内科疾患に伴う神経合併症

ビタミンB12欠乏症 治療

1. VitB12筋注
一般的には、1-2週間毎日VitB12筋注(バンコミン筋注 500μg)を行います
その後、VitB12筋注を週に1-3回

2.VitB12内服
内服のみで血中VitB12濃度を保てる場合もあります
腸管からの吸収が期待できる場合は、メチコバール3T3Xの内服を行いましょう

ビタミンB12欠乏症 診断

はじめに
胃切除後、萎縮性胃炎、ピロリ菌感染、吸収不良症候群、寄生虫感染症、アルコール多飲、摂取不良などにより血中のVitB12が低下すると、巨赤芽球性貧血(悪性貧血)、ハンター舌炎などを引き起こしますが、神経系では亜急性連合性脊髄変性症及び時に認知症を引き起こすことで有名です

神経症状
主には、後索、側索障害症状なのですが、、、他の症状も比較的よく見かけます。銅欠乏症による神経症状と類似します。

    後索障害症状:深部感覚障害、ロンベルグ徴候陽性など
    側索障害症状:四肢DTR亢進、痙性対麻痺など
    認知機能障害:結構頻度は高いようです
    自律神経障害:OH、便秘など
    末梢神経障害:Subclinicalな例が多いと思います

検査

    血液検査:血算、VitB12、B1、B6、VitE、ホモシスチン、メチルマロン酸、葉酸、抗内因子抗体、抗胃壁抗体、抗HP抗体など
    GF:萎縮性胃炎の有無
    頚髄胸髄MRI:後索に淡く高信号が特に頚髄によく見られます。稀に、側索の高信号も
    NCV、SEP、MEP
    脳MRI、SPECT:認知機能障害がある場合は施行しましょう
    Head-up tilt testなど:OHがある場合には施行しましょう

神経組織におけるビタミンB12について
Methionine synthesisは(MeB12)はMethionine代謝と葉酸代謝の接点に関与しHomocysteineからMethionineの補酵素となっているため、ビタミンB12欠乏ではHomocysteineが上昇します(下図)。また、ビタミンB12欠乏は葉酸代謝と共役したDNA合成異常の原因となります。
中枢神経系では主に、血中からニューロンに移送されるにはBBBが存在している為、生理的濃度下ではastrocyteを経てニューロン軸索に運ばれると言われています。
また、ビタミンB12欠乏→メチルマロニルCoAムターゼ反応低下→異常脂肪酸の産生→ミエリン産生低下という回路も考えられていますので、メチルマロン酸の上昇とともに、ビタミンB12は髄鞘形成において重要な役割を担っています。脊髄では頚髄、胸髄、腰髄の順にB12含量は高値であること、運動神経系では感覚神経系よりB12は高値であることが知られていて、「頚髄後索の脱髄性病変が主体」という特徴を一部裏付けることができるのかもしれません。

浸透圧性脱髄症候群 (osmotic demyelination syndrome : ODS)

浸透圧性脱髄症候群を検索(Pubmed

はじめに

急速な浸透圧の変化によって、脳幹や基底核に脱髄を来す疾患です。血清浸透圧[Posm(mOsm/kgH2O)=2×Na(mEq/l)+ブドウ糖(mg/dl)/18+尿素窒素(mg/dl)/2.8] を規定しているのは主にはNaですので、Na(多くは低ナトリウム)の短時間での急激な補正によって生じることが多いです。

脳幹や基底核に脱髄が生じるメカニズムは不明ですが、以下の様なメカニズムが関連している可能性もあります。
低Naは血清の張力を下げますが、血清の張力が下がると水分子は血管脳関門(BBB)を超え、脳浮腫をきたします。そこで、脳は低張力に適応しようと、主にはBBB構成細胞の一つであるアストロサイトは細胞内の浸透圧を調整する物質(Osmolytes)を低下させ、低張力による水の過剰な蓄積を避けようと頑張ります(完全な適応には2日間かかる)。この適応が完成した状態で、血清Naを急激に補正してしまうと、アストロサイトのOsmolytesの引き戻しが間に合わず、Naの細胞内への急激な流入から、細胞死が引き起こされ、BBBの破綻が生じます。髄鞘を形成するオリゴデンドロサイトにも同様の変化が起こり、脱髄も生じるのかもしれません。

