末梢神経疾患

三叉神経痛 治療

日本神経治療学会ガイドライン

基本的には、軽度の症状であれば薬物療法、中等度であればペインクリニックあるいは外科的治療になります
1. 薬物療法

    テグレトール:王道です
    その他:リリカ、ガバペン、ラモトリジン、デパケン、フェニトイン、oxcarbazepineなど

2. 外科的治療
CISS法によりneurovascular compressionが認められ、自覚症状と一致し、薬物療法での効果がいまいちの場合に適応になります。

    微小血管減圧術(MVD: microvascular decompression: Janetta手術)
     Interposition:血管と神経の間にガーゼを挟む
     Transposition:血管を移動させる。最近はこちらが主流

3. その他

    γナイフ
    三叉神経・Gassel神経節ブロック
    神経根切断術

微小血管減圧術(MVD: microvascular decompression)について
1964年にJanettaにより考案された方法で、手術直後から疼痛が消失することも多く成績も良いようです。一方で、手術後1ヶ月程度かけて徐々に改善する例も知られています。
効果発現のメカニズムとして、血管拍動による神経インパルス誘発の低下、異所性伝導の低下、髄鞘再生などが想定されています。
合併症として次のものがあります。無菌性髄膜炎、聴力障害、三叉神経領域の感覚障害、髄液漏、脳梗塞、慢性硬膜下血腫などなど

Multifocal Motor Neuropathy (MMN) update

Subcutaneous vs. Intravenous Immunoglobulin for Chronic Autoimmune Neuropathies: A Meta-analysis. Muscle Nerve. 2016 Sep 20.
MMNやCIDPに対して、IVIgの皮下注射は静脈注射と同等の効果がある

Multifocal motor neuropathy: a review of pathogenesis, diagnosis, and treatment. Neuropsychiatr Dis Treat. 2014;10:567-76.
MMNの診断、病態、治療に関する総説

Sensitivity and predictive value of anti-GM1/galactocerebroside IgM antibodies in multifocal motor neuropathy. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2014;85:754-758.
多巣性運動ニューロパチーではGM1 IgM、GM1/GalC IgM抗体の抗体の陽性頻度が高く、また双方が同時に検出されることも多い

Multifocal motor neuropathy: diagnosis, pathogenesis and treatment strategies. Nat Rev Neurol. 2011 Nov 22.
MMNの診断、病態、治療に関する総説

Increased frequency of HLA-DRB1*15 in patients with multifocal motor neuropathy. Neurology 2010 74: 828-832.
多巣性運動ニューロパチーではMSやCIDPの女性と同様に、HLA-DRB1*15陽性率が有意に高かった

Paraproteinemiaに伴う末梢神経障害 update

Long-Term Follow-up of Monoclonal Gammopathy of Undetermined Significance. N Engl J Med. 2018;378:241-249.
MGUS患者では年齢/性別をマッチさせた対象集団よりも生存期間が短く、IgM MGUSの方がnon-IgM MGUSよりも疾患進行リスクが高かった(特に、悪性リンパ種やWM)

Autologous Transplantation and Maintenance Therapy in Multiple Myeloma. N Engl J Med. 2014;371:895-905.
65歳以下の多発性骨髄腫患者では、高用量メルファラン+幹細胞移植によりメルファラン+プレドニゾン(prednisone)+レナリドミド(MPR療法)を行った場合と比較して無増悪生存期間と全生存期間が有意に延長し、レナリドミドによる維持療法は維持療法なしと比較して無増悪生存期間が有意に延長した

Clinical and pathological heterogeneity in a series of 31 patients with IgM-related neuropathy. J Neurol Sci. 2012;319:75-80.
IgMモノクローナルガンモパチーに伴う末梢神経障害では、様々な病型を取りうるため腓腹神経生検を含めた詳細な検索が必要である

Continuous Lenalidomide Treatment for Newly Diagnosed Multiple Myeloma. N Engl J Med 2012; 366:1759-1769
新たに多発性骨髄腫と診断され移植に不適格な患者では、メルファラン+プレドニゾン(prednisone)+レナリドミドによる導入療法後にレナリドミドによる維持療法を行うレジメン(MPR-R)によって無増悪生存期間が有意に延長し65-75歳の患者ではもっとも大きな利益が認められた

