変性疾患

遺伝性痙性対麻痺 診断

はじめに
遺伝性痙性対麻痺 (Hereditary spastic paraplegia: HSP)は、進行性の下肢痙性と筋力低下を主徴とする神経変性疾患の一群で、脊髄小脳変性症の一つの亜型です。病理学的には脊髄錐体路、後索、脊髄小脳路の系統変性がみられます。以下の二つに大きくは分類されますが、非常にheterogeneousな疾患群です。

    純粋型 (uncomplicated or pure HSP):痙性対麻痺のみを呈する病型(時に膀胱直腸障害、振動覚低下)
    複合型 (complicated HSP):痙性対麻痺以外の神経学的異常を合併する

複合型で合併しうる神経学的異常としては、多発ニューロパチー、筋萎縮、認知症、精神発達遅滞、小脳失調、てんかん、難聴、網膜色素変性、魚鱗癬、形態学的な異常として脳梁菲薄化が挙げられます。また、神経系以外の異常としては、白内障、低身長、関節拘縮、胃食道逆流などを合併することもあります。
また、遺伝形式からは以下の様に分類されます。純粋型はAD、複合型はAR or XRが多いようです。

    常染色体優性遺伝(AD-HSP)
    常染色体劣性遺伝(AR-HSP)
    X連鎖性劣性遺伝性(XR-HSP)

神経症状
病型により症状は様々です

    痙性対麻痺:少なくともこれはすべての例に見られます
    下肢筋萎縮
    振動覚低下
    排尿障害、括約筋障害
    認知機能障害
    小脳失調
    その他:側弯、凹足、感覚障害など

検査
血液:VitB12, VitE, HTLV-I, 梅毒, リポプロテインやコレスタノールなど鑑別のために行う
髄液:特異的所見はないため、MSや脊髄炎などとの鑑別のために行う
脳/脊髄MRI:錐体路の異常信号、脳梁菲薄化の有無、大脳白質の変化の有無、脊髄病編の有無
電気生理検査:MEP, SEP, NCV, nEMGなど
他科受診:眼科、耳鼻科、皮膚科など
遺伝子検査:

パーキンソン病 治療

大まかには、以下のガイドラインを参考にしてください
最新版パーキンソン病治療ガイドライン 2011:書籍
各種抗パーキンソン病薬の作用部位(エフピー株式会社)
パーキンソン病の主な治療薬 (田中真先生監修)

PDの精神症状(幻覚、妄想)
こちらにまとめてみました

ドパミンアゴニスト 総論
こちらにまとめてみました

L-dopaの吸収(食前?食後?、胃酸分泌との関係)
L-dopa濃度は、食後よりも食前内服の方が、速やかに血中濃度が上昇し、ピークも高くなります(食事により、LNAA(large neutral amino acid)量が増えると吸収効率が低下するため)。L-dopa増量が必要と考えられるような症例には、増量の前に食前投与への変更を考慮することもあります。
また、L-dopaは酸に溶けやすいため、PPI併用時のように胃酸のPHが7を超えるよう場合は、L-dopaの吸収が低下します。PPIの中止やレモン水の使用をすることもありますが、軽く水に溶いて服用するだけでも吸収はよくなります。

シンメトレルは腎機能障害例への投与に注意
ジスキネジアに対する治療効果も知られていていまだに使用することも多いですが、腎障害患者へのシンメトレルの投与により、本剤の蓄積による意識障害(昏睡を含む)、精神症状(幻覚、妄想、せん妄、錯乱等)、痙攣、ミオクロヌス等の副作用の発現が報告されていて、特に、透析を必要とするような重篤な腎障害のある患者では、これらの副作用が顕著にあらわれます。これは、本剤は大部分が未変化体として尿中から排泄されるため、腎機能が低下している患者では本剤が蓄積され、また、本剤は血液透析では少量しか除去されないことによります。

