Bill and Ben

迷走神経刺激法(vagus nerve stimulation:VNS)

はじめに
胸部皮下に埋め込んだ刺激装置と頸部の左迷走神経刺激電極によって、間欠的に迷走神経を刺激する治療法です。難治性てんかんの発作抑制効果が認められて、2010年に保険適応となりました。

効果
治療期間1年で37%、2年43%、3年43%と、年単位での治療継続で徐々に発作抑制効果が高まり、発作減少率は50%に達するようです

副作用
刺激中の発声障害、咳、感染、不整脈、嚥下障害などある

薬物誘発精神症状 てんかん薬

はじめに
てんかん薬では、しばしば副作用としての精神症状を引き起こします。トピラマートでのうつ症状/精神病、ラモトリギンやレベチラセタムによる、不安/易刺激性などが有名で、そのような症状をもともと持っている場合は、投与が相対的禁忌になると考えても良いかと思います。
うつ病

    バルビツール
    トピラマート
    ゾニサミド
    VGB
    TGB

精神病

    エトスクシミド
    レベチラセタム
    トピラマート
    ゾニサミド
    フェニトイン(中毒量)
    VGB

易刺激性

    ラモトリギン
    レベチラセタム
    FBM

リスク要因
精神疾患の既往歴と家族歴
rapid titration
高用量

HHV-6 診断

はじめに
薬剤性過敏性症候群(Drug-induced hypersensitivity syndrome: DIHS)、移植片対宿主病(GVHD)、慢性疲労症候群などマニアックな疾患で度々登場するウィルスです。
特に病原性が強いのはHHV-6Bですが、ヘルペスウイルスの中でも日和見感染症の起因病原体として重要なCMVと同じβヘルペスウイルス亜科に属しています。成人では、EBVと同様に再活性化による病態が有名で、DIHSや脳炎を引き起こします。

再活性化時の中枢神経系合併症
移植後のHHV-6B感染にともなう中枢神経系合併症として、記憶障害を主体とする症状で、海馬を中心にMRIで異常所見をみとめる脳炎症例が多く報告されてます。このような症例の髄液中ウイルスDNA量はかなり多く、突発疹罹患時の脳炎合併症例にくらべ明らかに多量のウイルスDNA検出さることが多いようです。

薬剤性過敏性症候群(Drug-induced hypersensitivity syndrome: DIHS)

はじめに
薬疹の一種ですが、Stevens-Johnson症候群やTEN(toxic epidermal neclolysis)と違って、薬の他にウイルス感染(HHV-6が代表的)が関係してくる病気です。原因となる薬は抗痙攣剤が圧倒的に多く、その他尿酸を下げる薬などがありますので、神経内科で診断されることもあるかと思います。
薬を飲み始めてから発症するまでに時間がかかるのが特徴で、多くは3週間以上で平均4週間と言われていますが、なかには1年以上たって発症することもあります。
薬剤を中止したのちも症状が進行して、軽快するまでに1ヶ月以上の経過を要することも多く、典型的には臨床的に二峰性を示します。この二峰性の症状の出現に、HHV-6の再活性化が関与していると言われています。

診断基準(5つ以上) appendixも参照

    1.薬剤投与開始3週間以上から増大する斑状丘疹性発疹
    2.リンパ節腫脹
    3.発熱(38℃以上)
    4.白血球増加(10000//mm3以上、異型リンパ球増加、好酸球増加)
    5.肝機能障害(ALT100U/L以上)
    6.ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)再活性化

推定原因医薬品
報告例のある薬剤はあまり多くありませんが、本も頻度が高いものはカルバマゼピンです
カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタール、ゾニサミド、、ラモトリジン、アロプリノール(痛風治療薬)、サラゾスルファピリジン(サルファ剤)、ジアフェニルスルホン(抗ハンセン病薬)、メキシレチン、 ミノサイクリン、ジルチアゼム、ピロキシカムなど

