感染性疾患

脳膿瘍 (brain abscess) 治療

診断及び治療目的に、抗菌剤による治療と外科的なドレナージの2つを行うことが原則です

細菌性脳膿瘍の治療
抗菌剤治療
抗菌剤治療の原則は、起因菌同定までの間はEmpiricに治療し、同定後あるいは感受性判明後に抗菌剤を変更あるいは、抗菌剤の種類を減らします。
PCG、ABPC、VCM、CTX、CTRX、MEPM、Nafcillin、Metronidazole、ST合剤などがよく使用されます。GM、EM、テトラサイクリン、CLDMなどはBBBの移行性が不良であまり使用されません。
1. Empiric therapy

a. 局所感染と考えられる場合、あるいは一般的な治療
欧米で使用されているメトロニダゾールは、本邦では内服のみです。
ロセフィン4.0g/day + メトロニダゾール

b. 敗血症や感染性心内膜炎など血行性と考えられる場合
バンコマイシン 1-2g/day + ロセフィン4.0g/day?+ メトロニダゾール

c. 外傷後の場合
バンコマイシン 1-2g/day + ロセフィン4.0g/day [緑膿菌が疑われる場合は、ロセフィンでなくセフェピーム 6g/日]

2. 起因菌判明後
起因菌判明後は培養結果に応じて抗菌剤を単純化 [de-escalation]し、その菌のみをtagetに治療を行い、経過を見ながら4-12週間抗菌剤を投与します。投与期間は定まったものはないため、臨床経過や画像所見で判断します。

外科的治療 (穿刺吸引排膿術)
可能なら抗菌剤投与前に、針吸引やドレナージにより培養を提出したい所です。2.5cm以上が適応とされていることもありましたが、最近では臨床症状や膿瘍の場所などにより適応をそれぞれ判断します。

その他
ステロイド:浮腫が強い場合に用いてもよいかもしれません [エビデンスはありません]
デキサメサゾン(デカドロン) 0.15mg/kg 6時間毎(一日4回) 2-4日間

脳膿瘍 (brain abscess) 診断

はじめに
脳膿瘍は、脳組織内の炎症と細菌などの病原体によって脳が圧迫、占拠された状態です。脳への感染経路は以下が主要なものです。10万人に一人程度の発生率で稀な疾患です。
 血行性に伝播(感染性心内膜炎、肺、腎などから)
 近傍の感染から伝播(副鼻腔、耳、歯科領域、側頭骨や硬膜など)
 外傷や手術に続発

起炎菌として、連鎖球菌が最多、ブドウ球菌、嫌気性菌も多く検出されます。単一菌による感染が多いですが、混合感染にも注意が必要です。
また、免疫不全症例は特殊な起炎菌に注意が必要です。
 HIV:トキソプラズマ
 ステロイド:リステリア
 海外渡航歴:寄生虫
 肺病変の存在:ノカルジア(抗酸菌培養)、アスペルギルス

症状
病変部位により多彩な症状を来すのは、脳梗塞や脳腫瘍と同様です。
頭痛、発熱、神経脱落症状など

検査
最大の目標は診断の精度を上げることと、原因菌を同定することです。確定診断は、原因菌が検出されない場合でも、膿汁を確認することになります。

    • 培養検査:血液培養、髄液培養、尿培養、膿瘍自体の培養など
      髄液検査:
      感染症検査:QFT、細菌、ウィルス、真菌、抗酸菌のPCRや抗原検査
      造影脳CT:膿瘍以外に、副鼻腔や内耳の状態も確認
      造影全身CT:肺AVMの検索などなど
      心エコー:感染性心内膜炎の有無を
      血液検査
      造影脳MRI:脳膿瘍を脳腫瘍や脳梗塞と鑑別するのに有用な検査です(下記)

脳膿瘍のMRI
脳膿瘍に比較的特徴的な所見として、拡散低下(DWI高信号、ADC低信号)、リング状造影増強、T2 hypointense rimの3つがあります。基本的には動脈支配領域に一致しない拡散低下病変を認め、ring-enhancemnetされるときには悪性リンパ腫やグリオーマ、脳膿瘍などが鑑別となりますが、T2 hypointense rimは比較的脳膿瘍を疑う根拠になると思われます。
特にT2画像は進展ステージとともにMRI所見も変化します

