水痘帯状庖疹ウイルスと神経疾患 診断

水痘帯状庖疹ウイルス(VZV:varicella-zoster virus)は幼児期に初感染し水痘を発症させた後、何年も感覚神経節に潜伏感染します。その後、数十年経過してから宿主の免疫機能低下などを機会に再活性化されて感覚神経を下行して皮層に帯状庖疹を発症します。VZVは神経節に潜在する神経向性ウイルスですので、多彩な神経合併症を呈するため、神経内科領域では良く遭遇するウィルスです。
VZVは神経節に潜在する神経向性ウイルスであり,多彩な神経合併症を呈する。大きく分けて以下の3つに分類されます。
1. 水痘に関連するもの 2. 帯状疱疹に関連するもの 3. 皮疹を認めずに神経系の合併症を呈するもの(無疹性)

1. 水痘 2. 帯状庖疹 3. 無疹性
急性小脳失調
脳炎
無菌性髄膜炎
脊髄炎
Reye症候群
視神経炎
NMO
Guillain-Barre症候群
血管炎
肉芽腫性血管炎、脳血管炎
髄膜炎
脳炎/小脳炎
帯状庖疹後神経痛
脊髄炎
視神経炎
脳神経麻痺
顔面神経麻痺(Ramsay Hunt症候群)
Zoster paresis
神経因性膀胱
Plexonopathy
NMO
Guillain-Barre症候群
筋炎
肉芽腫性血管炎
無菌性髄膜炎
脳炎
多発神経炎
脊髄炎
髄膜神経根炎
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慢性活動性EBウイルス感染症(Chronic Active Epstein-Barr Virus infection:CAEBV)

はじめに
時に、神経症状の合併も報告されている予後のあまり良くないEBウィルス感染症です。
CAEBVはEBVの感染細胞により、以下の体部に分類されます。

    T細胞タイプ(CD4、CD8、γδ-T)
    NK細胞タイプ
    B細胞タイプ(稀)

T細胞型は発熱、貧血、肝腫大、リンパ節腫脹、EBV関連抗体価の異常高値が特徴的で、CD4陽性T細胞型は急激な進行、γδ-T 細胞型は種痘様水疱症、NK細胞型では顆粒球増加症、蚊刺過敏症、高IgE血症が比較的特徴的です。
CAEBVの重篤な合併症として、血球貪食症候群、脾機能亢進症、DIC、肝不全、消化管潰瘍/穿孔、神経障害、心筋炎、間質性肺炎、悪性リンパ腫、白血病などが知られています。
CAEBVでは特徴的な抗体価パターンが認められるが、必ずしも全例に認められるわけではなく、EBV関連抗体価は必ずしも高くなるわけではないようです。
より重要なのは、組織もしくは末梢血中でEBV感染細胞の増加を証明することです。つまり、EBV terminal repeat probe を用いたサザンハイブリダイゼーション解析を行うと,CAEBV ではoligoclonalもしくはmonoclonalな感染細胞の増殖を証明することができます。
さらにEBVがT細胞に感染した患者では悪性リンパ腫で見られるような、T cell receptorの再構成もしばしば認められます。一方で、病理組織学的所見からは、異形成の強い均一な細胞の集積が認められることは少なく、むしろ非特異的な炎症性反応と区別できないことも多いようです。また、clonalityを持つ細胞が末梢血中に多量に認められるにも関わらず、病状が悪化しない患者も多く存在することから、この疾患を単純に悪性リンパ腫と言うこともできないとも考えられています。
これまで、CAEBV患者においてはEBV特異的細胞障害性T細胞活性が低いことが示されています。患者の細胞性免疫を制御する機構になんらかの欠陥があり、限られた免疫源性の低いウイルス抗原しか発現していないEBV 感染細胞を排除できず、感染細胞の増殖を許している可能性が考えられています。