原因ウィルス
DIHSにおいて再活性化が見られるHHV-6は、HHV-6AとHHV-6Bに分類されますが、病原性を持つのはHHV-6Bで、小児期には突発性発疹の原因ウィルスとして有名です。そのため、成人ではほとんどの人が既感染です。HHV-6は、単球に潜伏感染し、活性化T細胞に感染することがその増殖に必要のようですが、正確な再活性化の機序は不明です。EBVのように再活性化のマーカーはないので、HHV-6 IgG抗体の経時的な測定により判断します(appendixも参照)。
その他、CMV、EBV、HHV-7の再活性化を伴った報告があります。

1

治療
ステロイド治療:ステロイドパルスや30-50mg/kg内服など
免疫グロブリン大量静注療法
HHV-6に対するウィルス薬はないですが、CMVが検出された場合にはガンシクロビールなど

appendix
dihs

脳血管 静脈系 走行/解剖

はじめに
神経内科医は脳動脈に関しては詳しいですが、脳静脈血栓症、硬膜動静脈瘻の理解には静脈の解剖、および静脈の脳内での灌流支配領域[ref]の理解が必要になります。

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小脳出血 診断/治療

参考小脳の血管支配

疫学
小脳出血は頭蓋内出血全体の9-10%を占める。50歳以上の中年~高齢者に多く、男性に多い。病因としては高血圧とその持続による細動脈病変が約80%で、脳内微小動脈瘤の破綻によると考えられており、過剰飲酒も危険因子となる。上小脳動脈分枝の破綻が大多数だが、後下小脳動脈分枝の破綻の場合もある。その他の原因として、脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻、海綿状血管腫、動脈瘤、凝固異常、抗血栓薬(抗血小板薬および抗凝固薬)内服、アミロイドアンギオパチー、腫瘍、コカインなどの薬剤使用がある。テント上の脳外科手術の後に起こるremote cerebellar hemorrhageと呼ばれる稀な病態もある。高血圧に関連した小脳出血はそのほとんどが歯状核に始まり、同側の小脳半球に広がる。虫部を越えて対側の小脳半球へ広がることもあるが、直接脳幹まで出血が広がることは稀である。浮腫によって脳幹や第4脳室が圧排され、脳幹圧迫による呼吸障害、意識障害が起こるほか、第4脳室を経て他の脳室まで広がると水頭症をさらに増悪させる。

症状、神経学的所見
小脳出血の症状としては、小脳梗塞と同様に急性発症のめまい、嘔気・嘔吐、頭痛、歩行時のふらつきや立っていられないといった主訴が多い。診察所見では、発症早期には四肢、体幹の運動失調、眼振、構音障害が見られ、発症時の意識消失もあり得る。持続する出血や出血周囲の浮腫により脳幹が前方へ圧迫されると、意識障害と共に病側注視麻痺、斜偏視、Ocular bobbing(両側眼球が間欠的に急速に下方へ偏倚し、ゆっくり水平位に戻ることを繰り返す)、瞳孔不同、対光反射の減弱または消失、末梢性顔面神経麻痺、ホルネル徴候、錐体路徴候、呼吸障害が出現する。意識障害は、小脳出血全体の50%までに出現すると報告され、発症数時間後から5日までの間にいつでも起こり得るが、最初の2-3日までに最も多い。

検査、診断
頭部CTが迅速かつ早期からの出血同定に有用である。より微小な出血の検索には、MRIのT2*画像やSusceptibility Weighted Imaging (SWI)が有用である。また、高血圧の既往がなく、出血の位置が典型的でないもの、異常血管の石灰化のあるもの(脳動静脈奇形)、くも膜下出血を合併しているもの(脳動静脈奇形、アミロイドアンギオパチー、動脈瘤)、癌の既往があり出血の大きさに比して浮腫が強いもの(原発性または転移性脳腫瘍)、出血性梗塞が疑われるもの、テント上や他の部位にも出血があるものなどは、高血圧性の出血ではない可能性を考え、CTA、MRA、DSAを追加する。血液検査では一般の血算、生化学、血糖、PT、APTT、フィブリノゲンなどの凝固検査に加えて、必要に応じて凝固異常の原因となる疾患の検索を行う。

