Bill and Ben

アトピー性脊髄炎 治療

はじめに
診断概念も確立されていなければ、治療法も確立されていません。自己免疫異常による脊髄炎と考えられますので、急性期治療としては、ADEMMSの治療に準じて考えることが多いでしょうか。しかし、病態はMSなどのTh1病とは異なるとも考えられていることから注意が必要です。診断バイオマーカーとしてIgE高値も使われていますので、IgEモノクローナル抗体のオマリズマブ(ゾレア)の効果も報告が増えてくると思われます。

mPSL:投与初期には自覚症状の改善を認めるものの、投与中や減量に伴い増悪することが多く、血漿交換療法が他覚的にもMRI検査上も有効
血漿交換療法:最も有効性が高いようです
IVIg:治療効果は、PE、mPSLの次のようです

甲状腺眼症 診断、治療

はじめに
甲状腺眼症とはTSH受容体や外眼筋に対する自己免疫機序によって生じると考えられている眼窩内(炎症性)疾患です。橋本病よりもBasedow病を基礎疾患とすることが圧倒的に多いと思われます。
眼窩内脂肪織に炎症を起こし、眼窩内の脂肪や筋肉中の線維芽細胞を活性化し脂肪織、外眼筋の腫大、グリコサミノグリカンの産生を起こします。
後眼窩組織の容積が増大することで眼球が突出したり、外眼筋の腫大によって外眼筋の円滑な動作が困難となり複視を生じます。これらの炎症が眼窩周囲にも波及して角膜炎、結膜炎をおこしたり視神経、網膜にも波及すれば、眼窩内組織の腫大による圧迫などにより視力低下、失明を起こすこともあります。
最も鑑別が難しい疾患として、外眼筋炎やIgG4関連眼窩内疾患などがあります。IgG4関連眼窩内疾患は涙腺の腫大が目立つことが特徴です。外眼筋炎と甲状腺眼症に関しては、臨床的には、以下のような腫大する外眼筋の部位の違いがあるようです。

    外眼筋炎:LR>SR>MR>IR
    甲状腺眼症:IR>LR
    (LR;外転筋 SR;上転筋 MR;内転筋 IR;下直筋

症状

    眼球突出
    眼の奥の痛み、違和感
    上方視、側方視時の痛みや違和感
    複視
    視力障害
    眼瞼の発赤、腫脹
    結膜の充血、浮腫
    涙丘の発赤

ocular
眼窩脂肪抑制T2強調画像:左眼窩内の外眼筋の肥厚を認めますが、特に下直筋(IR)、内直筋、上直筋に強く認めます。また、眼窩内のintensityも左で全体的に更新していると思われます。

治療
軽症例は経過観察することもありますが、外眼筋や眼窩内の炎症がある場合には、ステロイドパルス療法。ステロイドパルス療法が奏功しない場合は免疫抑制剤や減圧術が行われています[甲状腺疾患診療パーフェクトガイド改訂第3版]。IVIgも効果はあるようです。

低Na血症

参考サイト>PDF

はじめに
神経内科領域では、低Na血症状は摂取不足、薬物による副作用(抗痙攣薬やバクタ[ST合剤]など)、下垂体/視床下部疾患、SIADHなどで経験することが多いかと思います。特に、MRHEとSIADHは鑑別に苦慮した経験がある方も多いかと思います。単純な摂取不足出ない場合には、一般的な血液検査に加えて、以下の検索を必要に応じて上から優先的に検索を開始してください。

    蓄尿
    血漿浸透圧、尿浸透圧
    尿中Na、K、Cr量
    FENa(fractional exretion of sodium):糸球体で濾過されたNa量のうち、最終的な尿中に排泄される割合
    ADH
    ACTH、コルチゾール
    レニン、アルドステロン
    甲状腺機能

鑑別
まずは、尿浸透圧と血漿浸透圧を比べてみることから鑑別が始まります。その結果、低張性低Na血症と判明した場合には、尿浸透圧に注目して中毒と溶質不足を除外してください[参考]。ここから、本格的な原因検索がはじまります。原因により治療法は異なりますので可能な限り鑑別が必要です。
低張性低Na血症に関しては、体液量(細胞外液量)により、鑑別を行いますが、特異的な評価方法はなく区別が難しいことも多いようです。主には、体重、バイタルサイン(血圧・脈拍・尿量)、中心静脈圧(カテーテルによる測定/頸静脈による推定/下大静脈径)、脱水・溢水を示唆する身体所見、血液・尿検査所見などによる推定を行います。
hyponatremia

