内科疾患に伴う神経合併症

肝性脳症 診断

病態
食事中の蛋白質は腸内細菌の作用によりアンモニアに変換されて、アンモニアは肝臓で尿素に代謝されることになってます。
肝硬変などの肝機能障害によって、門脈血が肝臓を通らず、全身の循環系(下大静脈)に直接流入(portal – systemic shunt)と高アンモニア血症になり以下の症状を来します

臨床症状

    意識障害:異常行動,肝性昏睡
    不随意運動:はばたき振戦

診断

    血液:血漿アンモニア値の上昇(肝性脳症をおこす真の原因物質は不明)
    脳波:三相波
    脳MRI:T1強調画像における淡蒼球,中脳大脳脚の高信号(マンガンの沈着によるものではないかと考えられています)

triphasic

典型的な三相波

    基線の上下を交替する3つの成分(陰−陽−陰、または、陽−陰−陽)から構成されます
    三相波の持続は300〜500msec程度で、成分的な持続時間は第3相が最も長く、次いで第2相、第1相という順になります
    振幅は一般に最初の陰性部分が50〜100μV、次の陽性部分が200〜300μV、最後の陰性部分が200〜300μVであり、一般に第2相が最も大きくなります
    前頭極・前頭・中心優位に出現します
    多くの場合、左右対称性・同期性です
    三相波は肝性脳症(肝性昏睡・肝脳疾患)にかなり特徴的に出現します
    三相波は嗜眠状態・せん妄状態の時期に現われ、最も多く観られるのは半昏睡の時期です

Sjogren (シェーグレン)症候群 診断

定義
涙腺・唾液腺分泌低下による乾燥症候群を主徴とする慢性炎症性疾患です
もう少し難しく言うと、
慢性唾液腺炎と乾燥性角結膜炎を主徴とし、多彩な自己抗体の出現や高ガンマグロブリン血症をきたす自己免疫疾患の一つです。乾燥症が主症状となるので、角膜潰瘍や齲歯の増加を来しますが、唾液腺、涙腺だけでなく、全身の外分泌腺が系統的に障害されるため、autoimmune exocrinopathyと言われることもあります

診断

    血液検査:赤沈、SS-A抗体、SS-B抗体、その他の自己抗体、免疫グロブリン測定
    (SS-Aは高値であっても、低値であっても活動性の指標にはなりません)
    眼科受診:シルマーテスト、角膜潰瘍の有無
    耳鼻科受診:耳下腺シンチ
    皮膚科受診:唾液腺生検
    ガムテスト

Sjogren (シェーグレン)症候群に伴う神経症状

    末梢神経障害:診断
    脳神経症状:三叉神経障害、内耳神経障害など
    無菌性髄膜(脳)炎:診断と治療
    多発性硬化症類似の中枢神経障害:ミエロパチーが多い

Medicine 2004;83:280-291より抜粋


診断基準
1. 生検病理組織検査で次のいずれかの陽性所見を認めること

    A)口唇腺組織で 4 mm2 あたり 1focus (導管周囲に50個以上のリンパ球浸潤)以上
    B)涙腺組織で 4 mm2 あたり 1focus (導管周囲に50個以上のリンパ球浸潤)以上

2. 口腔検査で次のいずれかの陽性所見を認めること

    A)唾液腺造影で Stage1 (直径1mm未満の小点状陰影)以上の異常所見
    B)唾液分泌量低下(ガム試験にて10分間 10ml 以下またはサクソンテストにて2分間 2g 以下)があり、かつ唾液腺シンチグラフィーにて機能低下の所見

3. 眼科検査で次のいずれかの陽性所見を認めること

    A) Schirmer 試験で 5mm/5分以下で、かつローズベンガル試験(van Bijsterveld スコア)で 3 以上
    B) Schirmer試験で 5 分間に 5mm 以下で、かつ蛍光色素試験で陽性

4. 血清検査で次のいずれかの陽性所見を認めること

    A) 抗 Ro/SS-A 抗体陽性
    B) 抗 La/SS-B 抗体陽性

[ 診断基準]
上の 4 項目のうち、
いずれか 2 項目以上を満たせばシェーグレン症候群と診断する。

神経ベーチェット病 治療

生活指導

    全身の休養と保温
    バランスのとれた食事内容
    ストレスの軽減
    口腔内の衛生、齲歯、歯肉炎の治療
    また、神経症状と喫煙の関連も指摘されています

神経ベーチェット病

    1. ステロイドパルス療法が一般的です
    その他、
    2. アザチオプリンメソトレキサートシクロホスファミドパルスなどの併用が試みられることもあります
    3. TNF阻害薬:治療抵抗例
    急性型は副腎皮質ステロイド薬治療に反応して改善することが多いのですが、一部は急性発作を繰り返しながら、慢性進行型に移行します。
    一方、精神症状、人格変化などが主体とした慢性進行型にあまり効果的な治療はありませんが、メソトレキサート週一回投与(10-15mg/wk)の有効性が報告されてはいます。
    眼病変に使われるシクロスポリンは禁忌ですので、神経症状の出現をみたら中止して下さい