慢性活動性EBV 感染症の診断指針

1. 持続的あるいは再発する伝染性単核症様症状
2. VCA, EA抗体価高値を伴う異常なEBウイルス抗体反応または病変組織(含末梢血)におけるEBウイルスゲノム量の増加
3. 慢性に経過し既知の疾患とは異なること
以上の3項目をみたすこと。

補足条項
1. 伝染性単核症様症状とは、一般に発熱・リンパ節腫脹・肝脾腫などをさす。加えて、伝染性単核症に従来主に報告される血液、消化器、神経、呼吸器、眼、皮膚あるいは心血管合併症状・病変(含動脈瘤・弁疾患)などを呈する場合も含む。
2. VCA、EA抗体価高値とは一般にVCA-IgG 抗体価640倍以上、EA-IgG抗体価160倍以上がひとつの目安となる。加えて、VCAおよびEA-IgA抗体がしばしば陽性となる。
3. 診断の確定、病型の把握のために以下の臨床検査の施行が望まれる。
a) 病変組織(含末梢血)のEB ウイルスDNA、RNA、関連抗原およびクロナリテイの検索

    a. PCR 法 (定量、定性):末梢血における定量を行った場合、一般に10^2.5コピー/μgDNA
    以上がひとつの目安となる。定性の場合、健常人でも陽性となる場合がある
    b. In situ hybridization 法 (EBERなどの同定)
    c. 蛍光抗体法など(EBNA、LMPなどの同定)
    d. Southern blot 法(含EBウイルスクロナリテイの検索)
    e. EB ウイルス感染標的細胞の同定: 蛍光抗体法、免疫組織染色またはマグネットビーズ法などによる各種マーカー陽性細胞(B 細胞、T 細胞、NK 細胞、単球/ マクロファージ/ 組織球などを標識)とEBNA、EBER あるいはEBV DNA 検出などを組み合わせて行う

b) 病変組織の病理組織学的・分子生物学的評価

    a. 一般的な病理組織所見
    b. 免疫組織染色
    c. 染色体分析
    d. 遺伝子再構成検査(免疫グロブリン、T 細胞受容体など)

c) 免疫学的検討

    a. 一般的な免疫検査(細胞性免疫 [ 含NK 細胞活性]・抗体・補体・食細胞機能など)
    b. 末梢血マーカー分析(含HLA-DR)
    c. 各種サイトカイン

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EBウイルス(EBV)に関連した神経疾患 診断

はじめに
EBVは、Human herpesvirus 4(γヘルペスウイルス)に分類される直線状二本鎖DNAウイルス(105×10^6Da)で、ゲノムterminal repeatの繰り返しの回数はウイルスごとに異なっているため、臨床的には、この違いを利用してEBVのclonalityの有無を判定することができます。
内科的には伝染性単核症以外に、悪性リンパ腫や慢性活動性EBウイルス感染症など、神経内科では脳炎、末梢神経障害、NMOの発症、血球貪食性リンパ組織球症の治療などで登場することが多いと思われます。多くの日本人は既感染ですので、再活性化が成人の病態に関与しています。宿主内(B細胞が好きなようです)では、潜伏感染か溶解感染かの形をとります。

    潜伏感染:限られた遺伝子のみを発現。latency type 0-3に分類されることが多く、それぞれウィルス遺伝子や蛋白に違いがあるためマーカーにも用いられます(下図)
    溶解感染:ウイルスの全ての遺伝子を発現、強力なウイルスDNA合成によって子孫ウイルスを産生

EBV再活性化について
潜伏感染から溶解感染へ切り替わることを再活性化といいますが、再活性化の病態については不明な点も多いようです。EBVは再活性化するとエピソームが開裂して線状になり、感染力のあるウイルス粒子として細胞外に放出されますが(lytic/replicative phase)、このとき100種類以上の遺伝子とその産物を産生します。
ebv

refより抜粋

EBV関連神経疾患

昔からEBVが原因あるいはEBVが発症に関与したと考えられている神経疾患が多くあります。特殊な病態としては、CAEBVやEBV-HLHに関連する神経障害も多彩な神経症状を引き起こします。以下のようなものが代表的と思われます。