  1. Early cerebritis:辺縁不明瞭なT2WI高信号
  2. Late cerebritis:中心はT2WI高信号で、辺縁T2WI低信号(T2 hypointense rim)、さらに浮腫を伴う
  3. Early capsule:T2 hypointense rim
  4. Late capsule:浮腫やmass effectの減少
NEJM 2014より抜粋
NEJM 2014より抜粋。A. 単純CTでは、isodense ringに囲まれたhypodense center、および周辺に浮腫を反映すると考えられるhypodense zoneが見られます。B. 造影T1画像では、ring enhancementが明瞭で、中心部の病変はDWI高信号(C)、ADC値の低下(D)が明瞭に見られます。

進行性多巣性白質脳症(PML) 治療

PML診療ガイドライン2017:詳細な記載があります是非参照されて下さい

はじめに
基本的には非HIV-PMLについての大規模臨床治験はなく、有効性を科学的に証明できた治療法はありません。投与しやすい5HT2Aセロトニン受容体拮抗薬(レメロンなど)に加え、シタラビンやメフロキンを使用することが多いと思います。しなしながら、特に免疫抑制状態の強いclassic formに関しては無効例も多く報告されており強い治療効果は期待できません。
また、治療介入後に臨床症状(および画像所見)の増悪をみることがあり、免疫再構築症候群(immune reconstitution inflammatory syndrome: IRIS)と呼ばれる病態が時に見られます。

pmltx
PML診療ガイドライン2013より抜粋

予後
炎症反応のほとんど見られない、HIV陰性のclassic formは半年未満で亡くなることが多く、予後不良です。HIV陽性の場合は、HARRT療法の効果もあってか2年程度の生存が見込めます。HIV-IRISや炎症性PMLに関しては、炎症反応によりJCVの低下効果があることからもう少し予後が良い可能性があります。

メフロキンについて
In vitroのJCウイルス感染の実験系において,2000種類の薬剤等のなかから数種類の薬剤に著明な抗JCウイルス作用があることが認められました。その中で中枢神経への良好な移行を示すのはメフロキンのみであったことが報告され、治療効果が期待されます[ref]。in vitroでは、astrocytes内でJCVの複製が抑制されることが示されています。

ミルタザピン(レメロン)について
抗うつ剤で、BBB通過が可能です。5-HT2Aと5-HT3受容体のantagonistで、JCVの伝播を抑制する可能性が考えられています。

感染性脊髄炎 診断

以下の様なagentが原因になりますが、最近は梅毒性はあまりなく、ウィルス性が多い印象があります
ウィルス性

    単純ヘルペス脊髄炎:特にHSV-2
    帯状疱疹ウィルス脊髄炎:帯状疱疹出現後に多い
    HTLV-I脊髄症
    HIV-1関連脊髄症
    ポリオウィルス:急性灰白質炎
    エンテロウィルス

細菌性

    リステリアなど

結核性:radiculopathyを伴うことも多い
梅毒性:後索障害やArgyll Robertson瞳孔(縮瞳、対光反射の消失、近見反射正常)
寄生虫性

    ブタ蛔虫:レバ刺し
    イヌ蛔虫
    ライム病

ウィルス性辺縁系脳炎(主にHSV) 治療

日本神経感染症学会治療ガイドライン:必ず熟読されてください。
Infectious Diseases Society of Americaの脳炎ガイドライン
ヘルペス脳炎―診療ガイドラインに基づく診断基準と治療指針 (書籍)

代表的なのは単純ヘルペス脳炎 (HSE) です。治療18ヶ月後の死亡率は28%と高いのですが、症状出現後4日以内にアシクロビルを開始した場合の死亡率は8%です。したがって、HSEを疑ったら確定診断が付く前にすぐにアシクロビルによる治療を開始してください。
確定診断がつくあるいは強く疑われる場合には、中途半端に治療を中止せず14日間(欧米では21日間)きちんと治療を行ってください。中途半端に中止すると再発したり慢性化したりすることがあります。再発率はおよそ5%といわれています。アシクロビル治療後に髄液PCRでHSVが陰性化していることの確認も必要になります。
ただし、アシクロビルは副作用の強い薬剤です。単純ヘルペス脳炎の診断が除外されたら速やかに中止してください。また、痙攣発作を併発する可能性が高い疾患です、脳波で異常を捉えたり実際に痙攣を併発した場合、抗痙攣薬の投与が必要です。