血管病変

    副腎皮質ステロイド薬(0.5-1.0mg/kg)
    以下の免疫抑制剤の併用も考慮します
    アザチオプリン(50-100mg)
    シクロフォスファミド(50-100mg)
    シクロスポリンA (5mg/kg)
    外科的治療:動脈瘤破裂例など。手術後に縫合部の仮性動脈瘤の形成などの病変再発率が高いので、可能な限り保存的に対処すべきとの意見もあります。また、手術した場合には、術後再発の防止のための免疫抑制療法を十分に行う必要があるようです。
    深部静脈血栓症をはじめ血管病変に対しては抗凝固療法を併用することも多いのですが、肺出血のリスクを上げる可能性もあって一定した見解はないようです

眼症状

    虹彩毛様体など前眼部に病変がとどまる場合:副腎皮質ステロイド点眼薬+散瞳薬
    重症網膜脈絡膜炎:急性眼底発作時にステロイドのテノン嚢下注射あるいは全身投与を行って、発作予防としてコルヒチン 0.5-1.5mgが良く使用されます。
    難治例:シクロスポリン 5mg/kg程度より開始して、トラフ値は150ng/mlを目安に調整します
    難治例2:インフリキシマブ(TNF阻害薬)が保険適用となりました。投与スケジュールは関節リウマチに、投与量はクローン病に準じ、0, 2, 6週に 5mg/kg投与し、以後8週間隔とするのが一般的です。

皮膚粘膜症状

    口腔内アフタ性潰瘍、陰部潰瘍:副腎ステロイド軟膏を局所塗布
    内服薬:コルヒチン、セファランチン、エイコサペンタエン酸など
    生活指導:口腔内、病変局所を清潔にたもつことを指導するのも重要です

関節炎

    コルヒチン
    消炎鎮痛薬
    少量副腎皮質ステロイド薬(プレドニゾロン換算10mg程度まで):上記で効果がない場合に使用します。短期的投与が望ましいようです

腸管病変

    副腎皮質ステロイド薬(0.5-1.0mg/kg):状態をみながら漸減し、できれば中止。長期投与は避けるのが原則です
    スルファサラジン (1500〜2000mg)
    メサラジン(1500〜2500mg)
    アザチオプリン (50-100mg)
    TNF阻害薬:難治例
    外科的治療:消化管出血や穿孔例

ビタミンB1欠乏症 診断

病態
胃切除後などによりビタミンB1が低下するといわゆる脚気になります。浮腫、心不全以外に、神経内科領域では軸索障害型末梢神経障害、Wernicke-Korsakoff症候群が該当する病態で、今でもしばしば遭遇します

原因

    胃切除
    中心静脈栄養時にビタミン補充を忘れる
    嘔吐/下痢
    妊娠悪阻
    強い偏食

症状

    1. 末梢神経障害
    いわゆる手袋靴下型の運動感覚性末梢神経障害を来します
    2. 脳神経症状
    外眼筋麻痺、小脳失調(1.と同時に出現するとFisher症候群と似た臨床像を示すこともあります)
    3. 脳症
    意識障害、認知機能障害、作話、健忘などなど。最も後遺症として残りやすいのがKorsakoff脳症です。
    4. 心不全
    5. 浮腫
    6. 希にミオパチー

検査

    血液検査:必ず補充前にビタミンB1測定。その他、ついでに葉酸、VitB12、VitB6も測定しておきましょう
    脳MRI:中枢神経症状があるとき
    心機能評価
    末梢神経伝導速度検査:電気生理学的にも、末梢神経病理学的にも軸索障害型になります

WE
WE DWI

脳MRI(FLAIR; 上段、DWI; 下段左、ADC; 下段右)
T2高信号の異常領域は、中脳水道周囲、視床、乳頭体、小脳上部の順に見られることが多い印象があり、稀に大脳皮質にも異常信号を認めた例も報告されています
拡散強調画像 (DWI)は高信号ですが、ADC値の低下は目立たず、T2 shine throughの影響が強い、すなわちvasogenic edemaが疑われるということでしょうか???