Prognosis of polyneuropathy due to IgM monoclonal gammopathy: A prospective cohort study. Neurology 2010 74: 406-412.
IgMモノクローナルガンモパチーに伴う末梢神経障害では、高齢発症及び脱髄型は日常生活の障害の強さと関連し、MAG陽性は障害の低さと関連していた

Myeloma-associated polyneuropathy responding to lenalidomide. Neurology 2009 73: 812-813.
Lenalidomide(Revlimid;サリドマイドの誘導体)が著効したIgA型多発性骨髄腫に伴う末梢神経障害の女性例

Monoclonal gammopathy and neuropathy. Curr Opin Neurol. 2007;20:536-41.
Paraproteinemiaに伴う末梢神経障害の総説

Paraproteinemiaに伴う末梢神経障害 治療

多発性骨髄腫の診療指針:参考書籍


1. 多発性骨髄腫(MM)に伴う末梢神経障害
治療抵抗性で神経症状改善効果がはっきりしている治療法は殆どありません。免疫学的機序で末梢神経が障害されている可能性もあるのですが、免疫抑制剤、PE、IVIgは殆ど効果がないのが現状です。一方で、MMそのものに対する治療は以下のものがあります。
MMの治療で、末梢神経障害が改善するか停止するか増悪するかなどは信頼できるデータがないため不明といわざるおえませんが、、、
症候性MMの治療

    MP療法:昔の最も標準的な治療(CRは5%未満、 OSの中央値は3年 )
    PBSCT:現在の60歳以下の症候性MMでは第一選択(CRは30%、OSの中央値は4.5年)
    VAD療法:ビンクリスチン+ドキソルビシン+デキサメタゾン。PBSCT前に行うこともあります。単独では効果はMPと同等ですが症状の改善速度が速いようです
    Thalidomide療法:再発例に対してよく使用されます(CRは単剤治療で5%、DEX(デキサメタゾン)併用で10%)
    ボルテゾミブ:新規薬剤であるプロテアソーム阻害薬です

無症候性MMの治療
末梢神経障害が強ければ、あるいは進行が早ければPBSCTを考慮しても良いのかもしれません
一方で、無症候性MMに対しては早期にMP療法、Thalidomide治療を開始しても生命予後改善効果はないようです

ちなみに、International Staging System(ISS)で予後予測が可能です

病期 基準 生存期間中央値
I 血清β2MG<3.5mg/dl + Alb ≧3.5g/dl 62ヶ月
II 病期IとIIIの何れにも属さないもの 44ヶ月
III 血清β2MG≧5.5mg/dl 29ヶ月

2.MGUS
Coming soon

自己免疫性自律神経節障害 (AAG) 診断

概念
neuronal nicotinic acetyl-choline receptor(ganglionic AchR)に対する自己抗体が、約半数に検出されることがあるため、自己免疫学的な機序が疑われている自律神経節障害疾患です
以前より、autoimmune autonomic neuropathy, acute pandysautonomiaなどと呼ばれてきた疾患の一部はこの疾患と思われますが、2007年Mayo ClinicのPhilip Lowらが急性汎自律神経異常症(Acute pandysautonomia:APD)の症例で自律神経節に存在するganglionic AchRに対する抗体を発見、本疾患の概念を提唱しました。
悪性腫瘍が見つかることもあれば、他の自己抗体が陽性になることもあります

症状
中心は末梢神経由来の自律神経障害です。従って、傍腫瘍性末梢神経障害やセリアック病などautonomic neuropathyの原因となる末梢神経障害が鑑別になります。亜急性の進行性の経過のことが多いですが、慢性の経過の場合は中枢神経疾患のMSA-AやPAF、PD/DLBも鑑別に上がります

交感神経障害症状:起立性低血圧、無汗症
副交感神経障害:膀胱直腸障害、脈拍変動、口渇、瞳孔収縮異常

その他、精神症状(情緒不安定、性格変化、抑うつ、記憶障害、アパシーなど)、運動性 and/or 感覚性末梢神経障害、MG、Stiff-person症候群、脳炎、不随意運動などの合併例も知られています
また、
α3-AchR抗体の抗体価により、臨床的特徴があることも知られています。例えば、高力価では自律神経障害が強く、広範に障害されるのに対して、低力価では局所的に障害され、慢性の経過を呈することが多くPAFとの鑑別が必要になることもあると報告されていたりします。