治療
通常の高血圧性脳出血では凝固系に異常がない場合血液製剤の投与は行わない。血管強化薬(アドナ)、抗プラスミン薬(トランサミン)は考慮してもよい(グレードC1)。
急性期の血圧は、できるだけ早期に収縮期血圧140mmHg未満に降下させ、7日間維持する(グレードC1)。使用する降圧薬としてはCa拮抗薬あるいは硝酸薬の微量点滴静注が進められ、Ca拮抗薬のうちニカルジピンを使用してよい(グレードC1)。
抗血栓療法中の脳出血であれば抗血栓薬は原則としてすみやかに中止する。
脳浮腫、頭蓋内圧亢進に対して高張グリセオール投与は考慮され(グレードC1)、マンニトール投与は進行性に臨床所見が増悪した場合は考慮して良い(C1)。
外科手術の適応については、小脳出血では最大径が3cm以上で神経学的症候が増悪している場合、または小脳出血が脳幹を圧迫し脳室閉塞による水頭症をきたしている場合には手術の適応となる(グレードC1)。一般に開頭血腫除去術および脳室ドレナージ留置を行う。94人の小脳出血患者では手術適応となったのは33%であったという報告がある

予後
小脳出血の死亡率は25%-38%と報告されている。術後の予後は、半数以上は機能的に自立すると考えられるが、予後不良と関連する因子として術前の意識障害(Glasgow Coma Scale: GCSが低い)、血腫径が3cm以上であること、第四脳室の圧排の程度が高度であることなどがしばしば挙げられてきた。一方、術前の意識障害が高度であることは長期予後とは関連しなかったという報告もあり、脳幹梗塞が広範であったり、多数の合併疾患がある患者でなければ術前の意識障害が強くても手術の適応を検討すべきであるという意見もある。

Appendix
Head impulse test
Head thrust testとも言う。前庭眼反射を見ることで末梢性の障害であるか中枢性かを見分けるのに役立つ。被検者は検者の前に座り検者の鼻をずっと見ているよう指示される。その上で、検者はすばやく被検者の頭を一方向に約20度回転させる。前庭眼反射が正常であれば被検者は検者の鼻をずっと見続けることができるが、前庭眼反射が障害されている場合は頭部と同じ方向へ眼が動き、その後検者の鼻へ戻るためのすばやい眼の動き(saccade)が生じる。これを陽性とする。小脳梗塞では通常、Head impulse testは陰性である。

小脳梗塞 診断/治療

参考小脳の血管支配

はじめに
小脳の血管障害は脳血管障害全体のうち10%以下を占め、小脳の血管障害は約90%が脳梗塞、脳出血全体の約10%が小脳出血である。脳梗塞全体では小脳梗塞は約3%程度を占めるにすぎないが、後頭蓋窩はスペースが少なく、脳浮腫から容易に脳幹圧迫、水頭症をきたし致死的になり得る。一方、症候としてはめまいや頭痛、時には耳鳴りなどの非特異的症状が多く、まずは小脳の血管障害を疑うことが重要である。脳幹圧迫や水頭症からの意識障害は発症直後より数日後にピークがあるため、すみやかな入院管理のもと慎重に経過をみる必要がある。小脳梗塞では水頭症や脳幹圧迫による中等度以上の意識障害をきたしている場合は開頭減圧術、小脳出血では血腫3cm以上で進行性のものまたは脳幹を圧迫し水頭症をきたしているものは開頭血腫除去術の適応となる。

