不随意運動

Hyperkinésie volitionnelle(意図動作時運動過多) 治療

なかなか薬物療法への反応が乏しいことが経験的には多くあり、時に外科的治療を考慮する必要があります。

1. 原因疾患の治療

2. 内服治療

    クロナゼパム
    レベチラセタム
    フェノバルビタール
    β blocker
    L-dopa
    Dopamine agonist

3. 外科治療
Vim破壊術や深部刺激療法

Hyperkinésie volitionnelle(意図動作時運動過多) 診断

はじめに

「随意運動に際して生ずる舞踏病にも似た強い不随意運動であり、運動が開始されるやいなや体肢の行う意図した動作の方向が急激に乱されてしまうほどのもの」とGarcinにて初めて記述されました(Garcin Rら:Rev. Neurol:70;1938)。主に上肢に見られることが多いのですが、意図動作時に指などが目標に近づくに従って不随意運動が強くなり、意図的に両指先を近づけようとしても目標に近づくにつれてその振幅が大きくなるという反抗運動も加わり目標にさわることすらできないものとされ、その運動の大きさゆえに剣闘士に例えられることもあります。
心理的緊張が少ない習慣的な日常動作(上着の着脱、ボタンはめなど)を自然に行う時には明らかに減弱する。動作が意図的であるほど激しく振るえ、自動的な動作では振戦は軽度である(自動運動-意図動作乖離, automatico-voluntary dissociation)などの特徴も知られています。
上記の特徴が重要ですが、古い概念ですので幾つかの病態生理が混在していると考えます。振戦あるいはミオクローヌスあるいは双方の混在であることが多いように思いますので、以下のような呼称をされている可能性もあるかと思われます。

Hyperkinesies volitionnelles(意図動作時運動過多)

    postural tremor:振戦が強いもの(振戦型)
    action myoclonus:ミオクローヌスが主体のもの(ミオクローヌス型)
    over shoot oscillation

基礎疾患

責任病変
小脳遠心路系(歯状核―赤核―視床路)、視床下部、脳幹被蓋、末梢神経の障害との関連が指摘されています

破傷風(テタヌス) 診断

はじめに
破傷風(Clostridium tetani)は偏性嫌気性のグラム陰性桿菌に属する芽胞形成菌で、土壌中や汚泥中に芽胞形成した状態で広く分布しています。
通常人への感染は、挫滅創などの創傷部位から侵入し嫌気状態で発芽したあとに、以下の二種類のtetanus toxinを産生します。

    tetanospasmin:抑制性シナプスにおけるAchの遊離を抑制して、牙関緊急、後弓反張、呼吸筋の痙攣などの破傷風症状の原因になります
    tetanolysin:組織壊死により嫌気性の環境を作り出し、貪食作用を抑制して菌の発育を促進します

疫学
破傷風の年間発症件数はおよそ100件前後で、DPT(百日咳・ジフテリア・破傷風)の摂取と破傷風トキソイドの普及で比較的稀な疾患となっています。しかしながら国立感染症研究所によれば、24歳以下では90%以上が防御に有効な抗体価を持っているものの、30歳以上では20%程度に低下すると言われています。
感染した場合の死亡率は15〜40%と高く、呼吸筋の麻痺や循環動態の悪化が主な原因とされています。

症状・経過
潜伏期は3〜14日間で、病期は以下の4期に分けられます。開口障害などの症状が出現してから全身の痙攣を来す第3期までの時間をonset timeと呼ますが、これが48時間以内であると予後不良といわれているようです。
神経内科では上記の典型的な破傷風症状以外に、脳幹ミオクローヌスあるいは多発脳神経麻痺の症状を来した場合(脳神経型破傷風)に本疾患を疑うことがあります(下記)

    第1期
    牙関緊急と呼ばれる開口障害や頸の張りなどの軽度の症状が出現するまでの前駆期
    第2期
    上記症状悪化と顔面筋の緊張・硬直により苦笑のような破傷風に特徴的な症状である「痙笑」が現れます
    第3期
    全身の硬直性痙攣、頻脈や血圧の変動など自律神経の活動亢進などのため、生命に最も危険な時期で1〜3週間程度持続します。
    第4期
    回復期

検査

    培養検査:明らかな感染創などがあれば、そこから破傷風菌の証明にtryしますが必ずしも検出率は高くありません
    血液検査:破傷風抗体測定(ワクチンにより産生された感染防御抗体が残っているかどうかの検査であって、直接的な診断にはなり得ません)
    毒素検査
    髄液検査:脳神経型を含め、細胞増加などの異常は検出されないようです
    脳MRI:基本的には異常は検出されません