処方例
1. 抗ウィルス薬
アシクロビル10mg/kg点滴静注 1日3回、14日間連日 (新生児は20mg/kg)
腎機能が正常の成人に関しては一般的に、1回10mg/kgを点滴静注します。アシクロビルは、1回2V投与することになるとおもいますので200ml以上の溶媒に溶かし、一時間以上かけて投与してください。アシクロビル不応例にはビダラビンを使用します。
ビダラビン15mg/kg静注 1日1回点滴静注、10〜14日間
あまり使用頻度の高い薬剤でなく、溶解方法も注意が必要ですので添付文書をよく読まれてください。
これらの治療終了日も髄液PCRでHSVが陽性であれば、治療を継続するべきとも言われています。

2. アレビアチン静注
痙攣重責発作の治療法は>こちら

3.脳浮腫に対して
グリセオール、マンニトールなど。

4. 炎症に対して
アシクロビルとともにステロイドを使用した場合、予後が良好であるかどうかは証明されていません。しかしながら、脳幹脳炎、脊髄炎、血管炎などの脳実質の炎症がある場合は使用します。また、それらの併発を予防するために使用してもよいかもしれません。

    ステロイドパルス 3日間
    デキサメサゾン 12mg/日(4分割投与) 2-4日間

などが使用され、その後も徐々に減量することもあります。

予後不良因子
30歳以上、意識レベルがGCS<6、治療開始が症状出現後4日以降、入院してから治療開始まで2日以上など

腎機能障害時のアシクロビル投与量
腎障害のある患者又は腎機能の低下している患者、高齢者では、精神神経系の副作用があらわれやすいので、投与間隔を延長するか又は減量するなど注意すること。
(1) クレアチニンクリアランス(mL/min/1.73m2)が>50の場合
標準1回投与量に対応する百分率 100%、投与間隔8時間
(2) クレアチニンクリアランス(mL/min/1.73m2)が25〜50の場合
標準1回投与量に対応する百分率 100%、投与間隔 12時間
(3) クレアチニンクリアランス(mL/min/1.73m2)が10〜25の場合
標準1回投与量に対応する百分率 100%、投与間隔 24時間
(4) クレアチニンクリアランス(mL/min/1.73m2)が0〜10の場合
標準1回投与量に対応する百分率 50%、投与間隔 24時間

MTX関連リンパ増殖性疾患 (MTX-related lymphoproliferative disorders(MTX-LPD))

概念
MTX長期投与に伴い出現するリンパ腫で、WHO分類ではMTX-LPDは免疫不全に伴うリンパ増殖性疾患に分類されています。

疫学
発症頻度は明らかではないのですが、比較的高齢者に多く、MTX投与後平均3年で発症しています
MTX-LPD発症例のMTX投与期間は平均30ヶ月(2-108ヶ月)、総投与量は平均1500mg (180-3600mg)
現病のほとんど(85%)はRAですが、尋常性乾癬、皮膚筋炎などの報告もあります
移植後リンパ増殖性疾患のような100%の関連はないのですが、MTX-LPDでは60%程度EBVが組織に証明され、EBV感染、再活性化との関連が注目されています。すなわち、通常,EBV感染B細胞は細胞傷害性T細胞の働きにより増殖が抑制されていますが、宿主免疫低下により潜伏感染しているEBウイルスが再活性化され増殖して発症するという仮説があります。
MTX中止により、約半数例、特にEBV関連では自然退縮が見られる特徴があります

症状

    発熱、体重減少などの全身症状
    リンパ節腫脹
    皮膚や肺などのリンパ節外病変

検査

    全身造影CT、FDG-PET、Gaシンチなど
    血液検査:LDH上昇、s-IL2R上昇、CRP軽度高値、EB抗体、EB-PCRなど
    リンパ節生検:EBER in situも。組織学的には、び漫性大細胞型B細胞リンパ腫,ホジキンリンパ腫が多く、特にdiffuse large〜mixed B cell lymphomaの頻度が高いようです。

lpdmtxlpd
全身のリンパ節腫大、リンパ節外病変が検出されます
eber
生検されたリンパ節ではEBER (EBV-encoded small RNA) in situ hybridization (EBER-ISH)法での陽性シグナルが見られることが多く、発症にEBVの関与が示唆される例が多く存在します。

治療
1. MTX中止
特に、EBV陽性例はMTX中止により自然退縮が得られやすいようです
自然退縮率:EBV陽性例は60%、陰性例は40%

2. CHOPなどの化学療法
中止後、2週間でリンパ節腫脹など臨床症状の改善がなければ化学療法を考慮します

HTLV-I関連脊髄症 診断

概念
西日本を中心に特に九州・四国,沖縄に多く分布するHTVL-Iキャリアーの1000人に一人、痙性対麻痺を来たすことがあり、HTLV-Iによる脊髄障害の可能性が示唆されている疾患です