    髄膜炎:髄液VCA-IgGの上昇は感度/特異度が高くないためPCR検査が重要です。PCRも偽陽性の問題がつきまといますが、、、
    脳炎や脳症HSV脳炎類似、嗜眠性脳炎、ADEMなど多様な病型の報告があります
    小脳炎:造影MRIで小脳髄膜に異常な増強効果を認めることがあります
    脊髄炎、神経根炎:稀ですが幾つか報告があります
    末梢神経障害Guillain-Barre症候群の原因になりますし、CIDP類似、多発単神経炎(血管炎? リンパ増殖性? 自己免疫性?)、顔面神経麻痺などの脳神経麻痺の報告もあります。
    NMO:血清抗EA-IgG抗体価と抗AQP-4抗体価の相関の報告がありまして、一部で再発時への関与が疑われています
    MTX-LPD:病変が神経系に分布する場合
    PTLD:移植後リンパ増殖症(post-transplant lymphoproliferative disorder)は、免疫抑制による細胞障害性T細胞の機能障害に関連した、EBV感染B細胞の増殖です。腎移植後の報告が多いかと思います。皮質下白質や基底核に多発する病変の報告などがあります。
    悪性リンパ腫:Burkittリンパ腫、EBV陽性びまん性大細胞型Bリンパ腫、混合細胞型古典的Hodgkinリンパ腫

明確な区別は困難ですが、神経障害発症のメカニズムとして以下の3つが代表的です

    EBV初感染や再活性化:神経組織へのウイルスの直接浸潤
    自己免疫的機序:EBV感染リンパ球や反応性のリンパ球の浸潤、抗原抗体複合体の沈着
    EBV感染細胞の腫瘍性増殖:腫瘍性病変の浸潤、圧迫

検査
 血液/髄液検査:EBVの抗体は複数あって難しいのですが、EBNA、VCA-IgG、VCA-IgM、EA-IgGの4種類は提出が必要かと思われます。特に再活性化はEA-IgG(EA-DR IgGともいう)の上昇が見られることが多いと思います[参考サイト]。
 組織検査:リンパ節生検などにより、免疫染色やISHでEBVに関連した蛋白や遺伝子を検索し、latency typeの分類にも役立ちます
 PCR:血清、髄液、採取組織などからEBV遺伝子を検出します

EBVの抗体
ウイルスカプシド抗原(Viral Capsid Antigen:VCA)、早期抗原(Early Antigen-Diffuse and Restrict complex:EA-DR)、EBV核内抗原(EBV Nuclear Antigen:EBNA)が良く測定されます。これらは、IgG、IgA、IgMクラスが存在して、一部はサブクラス別の測定可能です。感染stageによる違いは>[参考サイト]

もう少しマニアックな話
EBVは唾液などを介して咽頭、扁頭より侵入してB 細胞に直接感染する。EBVはB細胞に感染後、核内に潜伏し、B細胞を形質転換し、芽球化・増殖させる作用があります。芽球化/増殖したEBV感染B細胞はNK細胞、EBV 特異的細胞障害性T細胞などにより排除されます。その後、芽球化したB細胞の一部はメモリーB細胞へと分化、潜伏感染を維持するようです。
EBVの初感染は、小児の場合多くは不顕性感染、もしくは軽微な非特異的上気道感染症に終わりますが、時に伝染性単核症に進展します。EBVはほとんどの健常人に潜伏/持続感染をしていて、時に再活性化しますが、細胞性免疫能が正常であれば通常臨床症状を示すことはありません。
AIDSや移植時など、細胞性免疫が損なわれた状態では、メモリーB細胞に感染していたEBVが再活性化して、細胞が再び芽球化します。また、EBVはBurkittリンパ腫、EBV陽性びまん性大細胞型Bリンパ腫、混合細胞型古典的Hodgkinリンパ腫などのB細胞腫瘍にも潜伏感染していることから、これらの腫瘍において発がんとの関連が示唆されています。
EBVは、一部の宿主においては、B細胞ではなくTあるいはNK細胞に感染し、増殖を誘発することにより、慢性活動性EBV 感染症(chronic active EBV infection:CAEBV)やEBV 関連血球貪食性リンパ組織球症(EBV-associated hemophagocytic lymphohistiocytosis:EBV-HLH)などを引き起こします(EBV 関連T/NKリンパ増殖性疾患)。CAEBVおよびEBV-HLHは圧倒的に日本を含めた極東からの報告が多く、民族集積性があるため、これらの疾患になんらかの遺伝的背景が存在しうることが示唆されています。