豆知識
チアミンthiamine(ビタミン B1)はピルビン酸やα-ケトグルタル酸などのα-ケト酸や分枝アミノ酸の脱炭酸反応に作用することで、エネルギー産生に関与している。酵母、豚肉、豆類、牛肉、全粒の穀類にはチアミンが豊富に含まれているが、脱穀精米した白米にはわずかしか含まれていないため、米を主食にしている地域では欠乏症が比較的高頻度に認められる。また、紅茶、コーヒー、生魚、甲殻類にはチアミンを壊すチアミナーゼ thiaminazeを含んでいるため、大量のコーヒーやお茶を飲むことは体内のチアミンを理論上減少させることになる。また、アルコールはチアミンの吸収や代謝を直接阻害することも知られている。
 チアミン欠乏症のほとんどは摂取不足により、先進国ではアルコール依存症や悪性腫瘍などの慢性疾患が原因となることが多い。チアミン欠乏症の初期症状には、食欲低下や被刺激性などの不定愁訴があり、長期化すると脚気(beriberi)が起こる。beriberiには浸潤型(wet beriberi)と乾燥型(dry beriberi)があり、慢性的なチアミン欠乏に陥ったアルコール依存症患者はWernicke脳症(水平性眼振、眼筋麻痺、小脳失調、精神障害)を認める。これに記憶減退や作話の症状が加わると、Wernicke-Korsakoff症候群と呼ばれる。

  • Wet beriberi:心筋のエネルギー代謝障害と自律神経障害による心血管系の障害 →心肥大、頻拍、高拍出性うっ血性心不全、末梢浮腫、末梢神経炎など
    Dry beriberi:下肢に強い末梢感覚・運動神経の障害、深部腱反射の消失
  • 甲状腺機能異常にともなう神経障害

    甲状腺機能亢進症の神経障害

      甲状腺中毒性脳症:精神症状、痙攣、意識障害、振戦、球麻痺
      重症筋無力症:筋易疲労性、複視
      ミオパチー:近位筋の筋力低下、筋萎縮
      周期性四肢麻痺:脱力発作、男性/低カリウムが多い
      甲状腺眼症:複視、眼瞼浮腫、眼球突出
      脳血管障害:主幹動脈の狭窄やもやもや病の合併の報告がある

    甲状腺機能低下の神経障害

      粘液水腫様昏睡:意識障害、認知症、幻覚、痙攣など、橋本脳症との鑑別を
      ミオパチー:筋力低下、有痛性筋硬直、筋膨隆現象
      単ニューロパチー:手根管症症候群、外側大腿皮神経障害
      多発ニューロパチー:四肢末梢の感覚低下、筋力低下

    自己抗体による神経障害

    リウマチ性髄膜炎 診断

    概念
    リウマチ性髄膜炎(Rheumatoid meningitis)は関節リウマチの稀な合併症で、髄膜あるいは硬膜にリウマトイド結節を伴う炎症を引き起こします。長期罹患患者の増加・画像診断の進歩とともに報告例が増加しています。
    この疾患のMRI画像は比較的特長的ですので、覚えておいて損はないと思われます。

    疫学

      年齢は50?80歳代
      RAの罹病期は非常に早期か長期罹患例が多く、52%が15年以上
      全身の関節炎の活動性と相関は必ずしもしないため、安定期や活動性が消失してリウマチ因子が陰性化した症例も報告されています

    症状

      一般的な硬膜炎、髄膜炎の症状を呈します
      頭痛、痙攣、精神症状、脳神経症状、片麻痺、単麻痺など

    検査

      血液学的検査:好中球優位の白血球上昇、血沈・CRP上昇、リウマトイド因子の上昇、RAHAの上昇、補体の低下、時にANCA陽性、抗CCP抗体陽性例があり
      髄液検査:細胞や蛋白上昇、TNF-α、IL-1β、IL-6の上昇
      脳波:全般的な徐波化、突発波
      単純CT:脳溝の不鮮明化
      脳MRI:クモ膜、硬膜が主には局所的にFLAIR画像で高信号、同部位の一部がDWIで高信号、Gd増強効果あり
      FLAIRで高信号域の一部が拡散強調画像で高信号となることが特徴的で、限局性に惹起された炎症が高蛋白質な成分(比較的高密度な細胞成分)が一部に含まれるためとも考えられています
      生検:確定診断には必須ですが、リウマトイド結節がうまく見られる例の方が少ないようです。また、肉芽腫性病変を得られても必ずしも特異的ではないため、結核との異同が問題となります。硬膜炎、髄膜炎の鑑別を適宜行ったうえで、生検をせずステロイドの反応を見るのも一つの方法です

    rameningitis
    FLAIR画像(左)では、硬膜、髄膜が高信号を示していて、拡散強調画像(DWI;右)では、FLAIR高信号の部位の一部がPatchyに高信号を示します。ここでは示していませんが、造影MRIではFLAIR高信号領域の少なくとも一部は造影されることが多いようです