小脳梗塞
疫学
小脳梗塞はその血管支配からしばしば脳幹梗塞を合併するがここでは小脳の病変を主体とする場合について解説する。小脳梗塞の頻度は脳梗塞全体の2.3-5.8%程度と報告されており、患者の平均年齢は65-72歳、約3分の2は男性である。
リスクファクターは他の脳梗塞と同様、高血圧、糖尿病、喫煙、脂質異常症、心房細動、一過性脳虚血発作(Transient Ischemic Attack: TIA)の既往であり、年齢を重ねるごとに発症頻度は高まる。後下小脳動脈(Posterior Inferior Cerebellar Artery: PICA)支配領域の梗塞が上小脳動脈(Superior Cerebellar Artery: SCA)支配領域よりやや多く、前下小脳動脈(Anterior Inferior Cerebellar Artery)支配領域が最も少ない。片側の小脳梗塞が88%であるが、片側の小脳梗塞はしばしば1つ以上の血管支配領域(AICA領域とPICA領域など)に病変の広がりを持つ。PICA、AICA、SCAの典型的な支配領域の梗塞に加え、血管支配に一致せず主要血管の分水嶺領域に起こる梗塞も23〜31%あると報告されている。
小脳梗塞の病因は前方循環の脳梗塞と同様、アテローム性と心原性脳塞栓が最も多い。椎骨動脈解離も重要な原因であり、40歳以下の小脳梗塞患者では27%が椎骨動脈解離が原因であったとも報告され、いずれもPICA領域の梗塞であった。また、椎骨動脈解離だけでなく、PICAなどより末梢動脈の解離の症例も報告されており抗血栓療法を行う際には注意を要する。
一方、悪性腫瘍に伴う脳梗塞(Trousseau症候群)も重要な原因となり得る。また、特に若年の患者では、卵円孔開存、凝固異常、血管炎なども考える。主に横静脈洞の血栓症では小脳半球に静脈性の梗塞をきたしうる。
TIAは小脳梗塞の22%に先行し、前方循環と同程度に脳梗塞発症のリスクがある。年齢(Age; 60歳以上で+1点)、血圧(Blood Pressure;収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上で+1点)、臨床症状(Clinical features;一側の筋力低下で+2点、麻痺を伴わない構音障害で+1点)、持続時間(Duration;60分以上で+2点、10〜59分で+1点)、糖尿病(Diabetes;ありで+1点)の点数の合計で脳梗塞への移行のリスクを判定するABCD2スコアは、前方循環と同様に有用であり、めまいで救急外来を訪れた患者のうちABCD2スコアが3以下の患者では1%、4以上の患者では8.1%が脳血管障害を発症したと報告されている(4)。後方循環のTIAの症状として、前方循環と同様の運動症状(顔面、四肢の麻痺)、感覚症状、視野欠損の他に、めまい、バランスがとれない、複視などが挙げられる一方で、めまいや複視などの単独症状のみではTIAとは一般に判断しない(5)ことから、他の症状を合併していたかで慎重に判断する必要がある。

症状、神経学的所見 
小脳梗塞の症状では多い順に、めまい(73%)、嘔気・嘔吐(54%)、歩行障害(48%)、頭痛(37%)、構音障害(29%)が挙げられる。AICA梗塞ではめまい・嘔気などの前庭症状に加え耳鳴難聴などの特徴的な内耳の虚血を示唆する所見があり、末梢性めまい、内耳炎と混同しやすい。PICA内側梗塞でもAICA梗塞と同様の前庭障害のみの症例もあるため注意を要する。めまいは小脳梗塞患者のおよそ4分の3で見られる一方、外来受診する全患者の主訴の5%はめまいであるというほどに多い症状である。めまいを回転性(vertigo)、非回転性(dizziness)に分類しても、それぞれ同程度に脳血管障害を含んでいたとの報告もあり、脳血管障害の診断に必ずしも有用でない。頭痛は脳梗塞一般には少ないとされるが後方循環では前方循環に比較して多く、特に小脳梗塞では多い主訴である。椎骨動脈解離に由来する場合はそのための痛みを訴える場合もあるが、主に後頭部痛で、病変側に多いという報告もある。
診察所見では、四肢の運動失調(58%)、体幹失調(51%)、構音障害(46%)、眼振(44%)、意識障害(29%、うち26%が錯乱、3%が昏睡)が認められる。他に筋トーヌス低下やsaccadeの異常が起こりうるためこれを診察する。
SCA梗塞ではめまいは少なく構音障害、運動失調が起こりやすいとされる。約半数で認められる眼振については、末梢性めまい患者でも多く出現するが、主に垂直性眼振である場合や、水平注視によって誘発される注視方向性の眼振は中枢性を示唆する。脳幹梗塞に由来するホルネル症候群(片側の縮瞳、眼裂狭小化、発汗低下)や瞳孔異常、一側眼球が内下方へ、他側眼球が外上方へ向く斜偏視(skew deviation)の存在、錐体路徴候(運動麻痺、感覚障害など)、意識レベルの低下は脳血管障害を示唆する。前庭眼反射が正常であることを見るHead impulse test (HIT:このページの最下段参照)は、斜偏視や注視方向性眼振と合わせて感度、特異度共に高いとされるが、稀に小脳梗塞でも陽性となるため総合的な判断が必要である。