治療

1. 原疾患の治療
最も重要です。速やかに鑑別、治療を行ってください。

2. Na補正
まずNaを加えることによりどの程度Na濃度が補正されるのか計算する必要が有ります。例えば、体重 40 kg女性、血漿Na濃度 110 mEq/Lの方に3%食塩水(Na濃度 513 mEq/L) 100 mLを投与した場合、血漿Na濃度はいくつになると類推されるでしょうか?

Edelman式は以下の通りです。
血漿Na濃度(PNa)=(体内総Na量+体内総K量)÷(体内全水分量:TBW)

ここでTBWは女性の場合、体重に50%をかけますので、TBW=20Lになります。すると、補正前の体内総Na量+体内総K量は、血漿Na濃度(110 mEq/L)xTBW(20L)=110×20になります。
さらに、3%食塩水(Na濃度 513 mEq/L) 100 mLを投与すると、
補正後の血漿Na濃度=110×20(補正前のNa+K)+補正に使ったNa量(513mEq/Lx0.1L)÷補正後のTBW(20+0.1 L)=112 mEq/L
従いまして、尿排泄がないと仮定すれば110から112 mEq/Lと2mEq/L上昇する計算になります。

別な方法として、1Lの輸液でどれくらい血清Na濃度が変化するかを予測する式(AdrogueーMadiasの式)を使う方法もあります。
ΔNa={投与Na濃度 [+投与K濃度] – 血清Na濃度}÷{体液量+1}
上記の例で、3%食塩水1Lを投与すると仮定すれば,Na濃度上昇分(ΔNa)は
513(投与Na濃度)ー110(血清Na濃度)÷ 20+1(体液量+1)= 19.2 mEq/L
実際には1Lではなく、100ml投与したので、19.2÷10=約2 mEq/L

一般に無尿の場合(これがこれらの式の大前提です)、3%食塩水を1 mL/kg静注すると血清Naは約1 mEq/L上昇するという原則を覚えておくと便利のようです。また、これらの式を使用した計算をしてくれるサイトやアプリもあります。
浸透圧性脱髄症候群予防のため最初の24時間で血清Na濃度の上昇は4~6 mEq/Lに抑える必要がります!!

Eculizumab(エクリズマブ) 治療

はじめに
遺伝子組み換えヒト化モノクローナル抗体で、C5に結合し補体活性を予防して補体による細胞障害性膜攻撃を予防する効果を有します。発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)で使用されるようになり劇的な効果が示されています。
同様に補体介在性神経疾患にも治療効果が報告されるようになっています。

など

Rituximab(リツキサン) 治療

はじめに
ヒトCD20ヒト・マウスキメラ抗体からなるモノクローナル抗体ですので、B細胞がclonalityを持った増殖する、非ホジキンリンパ腫がまず保険適応になりました。B細胞/T細胞の割合を測定すると、B細胞の割合が、0~1%までにも低下します。
その後、真に病原性を持った抗体を原因とした自己免疫疾患への分子標的療法として、その効果が報告されるようになりました。

リツキサンと神経疾患
CD20を標的としますので、リツキサン治療の本命は、PCNSLです。一方で、以下のような神経疾患でも効果を得ることが出来ると思われます[ref]。

B細胞について
B細胞は古典的には二つのsubgroupに分かれます。
B1:寿命が長く、innate免疫システムの一部で、polyreactiveなIgM抗体を産生。自己分裂能があって、胸膜腔や腹膜腔で細菌に対する防御を担っています
B2:adaptive免疫システムで、骨髄で分化して、抗原特異的なimmature B細胞に分化します。その後、末梢のリンパ組織で抗原依存性phaseに入ります。それは、脳でも同様です。されに、成熟したメモリー形質細胞(long lived plasma cell)へと分化します。
[refより抜粋]