    クモ膜下腔がFLAIRで高信号となる疾患の鑑別
    上記の画像のようにクモ膜下腔がFLAIRで高信号となる疾患は以下のようなものがあります

      クモ膜下出血:出血なのでCTで高吸収となる
      硬膜下膿瘍:DWIでFLAIR病変全体が高信号
      リウマチ性髄膜炎:DWIでFLAIR高信号領域の一部のみが斑状に高信号(patchy high intensity)
      癌腫症:Gd造影パターン(リウマチ性髄膜炎は経時的にもpatchyとなる)
      梗塞:皮質が高信号となりクモ膜下腔では血管が高信号となることがあるので、ADC低下・MRA所見で鑑別します
      破裂類皮嚢腫:Gd造影パターン

    病理
    病因は未だ不明ですが、病理学的所見としては、軟膜の血管周囲の炎症細胞浸潤・壊死性肉芽腫・リウマチ結節の3所見の報告が多いようです。
    リウマチ結節がつかまれば、殆ど診断は確定ですが生検ではなかなかつかまらないことも多いようです
    特に硬膜・軟膜の血管を中心とした中枢神経の血管炎を本態とする報告も見られますが、硬膜炎と軟膜炎で病理像に違いはないため、炎症の首座の違いの理由も明らかではありません

    抗癌剤、免疫抑制剤 脳症

    5fu encephalopathy

    5-FU投与後、急性発症した脳症の画像(左:DWI、右:T2)
    慢性の5-FU脳症では白質に散在性のT2でもはっきりとした高信号を認めることがありますが、急性脳症の場合は、白質がびまん性にDWI高信号となり、T2の異常高信号が目立たないこともあります

    感染性心内膜炎 診断

    循環器病の診断と治療に関するガイドライン

    循環器疾患にもかかわらず、脳梗塞やくも膜下出血などを併発することが比較的多く、なぜか循環器から神経内科へコンサルテーションがなされることもあります
    生命予後は悪いですが、治療が奏効することもあり迷わず即入させてください。書くまでもありませんが、、、

    検査

      血液培養:疑ったら必ず3本(最低でも場所を変えて2本)
      経胸壁心エコー
      経食道心エコー
      以下はそれぞれ必要時に
        塞栓部位の検索:胸腹CT、脳MRI、検尿
        細菌性動脈瘤の検索:MRA
        細菌性髄膜炎併発の検索:髄液検査、髄液培養

    IE echo

    僧帽弁前尖に可動性のある疣贅を認めます。このように経胸壁心エコーで疣贅やMRの所見がない場合も多いので、疑った場合は経食道心エコーも必ず行います。

    細菌性[感染性]動脈瘤

    臨床画像 Vol.28, No.4増刊号, 2012より抜粋。多くの場合、感染性動脈瘤はIEに伴って、菌血症から数日で形成されます。図のように中大脳動脈遠位部に多いですが、このような嚢状のものではなく、紡錘状動脈瘤を形成することもあるため、検出が難しいことも少なくありません。

    Churg-Strauss症候群 update

    Mepolizumab or Placebo for Eosinophilic Granulomatosis with Polyangiitis. N Engl J Med. 2017;376:1921-1932.
    EGPA患者では、抗インターロイキン-5 モノクローナル抗体(メポリズマブ)投与によりプラセボ投与と比較して寛解状態にある週数が有意に増加し、ステロイドの減量が可能になった

    Eosinophilic granulomatosis with polyangiitis (Churg-Strauss): evolutions in classification, etiopathogenesis, assessment and management. Curr Opin Rheumatol. 2014;26:16-23.
    EPGAの病態や治療に関する総説

    Neural damage associated with atopic diathesis: A nationwide survey in Japan. Neurology 2009 73: 790-797.
    アトピーに関連した脊髄炎と末梢神経炎には疫学に差はあるものの、アトピー性脊髄炎の25.7%は末梢神経障害がされ、アトピー関連末梢神経炎の18.8%は中枢神経病変が検出されるなど末梢、中枢神経双方とも障害されうる

    甲状腺機能異常症

    甲状腺機能亢進症
    チウラジール
    チウラジール(PTU)は時に血清のANCA抗体を産生し、血管炎を引き起こすこともあります。その場合、無機ヨード、アイソトープなどの治療に切り替え、それでも血管炎症状が残存する場合には、ステロイドを中心とした治療が必要となります。
    チウラジールによるANCA関連血管炎の特徴

      ANCA陽性化の頻度:内服患者の4-32%に見られる
      内服期間7-11ヶ月(数年単位の報告あり)
      ほとんどがP-ANCA(C-ANCAは陰性、あるいは弱陽性)
      血管炎症状を伴わないseropositive例が多い
      内服中止後,数ヶ月単位で自然に陰性化する
      しかし、ANCA高力価例(≧100)では,血管炎症状を来たすことがあり,治療後もANCA低力価が遷延することが多い