検査

  • 血液検査:安静時カテコラミン値の低下
  • 自律神経検査:Head-up tilt試験、サーモグラフィー、SSR、発汗検査(ミノール法、QSART:節後線維が優位に障害されます)
  • NCV:末梢神経障害を合併するため
  • 点眼試験
  • MIBG心筋シンチ:高率にH/M比が低下しますので、心臓交感神経節後線維の障害が多いこととの相関が推測されます
  • 脳MRI:基本的にMSAの鑑別のためですが、時に尾状核、被殻に異常信号が検出されることもあります
  • 悪性腫瘍検索:肺癌、乳癌、腎臓、泌尿器系、卵巣系など様々
  • 髄液:軽度の蛋白、細胞数上昇を見ることもあります
  • 皮膚生検:原発性無汗症などとの鑑別のため行うこともあります
  • 自己抗体:α3-AchR抗体測定、その他、GAD抗体、Ach受容体抗体、ANNA-1、VGCC抗体、CRMP-5など

ganglionic AchRについて
ニコチン性AchR受容体は神経筋接合部と自律神経の2つに存在しています。神経型AchRは重症筋無力症などで検出されるような筋型AchRとは抗原性が異なっていて、2つのα3サブユニットを含むことからα3型AchR [α3β4が 代表的]と呼ばれたり、自律神経節に存在することからganglionic AchRと呼ばれたりしています。また中枢神経系では、α4β2サブユニットが代表的です。

自己免疫性自律神経節障害 (AAG) 治療

急性と亜急性の経過をたどるAAGでは自然寛解例も報告されています。ただし、免疫療法を行わないと、一部の自律神経症状が残存することが多いと言われているので何らかの治療を行うことが多い印象です。
慢性の経過をたどるAAGでは自然寛解はほとんどなく、後遺症も強く残る可能性があるので、不可逆的な障害が起きる前にできるだけ早期に開始すべきと考えられています。
IVIg単独での効果は少ないようですが、PEやIVIgと免疫抑制剤を追加してある程度の治療効果は見られそうです

免疫治療

A. 急性期治療

  • 単純血漿交換
  • 免疫グロブリン大量静注療法

B. 維持療法

  • プレドニゾロン:60-100mg/日 4-6週間など
  • ミコフェノール酸モフェチル
  • アザチオプリン
  • エンドキサン:単独では効果が乏しいようです
  • リツキサン

C. 対症療法

  • コリンエステラーゼ阻害薬(メスチノン、ミドドリン、ピリドスチグミンなど):軽度の改善を認めると言われているため、上記のような積極的治療を望まない場合は処方する価値があると考えられます
  • 起立性低血圧に対する治療

EGPA(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)Churg-Strauss症候群 update

Mepolizumab or Placebo for Eosinophilic Granulomatosis with Polyangiitis. N Engl J Med. 2017;376:1921-1932.
EGPA患者では、抗インターロイキン-5 モノクローナル抗体(メポリズマブ)投与によりプラセボ投与と比較して寛解状態にある週数が有意に増加し、ステロイドの減量が可能になった

Eosinophilic granulomatosis with polyangiitis (Churg-Strauss): evolutions in classification, etiopathogenesis, assessment and management. Curr Opin Rheumatol. 2014;26:16-23.
EPGAの病態や治療に関する総説

Neural damage associated with atopic diathesis: A nationwide survey in Japan. Neurology 2009 73: 790-797.
アトピーに関連した脊髄炎と末梢神経炎には疫学に差はあるものの、アトピー性脊髄炎の25.7%は末梢神経障害がされ、アトピー関連末梢神経炎の18.8%は中枢神経病変が検出されるなど末梢、中枢神経双方とも障害されうる

多発性骨髄腫(MM)に伴う末梢神経障害 診断

概念
多発性骨髄腫による末梢神経障害の検討は古くから知られていますが、昔の論文はPOEMS症候群が含まれたまま解析がなされていることもあって、注意が必要です
大きく分けると以下の二つに分類されます。特に、下段のタイプはPOEMS症候群、MAG抗体関連末梢神経障害、CIDPとの鑑別が重要です

