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MAG抗体関連末梢神経障害 診断

概念
IgMパラプロテイン血症に伴うニューロパチーは、比較的高齢発症で慢性進行性のポリニューロパチーを呈する疾患です。抗MAG抗体が約50-70%程度で陽性になるといわれ、同時にMAG抗体陽性例のほとんどは抗SGPG抗体陽性でのようです。
本疾患は、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)と臨床所見、電気生理学的所見が類似します。しかしながら、治療反応性が異なるため、本疾患をCIDPと区別することは臨床上とても重要です。

MAGとSGPGについて
sulfate-3-glucuronyl paragloboside (SGPG) は硫酸化グルクロン酸を有する酸性糖脂質で、myelin-associated glycoprotein(MAG)はSGPGを含む末梢神経の複合糖質に存在しています。それらに対する自己抗体はIgMであることが多く、IgMパラプロテイン血症が検出された末梢神経障害症例では、抗MAG/SGPG抗体の測定が必須です。

疫学
65%が男性で、平均発症年齢は59歳。90%は緩徐進行性で、10%は急性から亜急性の発症

症状

    四肢遠位優位の感覚障害:表在覚及び深部覚低下
    痛み、異常感覚
    四肢遠位優位の筋力低下
    失調症状
    姿勢時振戦

検査

    血液検査:免疫グロブリンの測定や、免疫電気泳動など
    髄液検査:あまり特異的な所見はありません
    MAG/SGPG抗体:海外検査機関や近畿大学神経内科へ相談
    骨髄検査:IgM量が多い場合
    電気生理学的検査:感覚優位の脱随型ポリニューロパチーの所見ですが、Conduction blockは通常見られません。遠位潜時の強い延長と、common entrapment siteでの伝導遅延が特徴です

    腓腹神経生検
    脱随所見が主体で、Thin myelinが多く見られ、再生像やOvoidはほとんど見られません。また、HNPPなどでも見られるredundant myelination (hypermyelination)の所見がsemithinで見られます。電顕では、widely spaced myelinというintermediate lineやdense lineを認めるミエリンのほぐれを認めます。POEMSなどでは、uncompacted myelinというintermediate lineの目立たないほつれが見られ鑑別に少し役立ちます。J Neurol Sci. 2012;319:75-80に良く記載されています。

    また、凍結切片などでIgMの沈着を免疫染色にて確認する報告もあります。

呼吸不全 update

Causes and Outcomes of Acute Neuromuscular Respiratory Failure. Arch Neurol. 2010;67(9):1089-1094.
重症筋無力症やGBSなどの神経心疾患による呼吸不全でICUに入院した場合、入院時に診断が不明であることは予後不良と関連していた

神経芽腫 update

Anti-GD2 Antibody with GM-CSF, Interleukin-2, and Isotretinoin for Neuroblastoma. N Engl J Med 2010; 363:1324-1334.
高リスクの神経芽腫患者に対する ch14.18(腫瘍関連抗原ジシアロガングリオシド GD2 に対するモノクローナル抗体),GM-CSF,インターロイキン-2 を用いた免疫療法は,標準的なイソトレチノイン(isotretinoin)治療に比べて転帰の有意な改善と関連していた

Outcome after Reduced Chemotherapy for Intermediate-Risk Neuroblastoma. N Engl J Med 2010; 363:1313-1323.
中間リスク神経芽腫患児において,MYCN 増幅に関する生物学的特徴に基づく治療割付けのもと,先行試験で用いられたレジメンよりも化学療法の投与期間を大幅に短縮し投与量を減量した結果,非常に高い生存率が達成された

遠位型ミオパチー update

Redefining dysferlinopathy phenotypes based on clinical findings and muscle imaging studies. Neurology 2010 75: 316-323.
ジスフェルリン遺伝子変異による遠位型筋ジストロフィー(三好型)と肢体型筋ジストロフィー2Bでは、予後、進行度、遺伝子系などに差は認めず、筋MRIでも大内転筋と内側腓腹筋に最初に異常が検出されるなど共通点が多い

Analysis of NCAM helps identify unusual phenotypes of hereditary inclusion-body myopathy. Neurology 2010 75: 265-272.
遺伝性封入体筋炎及び封入体を伴う遠位型ミオパチーでは、NCAM (神経細胞接着因子)のシアル化異常が免疫電気泳動で確認でき、シアル化の少ないNCAMは主に非再生線維に発現していた