形質細胞について
Short-lived plasma cells:成熟B細胞がT細胞依存性抗原刺激を受けると、刺激から1週間以内に形質細胞に分化します。この形質細胞(Short-lived plasma cells)が産生した抗体が抗原刺激後14日以内の一次免疫応答の主体で、早期抗原除去に寄与すると考えられています。Short-livedですので、寿命は数日以内と短いのが特徴で、産生抗体はそのV領域に体細胞突然変異を起こしていないため、抗原への親和性は低いようです。
リツキサンは、CD20陽性であるpreB〜matureB cellは除去します。そのためshort-lived plasma cellsへの分化はなくなり、一次免疫応答は減弱します。
Long-lived plasma cells:高抗原親和性を獲得していて、かつクラススイッチによりIgGクラスの抗体を表面に発現した胚中心B細胞は次に記憶B細胞や形質細胞に分化します。この記憶B細胞の一部は末梢を循環したり、骨髄や脾臓の辺縁帯(marginal zone)に移動に長期にわたり生存します。
再度同一抗原の刺激をうけた記憶B細胞はすみやかに高親和性IgG抗体を産生する形質細胞に分化します。また、胚中心で分化した形質細胞の一部が骨髄において長期にわたって生存、抗体を産生し続ける能力を持ったlong-lived plasma cellsに分化します。このlong-lived plasma cellsはリツキサンでは除去されません。

CD20について
リツキサンが標的としているCD20の特徴は以下の通りです
CD20:分子量 3335kDa。B細胞の表面抗原で、特に骨髄でのpre-B-cellからB cell stageから発現して、形質細胞で失われます(上図)。作用は不明点が多いようですが、Cainfluxを介したB細胞の活性化に関連しているという報告もあります。CD20は、抗体産生性の形質細胞には発現していませんので、リツキサンの投与にって血清IgGなど全体的な抗体価の低下は起こりませんが、病原性の抗体(pathogenic antibody)産生は低下するという報告はあります

副作用
特に、感染症、B型肝炎の増悪、PMLに注意が必要です [リツキサン使用ガイド]

慢性活動性EBウイルス感染症(Chronic Active Epstein-Barr Virus infection:CAEBV)

はじめに
時に、神経症状の合併も報告されている予後のあまり良くないEBウィルス感染症です。
CAEBVはEBVの感染細胞により、以下の体部に分類されます。

    T細胞タイプ(CD4、CD8、γδ-T)
    NK細胞タイプ
    B細胞タイプ(稀)

T細胞型は発熱、貧血、肝腫大、リンパ節腫脹、EBV関連抗体価の異常高値が特徴的で、CD4陽性T細胞型は急激な進行、γδ-T 細胞型は種痘様水疱症、NK細胞型では顆粒球増加症、蚊刺過敏症、高IgE血症が比較的特徴的です。
CAEBVの重篤な合併症として、血球貪食症候群、脾機能亢進症、DIC、肝不全、消化管潰瘍/穿孔、神経障害、心筋炎、間質性肺炎、悪性リンパ腫、白血病などが知られています。
CAEBVでは特徴的な抗体価パターンが認められるが、必ずしも全例に認められるわけではなく、EBV関連抗体価は必ずしも高くなるわけではないようです。
より重要なのは、組織もしくは末梢血中でEBV感染細胞の増加を証明することです。つまり、EBV terminal repeat probe を用いたサザンハイブリダイゼーション解析を行うと,CAEBV ではoligoclonalもしくはmonoclonalな感染細胞の増殖を証明することができます。
さらにEBVがT細胞に感染した患者では悪性リンパ腫で見られるような、T cell receptorの再構成もしばしば認められます。一方で、病理組織学的所見からは、異形成の強い均一な細胞の集積が認められることは少なく、むしろ非特異的な炎症性反応と区別できないことも多いようです。また、clonalityを持つ細胞が末梢血中に多量に認められるにも関わらず、病状が悪化しない患者も多く存在することから、この疾患を単純に悪性リンパ腫と言うこともできないとも考えられています。
これまで、CAEBV患者においてはEBV特異的細胞障害性T細胞活性が低いことが示されています。患者の細胞性免疫を制御する機構になんらかの欠陥があり、限られた免疫源性の低いウイルス抗原しか発現していないEBV 感染細胞を排除できず、感染細胞の増殖を許している可能性が考えられています。