脳神経型破傷風の特徴
体内で産生されたテタノスパスミンは、末梢性運動ニューロン内に取り込まれて軸索を逆行性に輸送されて、その後抑制性の介在ニューロンに乗り換えてGABAやグリシン作動性の抑制性シナプスを遮断、運動系の最終経路に脱抑制をきたすと考えられています。局所の運動ニューロンで留まれば限局型破傷風や脳神経型破傷風となるのですが、血行性にテタノスパスミンが散布されると全身型破傷風となって、顔面や頸部付近の筋緊張から始まり、全身強直性痙攣となって自律神経障害を合併し重症全身型破傷風となります。多発脳神経麻痺を生じる、脳幹型テタヌスの特徴は以下の通りです

    開口障害に1つ以上の脳神経麻痺を来した破傷風と定義されます
    麻痺を来す脳神経はIII、IV、VI、VII、XIIで、その中でも最多は顔面神経(VII)です
    脳神経型破傷風の症例数は全破傷風症例の1〜3%と稀で、約60%が全身型破傷風へ移行します
    脳神経型破傷風に特異的な治療法はないので、一般的な破傷風の治療を行います
    抗毒素による特異的治療は必須ですが、いったん毒素が末梢性運動ニューロン内に取り込まれると免疫グロブリンでは中和できないため、症状は長期間持続します

破傷風におけるhyperexplexia
破傷風では音の刺激や、顔面・前胸部のtappingにより全身性のミオクローヌスが生じることが知られています。吻側から尾側にかけて全身性に生じるミオクローヌスは、脳幹レベルにおけるグリシン作動性抑制性シナプスの障害によると考えられていますので、PERMと同様の病態が考えられます(脳幹ミオクローヌス

筋強直を伴う進行性脳脊髄炎(progressive encephalomyelitis with rigidity and myoclonus: PERM)診断

はじめに
progressive encephalomyelitis with rigidity and myoclonus(PERM)、非常に長い病名ですが、従来はStiff-Person症候群の類縁疾患と考えられていて、GAD抗体が検出されることもあります。
しかし、2008年にVincentらが遺伝性驚愕反応症(hyperekplexia)におけるGlycine受容体の変異を参考にPERM症例中に抗グリシン受容体抗体を発見したことから、抗GlyR抗体関連疾患として新たな疾患概念ではないかとも考えられるようになりました。
症状
Stiff-person症候群同様の四肢・体幹の筋硬直に加え以下の症状が出現します。また、Stiff Person症候群よりも経過が早い事が多い様です。

    脳幹障害:眼球運動障害、難聴、開口障害、顔面神経麻痺、構音・嚥下障害
    脳幹myoclonusこのページの下段参考
    自律神経症状

グリシン受容体
機能:脳幹や脊髄に主に発現しているイオン型受容体で、Clイオンの流入によりシナプス後膜の興奮性を抑制しています。
分布:脊髄前角・後角や脳幹の橋網様体、三叉神経や外転神経、顔面神経、前庭神経、蝸牛神経
のそれぞれの核や迷走神経背側運動核、疑核、孤束核、舌下神経核

抗GlyR抗体はこれらの抑制性の機能阻害???

脳幹や脊髄のα運動ニューロンの持続性過剰発火:開口障害や顔面四肢体幹筋の硬直?
外転神経核/前庭神経核におけるグリシン作動性ニューロンの抑制性入力の機能低下:側方注視麻痺や眼振?

tips
PERMは急性に症状が進行することも多い為、また、脳幹myoclonusの出現から破傷風と鑑別が困難なことがあります。大きな鑑別点は、髄液所見です。
perm-tetanus

Stiff-limb症候群

はじめに
1997年に、Brownらが中年発症で慢性に経過する仮死に限局した有痛性筋攣縮を呈するStiff-leg症候群を報告しました。報告された4例ではGAD抗体は陰性でしたが、その後の解析により42%程度で検出されると考えられています。
Stiff-Person症候群の亜型ですが、以下のような特徴があります。

    初期には筋硬直や筋攣縮は手足に限局して腰部前弯は伴いません
    小細胞癌や肺癌関連症例では抗amphyphisin抗体が検出されることがあります
    高頻度・低頻度刺激の療法でpresynaptic driveを認めます(SPSでは見られない)
    SPSと比較して糖尿病合併例はあまりありません
    しかしながら、ほとんどの症例が後に全身型に移行します
    多くは再発・寛解の病歴が見られます