検査、診断

    頭部CT:簡便、迅速に行うことが可能で、小脳出血との鑑別にも役立つため、画像検査としてまず行う。脳浮腫の進行が予想される例では、3時間ごとなどに行うこともある。
    脳MRI:CTでは早期の脳梗塞診断が難しいことに加え、後頭蓋窩では骨によるアーチファクトなどからさらに感度が低下するため、疑われた場合は可能であれば脳MRIを撮影する。拡散強調画像(DWI)の高信号で新鮮梗塞を検出する他、MR angiography (MRA)により椎骨脳底動脈系の評価を行うことも重要である。BPAS(Basiparallel anatomical scanning)画像を追加して血管の外観を評価し、MRAのtime-of-flight画像では狭窄または閉塞している血管の外径が不整に拡張している時は、動脈解離を疑う。
    CT angiography (CTA):血管の評価には有用であり、また解離の診断のゴールドスタンダードは血管造影(Digital subtraction angiography: DSA)であるものの、その侵襲性からは適応を選ぶ必要がある。
    血液検査: 脳梗塞一般に出す検査と同様、一般の血算、脂質などを含む生化学、血糖、凝固検査に加え、若年患者ではプロテインS・C欠乏症、抗リン脂質抗体症候群などの凝固異常の検索、血管炎、膠原病関連自己抗体などを提出する。D-dimer、BNPの上昇は潜在的な心房細動の検出に有用である。
    経胸壁心エコー、頚部血管エコー:心弁膜症性疾患や血栓の有無、血管の動脈硬化性変化によるアテロームのリスク評価や解離の有無を見る。必要に応じて経食道エコーを考慮する。

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The radiology Assistantより引用:MRIで検出された病変から閉塞血管を同定することは、病態の把握、血管内治療の適応などにおいて非常に重要です。特に、小脳は簡単なので覚えてしまいましょう。

治療
他の部位の脳梗塞と同様、第一選択はrtPA療法であるが、小脳梗塞のみではNIHSSは高得点となり難く、一般にrtPAの適応とはなりにくい。出血の合併がなければ、脳卒中ガイドライン2015に従いアテローム性であればアスピリン(グレードA)、アルガトロバン(最大径1.5cmを超え発症48時間以内。グレードB)を投与し、心原性脳塞栓症であればヘパリンの投与(グレードC1)を行う。腎障害など禁忌がなければエダラボンを併用する。
小脳梗塞では脳浮腫から脳幹圧迫、閉塞性水頭症のリスクがあり、10-20%の患者に起こるとされる。この浮腫は3日目にピークとなるが、発症1週間以内であればいつでも起こりうるため注意が必要である。出血性梗塞ではそのリスクはさらに増加する。脳幹圧迫を示唆する外転神経麻痺、側方注視麻痺、末梢性顔面神経麻痺、意識障害が出現した場合はすみやかに外科的減圧術を検討する。脳卒中ガイドライン2015ではCT上、水頭症があり、水頭症による昏迷など中等度の意識障害がある症例には脳室ドレナージが考慮される(グレードC1)。CT所見上、脳幹部圧迫を認め、これにより昏睡など重度の意識障害をきたしている症例に対しては減圧開頭術が考慮される(グレードC1)。内科的に可能な脳浮腫への対応としては高張グリセオール(グレードC1)やマンニトール(グレードC1)の投与がある。