Wilson病 治療

早期発見、早期治療が重要で予後に関わります
治療目的は銅のキレート、排出促進、摂取の減少です

食事療法
低銅食
チョコレート、レバー、ナッツ、マッシュルーム、貝などに銅が多く含まれます

薬物療法
軽症例はキレート剤、中等度以上はキレート剤と酢酸亜鉛薬の併用を主に行います。併用の場合は、キレート剤と酢酸亜鉛の内服は1時間以上の間隔を空けて下さい(作用が減弱する場合があります)

    D-ペニシラミン
    メタルカプターゼ 1000-1500mg/日 食前1時間あるいは食後2時間
    銅をキレートしたペニシラミンの80%が尿から排出されます。
    副作用(発熱、皮疹などのアレルギー、血小板減少、好中球減少、蛋白尿)が強い場合は、200-500mg/日の少量から徐々に漸増する場合もあります。
    抗ビタミンB6作用のためビタミンB6併用することも特に小児、妊婦では行います
    塩酸トリエンチン (trientine)
    メタライト250 900-1200mg/日 分3
    ペニシラミンが副作用で使用できない場合に用いられてきましたが、最近はfirst line treatmentになっているようです
    テトラチオモリブデン酸アンモニウム(ammonium tetrathiomolybdate)
    上記二つの薬剤と同様に、これも銅キレート剤です
    酢酸亜鉛
    ノベルジンカプセル 75-150mg/日
    副作用:胃部不快感、悪心、リパーゼ及びアミラーゼ上昇
    亜鉛は銅の腸管での吸収を抑制します。

肝移植
薬物療法が効果がない例、肝機能障害が強い例などに考慮されることもあります

ハンチントン病 治療

現時点では病状の進行に対する治療法は無く,舞踏運動や精神症状に対する対症療法が行われます
日本ハンチントン病ネットワーク

舞踏運動に対する薬物療法
テトラベナジン(コレアジン; モノアミン枯渇薬)、ハロペリドール(セレネース)、クロルプロマジン(コントミン)、ペルフェナジン(PZC)
精神症状に対する薬物療法
幻覚、妄想:ジスキネジアなどの副作用が少ないオランザピンやクレチアピンなどの非定型抗精神病薬が用いられます
うつ症状:SSRI、VPAなど

その他の治療
モデルマウスでは,変異Huntingtin遺伝子のon/offによってHDの病態が可逆的であることが示されており,変異Huntingtinを標的とした治療が期待されています
モデル動物では,抗アポトーシス作用のあるミノマイシンやアデノシンA2A受容体拮抗剤、ミトコンドリア機能を改善するコエンザイムQ10やジクロロアセテート、神経細胞移植、神経栄養因子の遺伝子治療などで有効性が示されています

脳深部刺激療法 治療

日本メドトロニック>こちら

はじめに
以前より、淡蒼球の破壊などによりParkinson症状が改善されることが知られていたため、パーキンソン病に対する定位脳手術は薬物療法よりも早い1947年に開始されています。しかし、1967年にL-DOPAが臨床応用されると、その劇的な効果の前に手術を受ける患者は激減しました。しかし、L-DOPAの使用期間が長くなるに連れて、wearing-off現象や不随意運動など長期服薬に伴う副作用が問題になりました。
これらの副作用に対する対策として,1980年代に後腹側淡蒼球破壊術が,そして1990年代には脳深部刺激療法(DBS: deep brain stimulation)が開発されました。

適応
現在DBS治療が保険医療の対象となっている疾患は以下の二つです

    パーキンソン病
    本態性振戦

パーキンソン病とDBS
パーキンソン病に関しては、大前提としてdopa-responseがあることが重要です。その中で、日内変動が強い例や、ジスキネジア(や精神症状)のためL-dopaの増量が難しい例、治療抵抗性の強い振戦が見られる例などが、良い適応となると考えられます。
一方で、認知症がある場合、薬剤と関連のない精神症状を有する症例、著明な脳萎縮(DBSを挿入する部位のtargetingが困難)、on時の突進やすくみなどの運動症状が目立つ場合は適応は乏しいと考えられます。
基本的には、両側の視床下核(STN)をtargetとすることが多いですが、左右差があまりに目立つ場合は、Unilateral subthalamic nucleus(STN)-DBSの報告もあり、電極の反対側の症状改善とともに同側の症状も改善したとの報告もあります。