ミオキミア Myokymia 診断

はじめに
Myokymiaとは“myo”+”kyma(=wave)”をくっつけたもので、筋の表面を広がる虫の這ったような、さざ波だった動き(持続性の筋の波打つような動き)として臨床的には特徴付けられています。まずは、Yotubeで見てみましょう。正常でも出ることはあります。
覚醒時にも睡眠時にも出現します。
出現する部位は、局所性、全身性様々ですが、最も有名な疾患はVGKC抗体関連疾患であるIsaacs症候群でしょうか。

その他の特徴

    男女比は2:1で男性が多いようです
    随伴症状:筋肉痛、掻痒感、皮疹、自律神経障害、不眠
    末梢神経の過興奮性(peripheral nerve hyperexcitability: PNH)が原因と考えられている一方で、多発性硬化症、脳幹梗塞など中枢性疾患でも見られることがあります。

電気生理
Myokymic discharge:個々の運動単位の自発的に生成された規則的またはほぼ規則的に繰り返される5-150Hzのburstです。Burstはdoublet、tripletまたはmulipletとなって出現します。
myokimia emg

原因疾患

    Isaacs症候群
    甲状腺機能異常
    重症筋無力症
    Guillain-Barre症候群などの末梢神経障害
    ALS
    横断性脊髄炎
    手根管症候群
    放射線性神経障害[ref]
    脊髄麻酔
    急性アルコール中毒
    過激な運動

病態
病態生理は完全には解明されていませんが、運動神経軸索膜のhyperexcitabilityが関係していると考えられています(peripheral nerve hyperexcitability: PNH)。Myokymic dischargeを引き起こす軸索膜の局所的な異常興奮の原因としては脱髄のほか、放射線障害、直接的な毒性作用、虚血、低酸素、浮腫、圧迫などがあります。運動神経軸索のGenerator部位は必ずしも決まってはいないようで、多発性硬化症や橋Gliomaなどでは近位にあり、Guillain-Barré症候群などでは遠位にあると考えられています。Burstは運動によって誘発されることもあることから、随意MUPがgenerator siteを通過するときに繰り返す発火が始まる病態も考えられています。
ある種のmyokymic dischargeまたはneuromyotonic dischargeは軸索のVGKC channnelの異常によって(Isaccs症候群)、EA type1に伴うmyokymiaではK+ channel遺伝子であるKCNA1の点変異が同定された。

Generator部位の同定
Generatorが脳実質内か、実質外かの鑑別には以下の方法がマニアックにはあります。
Guillain-Barré症候群などの末梢型の場合、病変部周囲のCa2+濃度を調節することで、発火頻度が変わるという特徴があります。つまり、過呼吸によるアルカローシス、Ca2+の濃度低下を引き起こすことで発火頻度が増加、CaCl2静注によってCa2+濃度を上昇させると発火頻度は低下します。しかし、脳実質内型では上記の変化がおきることは少ないようです。

痙性斜頸 (Cervical dystonia) update

Muscle selection for treatment of cervical dystonia with botulinum toxin – A systematic review. Parkinsonism Relat Disord. 2012;18:731-6.
痙性斜頸におけるボツリヌス毒素注入部位の検索法に関する総説

Supine head tremor: a clinical comparison of essential tremor and spasmodic torticollis patients. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2012;83:179-81.
本態性振戦での頭部振戦と比べ痙性斜頸での頭部振戦は臥位でも持続することが多い

ドーパ反応性ジストニア 診断

概要
14q22.1-22.2 に存在する GTP シクロヒドロラーゼ1の変異により発症する常染色体優性遺伝性疾患で、筋緊張異常によるジストニアを主徴とします。10歳以下で発症することが多いので小児科で診療されることも多いのですが、成人発症型もあります。

症状

    ジストニア:多くは、下肢ジストニアにより歩行障害をきたします。ジストニア肢位によって、尖足、内反尖足となること多い印象があります。また、日内変動があり、昼から夕方にかけて症状が悪化し、睡眠によって改善するというsleep benefitを認めることも特徴です
    固縮、姿勢時振戦

以上の症状は、レボドパにより著明に改善します。成人発症例では、パーキンソン病様症状などで発症する例も報告されています

検査

    血液検査:テトラヒドロビオプテリン(BH4)、GCH1遺伝子変異の検索
    髄液検査:ネオプテリン、ビオプテリン、HVA、MHPG、5-HIAA測定(関西医科大学、新宅先生)
    脳MRI:あまり特異的所見はありません
    PET:ドーパミンPETでもそれほど特異的な異常は検出されません