ODS発症の危険因子

  • Na濃度:補正開始前のNa濃度が120 mEq/L以下
  • 低Na血症の期間:脳の適応が完了する2日以上
  • Naの急速な補正:24時間で12mEq/L、48時間で18mEq以上の補正

症状
主には脳幹障害由来の症状がNa補正後2-6日遅れて出現します

  • 脳幹症状:構音/嚥下障害、四肢麻痺、歩行障害、意識障害、見当識障害、Locked-in など
  • 基底核症状:不随意運動(Choreaアテトーゼジストニア

検査

  • 血液検査:Na、ADH、BNP など
  • 脳MRI:CTでは病変の検出感度が低く、MRIで脳幹(橋下部)に病変が検出され、初期はADCが低下していることもあります。Trident shaped appearanceと呼ばれる形状が典型的ですが、橋下部全体に広がることもあります。頻度は下がりますが、中脳病変、両側対称性の基底核や視床病変、あるいは、皮質下病変を認めることもあります。また、MRIでも初回のMRIでは病変が検出されないこともあります。

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橋中心部にT2高信号、DWIで淡く高信号の病変を認めます。本症例では、Trident shaped appearanceではなく三角形に近い形状を示しています
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脳幹のK.B.染色では同様に橋中心部の染色性が消失し、高度の脱髄を示唆します

鑑別診断脳幹PRESSは治療法も異なりますし、最も重要な鑑別診断です

治療(参考ページ:低Na血症

ODSの発症予防
1. Na補正
低Na血症のNa補正は、24時間で6 mEq/L程度を目指します。そのため、Na補正時は小まめに血清Na値をチェックしましょう。

2. Proactive, Reactive, Rescue Strategies
過度の補正に陥りやすい症例では、過度の補正に対するProactive (preventive) strategyとしてDDAVP(1-desamino-8-D-arginine vasopressin)投与や、高張性食塩水を用いることがあります。
Na補正中の水利尿が多い場合には、Reactive strategyとして5%Gluによる補正やDDAVP投与を試みる場合もあります。
Na補正速度が推奨速度を超えてしまった場合には、Rescue strategyとして、5%GluやDDAVPによるNaの低下を目指します。

ODS発症後
一度発症すると効果が確立された治療法はありません
1. 血清Na値を低下させる
5%GluやDDAVPで、16mEq/L程度、血清Na値を下げます。発症24時間以上経過してしまうと、ほとんど効果は期待出来ません。
2. Supportive care
呼吸、循環管理、肺炎の治療など
3. その他
血漿交換療法やステロイドパルス療法などの免疫療法の有効性は確立されていません。

神経サルコイドーシス 診断

日本サルコイドーシス学会:診断基準など掲載されています

概念
サルコイドーシスは、肺、リンパ節、皮膚、眼、心臓、筋肉など全身諸臓器に乾酪壊死を認めない類上皮細胞肉芽腫が形成される全身性の肉芽腫性疾患で、Th1関与の過敏性免疫反応が関与すると考えられています。発症の原因の一つにアクネ菌感染が疑われていて、病変部にPropionibacterium acnes抗体(PAB抗体)陽性のシグナルが検出されることが良くあります。
典型的には若年女性に好発、肺門部リンパ節腫脹および肺野病変、皮膚、関節(Löfgren症候群など)および眼症状にて初発することが多く、約90%が肺病変を形成するといわれているようです。
そのうち、神経症状は全サルコイドーシスの5%程の認められる比較的な稀な合併症で、病型として中枢神経病変、髄膜病変、水頭症、血管病変、末梢神経病変と分類されます。特に、末梢神経病変の頻度が高く、実質内肉芽腫性病変は比較的まれとされています。

症状

病変部位により様々です

    末梢神経:多くは多発単神経炎様の感覚、運動障害です。神経生検と同時に短腓骨筋を採取すると診断確率が上昇します
    :症候性でもCKの上昇が目立たない例もありますが、逆に無症候性でも筋やPETで筋病変が検出されることが頻繁にあります
    髄膜、硬膜:頭痛、嘔吐、痙攣、脳神経麻痺、水頭症
    脳血管
    脳実質:片麻痺、失語、認知機能障害、下垂体・視床下部機能障害、小脳・脳幹症状などなど
    脊髄:様々なタイプのミエロパチー症状

