2. 神経免疫疾患治療ガイドライン

血漿交換と、IVIg大量静注療法が中心で、効果は同程度です。まずは、呼吸障害、自立神経障害などをしっかりと管理しつつ、臨床経過、髄液所見を参考に、末梢神経伝道速度検査にて確定診断を行ってください。確定診断はつかなくとも、強く疑われる場合も治療の適応になると考えられます。その後、作用、副作用をきちっと患者さんにお話してから最初の二つの治療を選択してもらいすぐに治療を開始します。
下記の二つの治療効果は同程度ですので、IVIGの禁忌(IgA欠損症、溶血性貧血、免疫不全など)がないのであれば、IVIg大量静注療法の方が合併症が少なく好ましいと考えられます。単純血漿交換の後に、IVIg大量静注療法を行うことは、単独治療の効果を超えることはなく推奨されていません。
治療例:
1.単純血漿交換:軽症例2回、中等度以上4回
2.IVIg大量静注療法:症状の改善に乏し再投与する場合は、健康保険状「治療により筋力低下の改善が見られた後、4週間以内に再燃した症例」に限って認められるようです。ただ、血液粘度の上昇もあるので少なくとも初回投与から1週間以上空けて再投与を行います
3. IVIg大量静注+ステロイドパルス:IVIg単独よりも、自力歩行可能となるまでの中央値がやや短縮されるようです

全身管理
上記の治療よりも重要です

    1.呼吸・循環管理:主にはSIMVでの管理が必要になることがよくありますが、長引く場合は気管切開をしてください
    2.深部静脈血栓予防:弾性ストッキング、ヘパリン、ワーファリンなど
    3.感染症コントロール
    4.腸管麻痺の管理
    5.リハビリテーション
    6.感覚障害に対する対症療法

ビタミンB1欠乏症(Wernicke-Korsakoff脳症, ビタミンB1欠乏性末梢神経障害) 治療

この疾患は診断さえできれば、あるいは浮腫や胸水、末梢神経障害、外眼筋麻痺、認知機能異常などから疑いさえすれば診断、治療は簡単です。軽度のWernicke-Korsakoff脳症は外眼筋麻痺から、Fisher症候群との鑑別、ビタミンB1欠乏性末梢神経障害は時に急性の経過を取ることがあることからGuillain-Barre症候群との鑑別が必要なこともあります。ビタミンB群の測定用採血を行ったらすかさずビタミンB1を投与しましょう。つまり確定診断はつかなくとも可及的早期にビタミンB1の投与をすることが最も重要です。

1. ビタミンB1補充
ビタミンB1 100mg:1日1回静注 (1-2週間静注したら内服へ)

2. ビタミンB1低下の原因検索とその治療

3. 末梢神経障害に対する対症療法

4. リハビリテーション

ちなみにB1を多く含む食品は以下の通りです。内服治療中には特に食事から摂取しなくても問題ないですが、、、
酵母
肉類
胚芽(米ぬかなど)
豆類
全穀パン
牛乳
緑黄色野菜

ウィルス性髄膜炎 (Viral meningitis)

ウィルス性髄膜炎に関しては効果的な薬剤はなく、対症療法となります。ただし、ウィルス性髄膜炎と思っても軽度の意識障害や脳波異常、MRIでの脳実質の信号異常があることもあるので注意が必要です。
それらの所見があればウィルス性脳炎として治療します。その他、本当に細菌性、真菌性、結核性髄膜炎の可能性はないか十分な検査、考察が必要です。すなわち、この疾患は他のagentによる髄膜炎が完全に否定できるかどうかが重要です。
頭痛に対してはNSAIDsを使用しますが、NSAIDsによる一般的な副作用以外に、非常に稀ですがNSAIDsによる無菌性髄膜炎 (Drug-induced aseptic meningitis; DIAM) には注意を払いましょう。髄液結果や頭痛症状を修飾してしまうこともあります。

処方例
1.頭痛に対して
カロナールやポンタール1回2錠 1日3回

2.脳圧亢進に対して
グリセオール200ml/30分?60分、一日3?4回
ただし、グリセオールの効果は不明です。

細菌性髄膜炎 (Bacterial meningitis) 治療

1. 日本神経治療学会治療ガイドライン:必ず熟読されてください。
2. 細菌性髄膜炎の診療ガイドライン (書籍)