改善が期待される症状

    日内変動
    ジスキネジア
    振戦
    固縮
    無動・寡動
    off時におけるすくみ足や痛み

改善が期待しづらい症状

    構音障害・嚥下障害
    姿勢反射障害
    on時のすくみ
    感覚障害
    自律神経症状
    薬剤と関連のない精神症状

DBSの積極適応となる条件<例>

    若年発症である
    罹病期間が短い
    on-offで差が運動症状の差が激しい
    L-dopaによる副作用が強い(薬剤性dyskinesia/精神症状)

DBSのtarget部位と効果

    視床中間腹側核(Vim):振戦以外の症状の改善が期待できない
    淡蒼球内節(GPi腹側):難治性ジスキネジアに対する高い効果あり。しかし、薬剤の減量効果が低い
    視床下核(STN):適応症状はGpiと同等だが、L-DOPAの減量効果が高いとされている

合併症
手術手技に伴う合併症:頭蓋内出血(慢性・急性)、Deviceや創部からの感染、創部のびらん・潰瘍形成
PDの運動症状に及ぼす合併症:術後早期のジストニア・ジスキネジア、開眼失行、構音障害(視床下核前外側の皮質脊髄路障害)
直接的・間接的な精神症状:うつ、アパシー、自殺企図/自殺

パーキンソン症候群

パーキンソン症候群の原因疾患

    1.変性性パーキンソン症候群
     1.パーキンソン病(特発性パーキンソン症候群)
     2.レビー小体型認知症(Dementia with Lewy bodies;DLB)
     3.多系統萎縮症(Multiple system atrophy;MSA)の一病型(MSA-P)
     4.進行性核上性麻痺(Progressive supranuclear palsy;PSP)
     5.大脳皮質基底核変性症(Corticobasal degeneration;CBD)
     6.その他(パーキンソン認知症複合(PDC)など:グアム島,紀伊半島のPDC)
    2.二次性パーキンソン症候群
     1.薬剤性パーキンソン症候群
     2.脳血管性パーキンソン症候群
     3.脳炎後パーキンソン症候群
     4.中毒後遺症;一酸化炭素(CO)中毒,マンガン中毒
     5.脳外傷後パーキンソン症候群(ボクサー認知症・パーキンソン症候群など)
     6.その他

多系統萎縮症(MSA) 治療

根本的な治療はないため、対症療法が中心となります
一方で、基礎研究では抗結核薬のリファンピシン(RFP)がGCIの蓄積を抑制する作用が報告されましたが、実際の症例に投与しても治療効果は高くありません。後は、間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell)の経静脈的投与が、信じられないことに症状を改善させたとの報告も韓国から出ています[ref]。

薬物療法

    小脳症状:セレジスト内服やヒルトニン静注
    パーキンソン症状:レボドパ(ネオドパストンなど)などの抗パーキンソン病薬
    自律神経症状:起立性低血圧、排尿障害などの自律神経障害に対する治療。食後性低血圧の合併も多いですが、食前にドプス内服、カフェイン摂取、α-グルコシダーゼ阻害薬などで対応します

対症療法
リハビリテーションによる歩行訓練など

声帯外転麻痺
高度の上気道狭窄/閉塞をきたしている場合、通常の気道確保やアンビューバッグ等を使用した人工呼吸では充分な換気が得られず、気管内挿管を要することが多い印象があります。
また挿管困難となることも多く、その場合は緊急気管切開を行います。
しかし、このような急性の呼吸障害をきたす前に喉頭ファイバーで上気道の狭窄度を評価しておくことが重要かもしれません。
声帯外転麻痺の重症度を判定しておき、「『覚醒時に声帯外転制限を認め、睡眠時に前部かつ後部の声門がスリット状の狭窄を呈した状態』以上で、終夜SpO2モニタリングでSpO2が90%未満となる時間が20%以上」となった時点でNPPVや気管切開を考慮する、との方針の提唱もあります。