予後
小脳梗塞全体の死亡率は7%程度と報告されている。282人のフォローアップでは69%が3か月後に自立していた。めまい、頭痛、嘔気、失調のみで他の神経学的所見を呈さない患者では予後良好である。昏睡に至った患者では外科手術を行わなければ85%が死亡したと報告される一方、手術を行えば半数はmodified Rankin Scale (mRS)0〜2と予後良好であることから、発症早期におけるベッドサイドでの慎重な観察が重要である。

Appendix
Head impulse test
Head thrust testとも言う。前庭眼反射を見ることで末梢性の障害であるか中枢性かを見分けるのに役立つ。被検者は検者の前に座り検者の鼻をずっと見ているよう指示される。その上で、検者はすばやく被検者の頭を一方向に約20度回転させる。前庭眼反射が正常であれば被検者は検者の鼻をずっと見続けることができるが、前庭眼反射が障害されている場合は頭部と同じ方向へ眼が動き、その後検者の鼻へ戻るためのすばやい眼の動き(saccade)が生じる。これを陽性とする。小脳梗塞では通常、Head impulse testは陰性である。

小脳の血管支配

はじめに
小脳に分布する血管は椎骨脳底動脈とそこから分岐する左右の上小脳動脈、前下小脳動脈、後下小脳動脈の3種類の小脳動脈より構成されます。

1. 椎骨動脈 (vertebral artery; VA)
椎骨動脈は鎖骨下動脈に起始したあと、上行し、第六頸椎横突孔に入る。各頸椎横突孔を通り上行し、環椎レベルで横突孔を通ったあと、後方に屈曲し、環椎後頭膜を貫通し、大後頭孔を通り、硬膜を貫いて頭蓋内に入る。環椎後頭膜を貫通してから大後頭孔の硬膜を貫く間の椎骨動脈周囲には静脈叢が取り巻いており,海綿静脈洞との類似性から suboccipital cavernous sinusといわれる。 頭蓋内に入った椎骨動脈は後下小脳動を分枝した後に延髄・橋移行部レベルで左右が合流して脳底動脈を形成する。
 椎骨動脈の左右差は多くの症例でみられ,後下小脳脈分岐後の椎骨動脈低形成や欠損もしばしばみられる。頭蓋底部の椎骨動脈からは前髄膜動脈(anterior meningeal artery)や後髄膜動脈(posterior meningeal artery)が分岐する。前髄膜動脈は頚椎レベルの硬膜を栄養するとともに軸椎歯突起周囲で、上行因頭動脈や対側の前髄膜動脈と吻合odontoid arch を形成する。後髄膜動脈は後頭蓋窩を背側正中方向に走行し後頭動脈や中硬膜動脈後方枝などの外頚動脈系末梢枝と吻合する。頭蓋内椎骨動脈からは前脊髄動脈 (anterior spinal artery) や後脊髄動脈 (posterior spinal artery) が分枝し、各々延髄の前部 ・後部を栄養する。前脊髄動脈は しばしば左右の椎骨動脈遠位部から起始し,左右合流する。これら椎骨動脈分枝は硬膜動静脈瘻の経動脈的塞栓術や椎骨動脈解離によるクモ膜下出血時の椎骨動脈閉塞術などを行う際に重要である。

cerebellum

2. 後下小脳動脈 (posterior inferior cerebellar artery; PICA)
 後下小脳動脈(PICA)は解剖学的に延髄と小脳の位置関係から5つのsegmentと2つのloopに分けることができる。通常頭蓋内の推骨動脈V4 segmentから分岐し、延髄の表面を下降しながらまわり、外側に至り(anterior medullary segment)、延髄小脳裂を後方に向かい(lateral medullary segment)、迷走神経および副神経と交叉する。ここで延髄の背外側を栄養する穿通枝を分枝しながら、上方に反転し(caudal loop)、第四脳室後壁に沿って上行し小脳扇桃上局に達し(posterior medullary segment)、小脳扇桃内側上面に沿って後方へ向かう(supra-tonsilar segmentおよびcranial loop)。同部で外側(tonsilohemispheric branch)と 内側 (vermian branch) に分かれ, tonsilohemispheric branch は小脳扇桃や小脳半球下面に分布し、vermian branch は小脳半球間隙から背側小脳中部と小脳半球内側面を栄養する。末梢側 では上小脳動脈と潜在的な吻合を有する。後下小脳動脈の起始には変異が多く,AICAと共通幹を形成するものや、一部がAICAから起始するもの、頭蓋外から起始するもの、duplication, double origin,後髄膜動脈と共通幹を形成するものなど正常変異が多く見られる。