大まかな流れとしては、細菌性髄膜炎を疑った場合、脳CT、血培、髄液検査、髄液培養を行った直後から、デカドロン投与し、その直後にメロペンなどを速やかに投与します。その後、脳波やMRIに移行します。
年齢、免疫能が正常か、脳手術後なのか、などなどの条件で選択する抗生物質は変わってきますがそのような特殊な事情がない場合には下記の抗生剤を選択してください。治療ガイドラインがとても参考になります。もちろん、副鼻腔炎、中耳炎、感染性心内膜炎、硬膜下膿瘍などのチェックは数時間以内に行ってください。多くの成人市中感染は以下の治療になります。

    肺炎球菌:耐性菌の場合はバンコマイシン投与は必須です
    リステリア菌:単核球有意の細胞数上昇を示すことがあり、また髄液培養検査での細菌同定も1週間ほどの長期培養で初めて検出されることもあり、時に誤診、あるいは診断に難渋します。リステリア菌を疑った場合には、ABPCの投与は必須です。
    肺炎桿菌:起炎菌として、成人では非常に希ですが、CTX or CTRXの感受性が良く使用されることが多いと思います。それから、カルバペネム系も効果あります

抗生物質処方例(Empiric)

1. カルバペネム系抗菌薬+バンコマイシン
カルベニン 1.0g/回 6時間ごとに静注 あるいは、メロペン2.0g/回 8時間ごとに静注

(バンコマイシン500-750mg/回 6時間ごとに静注)
日本のガイドラインにはバンコマイシンの投与はカルバペネム系の場合必ずしも必要ないと書かれています。一方で、stanford guidelineでは併用するよう書かれています。
上記が推奨されている投与量ですが、
メロペンは保険適応は1日2gまで
カルベニンは保険適応は1日2gまでしか認められていません。

2.第三世代セフェム系抗菌剤+バンコマイシン 1g/day
セフォタックス2.0g/回 4-6時間ごとに静注 (あるいは、ロセフィン2.0g/回 12時間ごとに静注) +バンコマイシン500-750mg/回 6時間ごとに静注

3.ABPC 12g/day + セフォタックス 8g/day + バンコマイシン 1g/day
ビクシリン2g 4時間ごとに静注 + セフォタックス2.0g/回 4-6時間ごとに静注 (ロセフィン2.0g/回 12時間ごとに静注) +バンコマイシン500-750mg/回 6時間ごとに静注
髄液の細胞増多が単核球の割合も多い、脳実質内に異常信号が見られるなど、リステリア菌の可能性も疑われる場合は、ABPCの投与が必須のため、Empiricにはこのプロトコールをお勧めします

注意:ロセフィンは、ラクテックなどカルシウムの混入した溶媒と同一ルートで投与すると腎臓や肺で析出し、致死的となる場合があり、ラクテックと同一ルートでの投与は禁忌です。そのため、セフォタックス(クラフォラン)の方が使いやすいと思います。
起炎菌同定後、薬剤感受性に従い適宜抗体菌薬を切り替える。

急性期の副腎皮質ステロイド薬
強い炎症を抑制するため抗生物質の投与の10-20分前または同時にデキサメサゾンの投与が推奨されています。ただし、すでに上記の抗生物質が投与されている場合、デカドロンが予後を改善させる根拠は今のところありません。
デキサメサゾン(デカドロン) 0.15mg/kg 6時間毎(一日4回) 2-4日間

その他
脳圧亢進に対する、グリセオール、マンニトール。痙攣予防に対して、アレビアチン250mg/日など。てんかん重積の治療プロトコールは>こちら

静注用バンコマイシンの初期投与量
これはあくまで初期投与量であるので、5回目投与以降で必ずTherapeutic Drug Monitoring(TDM解析)を行い、最適投与量、投与回数を決定してください
クレアチニンクリアランス    投与間隔
>60ml/min     1回15mg/kg 12時間毎静注
40-60 ml/min   1回15mg/kg 24時間毎静注
20-40 ml/min   1回15mg/kg 48時間毎静注
<20 ml/min    15 mg/kg 1回静注⇒その後は血中濃度によってTDM担当者に相談