抗リン脂質抗体症候群(APS) 診断

はじめに
抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome:APS)は、血液中にループスアンチコアグラント(lupus anticoagulant:LA)や抗カルジオリピン抗体(anticardiolipin antibodies:aCLs) といった抗リン脂質抗体(antiphospholipid antibodies:aPLs)が検出される疾患で、動静脈血栓症、習慣流産(不育症)や胎児死亡などの様々な臨床症状を生じる自己免疫疾患です。抗リン脂質抗体に関しては、測定可能なもの以外にも沢山の抗体が存在します。
自己抗体が検出されることから、血栓症以外に自己免疫性疾患としての病態が加わります。原発性APSと全身性エリテマトーデス(SLE)に合併する2次性APSに分類しますが、2次性の原因疾患に関してはSLE以外は非常に稀です。

疫学
APSは後天性の血栓性疾患の中では最も頻度が高く静脈(約35%)にも動脈(約65%)にも血栓症を起こしますが、一過性脳虚血発作(transientischemicatack:TIA)や脳梗塞などの脳血管障害が90%以上を占め、虚血性心疾患は少ない特徴があります。神経内科では若年性脳梗塞や脳静脈洞血栓症の原因疾患として、あるいはLivedoやSLEに合併した病態として診療に関わることが多いかとおもいます。

APSに合併しやすい神経症状

    脳血管障害:脳梗塞、TIA、一過性黒内障、脳静脈洞血栓症、Sneddon症候群
    末梢神経障害:livedo vasculopathy
    頭痛・片頭痛
    てんかん
    舞踏病・ジストニア:autoimmune chorea [ref]
    高次脳機能障害、認知症
    行動異常・脳症
    うつ病・神経症
    網膜動静脈血栓症
    その他(APSに関連すると思われる神経症状)
     視神経炎
     多発性硬化症
     横断性脊髄炎
     特発性頭蓋内圧亢進症

検査
APSの検査は、抗凝固療法を開始する前、あるいは中止後に採血を行ってください

    血液:APTT延長、抗カルジオリピン抗体IgG (and IgM)、抗β2-GPI抗体、ループスアンチコアグラント(LAC)[APSは疑われるけれどもこれらの抗体が陰性の場合にはフォスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体の測定をしても良いかもしれません]
    抗リン脂質抗体(anti phospholipid antibody, aPL):抗カルジオリピン抗体、LAC、抗カルジオリピンβ2グリコプロテインI複合体抗体(抗CLβ2GPI抗体)、フォスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体(aPS/PT抗体)が代表的です。一方で、LACと抗カルジオリピン抗体は健常者の1〜5%で陽性となる報告もあり注意が必要です。
    抗カルジオリピン抗体(aCL):カルジオリピンとβ2-glycoproteinIとの複合体に結合する抗体(aCL-β2GPI)と、β2-glycoproteinIを必要としない2種の抗体があることが判明しています。ポリクローナルなグロブリン産生が亢進した疾病では後者のことがありますが、APSで血栓形成に関与するのはaCL-β2GPIの方(前者)と考えられています。
    ループスアンチコアグラント(LA):リン脂質依存性の凝固反応を阻害する自己抗体です。ループスアンチコアグラントの半数は、凝固因子の第V因子、第X因子、細胞膜リン脂質とで反応するprothrombin activator complexに働いて活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の延長をひき起こします。

診断基準
血栓症がなく、抗体検出のみの場合はAPSと診断されません。
臨床所見
(1)血栓症:画像検査や病理検査で確認が可能な動脈または静脈血栓症
(血管のサイズや部位は問わない。血管炎や表層性の静脈炎は除外)
(2)妊娠合併症
 妊娠10週以降の胎児奇形のない子宮内胎児死亡
 妊娠高血圧もしくは胎盤機能不全による妊娠34週以前の早産
 3回以上つづけての妊娠10週以前の流産
(ただし、母体の解剖学異常、内分泌異常、父母の染色体異常を除く)
検査基準
(1)国際血栓止血学会ガイドラインに従った測定法による、ループスアンチコアグラント(lupus anticoagulant, LAC)が12週以上の間隔をおいて2回以上陽性
(2)中等度以上の力価(40GPLまたはMPL以上, あるいは99%タイル以上)のIgGあるいはIgM型抗カルジオリピン抗体が12週以上の間隔をおいて2回以上陽性
(3)中等度以上の力価(99%タイル以上)のIgGあるいはIgM型抗β2GP1抗体が12週以上の間隔をおいて2回以上陽性
 ※少なくとも1つの臨床所見と1つの検査所見が存在するときに抗リン脂質抗体症候群と診断する