慢性活動性EBV 感染症の診断指針

1. 持続的あるいは再発する伝染性単核症様症状
2. VCA, EA抗体価高値を伴う異常なEBウイルス抗体反応または病変組織(含末梢血)におけるEBウイルスゲノム量の増加
3. 慢性に経過し既知の疾患とは異なること
以上の3項目をみたすこと。

補足条項
1. 伝染性単核症様症状とは、一般に発熱・リンパ節腫脹・肝脾腫などをさす。加えて、伝染性単核症に従来主に報告される血液、消化器、神経、呼吸器、眼、皮膚あるいは心血管合併症状・病変(含動脈瘤・弁疾患)などを呈する場合も含む。
2. VCA、EA抗体価高値とは一般にVCA-IgG 抗体価640倍以上、EA-IgG抗体価160倍以上がひとつの目安となる。加えて、VCAおよびEA-IgA抗体がしばしば陽性となる。
3. 診断の確定、病型の把握のために以下の臨床検査の施行が望まれる。
a) 病変組織(含末梢血)のEB ウイルスDNA、RNA、関連抗原およびクロナリテイの検索

    a. PCR 法 (定量、定性):末梢血における定量を行った場合、一般に10^2.5コピー/μgDNA
    以上がひとつの目安となる。定性の場合、健常人でも陽性となる場合がある
    b. In situ hybridization 法 (EBERなどの同定)
    c. 蛍光抗体法など(EBNA、LMPなどの同定)
    d. Southern blot 法(含EBウイルスクロナリテイの検索)
    e. EB ウイルス感染標的細胞の同定: 蛍光抗体法、免疫組織染色またはマグネットビーズ法などによる各種マーカー陽性細胞(B 細胞、T 細胞、NK 細胞、単球/ マクロファージ/ 組織球などを標識)とEBNA、EBER あるいはEBV DNA 検出などを組み合わせて行う

b) 病変組織の病理組織学的・分子生物学的評価

    a. 一般的な病理組織所見
    b. 免疫組織染色
    c. 染色体分析
    d. 遺伝子再構成検査(免疫グロブリン、T 細胞受容体など)

c) 免疫学的検討

    a. 一般的な免疫検査(細胞性免疫 [ 含NK 細胞活性]・抗体・補体・食細胞機能など)
    b. 末梢血マーカー分析(含HLA-DR)
    c. 各種サイトカイン

側頭葉てんかん 診断

はじめに
側頭葉てんかんは、臨床発作が側頭葉の内側辺縁系に起始する「扁桃体海馬発作」、及び、側頭葉外側の新皮質に起始する「外側側頭葉発作を伴うてんかん」に二分されました。その後、扁桃体海馬発作を伴うてんかんは、病因、臨床経過、発作症状、脳波所見、画像所見が概ね共通していることから、一つの症候群とみなされ、内側側頭葉てんかんと呼ばれるようになったようです。

症状
発作は複雑部分発作で、記憶や意識を失うことが多いですが、発作前に様々な特徴的な前兆が知られています
前兆

    聴覚性(上側頭回後部内側)
    前庭性(上・中側頭回)
    嗅覚性(扁桃体)
    精神性(海馬傍回、新皮質、扁桃体)
    意識減損を伴わない口部咀嚼性自動症(扁桃体)

発作症状としては、内側側頭葉てんかんは口部咀嚼性の自動症とディストニー肢位が多く、外側側頭葉てんかんは、顔面・上肢の間代や二次性全般化が多いようです

扁桃体腫大を伴う側頭葉てんかんについて
近年、典型的な海馬硬化を伴わない側頭葉てんかんにおいて、一部に扁桃体腫大を認める例が報告されています。一般的にてんかん発作の発症年齢は海馬硬化を伴う側頭葉てんかんより高いと言われていて、薬物コントロールは良好のようです。発症年齢が高いので、高齢発症のてんかんの原因としても注目されています。
腫大する原因については以下のようなものが類推されています

    皮質形成異常
    腫瘍:FCDが多く、他はganglioglioma、astrocytoma
    自己免疫性の限局性脳炎

enlamg
JNNP. 2011;82(6):652-7より抜粋。片側の扁桃体の腫大を認めます。intensityの変化は、この症例ではありませんが、T2強調画像でintensityが上昇することもあると思われます。