症状
緩徐進行性の

    両下肢痙性不全麻痺:感覚障害は運動障害よりも軽度で、しびれ感や痛みなど自覚的なものが多い
    自律神経症状:膀胱直腸障害(病初期より),下半身の発汗障害、起立性低血圧、インポテンツなど
    その他:手指振戦、運動失調、眼球運動障害、軽度の痴呆

検査

    抗 HTLV-I 抗体:血清,髄液共に陽性
    末梢血所見:白血球数は軽度減少、核の分葉化を示すリンパ球が散見、ATL でみられるフラワー細胞は稀
    髄液:軽度の蛋白、細胞数の増加(核の分葉化したリンパ球がみられる例もある)
    髄液ネオプテリン:活動性炎症を反映していると考えられているため、病勢の把握に重要です。SRLで測定可能です
    脊髄MRI:脊髄に局所的な病変を指摘できる例はほとんどないですが、長期経過例では胸髄全体が萎縮している場合もあります
    頭部MRI:大脳白質や橋に T2強調画像で高信号域が散在してみられる例があります
    SEP:特に下肢で中枢伝導障害の所見
    針筋電図:傍脊柱筋で軽度の脱神経所見がみられ特徴

病理と病態
病理所見
慢性炎症過程が脊髄,特に胸髄中・下部に強調されて起こっています。
つまり、小血管周囲から脊髄実質に浸潤する T細胞主体の炎症細胞浸潤があり,周囲の脊髄実質(髄鞘や軸索)の変性脱落を伴います
一方で、炎症が終息した部では強いグリオーシスと血管周囲の線維性肥厚が見られます
炎症細胞浸潤は広く大脳を含めて全中枢神経系に広がっていますが、常に脊髄中・下部に強調されていて、生理的に血流の停滞しやすい部位により強い炎症が見られるのかもしれません
病態
もう一つの特徴は非常に長期間にわたって炎症が持続しているにもかかわらず、組織の破壊は緩徐です。HTLV-I のプロウイルスは血管周囲に浸潤している T リンパ球のみに局在していて、神経細胞やグリア細胞など神経組織自体に感染しているわけではありません
つまり、本来の宿主細胞であるヘルパーT 細胞に感染しているだけで、接着因子やメタロプロテイナーゼなどを介しての組織浸潤という形で脊髄に持ち込まれていることが推定されていますが、、、

プリオン病(CJDなど) 分類

1. CJD研究班
2. プリオン病と遅発性ウイルス感染症:最も良くまとまっている教科書です

概念
プリオン病とは、ヒトおよび動物における伝播性のある異常プリオン蛋白(PrPsc)が、主に脳に蓄積して、海綿状変化を生じる、人獣共通の致死性感染症の総称です。
病理学的には、脳の神経細胞脱落、海綿状変化、グリア細胞の増加と異常なアミロイド蛋白の蓄積が特徴といわれています。

検査

血液検査:HSVや橋本病、悪性腫瘍の有無などの鑑別のため
髄液検査:14-3-3, Tau蛋白、NSEなどの測定
異常プリオン蛋白遺伝子解析:codon 129とcodon 219の遺伝子多型の解析Real-time QUIC法:通常方法では検出できない微量のPrPscを検出可能なレベルまで増幅する方法です。長崎大学に依頼
脳波:下図。てんかんを伴うことはありそうで、ありません。
脳MRI:大脳皮質、基底核のDWI高信号を認めますが、稀なタイプとして視床や小脳に異常信号を認める病型もあります。もう少し細かく記載すると、
大脳皮質はリボン状高信号、線条体は前方優位、腫脹は伴いません。また、辺縁系や中心前回は避ける傾向にあります。
MM2皮質型では大脳皮質に高信号を認めますが、視床型では大脳皮質に異常信号を認めません
遺伝性CJDでは、M232R変異(アジアのみ報告)による急速進行型は孤発性CJDと同様の経過ですが、緩徐進行型ではミオクローヌスが目立たずDWIでの両側視床内側の高信号が特徴で、V180I変異(日本の遺伝性CJDの40%)では大脳皮質病変は認めますが後頭葉後方や中心溝付近の信号変化が目立ちません。
P102L変異によるGSSでは初期にDWIで異常信号を認めないことが多い様です。
遺伝子検査:遺伝性CJDやGSSの診断のため