プテリジン代謝異常
プテリジン(pteridin)は、ピリミジンとピラジンが結合の一辺を共有した構造の化合物です。
まず、プテリジン代謝の律速酵素がGTP Cyclohydrolase1(GTPCH1)です。
GTP Cyclohydrolase1(GTPCH1)は、THの重要な補酵素で、tetrahydrobiopterin(BH4)生合成の最初の段階を触媒します。そのため、脳内のドパミンの減少を引き起こし、ジストニアの原因となります。脳脊髄液における総ビオプテリン(BP、多くはBH4として存在)量とネオプテリン(NP、GTPCH1反応として合成される)量の組成を測定することはGTPCH1欠乏性DRDの診断に有用です。
GTPCH1欠乏性DRDでは脳脊髄液におけるBPとNPの濃度は低下しますが、TH欠乏性DRDは脳脊髄液におけるBPとNP濃度は両方とも正常です。GTPCH1酵素をコードするGCH1遺伝子の変異は常染色体優性遺伝のDRDの原因となりますし、TH酵素をコードするTH遺伝子の変異は常染色体劣性遺伝のDRDの原因となります。

アテトーゼ(athetosis) 治療

なかなか有効な治療法がありません。
1. 抗精神病薬
どちらかというと、合併するコレア、ジストニアに対する効果を期待して処方します

    セレネース
    グラマリール
    リスパダール
    セルシン

2. 抗不安薬
精神的緊張で悪化する場合に使用します

抗NMDAR抗体陽性脳炎 診断

概念
主には、卵巣奇形腫を持つ女性に発症し、NMDA受容体抗体による自己免疫性のメカニズムによって辺縁系症状を来す疾患です。現在では、免疫関連性脳炎の2番目の頻度を占めると言われています

症状
大きく分けて、early stageの症状と、late stageの症状に分けられます
Early stage

    前駆症状(25%-70%):頭痛、発熱、吐き気、下痢、上気道炎症状
    数日以内に精神症状:不安、不眠、おそれ、幻視、被害妄想、マニア、社会性の低下、短期記憶の低下、発語の低下、反響言語(精神科を受診することも多い)
    痙攣発作(82%):部分発作や全般発作
    不随意運動のためてんかんと認識されないことや、逆に不随意運動をてんかんと誤って診断されることがあるので注意が必要です

Late stage

    意識の低下、異常運動、自律神経異常が出現
    異常運動として口・舌・顔面のdyskinesia、四肢のchoreoathetosis、dystonia、rigidity
    自律神経障害として高体温、除脈-頻脈、唾液分泌亢進、高血圧、排尿障害、勃起障害、低換気
    意識障害などを呈さない軽度の症状で改善する例も報告されています

検査

    血液検査:抗NMDAレセプター抗体測定(Dalmauのlabに依頼)、腫瘍マーカーも
    髄液検査:軽度のリンパ球増加、蛋白は正常から軽度上昇、OCB陽性率は60%、抗NMDAレセプター抗体陽性
    脳波検査:50%にてんかん波(早期)、後期には、徐波、Slow continuous rhythmic activity delta-theta rangeなど
    脳MRI:異常所見が検出できるのは10-50%程度ですが、海馬、小脳、大脳皮質、島、基底核領域に異常信号を認めることがあり、自然に消退することが多いようです
    脳SPECT
    脳PET
    骨盤CT、骨盤MRI、超音波、PET:卵巣奇形腫をしつこいほどに検索しましょう

合併する腫瘍の特徴

    26%-60%の症例が卵巣奇形腫を合併し、最多です
    抗NMDAR抗体陽性辺縁系脳炎を発症した数カ月から数年後に奇形腫が明らかとなる症例もあります
    他に精巣腫瘍、胸腺腫、neuroblastoma、ホジキンリンパ腫などの合併が報告されています

NMDAレセプター抗体とは?

    グルタミン酸レセプターの一種です
    いくつかのsubunitがありヘテロ4量体を形成しています
    NMDA-R抗体辺縁系脳炎ではNR1、NR2B複合体の細胞膜表面に対する抗体が検出されます
    NR1はびまん性に、NR2Bは前脳に発現しています
    生理的には神経回路形成、記憶学習、シナプス可塑性などに関与しているようです

歴史
1997年Nokuraらが卵巣奇形腫摘出後に著明に症状が改善した辺縁系脳炎を報告しました。その後も若年女性に好発し遷延する非ヘルペス性脳炎が(Acute juvenile female non-helpetic encephalitis; AJFNHE)として報告されていました。最終的に、Dalmauらが2005年に同様の症例を8例報告(7例が卵巣奇形腫の合併)し、2007年にこれらの症例(+8例)からN-methyl D-aspartate receptor(NMDAR)特異抗体を検出し、新たな傍腫瘍症候群として提唱されました。