ESUS(Embolic stroke of undetermined source)診断

はじめに
基本的には、今までCryptogenic stroke(潜因性脳梗塞)と呼ばれていた集団に対して、診断基準を設定し、必要最低限の検査によってESUS集団を分類し、最適な二次予防につなげるというpracticalな概念です。
神経内科医はESUSと診断して満足してはいけません。ESUSには、PAF、PFOなどの奇異性塞栓、大動脈原生塞栓など様々な病態が含まれています。理想的な二次予防とは、原因疾患を解明し、その原因疾患特異的な治療を行うことであり、従来となんら変わることはありません。

どうしてESUSという概念が作られたのか?
もともと脳梗塞の病系分類はTOAST分類が使用されます。この中で、心原性の原因疾患がなく、アテローム病変がなく、ラクナ梗塞でもないものを、「その他の原因」及び「分類不能」に分類します。この二つの分類の中で、「その他の原因」に分類される脳梗塞とは、凝固異常、血管攣縮、血管炎、動脈解離、薬剤性など特殊な原因による脳梗塞になります(「その他の原因」と「分類不能」の病型の違いは紛らわしいですね)。
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ESUSが含まれるのは、上手の赤四角で囲った「分類不能」の集団です。TOAST分類では、この集団を以下の3つに分類しています。

    1. 検査不完了
    2. 2つ異常の原因
    3. 異常所見なし:これが本当のcryptogenic strokeです

この分類不能の集団に対しては、二次予防として現段階の治療ガイドラインではアスピリンの使用が推奨されています。しかしながら、この「分類不能」の集団には、PAF、PFOなどの奇異性塞栓など、抗凝固療法が予防効果の高い基礎疾患が多く含まれていることがわかっています。
したがって、ESUSという集団を診断基準を作成して必要最低限の検査で積極的に診断し、抗凝固療法と抗血小板療法のどちらが二次予防効果が強いのか?ということを解明するために作られたと考えられます。

診断基準
診断には、必要な検査が定められていて、これらの検査結果から診断を満たすかどうかを判断します。
1. 診断基準

    画像上非ラクナ梗塞である(病変の長径がCTで1.5cm以上 or MRIで2.0cm以上のもの)
    脳梗塞の近位部の動脈が開存(50%以上)している
    主要な心内塞栓源がない*
    他の特殊な脳卒中の原因がない
    (動脈炎、動脈解離、片頭痛/血管攣縮、薬剤)

2. 必要な検査

    非ラクナ梗塞を証明するための頭部CTまたはMRI
    経胸壁心エコー
    心電図および24時間以上の心臓モニター
    脳虚血領域を供給する頭蓋内外動脈の画像検査

3. 限界と問題点

    経食道心エコーと大動脈弓の精査は要求しない
    植込み型心電図記録計の精査ももちろん要求しない
    Branch atheromatous diseaseが含まれてしまう

* ESUS診断において、主要な心内塞栓源とされているのは以下の心疾患です(TOAST分類の主要な心内塞栓源とは若干異なっていることに注意が必要です)

    Permanent or paroxysmal atrial fibrillation
    Sustained atrial flutter
    Intracardiac thrombus
    Prosthetic cardiac valve
    Atrial myxoma or other cardiac tumours
    Mitral stenosis
    Recent (<4 weeks) myocardial infarction Left ventricular ejection fraction less than 30% Valvular vegetations Infective endocarditis

疫学
上記の診断基準を満たしたESUS集団では、実際に将来的にどのような基礎疾患が見つかるのかは、それほど解明されていません。ESUSの概念を発表した論文(Lancet Neurol 2014)では、以下のような疾患が隠れている可能性が指摘/類推されています。