病変の発症メカニズムとしては軟膜や血管壁の肉芽腫によって、BBBの破壊が起ることで血管周囲腔に肉芽腫が侵入して、血管周囲腔に沿って脳実質に進展していくと考えられています。
さらに、血管周囲腔が脳底部で特に大きいので、視床下部、第三脳室、視神経、脳幹から出る脳神経(特に顔面神経)が障害されやすいのかもしれません。肉芽腫性血管炎によって虚血性変化、梗塞、静脈洞血栓症などを来たすこともあります。

検査

とにかく疑ったら、サルコイド結節探しを行い、病変があれば生検し確定診断が基本です

    血液検査:ACE、リゾチーム、その他の疾患の鑑別
    ツベルクリン反応、QFT
    脳・脊髄造影MRI:硬膜・髄膜の造影増強効果、脳・脊髄実質内の造影病変が有名ですが、びまん性白質病変を含め様々な像を取りえます
    髄液検査:髄液ACE、髄液細胞CD4/8比など
    気管支肺胞洗浄 (BAL):CD4/8比が上昇している場合はサルコイドーシスの特異度は95%
    肺CT
    眼科受診
    ガリウムシンチ
    PET
    生検:脳、末梢神経、リンパ節、経気管支的肺生検 (TBLB)、皮膚などなど

病理像
サルコイドーシスの病理は多彩ですが、リンパ組織や肺に多い肉芽腫性病変、全身性の微小血管炎(ミクロアンギオパチー)が多いとされています。
肉芽腫性病変:肺の場合はリンパ管に沿うように間質に分布することが多いのですが、その癒合性、局在部位、臓器特異性によって様々な形態像をとります。非乾酪性肉芽腫を形成する異物型巨細胞の細胞質に星状小体やShaumann小体がみられることがありますが、特異的な所見ではなく、結核、ベリリウム症でも認められます。肉芽腫性の病変の大部分は自然退縮しますが、硝子化として残存したり、少数例では繊維化へ進展します。
ミクロアンギオパチー:芽腫が血管壁を侵襲し、血管壁の構造破壊によっておこると考えられています。病理学的な検討によると血管壁の肉芽腫の分布は分節的であり外膜から中膜にかけての分布が多いとされています。
sarcoidosis

髄膜に単核球が多数存在し炎症が示唆されますが、さらに多核巨細胞を伴う非乾酪性肉芽腫が見られます

SLEに伴う中枢神経障害 診断

概念
これほど、診断の難しい病態もすくないと思われます。全身性エリテマトーデス(SLE)では非常に多彩な精神・神経症状がみらるため、neuropsychiatric SLE (NPSLE) と総称されます。
抗リン脂質抗体・血管炎に起因する局在性病変や、せん妄・気分障害などの精神症状や認知機能障害が前景に立つびまん性の病態も包括されます。臨床症状はNPSLEに特異的なものではないので、診断基準は確立していません。

SLEにおける精神神経症状の分類 [ref]
この分類は精神症状の評価には優れている一方で、GBSやMGなどの独立した疾患概念が入っていることなど、まだ問題点も多いと言われています
中枢神経

    無菌性髄膜炎
    脳血管障害
    脱髄症候群
    頭痛
    運動異常症(舞踏病)
    脊髄症
    てんかん発作
    急性錯乱状態
    不安障害
    認知障害
    気分障害
    精神病

末梢神経

    急性炎症性脱髄性多発神経根ニューロパチー
    自律神経障害
    単ニューロパチー
    重症筋無力症
    脳神経障害
    神経叢症
    多発ニューロパチー

診断

    血液検査:SLEの活動性、凝固機能の評価
    髄液検査:感染症の除外、IL-6測定
    CT、MRI:MRI異常はNPSLEの54-81%に出現するとともに、他疾患の鑑別にも必須です
    脳波
    SPECT:MRIで異常がなくとも、変化を捕らえることもあります

鑑別
中枢神経感染症、静脈洞血栓症、PRES、薬物中毒、内服薬の副作用等々

参考:SLEの分類基準
 (1997年改訂基準 アメリカリウマチ協会)