3. 脳底動脈 (basilar artery; BA)
 脳底動脈は左右の椎骨動脈が合流 して始まり橋前面から脚間叢を上行し左右の後大脳動脈に分かれる。途中傍正中動脈(paramedian artery) や短回旋動脈(short circumflex artery)、長回旋動脈(long circumflex artery) など脳幹への穿通枝を出すとともに、前下小脳動脈や上小脳動脈を分枝する。

4. 前下小脳動脈 (anterior inferior cerebellar artery; AICA)
脳底動脈近位部から分岐し,橋前面を外側やや下方に走行橋被蓋外側や中小脳脚を栄養しながら小脳橋角部に至り第VII,VIII脳神経およびLushuka孔域と近接する。内耳孔後方にてループ(meatal loop)を形成しながら走行し、尾内側幹(caudomedial trunk)と吻外側幹(rostrolateral trunk)に分かれる。前者は中小脳脚および小脳前下面に分布し、後者は大水平裂に沿って外方に進み上下半月小葉に分布し発達が良い場合には小脳延髄裂の外側部から後方に走行して、PICAが低形成な場合には、PICA域を代償することがある。またmeatal loop近傍から内耳や顔面神経管に分布する内耳動脈(internal auditory artery)や第4脳室脈絡叢外側部への脈絡動脈、弓状動脈(subarcuate artery)などが分枝する。subarcuate artery はPICAの硬膜枝として、錐体部にて中硬膜動脈のpetrosal branch や後頭動脈のmastoid branchなどとの潜在的な吻合を有する。

5. 上小脳動脈 (superior cerebellar artery; SCA)
上小脳動脈(SCA)は通常脳底動脈末端より数ミリ近位側から側方に起始するが、後大脳動脈との共通幹形成がみられる場合がある。またSCAが複数存在する場合も約30% の頻度でみられる。脳底動脈から分岐後大脳脚の周りを脚間槽から迂回槽、四丘体槽内を進み中脳被蓋背側に達する。迂回漕部から外側辺縁動脈 (lateral marginal artery) や半球枝が分枝し、各々小脳半球前面と上面に分布する。またこの付近から小脳中心前動脈(precentral cerebellar artery)が分岐し上小脳脚に沿って小脳中脳裂に深く入って小脳白質・歯状核を栄養する。lateral marginal arteryなどはAICA と相補的な関係にあり、lteteral marginal arteryが発達している場合にはAICAは小さい場合が多い。上虫部枝 (superior vermian branch)はSCAの終末枝であり、後上方に走行し、山頂を越えて虫部に分布する。SCAからも硬膜枝の分岐はあり、テント外側下面に分布し、横-S状動脈動部の硬膜動静脈瘻などの際にfeederとして認識される時がある。

小脳動脈の発生
前下小脳動脈(AICA)と後下小脳動脈(PICA)は系統発生学的には内頸動脈のcaudal divisionには属さない椎骨脳底動脈系のpial arteryである。発生初期の両動脈は第四脳室内の大きな脈絡叢を栄養する分岐(choroidal brunch)を出す。その後も両動脈は小さなchoroidal brunchを出し、脈絡叢からの血流はlateral recess veinに導出される。特にPICAは発生学的には新しい脊髄の動脈であるが、小脳の発達と共にヒトでは小脳を栄養するようになった。このためPICAおよびAICAの椎骨動脈および脳底動脈からの分岐位置は症例によって異なる場合がしばしばみられ、PICAが無形成(agenesis、15-20%)の場合や同側から複数起始する場合もある。無形成の場合は同じ側のAICAがその領域の灌流を担う(AICA-PICA)が、対側PICAからの灌流はみられないのが通常である。
前述の2つの下小脳動脈に対して、上小脳動脈(SCA)は発生学的には本来小脳を栄養する動脈であり、内頸動脈のcaudal divisionに属し、発生過程で必ず存在する動脈で、下小脳動脈の分枝位置が色々あるのに反してSCAの分岐位置は一定している。つまり脳底動脈からの小脳動脈の分岐点は尾側に向かうほどvariationが多くなるということになる。
古い上SCAと新しいAICA・PICAの間には吻合が豊富にあり、PICAの末梢部(teloverotonsiler segment)での意図的閉塞において梗塞にならないことが多いのはこの発生学的背景があると考えられる