floppy epiglottis(喉頭軟化症)
CPAP禁忌。部分的喉頭蓋切除など、耳鼻科による外科的治療を考慮します。

睡眠時無呼吸
Nasal CPAP(NPPV)など

常染色体劣性遺伝型 脊髄小脳変性症 Autosomal Recessive Spinocerebellar Degeneration

普段経験しない疾患ばかりです。一応代表的なものをまとめます。

Friedreich 失調症
日本では今のところ報告例はいません。通常25歳以前に発症する緩徐進行性の失調症を特徴とする.典型的には深部腱反射の減弱,構音障害,Babinski反射陽性,位置覚・振動覚の 低下・消失を伴う.約25%の患者では25歳以降に発症する,深部腱反射の減弱が見られない,きわめて進行が遅い,などの非定型的な臨床像を呈する.たい ていの患者はFXN遺伝子のGAAトリプレット・リピートの過剰伸長が見られる.CAGリピートの伸長による常染色体優性遺伝性失調症に比べてFriedreich失調症では表現促進現象は見られない.

毛細血管拡張を伴う失調症(ataxia telangiectasia)
1-4歳に発症する進行性の小脳失調を特徴とする.眼球運動失行,頻回の感染症併発,舞踏病アテトーゼ,眼球結膜の毛細 血管拡張,免疫不全が見られ,特に白血病やリンパ腫などの悪性腫瘍に罹患するリスクが高い.本症の診断を支持する検査所見として,末梢血リンパ球での核型 分析にて7;14染色体の転座を同定する,免疫不全の存在を証明する,in vitroで放射線高感受性を証明する,などがある.ATM遺伝子の解析も行われている.

ビ タミンE欠損を伴う失調症(ataxia with vitamin E deficiency,AVED)
通常,学童期から10歳代に構音障害や失調性歩行(特に暗いところでの)で発症する.早期から固有感覚が障害されるため進行性の巧緻運動障害も見られる.ジストニアや精神異常(パラノイア),網膜色素変性,知能低下が見られることもある.大半の患者は小脳失調と下肢の筋 力低下のために11歳ー50歳の間に車椅子生活となる.臨床的にFriedreich失調症と似ているが,本症ではFriedreich失調症と比べて頭 部振戦やジストニアを伴いやすく,一方,心筋症は伴いにくい.AVEDはビタミンEの補充により治療しうるので疑わしい患者では血清ビタミンEを定量し,AVEDかどうか見極めることが重要である. SCA8とAVEDを合併した患者ではビタミンEが効かなかったことが報告されている.

眼球運動失行を伴う失調症1型(ataxia with oculomotor apraxia type 1,AOA1)
小児きに発症し(平均発症年齢7歳),緩徐進行性の経過を取る小脳失調症である.数年以内に眼球運動失行を伴う.眼球運動失行は進行する と外眼筋麻痺に至る.患者は重度の運動神経優位の末梢神経障害をきたし,発症から7-10年後には四肢の麻痺から日常生活が自立できなくなる.ポルトガル人家系では知的機能は保持されているが,日本人家系では精神運動発達遅滞が見られる.AOA1の診断は臨床所見に基づいてなされる.

眼球運動失行を伴う失調症2型(ataxia with oculomotor apraxia type 2,AOA2)
10歳から22歳の発症,小脳萎縮,軸索型の運動感覚性ニューロパチー,眼球運動失行,血清中のa-フェトプロテインの上昇を特徴とする.AOA2の診断は家族歴を含めた臨床所見,検査所見を基になされる.また診断には毛細血管拡張を伴う失調症やAOA1を除外する必要がある.

幼児期発症の脊髄小脳変性症(infantile-onset SCA)
フィンランドから報告された稀な病型であり,小脳,脊髄,脳幹の変性と軸索型の感覚性ニューロパチーを伴う.ミトコンドリアDNAへリカーゼの遺伝子変異が報告されている.

Marinesco-Sjo¨gren症候群
小脳失調に精神運動発達遅滞,白内障,低身長,筋緊張低下を伴う稀な病型である.SIL1遺伝子の変異が多数報告されている.