Diabetic Lumbosacral Plexopathy

1. Cochrane

糖尿病の合併症のうち非常に稀ですが、神経内科医であれば1-2年に一回ぐらいコンサルトを受けることがあるかと思います。最近は造影腰椎MRIで異常(馬尾の造影効果など)をDetectできる場合もあるようです。もちろん血糖コントロールは大事ですが、コントロールしていてもこのタイプの末梢神経障害は起こる可能性があります。
保険適応はありませんが、IVIg大量静注療法が効果がある場合があり、報告例も散見されます。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)

日本神経学会ALSガイドライン

現在この疾患の根本的治療は不可能です。グルタミン酸放出抑制剤のリルゾール(商品名リルテック)は進行を遅らせることが確かめられており、健康保険の適応にもなっているため多くの場合内服することになります。

処方例
リルテック(リルゾール)50mg錠?1回1錠、1日2回(朝及び夕食前)
禁忌:リルゾールに対してアレルギーを有するもの。重篤な肝機能障害のある患者。
副作用:リンクはこちら

進行期
病期が進行すると嚥下障害により経口摂取が難しくなり、さらに呼吸筋麻痺により自力での呼吸が難しくなります。
嚥下障害
胃瘻や中心静脈栄養を行う。ただし、呼吸筋障害のある場合は胃瘻増設術により自発呼吸機能が低下する場合があり注意、及びインフォームドコンセントが必要です。
呼吸障害
初期は非侵襲的な呼吸補助(non-invasive ventilation,NV)で対処、その後人工呼吸器を使用。ただし、人工呼吸器を使用される方はかなり少ないと思います。診断がつき次第、本人と人工呼吸器使用に関しよく相談されてください。
唾液分泌過多
抗コリン薬を処方

病状説明についてガイドラインには以下のように記載されています。
病名告知をする時に医師は,将来呼吸筋麻痺のため呼吸不全に陥ることを患者・家族に説明するが,一度話しても患者・家族は十分に理解することは困難である.
(1)気管切開し人工呼吸器を装着することの意味について
(2)人工呼吸器装着後の入院・在宅を含めた療養環境について
以上は、呼吸不全になる前に患者・家族が納得いくまで説明する必要がある

癌性髄膜炎 (meningeal carcinomatosis) 治療

1.Google scholar

MTX大量静注療法が一般的です。MTX大量投与により様々な副作用が出現します。この治療ではMTXによる一般的な副作用に加えて、白質脳症にも絶えず気を配ってください。治療後に意識レベルが悪化した場合は、現病の悪化だけでなくMTXの副作用(白質脳症など)の可能性があります。一方で、ホルモン感受性のある乳癌などではホルモン療法により比較的よい予後が得られることがあります。

1. MTX大量静注療法
1. メトトレキサート(MTX) (3.5 g/m2)? 約6時間で点滴静注(増減)
2. LV(ホリナート)救援療法

MTX 3.5g/m2の投与量はあくまでも目安です。日本人には少し多い可能性もあります。そのため、MTX投与後に髄液中のMTX濃度を測定し、危険限界値を超えていないことを確認、あるいは濃度によって2クール目のMTX投与量を調節してください。この疾患では脳血液関門が壊れていて、予想以上に髄液中のMTX濃度が高くなることがあります。
MTX大量静注療法のプロトコールは>こちら
その他、直接髄腔内に抗癌剤を投与するintrathecal chemotherapyもあります。やはり、MTX、Cytarabine、Thiotepe(日本製造中止)が主に使用されます

2. 放射線療法
特に、Performance statusが低い場合や、bulkyな病変が検出された場合などに適応となります。予後改善効果はMTXより劣ります。

    部分照射:CSF block or flow abnormality、症状が伴う局所やbulky massへの選択的照射(30-36gy in 3 gy daily fractions)、疼痛へのpalliative therapy
    全脳照射:脳転移を合併している症例、bulky massを伴うときに考慮 (i.e. 30gy in 10 fractions)

3. 対症療法

    1. 抗浮腫療法:デキサメサゾン(i.e. 8mg q12h)、グリセロールなど
    2. 水頭症に対する治療:脳室ドレナージ(VPシャント造設、Ommaya resrvoir造設)
    3. 抗痙攣療法

Appdendix
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