病因
これまで抗リン脂質抗体自体が血栓形成の病原性自己抗体と考えられてきましたが、どちらかというと間接的に作用するようです。つまり、抗リン脂質抗体が単球/血小板/血管内皮細胞へ作用して、NF─κBやp38MAPK、MEK─1/ERK経路を活性化、組織因子やサイトカイン、接着分子の放出を促して、外因系凝固反応を惹起することにより、血栓症に至るなどのメカニズムが想定されています。
その他、β2─GPI(β2─glycoproteinI)および抗β2─GPI抗体との複合体も重要な抗原と位置づけられていて、抗リン脂質抗体の誘導においてβ2─GPIによるトロンビン抑制の障害、トロンボキサンの産生亢進が、APSにおける血栓症発症メカニズムとも考えられています。

抗リン脂質抗体症候群(APS) 治療

はじめに
APSの抗血栓療法はなかなかしっかりとしたエビデンスのある論文がありません。静脈血栓は抗凝固で良いと思いますが、動脈血栓はどうでしょうか。今後のエビデンスの集積が必要です。

静脈血栓症
VTEや肺血栓塞栓症、脳静脈洞血栓症、livedo vasculopathyなど静脈系といえば、APSであっても抗凝固療法ですね。VTEであっても、通常のVTEと違って、6カ月以上の長期間治療することが推奨されています。
1. ワルファリン:INR 2.0-3.0にコントロール
(INR 3.0-4.0へのコントロールによるベネフィット上昇はないようです)

動脈系血栓症
脳梗塞をはじめとした動脈系血栓症です。脳卒中ガイドラインでは、APA陽性患者の脳梗塞再発予防に, 第 1選択としてワルファリンが使用されるが, 十分な科 学的根拠はない(グレード C1)」の記載にとどまっています。実際には抗血小板療法 vs. ワルファリンに関しては、どちらが強い血栓症抑制効果があるかは判明していません。
1. アスピリン、プラビックス、シロスタゾールなどの抗血小板薬
and/or
2. ワルファリン:INR 2.0-3.0にコントロール

妊娠合併症
1. aPLs陽性で、流産の既往がある場合
アスピリン;81-100 mg
2. さらに、血栓症の既往があったり、少量アスピリンが無効の場合
ヘパリン
3. さらに、少量アスピリンおよびヘパリン併用にもかかわらず妊娠合併症を繰り返す場合
少量ステロイドやγグロブリン大量静注療法の報告例もあります

急性動静脈血栓症
1. 血小板2万/μL以下の重症の血栓性血小板減少症を合併した場合
単純血漿交換
2. 凝固線溶異常を伴う場合
ヘパリン製剤や抗トロンビン薬による抗凝固療法や組織プラスミン・アクチベーターによる線溶療法

NOACとAPS
ワルファリンを超える治療効果は今の所報告されていません。幾つか無作為試験が行われているため、その結果が出るまでは使用は推奨されません。

Appendix
aps
日内誌 2010;vol99:1769-より引用 [ref]

抗リン脂質抗体症候群(APS)update

Movement disorders in systemic lupus erythematosus and the antiphospholipid syndrome. J Neural Transm. 2013 Apr 13.
[総説] SLE及びAPSによる不随意運動の病態と治療

Antiphospholipid syndrome. The Lancet, Early Online Publication, 6 September 2010.
抗リン脂質抗体症候群の総説

Neuropsychiatric disorders revealing primary antiphospholipid syndrome in an elderly patient. Neurology 2009 72: 1362-1363.
抗リン脂質症候群により精神神経症状を来たした72歳高齢女性

薬剤性認知機能障害 update

Use of anticholinergics and the risk of cognitive impairment in an African American population. Neurology 2010 75: 152-159.
アフリカ系アメリカ人では、抗コリン薬の使用は認知機能障害の危険性の1.5倍の増加と関連していた