常染色体劣性遺伝性痙性失調症(Charlevoix-Saguenay型)(Autosomal Recessive Spastic Ataxia of Charlevoix-Saguenay;ARSARCS)
12-18ヶ月の幼児期発症で歩行困難や歩行時のふらつきを 特徴とする.神経学的には小脳失調,構音障害,痙性麻痺,病的反射陽性,遠位筋の筋萎縮,下肢優位の運動感覚性ニューロパチー,水平注視方向性眼振などが 見られる.これらはたいていの場合,進行性である.カナダケベック州出身のARSACS家系では網膜の視神経乳頭辺縁から放射状に伸びる有髄神経の増生が見られる.このような網膜変化はフランス人,チュニジア人,トルコ人のARSACS家系では稀である.ARSACSの患者は平均41歳で車椅子生活となる が,認知機能はよく保たれ,晩期まで日常生活動作は可能である.

その他の常染色体劣性遺伝性小脳失調症

    日本から精神遅滞と末梢神経障害,著しい小脳萎縮を伴う失調症が報告されている.
    常染色体劣性遺伝性の小脳失調症と軸索型の感覚運動性ニューロパチーを呈するサウジアラビアの1家系は第14染色体長腕(14q31-q32)に連鎖することが知られていたが,TDP1遺伝子(トポイソメラーゼ1依存性DNA損傷修復酵素をコードする)の変異によることが判明した.
    脊髄後索の変性と網膜色素変性を伴う失調症が記載されている.
    低ゴナドトロピン性機能不全症を伴う失調症が記載されている.類似の症状を持つ同胞にはコエンザイムQ10の欠損が見られている.
    血族婚を有し,精神遅滞,視神経萎縮,皮膚病変を伴う失調症を呈するレバノン人家系が15q24-q26に連鎖することが報告されている.
    失調症,難聴,視神経萎縮を伴い,6p21-p23に連鎖する家系が報告されている.
    Swarzらは14人の同胞中5人が失調症,衝動的なintrusions,感覚性ニューロパチー,ミオクローヌスを呈するスロヴェニア家系を報告している.
    血族婚を有するノルウェー人家系において幼児期発症の非進行性失調症が記載されているが,この家系では20q11-q13に連鎖することが判明している.
    ビオチニダーゼ欠損症の年長児にしばしば失調症と発達遅延が見られる.
    Barisらは精神運動発達遅滞と小脳萎縮を呈するパレスチナ人家系が22q11に連鎖することを報告している.
    極低比重リポ蛋白受容体遺伝子の変異を有するHutterite家系が見出されている.この家系は常染色体劣性遺伝性の非進行性小脳失調と精神運動発達遅滞,小脳下部の低形成,軽度の大脳回のsimplificationを特徴としている.
    Breedveldらは11p15に連鎖する常染色体劣性遺伝性の小児期発症の失調症を呈するオランダ人家系を報告している.この家系では症候的に錐体路徴候,姿勢時振戦,後索性の感覚障害が見られている.
    常染色体劣性遺伝性で種々の程度の先天性小脳形成異常を伴う病態にはJoubert症候群,新生児期糖尿病を伴う小脳無形成症,グリコシル化の先天的な異常症が含まれる

X連鎖性の遺伝性失調症
X連鎖性の失調症を呈する家系がいくつも報告されている.
殆どの家系は痙性麻痺,精神運動発達遅滞,難聴,認知症,鉄芽球性貧血などの他の症状・症候を合併している.鉄芽球性貧血と失調症の原因となる遺伝子(ABC7)が同定されているが,この遺伝子はミトコンドリアの鉄移送に関与していることからFriedreich病と共通した病態機序が推察されている.
これら代表的な8つのAR-SCDの中では本症例は網膜有髄繊維の増生は認めなかったもののARSARCSが最も臨床像が近いと考えられた。ARSARCSはこれまでカナダ、日本、イタリア、スペイン、チュニジア、トルコ、イタリアで遺伝子変異を持つ家系が同定されているが、今後さらに世界中で報告される可能性があると考えられる。