1.顔面(頬部)紅斑
2.円板状皮疹(ディスコイド疹)
3.光線過敏症
4.口腔潰瘍(無痛性で口腔あるいは鼻咽喉に出現)
5.非びらん性関節炎(2関節以上)
6.漿膜炎
 a)胸膜炎、または、b)心膜炎
7.腎障害
 a)0.5g/日以上または+++以上の持続性蛋白尿、または、b)細胞性円柱
8.神経障害
 a)けいれん、または、b)精神障害
9.血液異常
 a)溶血性貧血、b)白血球減少症(<4000/μl)  c)リンパ球減少症(<1500/μl)、または、d)血小板減少症(<100,000/μl) 10.免疫異常  a)抗二本鎖DNA抗体陽性、b)抗Sm抗体陽性、または、c)抗リン脂質抗体陽性   1)IgGまたはIgM抗カルジオリピン抗体の異常値、   2)ループス抗凝固因子陽性、   3)梅毒血清反応生物学的偽陽性、のいずれかによる 11.抗核抗体陽性 上記項目4項目以上を満たす場合、SLEの可能性が高いと考えられます。が、最終的な診断は臨床経過、臨床兆候、検査所見などを総合的に専門医が判断してなされます。

神経ベーチェット病 診断

概要
神経ベーチェット病は、好中球性炎症を来すベーチェット病あるいはベーチェット病が疑われる患者に中枢神経症状を来たした病態です。ベーチェット病の診断基準は>こちら
ベーチェット病とは口腔内アフタ、ブドウ膜炎、外陰部潰瘍の3徴を特徴とする再発性炎症性疾患ですが、約11%に中枢神経病変を合併するそうです。
神経症状の合併は男性に多く、脳幹病変がよく認められるのが特徴です。
もう一つ大事なことは、急性型神経ベーチェット病はシクロスポリン投与により誘発される、もしくはベーチェット病特有のシクロスポリンの副作用の可能性が示唆されていることです。

症状

  • 口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍
    外陰部潰瘍
    眼症状:前眼部病変・ぶどう膜炎・網膜血管炎による、霧視や視覚障害を特徴とします
    神経症状:髄膜炎症状、脳幹症状、運動麻痺等の中枢神経症状の再発・寛解を繰り返し、MSと類似した経過をたどります
  • 検査
    特異的検査所見はないため、ベーチェット病の有無の検索、他の疾患の有無の検索が必要です。

    髄液:好中球有意(あるいは好中球をある程度含む)の髄液細胞増多を急性期は認めますが、経過とともにリンパ球主体となります。また、髄液IL-6活性が神経Behçet病の活動性と一致して上昇することが多いようです
    もちろん、感染症、肉芽腫性疾患の鑑別のため、適宜ウィルスPCR、結核PCR、クリプトコッカスAg、ACE、sIL-2Rなどを提出して下さい
    血液:HLA-B51、血中von Willebrand因子、IgD測定など。HLA-B51が陰性の場合は、好中球性炎症という意味で類縁疾患である、Sweet病のHLA(B54, Cw1)を検索するのも一つの方法かもしれません。
    画像:脳幹、小脳、基底核、視床、内包などに病変が好発して、神経線維に沿って上行、下行したり、腫瘤様の病変を形成して、Mass effectを呈することがあるなど様々で、やはり特異的所見はありません。
    解剖学的に、脳幹部は小静脈側副路の発達が大脳など他の部位よりも悪く、小静脈を侵すこの疾患では、脳幹部、小脳、基底核に静脈うっ滞及び静脈性梗塞による病変が多いことが比較的特徴的ではありますが。。。

    nb

    脳MRI: FLAIR画像、造影T1画像
    両側中脳(右有意)にFLAIR高信号領域を認めます。また、右端の画像では一部に造影効果を認めます。

    糖尿病性末梢神経障害 診断

    糖尿病による末梢神経障害には以下のものがあります

      1.高血糖ニューロパチー
      2.低血糖ニューロパチー
      3.慢性有痛性神経障害
      4.急性有痛性神経障害
      5.体幹神経障害
      6.急性外眼筋麻痺
      7.Diabetic Lumbosacral Plexopathy
      8.紋扼性末梢神経障害
      9. Autonomic neuropathy

    糖尿病性末梢神経障害 治療

    1.血糖コントロール
    HbA1c 6.5%胃火に維持すると発症進展が抑制されます。一方で、HbA1c10%を越す場合は、治療後有痛性ニューロパチー予防のため、月間HbA1c低下を1%以内に留めます。
    キネダック(アルドース還元酵素阻害薬)を加えると、更なる進行予防効果が得られます。

    2.有痛性神経障害

      ガバペン
      テグレトール
      メキシチール
      Dextromethorphan(難治例)