EBV-HLH
血球貪食症候群(hemophagocytotic Syndrome:HPS)や血球貪食リンパ組織球症(hemophagocytotic lymphohistiocytosis:HLH)などの用語がよく使用されます。HLHは、ウィルス感染、膠原病、悪性腫瘍などに続発しますが、ウィルス感染では約7割はヘルペスウイルスによるもので、さらにその約8割はEBV-HLHと言われています。また、ウイルス感染細胞のクローナルな増殖が示されているのはEBV-HLHのみのようです。
EBV-HLHの病態は、EBVのT細胞(主にCD8陽性細胞)への持続感染により、活性化T細胞から産生されるIFN-γ、TNF-α、IL-2などのサイトカインが組織球を活性化し、血球貪食が引き起こされるというものです。発症様式としては、以下のようなものが代表的です。

    伝染性単核症が急速に進行して発症
    CAEBVの経過中に発症
    EBV陽性T/NK細胞リンパ腫の経過中に発症

EBV-HLHは、症状のみでは重症伝染性単核症と区別が難しい場合がありますが、感染細胞の検討やサイトカインプロファイリングで鑑別できることもあるようです。EBV-HLHでは、CAEBVとは違ってIL-1αの遺伝子多型が発症に関連するとの報告があります。EBV-HLHの診断では、まずHLHの診断基準を満たして、かつEBVの関与を示す必要がありますが、約2/3の症例では抗体価のみでは確定できないため、末梢血液中のEBV定量PCRが必要です。

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HHV-6 診断

はじめに
薬剤性過敏性症候群(Drug-induced hypersensitivity syndrome: DIHS)、移植片対宿主病(GVHD)、慢性疲労症候群などマニアックな疾患で度々登場するウィルスです。
特に病原性が強いのはHHV-6Bですが、ヘルペスウイルスの中でも日和見感染症の起因病原体として重要なCMVと同じβヘルペスウイルス亜科に属しています。成人では、EBVと同様に再活性化による病態が有名で、DIHSや脳炎を引き起こします。

再活性化時の中枢神経系合併症
移植後のHHV-6B感染にともなう中枢神経系合併症として、記憶障害を主体とする症状で、海馬を中心にMRIで異常所見をみとめる脳炎症例が多く報告されてます。このような症例の髄液中ウイルスDNA量はかなり多く、突発疹罹患時の脳炎合併症例にくらべ明らかに多量のウイルスDNA検出さることが多いようです。

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薬剤性過敏性症候群(Drug-induced hypersensitivity syndrome: DIHS)

はじめに
薬疹の一種ですが、Stevens-Johnson症候群やTEN(toxic epidermal neclolysis)と違って、薬の他にウイルス感染(HHV-6が代表的)が関係してくる病気です。原因となる薬は抗痙攣剤が圧倒的に多く、その他尿酸を下げる薬などがありますので、神経内科で診断されることもあるかと思います。
薬を飲み始めてから発症するまでに時間がかかるのが特徴で、多くは3週間以上で平均4週間と言われていますが、なかには1年以上たって発症することもあります。
薬剤を中止したのちも症状が進行して、軽快するまでに1ヶ月以上の経過を要することも多く、典型的には臨床的に二峰性を示します。この二峰性の症状の出現に、HHV-6の再活性化が関与していると言われています。