脊髄小脳変性症 診断

分類
脊髄小脳変性症は、運動失調症状が徐々に緩徐に進行する原因不明の神経変性疾患です
遺伝形式などから以下のように分類されます
1. 孤発性脊髄小脳変性症

2. 遺伝性脊髄小脳変性症

疫学

    10万人に対し5-10人が発症しますが、人種、性別、職業による発病差はありません
    日本においては、おおよそ、孤発性:遺伝性= 6:4 と、孤発性(つまりMSAかLCCA)が多いようです
    遺伝性のものの大部分は常染色体優性遺伝型で、次に遺伝性痙性対麻痺が続きます。常染色体劣性遺伝型に関しては、神経内科医でもほとんど遭遇したことがないぐらい稀です
    孤発性で最も多いのはMSAです

検査

    脳MRI:Saggital像も必要です
    髄液検査、血液検査:他疾患の除外のため、あるいは常染色体劣性遺伝型を疑う場合にはαFPやVitE測定などなど
    遺伝子検査:東京医科歯科大学神経内科、新潟大学神経内科などへ依頼可能
    眼球運動解析:ENGなど
    耳鼻科受診、眼科受診

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Axial, Saggitalともに、小脳が選択的に萎縮しています。このような脳幹萎縮を伴わないパターンは、SAC6(あるいはSCA31, 36)でよく見られます

123I-MIBG 心筋シンチ

概要
神経内科領域では、主にパーキンソン病を疑ったときに施行する検査ですが、心筋梗塞などの心疾患がある場合は、もともと異常なのか、パーキンソン病だからなのか判別が難しく施行する価値は減ります。
パーキンソン病では、取り込み低下が目立ち感度は高いのですが、レビー小体病やMSAでも低下するため特異度は高くありません
あるいは、認知機能障害の場合、低下のないアルツハイマー病と、低下することの多いレビー小体病の鑑別に役立つかもしれません

検査オーダー前の注意
検査前に、ドパミン製剤を内服している場合で施行してもおそらく信頼の置けるデータは得られますが、ドプス(ドロキシドパ;ノルエピネフリンの前駆物質)内服は、MIBGでの集積を見かけより増加させてしまう可能性もあり、中止が好ましいと考えられます。
半減期約1.5時間で、内服12時間後には薬物自体はWash outされます。
その他、多くの薬剤がMIBGのuptakeに影響を与えるようです[ref]

方法
成人には、MIBG111MBqを静脈より投与し、約15分後(早期像)にガンマカメラを用いてシンチグラムを撮像します。
必要に応じて、3 – 6時間後(後期像)の心シンチグラムを撮像します

結果
心筋を取り囲む領域(H:heart)と、上縦隔(M:mediastinum)に感心領域を設定して、早期像、後期像それぞれのH/M比を算出します
H/M比:正常は約2-3程度 1.9以下は異常です
パーキンソン病では、早期像に比べ、後期像でH/M比がさらに低下します


正常な方の心筋シンチ。H/M比は保たれています。緑の四角が縦隔、赤の丸が心筋の集積を測定するROIです。

123I-MIBG
123I-MIBG(メタヨードベンジルグアニジン)はノルエピネフリンの生理的アナログで、心筋内摂取によりノルエピネフリンと同様の交感神経末端に貯留、摂取、放出動態を示します
そのため、特に心臓において交感神経の分布や、活動状態を評価することに使用されています。つまり、123I-MIBGは心筋梗塞、狭心症及び心筋症などの心疾患の局所または全体的な交感神経支配の喪失(denervation)・回復(reinnervation)を検出でき、従来の検査法では得られなかった心交感神経機能に関する画像情報が得られるとして多数報告されています。
一方で、神経疾患では下記のように自律神経障害を示す疾患で、早期像からの無集積や高度低集積を認めます

    パーキンソン病
    レビー小体病
    家族性アミロイドーシスによるニューロパチー
    多系統萎縮症:基本的には正常ですのでパーキンソン病との鑑別に用いられますが、自律神経障害の目立つタイプで集積低下したという報告もあります

など