分類
ヒトのプリオン病は以下のように分類されます
特発性プリオン病
孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病(sCJD):MM2MV2VV2
孤発性致死性不眠症 [MM2-Thalamus]
感染性プリオン病
クールー
医原性CJD(硬膜移植後CJD、成長ホルモンなど)
変異型CJD(variant CJD)
遺伝性プリオン病
家族性CJD
Gerstmann-Straussler-Scheinker病(GSS)
家族性致死性不眠症(FFI)

最も頻度の高い、孤発性プリオン病の病型は、プリオン蛋白遺伝子多型とプリオン蛋白の2タイプを合わせて6型に分けられますが、臨床病型は以下のような特徴に分類されます
本邦の頻度としては、ほとんどがMM>>>MV>VVでMM型が9割を占めますし、中でもMM1が大部分です
しかしプリオン蛋白の2タイプ(例えばMM1なのかMM2なのか)は、脳組織が必要ですので多くの場合、剖検しない限り判明しません。

遺伝子型と蛋白型 MM1 MM2 MV1 MV2 VV1 VV2
病型 古典型 皮質型/視床型 古典型 失調型 痴呆型 失調型
PrPsc沈着タイプ シナプス型 シナプス型 シナプス型 シナプス型/プラーク型 シナプス型 シナプス型/プラーク型
ミオクローヌス   +    ー   +    +  ー   +
脳波上PSD   +    ー   +   まれ  ー  まれ
14-3-3蛋白   +   +   +   まれ   +   +
進行速度  亜急性 緩徐 亜急性 緩徐 緩徐 亜急性
発症年齢 60歳代 60歳代 60歳代 60歳代 20歳代 60歳代
頻度 70% 2% 2% 1% 16%

典型的な周期性同期性放電(PSD)
psd 脳波

ウィルス性辺縁系脳炎(主にHSV) 診断

概念、疫学
単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus; HSV)による中枢神経感染で、死亡率が 10〜30%、再発も 20〜30%にみられるといった、重篤な神経感染症です
ウイルス脳炎のなかで最も頻度が高く、わが国では年間 300〜400例の発症があります9歳以下にピークがありますが、各年齢でみられます。

病因
HSVには、HSV-1とHSV-2がありますが、一般的にはHSV-1によるものが多く、HSV-2は産道感染で、新生児に脳炎を引き起こすことが多いといわれています。
(HSV-1は口唇ヘルペス、HSV-2は性器ヘルペスの原因ウィルスです)

感染経路

    新生児・幼児:産道における感染や皮膚・粘膜の初感染に続いて起きる
    成人・高齢者:ヘルペスウイルスの知覚神経節への潜伏感染後の再活性化による(回帰感染)

好発部位
通常最も多いのは側頭葉型・辺縁系型ですが(約8割)、脳幹型は約10%前後と比較的稀なものの存在します。脳幹型の特徴としては、発熱、炎症反応を伴いにくい・脳神経症状を伴いやすい・脳波異常(PSD)を伴いにくいなどがあげられます。

    HSV-1:側頭葉、大脳辺縁系で、壊死傾向が強い
    HSV-2:神経根炎や脳幹病変を来たすことも多く注意が必要です

症状

    全身感染症状:発熱、全身倦怠感、上気道炎症状
    脳圧亢進症状、髄膜刺激症状:頭痛、嘔吐
    意識障害:ほぼ必発
    脳病巣症状:痙攣(70%)、片麻痺、不随意運動、人格変化、幻覚、記銘力障害などの側頭葉症状

検査

    髄液検査:細胞↑(リンパ球優位)、蛋白↑、圧↑、糖→、キサントクロミーが見られることがあります
    HSV遺伝子検査:髄液、血清ともに提出しましょう
    HSV抗体:EIA法で髄液、血清をAlbとともに提出して、抗体指数を算出します
    脳波:片側性に周期性同期性高振幅徐波が見られ、典型的にはPSD(periodic synchronous discharge)、PLEDs(periodic lateralized epileptiform discharges)が見られます
    脳MRI:一側優位の側頭葉下部、島、海馬病変に、異常信号が出現します

dwi-hse

拡散強調画像(DWI)
側頭葉、側頭葉に高信号領域を認めます
adc-hse

拡散係数画像(ADC)
拡散強調画像の高信号領域の一部はADC値が低下していますが、一部は上昇しています。ADC低下病変は急性期に、上昇病変は組織破壊の進んだ亜急性期以降に見られる印象があります
flair-hse

FLAIR画像
拡散強調画像と比較して高信号の程度は軽いですが、亜急性期以降は目立ってきます