診断基準(5つ以上) appendixも参照

    1.薬剤投与開始3週間以上から増大する斑状丘疹性発疹
    2.リンパ節腫脹
    3.発熱(38℃以上)
    4.白血球増加(10000//mm3以上、異型リンパ球増加、好酸球増加)
    5.肝機能障害(ALT100U/L以上)
    6.ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)再活性化

推定原因医薬品
報告例のある薬剤はあまり多くありませんが、本も頻度が高いものはカルバマゼピンです
カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタール、ゾニサミド、、ラモトリジン、アロプリノール(痛風治療薬)、サラゾスルファピリジン(サルファ剤)、ジアフェニルスルホン(抗ハンセン病薬)、メキシレチン、 ミノサイクリン、ジルチアゼム、ピロキシカムなど

原因ウィルス
DIHSにおいて再活性化が見られるHHV-6は、HHV-6AとHHV-6Bに分類されますが、病原性を持つのはHHV-6Bで、小児期には突発性発疹の原因ウィルスとして有名です。そのため、成人ではほとんどの人が既感染です。HHV-6は、単球に潜伏感染し、活性化T細胞に感染することがその増殖に必要のようですが、正確な再活性化の機序は不明です。EBVのように再活性化のマーカーはないので、HHV-6 IgG抗体の経時的な測定により判断します(appendixも参照)。
その他、CMV、EBV、HHV-7の再活性化を伴った報告があります。

1

治療
ステロイド治療:ステロイドパルスや30-50mg/kg内服など
免疫グロブリン大量静注療法
HHV-6に対するウィルス薬はないですが、CMVが検出された場合にはガンシクロビールなど

appendix
dihs

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日本脳炎(Japanese encephalitis; JE) 治療

寄稿原稿です:thanks a lot by 管理人

特異的な治療法はなく、対症療法が中心となる。高熱と痙攣の管理が重要である。脳浮腫は重要な因子であるが、大量ステロイド療法は一時的に症状を改善することはあっても、予後、死亡率、後遺症などを改善することはないと言われている。

予後
死亡率は20-40%で、幼少児や老人では死亡の危険は大きい。精神神経学的後遺症は生存者の45-70%に残り、小児では特に重度の障害を残すことが多い。パーキンソン病様症状や痙攣、麻痺、精神発達遅滞、精神障害などである。

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日本脳炎(Japanese encephalitis; JE) 診断

寄稿原稿です:thanks a lot by 管理人

はじめに
日本脳炎(Japanese encephalitis; JE)は極東から東南アジア・南アジアにかけて広く分布しているが、日本では、1966 年の2,017人をピークに減少し、1992年以降発生数は毎年10人以下。
しかし、若年層と高齢者層では抗体保有率が下がっており、夏季の流行地(西日本)における脳炎患者については特に注意する必要がある。

病態・疫学
フラビウイルス科に属するJE virus感染しておこるが、感染してもJEを発病するのは100-1,000人に1人程度であり、大多数は無症状に終わる。(フラビウイルス科は、日本脳炎ウイルス,デングウイルス,ウエストナイルウイルスなど,全世界で公衆衛生学的問題となる感染症を起こす病原体を多く含む)
日本などの温帯では水田で発生するコガタアカイエカが媒介し、ヒトからヒトへの感染はなく、増幅動物(ブタ)の体内でいったん増えて血液中に出てきたウイルスを、蚊が吸血し、その上でヒトを刺した時に感染する。
潜伏期は6-16 日間。
JE virusは塩基配列により、5つの遺伝子型(I型からV型)があり、一般的に抗体価の検査を行うJaGAr株、中山株、北京株は全てIII型に属する株である。