1. 潜在性発作性心房細動(PAF:おそらくこれがESUSの最多基礎疾患です

2. 動脈原性塞栓

    大動脈弓部粥腫
    脳動脈非狭窄性粥腫+潰瘍

3. 奇異性塞栓症

    卵円孔開存
    心房中隔欠損
    肺AVM

4. 悪性腫瘍関連

    covert non-bacterial
    tumor emboli from occult cancer

5. 低リスクの心内塞栓源

    僧帽弁逸脱を伴った粘液腫性弁膜症
    僧帽弁輪石灰化

非心房細動性心房性不整脈と鬱滞

    心房性無収縮と洞不全症候群
    心房性頻拍のエピソード
    左心耳の血流低下を伴った鬱滞

左室

    中等度収縮期・拡張期機能異常
    心室性ノンコンパクション、心内膜線維化

大動脈弁

    大動脈弁狭窄
    石灰化大動脈弁

心房構造異常

    心房中隔瘤
    キアリネットワーク

EBウイルス(EBV)に関連した神経疾患 診断

はじめに
EBVは、Human herpesvirus 4(γヘルペスウイルス)に分類される直線状二本鎖DNAウイルス(105×10^6Da)で、ゲノムterminal repeatの繰り返しの回数はウイルスごとに異なっているため、臨床的には、この違いを利用してEBVのclonalityの有無を判定することができます。
内科的には伝染性単核症以外に、悪性リンパ腫や慢性活動性EBウイルス感染症など、神経内科では脳炎、末梢神経障害、NMOの発症、血球貪食性リンパ組織球症の治療などで登場することが多いと思われます。多くの日本人は既感染ですので、再活性化が成人の病態に関与しています。宿主内(B細胞が好きなようです)では、潜伏感染か溶解感染かの形をとります。

    潜伏感染:限られた遺伝子のみを発現。latency type 0-3に分類されることが多く、それぞれウィルス遺伝子や蛋白に違いがあるためマーカーにも用いられます(下図)
    溶解感染:ウイルスの全ての遺伝子を発現、強力なウイルスDNA合成によって子孫ウイルスを産生

EBV再活性化について
潜伏感染から溶解感染へ切り替わることを再活性化といいますが、再活性化の病態については不明な点も多いようです。EBVは再活性化するとエピソームが開裂して線状になり、感染力のあるウイルス粒子として細胞外に放出されますが(lytic/replicative phase)、このとき100種類以上の遺伝子とその産物を産生します。
ebv

refより抜粋

EBV関連神経疾患

昔からEBVが原因あるいはEBVが発症に関与したと考えられている神経疾患が多くあります。特殊な病態としては、CAEBVやEBV-HLHに関連する神経障害も多彩な神経症状を引き起こします。以下のようなものが代表的と思われます。

    髄膜炎:髄液VCA-IgGの上昇は感度/特異度が高くないためPCR検査が重要です。PCRも偽陽性の問題がつきまといますが、、、
    脳炎や脳症HSV脳炎類似、嗜眠性脳炎、ADEMなど多様な病型の報告があります
    小脳炎:造影MRIで小脳髄膜に異常な増強効果を認めることがあります
    脊髄炎、神経根炎:稀ですが幾つか報告があります
    末梢神経障害Guillain-Barre症候群の原因になりますし、CIDP類似、多発単神経炎(血管炎? リンパ増殖性? 自己免疫性?)、顔面神経麻痺などの脳神経麻痺の報告もあります。
    NMO:血清抗EA-IgG抗体価と抗AQP-4抗体価の相関の報告がありまして、一部で再発時への関与が疑われています
    MTX-LPD:病変が神経系に分布する場合
    PTLD:移植後リンパ増殖症(post-transplant lymphoproliferative disorder)は、免疫抑制による細胞障害性T細胞の機能障害に関連した、EBV感染B細胞の増殖です。腎移植後の報告が多いかと思います。皮質下白質や基底核に多発する病変の報告などがあります。
    悪性リンパ腫:Burkittリンパ腫、EBV陽性びまん性大細胞型Bリンパ腫、混合細胞型古典的Hodgkinリンパ腫

明確な区別は困難ですが、神経障害発症のメカニズムとして以下の3つが代表的です

    EBV初感染や再活性化:神経組織へのウイルスの直接浸潤
    自己免疫的機序:EBV感染リンパ球や反応性のリンパ球の浸潤、抗原抗体複合体の沈着
    EBV感染細胞の腫瘍性増殖:腫瘍性病変の浸潤、圧迫