小脳動脈の灌流分水嶺域
3つの小脳動脈の末梢枝間には、大脳の動脈と同様の脳軟膜血管血管吻合があり、側副血行路として機能しうる。小脳動脈間にも境界域があり、PICA-SCA皮質境界領域は小脳水平裂から上半月小葉付近である。このためPICA-SCA皮質境界領域の梗塞巣は横断像では拡大した水平裂のpertial volume effectと鑑別がしにくい。後者は両側対称性にかつ境界不明瞭で、上下の隣接する断面の観察あるいは矢状断や冠状断の併用によって鑑別する。小脳の深部白質領域にもPICA、AICA、SCAの穿通枝間の境界域があると考えられる。

小脳の静脈解剖と静脈環流
上虫部静脈(Superior vein of vermis)は小脳虫部の上方部分とそれに隣接する小脳よりの還流をうけ、大大脳静脈(vein of Galenに注ぐ)。大大脳静脈に還流する前に、小脳中心前静脈よりも鮮明に造影される場合が多く、また側面像においては小脳中心前静脈の前方より大大脳静脈に流入する。
下虫部静脈(Inferior vein of vermis)は天幕静脈洞還流群でもっとも重要な静脈で、小脳虫部下部、その近傍の小脳半球と小脳扇桃部分を還流する。この静脈は左右対をなして正中部を走行し、静脈洞突会、横静脈洞あるいは直静脈洞に、直接または天幕静脈洞(tentorial sinus)を介して流入する。稀に、この静脈が走行中に相互に吻合し、1本の下虫部静脈となることがある。
下小脳半球静脈(Inferior veins of cerebellar hemisphere)は小脳半球の下部の血液を還流し、上方に走行し、おもに横静脈洞に直接または天幕静脈洞を介して流入する。この静脈は小脳後下面の上内側面で最も発達しており、それらは静脈交会洞、天幕静脈洞、または下虫部静脈に合流している
小脳中心前静脈(Precentral cerebellar vein)は中脳背面と小脳前面で、小舌と中心小葉の聞にある小脳中心前裂内を走行し、その近傍より血液を受ける。この裂内では第四脳室上部(屋根)と平行して前方に走行し、その後、下丘の下縁で後上方に転じ、虫部山頂の前に出て、さらに上方に走行し、大大脳静脈槽にはいり、大大脳静脈に合流する。
錐体静脈(Petrosal vein)は小脳脳幹部前面(錐体面)における最大の静脈で、小脳半球の前面又は外側部にある静脈群のほとんどの静脈群より血流を受けている。長さは2-2.5cmで、片葉(flocculus)近傍より三文神経の背側にそって前上方に走行し、 上または下錐体静脈洞に還流する。この静脈は後頭下関頭による手術の際に損傷する危険性があり、注意が必要である。また三叉神経を圧迫し、三叉神経痛の責任血管となることがある。

日本脳炎(Japanese encephalitis; JE) 治療

寄稿原稿です:thanks a lot by 管理人

特異的な治療法はなく、対症療法が中心となる。高熱と痙攣の管理が重要である。脳浮腫は重要な因子であるが、大量ステロイド療法は一時的に症状を改善することはあっても、予後、死亡率、後遺症などを改善することはないと言われている。

予後
死亡率は20-40%で、幼少児や老人では死亡の危険は大きい。精神神経学的後遺症は生存者の45-70%に残り、小児では特に重度の障害を残すことが多い。パーキンソン病様症状や痙攣、麻痺、精神発達遅滞、精神障害などである。