疫学
年間発症率、ブタの抗体保有状況等は、国立感染症研究所(NIID)の感染症発生動向調査(IDWR)が参考になる(http://www.nih.go.jp/niid/ja/idwr.html)、PDF:疫学情報への到達方法詳細のまとめ

症状
典型的な症例では、数日間の高い発熱(38-40度あるいはそれ以上)、頭痛、悪心、嘔吐、眩暈などで発病する。これらに引き続き急激に、項部硬直、光線過敏、種々の段階の意識障害とともに、神経系障害を示唆する症状、すなわち筋強直、脳神経症状、不随意運動、振戦、麻痺、病的反射などが現れる。

検査

    末梢血:血白血球の軽度の上昇がみられる。RT-PCRと中和抗体については下記。
    尿:急性期には尿路系症状がよくみられ、無菌性膿尿、顕微鏡的血尿、蛋白尿などを伴うことがある。
    髄液:髄液細胞数は初期には多核球優位、その後リンパ球優位となり10-500程度に上昇することが多い。1,000以上になることは稀である。蛋白は50-100mg/dl 程度の軽度の上昇がみられる。RT-PCRと中和抗体については下記。
    MRI:視床,黒質,大脳基底核,橋,小脳などで T2FLAIR で異常信号が認められることが報告されている(この疾患も同様の病変分布を取り、鑑別に重要かもしれません)。なかでも両側性の視床病変は日本脳炎に特徴的で臨側頭葉病変を主座とするヘルペス脳炎と鑑別するうえで重要である[このサイトも参考になりそうです]。


臨床画像 Vol.28, No.4増刊号, 2012より抜粋しました。これほど、広範な病変でなく視床などに限局している場合もあります。

診断
夏季の流行地(西日本)における脳炎患者については特に注意する必要があります。
四類感染症、診断した場合には、診断した医師が、最寄りの保健所に届け出てください。
海外渡航歴のある患者については西ナイルウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルス感染も考慮する必要があります。

検査方法 検査材料
分離・同定による病原体の検出 血液、髄液
PCR法による病原体の遺伝子の検出
IgM抗体の検出 血清、髄液
中和試験又は赤血球凝集阻止法又は補体結合反応による抗体の検出
(ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇)
血清

1.RT-PCRについて
第7病日までの死亡例の脳組織から、ウイルス分離、RT-PCR による遺伝子の検出が可能である。しかし、発病初期の血液・髄液からのウイルス分離は、稀に成功することがある程度である。
2.中和抗体について
1) CF法 (補体結合法)
HI法に比べ感度が悪いためメリットは特になし
2) HI法 (赤血球凝集抑制試験)
トリ(ガチョウあるいはヒヨコ)の血球と血清を混ぜて、トリの血球凝集抑制の程度を見て、血清中の抗体価を測定する。2-メルカプトエタノール(ME)処理した場合と処理しない場合とで抗体価を比較し、2ME処理した場合の抗体価が処理しない場合の抗体価に比べ低くなっていれば、IgM抗体が存在すると考えられる。結果が出るまで1週間弱かかる。
3) IgM ELISA法
メリット:日本脳炎ウイルスに対するIgM抗体を検出する方法で、1〜2日で結果が出るという点が最大の長所
デメリット:交差反応による偽陽性の可能性あり。他のフラビウイルス(デングウイルスやジカウイルスなど)感染でも上昇する。
4) 中和試験法
メリット:最も特異性が高い検査。
デメリット:急性期と回復期のペア血清で行う必要がある。結果が出るまでに時間がかかる(最低でも1週間程度)。急性期と回復期の血清とで比較して回復期で抗体価が上がっている(4倍以上)ことで診断するので、急性期の診断には使うことができない。