検査
 血液/髄液検査:EBVの抗体は複数あって難しいのですが、EBNA、VCA-IgG、VCA-IgM、EA-IgGの4種類は提出が必要かと思われます。特に再活性化はEA-IgG(EA-DR IgGともいう)の上昇が見られることが多いと思います[参考サイト]。
 組織検査:リンパ節生検などにより、免疫染色やISHでEBVに関連した蛋白や遺伝子を検索し、latency typeの分類にも役立ちます
 PCR:血清、髄液、採取組織などからEBV遺伝子を検出します

EBVの抗体
ウイルスカプシド抗原(Viral Capsid Antigen:VCA)、早期抗原(Early Antigen-Diffuse and Restrict complex:EA-DR)、EBV核内抗原(EBV Nuclear Antigen:EBNA)が良く測定されます。これらは、IgG、IgA、IgMクラスが存在して、一部はサブクラス別の測定可能です。感染stageによる違いは>[参考サイト]

もう少しマニアックな話
EBVは唾液などを介して咽頭、扁頭より侵入してB 細胞に直接感染する。EBVはB細胞に感染後、核内に潜伏し、B細胞を形質転換し、芽球化・増殖させる作用があります。芽球化/増殖したEBV感染B細胞はNK細胞、EBV 特異的細胞障害性T細胞などにより排除されます。その後、芽球化したB細胞の一部はメモリーB細胞へと分化、潜伏感染を維持するようです。
EBVの初感染は、小児の場合多くは不顕性感染、もしくは軽微な非特異的上気道感染症に終わりますが、時に伝染性単核症に進展します。EBVはほとんどの健常人に潜伏/持続感染をしていて、時に再活性化しますが、細胞性免疫能が正常であれば通常臨床症状を示すことはありません。
AIDSや移植時など、細胞性免疫が損なわれた状態では、メモリーB細胞に感染していたEBVが再活性化して、細胞が再び芽球化します。また、EBVはBurkittリンパ腫、EBV陽性びまん性大細胞型Bリンパ腫、混合細胞型古典的Hodgkinリンパ腫などのB細胞腫瘍にも潜伏感染していることから、これらの腫瘍において発がんとの関連が示唆されています。
EBVは、一部の宿主においては、B細胞ではなくTあるいはNK細胞に感染し、増殖を誘発することにより、慢性活動性EBV 感染症(chronic active EBV infection:CAEBV)やEBV 関連血球貪食性リンパ組織球症(EBV-associated hemophagocytic lymphohistiocytosis:EBV-HLH)などを引き起こします(EBV 関連T/NKリンパ増殖性疾患)。CAEBVおよびEBV-HLHは圧倒的に日本を含めた極東からの報告が多く、民族集積性があるため、これらの疾患になんらかの遺伝的背景が存在しうることが示唆されています。

EBV-HLH
血球貪食症候群(hemophagocytotic Syndrome:HPS)や血球貪食リンパ組織球症(hemophagocytotic lymphohistiocytosis:HLH)などの用語がよく使用されます。HLHは、ウィルス感染、膠原病、悪性腫瘍などに続発しますが、ウィルス感染では約7割はヘルペスウイルスによるもので、さらにその約8割はEBV-HLHと言われています。また、ウイルス感染細胞のクローナルな増殖が示されているのはEBV-HLHのみのようです。
EBV-HLHの病態は、EBVのT細胞(主にCD8陽性細胞)への持続感染により、活性化T細胞から産生されるIFN-γ、TNF-α、IL-2などのサイトカインが組織球を活性化し、血球貪食が引き起こされるというものです。発症様式としては、以下のようなものが代表的です。

    伝染性単核症が急速に進行して発症
    CAEBVの経過中に発症
    EBV陽性T/NK細胞リンパ腫の経過中に発症

EBV-HLHは、症状のみでは重症伝染性単核症と区別が難しい場合がありますが、感染細胞の検討やサイトカインプロファイリングで鑑別できることもあるようです。EBV-HLHでは、CAEBVとは違ってIL-1αの遺伝子多型が発症に関連するとの報告があります。EBV-HLHの診断では、まずHLHの診断基準を満たして、かつEBVの関与を示す必要がありますが、約2/3の症例では抗体価のみでは確定できないため、末梢血液中のEBV定量PCRが必要です。