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ノカルジア(脳膿瘍) 治療

1. 外科的ドレナージ
抗生剤不応例や膿瘍のサイズが大きい場合

2. 内科的治療
ST合剤を含む多剤併用が第1選択で、以下の様なプロトコールが一般的です。しかしながら、ノカルジアは菌種によって感受性が著しく異なるため,菌種同定,感受性試験に基づいて抗菌薬を選択することが重要です。ST合剤無効例に、MOFX、MINO、LVFXなどが効果がある可能性もあります。
寛解導入:ST + IPM + (AMK)など6週間
地固め:ST (+MINO) 半年〜1年

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ノカルジア 診断

はじめに
放線菌群に属する偏性好気性菌(グラム陽性でフィラメントのような形)で、土壌や汚水、海水など自然環境に広く生息します。形態学的性状や生化学的性状から10種類程度に分類されていましたが、16S rDNAの塩基配列解析により1998年以降、Nocardia属の分類が細分化され、現在80種類以上にに分類分類されています。最多の感染部位は肺で、脳・皮膚が続きます。免疫抑制者に好発しますが、ST合剤での予防困難例が報告されており、臓器移植者などの増加に伴って本疾患の増加が危惧されます。
nocardia2
放線状の黒い菌体を多数認めます

Nocardia脳膿瘍
脳膿瘍の1-2%と脳膿瘍の起炎菌としては稀ですが、致死率 31%と他の脳膿瘍の致死率(10%未満)よりも著しく高い点が特徴です。
播種性に広がる傾向と、ST合剤耐性菌が多いことが原因かもしれません
肺Nocardiaの20-30%に合併します
菌株は、千葉大学真菌医学研究センターで解析いただける可能性があります
基礎疾患:臓器移植13%、長期ステロイド12%、白血病・リンパ腫6%、HIV感染5%

nocardia

ノカルジア脳膿瘍のMRI:左前頭葉にDWI高信号病変を認め、リング状造影効果も伴います

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sCJD (Sporadic Creutzfeldt-Jacob disease) MM2型

はじめに
sCJDの6型の中でもMM2型に特徴的なのは、皮質型と視床型の2つのタイプがあることです。全く臨床病型はことなるのですが、PrPのwestern blotting解析の結果は差はありませんので、いまだ同定されていない病型の規定因子があるものと推定されています。
また、PSDが出現することが少ないのも特徴です。

MM2皮質型
60歳代以降に認知機能障害で発症することが多いのですが、他のsCJDと比較して進行も遅く、病初期にはその他の神経症状も目立たないため時にアルツハイマー病と診断されていることもあります。
しかしながら、経過中に、失認、失行、ミオクローヌス、小脳失調などが出現します。
脳波でのPSD出現頻度は低いですが、髄液14-3-3はしばしば上昇し、脳MRIでは、DWIで大脳皮質の高信号病変を認めますので、他疾患の鑑別に有用です。

cjdmm2
sCJD MM2 皮質型の脳MRI
拡散強調画像:両側前頭頭頂側頭葉の大脳皮質に高信号変化が見られますが、この症例では基底核の信号変化は見られません

MM2視床型
30歳から70歳代で発症します。症状は、認知機能障害の他に、不眠、歩行失調、精神症状、自律神経症状、錐体外路症状などで、特に不眠を認め病理学的に家族性致死性不眠症(FFI)と病変分布が類似することから、孤発性致死性不眠症(FFIの孤発型と考えた上での命名)とも呼ばれています。しかしながら、日本では致死性不眠症の病型を取らないことも多いようです。
進行は比較的緩徐で、実際に罹病期間は平均15.6か月と、sCJDの典型例(3.9か月)と比較して長いようです。
やはりPSDの出現頻度は低いのですが、髄液14-3-3蛋白もしばしば陰性、QUICKの陽性率も低いなど診断に難渋します。
脳MRIでは異常が検出されない場合であっても、SPECTやFDG-PETで視床の血流及び代謝低下が検出されることがあって、診断に重要です[ref]。


sCJD MM2 視床型 3症例の脳SPECCT:すべての症例(A, B, C)で視床の血流の経時的低下がみられます。[refより抜粋]

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