    アミロイド沈着による末梢神経障害>こちら
    アミロイド沈着を認めない末梢神経障害

症状
慢性進行性の四肢遠位有意の運動<感覚障害

検査

    蛋白分画、IgG、IgA、IgM
    免疫電気泳動
    血清VEGF:POEMS症候群との鑑別のため
    尿検査:BJ蛋白、免疫電気泳動
    骨髄穿刺、フローサイトメトリー:形質細胞腫の検索
    アミロイド検索:胃粘膜生検、神経生検など
    心電図、ホルター心電図、心エコー、BNP (NT-proBNPも)、トロポニンT
    全身骨X-p、骨シンチなど
    髄液検査
    末梢神経伝導速度検査:振幅の低下が中心ですが、軽度のvelocityの低下が見られることもあります

病理
1. アミロイド沈着による末梢神経障害
small fiber有意の軸索障害です、Congo red染色/DFSは必須です
2. アミロイド沈着を認めない末梢神経障害
このタイプの末梢神経障害では、特に電子顕微鏡でImmunogloblinや補体の沈着が見られるような自己免疫性のメカニズムの場合に、慢性の軸索障害の所見と共に、節性脱髄の所見が目立つことが報告されています
以下のような障害メカニズムの存在が推定されています

    腫瘍細胞の浸潤:神経内膜・神経上膜への腫瘍性形質細胞の浸潤により生じる末梢神経障害です。多くは、左右非対称の症状になります  
    血管障害(慢性虚血、過粘稠など) 
    Mタンパク等を介した自己免疫性機序:特異的な自己抗体は同定されていませんが、P0やミエリンへの抗体沈着が確認される場合もあります 
    その他、尿毒症など合併層症によるもの

MM2MM1
MM末梢神経症例(アミロイド沈着なし)の腓腹神経(トルイジンブルー染色)
左:有髄線維密度が低下していて、同一神経束内でも有髄神経束密度に差を認めます
右:ミエリン球はないため、急性の軸索障害ではなさそうです。ピンクの矢印で示したClusteringが目立ちますので、慢性の軸索障害と考えられますが、一方で緑の矢印のように脱髄を示唆する軸索の割に髄鞘が薄い線維(Thin myelin)が散見されます

MM3
上記症例の、解きほぐし標本
ミエリン球は認めませんが、節性脱髄を認めます

多巣性運動ニューロパチー(Multifocal Motor Neuropathy : MMN) 治療

慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー、多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン〈2013〉

病態的には免疫学的機序が想定されているものの、不思議なことに、ステロイド、血漿交換療法の有効性は証明されていないばかりか、症状を増悪させ得ることもあります。主に使用されるのは、以下の二つです。この中で、有効性が確立され,保険適応を受けている免疫グロブリン大量静注 (IVIg) 療法を第1選択とすることが多いようです。しかしながら、IVIgの効果は持続性に乏しいこと、そのため、反復投与やその他の免疫抑制薬を併用することが多いのですが、治療継続にもかかわらず筋力低下は緩徐に進行することがあるなど、問題点が山積みです。

急性期治療
基本的には、四肢の筋力低下はIVIgにより改善します。IVIgに反応性を示す要因として、発症早期、若年発症、罹患肢が少ないこと、血清CK値が180 U/L以下、筋萎縮を欠くこと、などが報告されています。基本的には、イディオタイプ抗体活性による自己抗体(IgM-GM1抗体など)の中和、マクロファージFc受容体の飽和、補体活性化経路の抑制、B細胞の抗体産生抑制、刺激性T細胞の活性化など、免疫応答を調整すると推定されているものの、おそらくaxonal membraneのhyperexcitabilityの抑制など「機能的」な、調整作用も強いものと思われます。
1. 免疫グロブリン大量静注療法
2. 免疫グロブリン皮下注射療法(subcutaneous immunoglobulin, SCIg)
IVIgを自宅で行うための方法です。静注療法と同等の効果が報告されています。皮下注射製剤は、IgG濃度が緩徐に上昇することでIgG濃度依存性の副作用が減少するかもしれません。

維持療法
IVIgにより筋力低下は改善しますが、その効果は長くても数ヶ月と思われます。その為、以下のような免疫抑制剤などを併用し、なるべく定期的なIVIgの投与期間を延長する試みがなされます。

仕様が推奨されないもの

    1. ステロイド:有効でない、あるいは症状を増悪させるという報告が多くあります
    2. 血漿交換療法:有効性は証明されていません。逆に、増悪したとの報告もあります
    3. Infliximab:CochranではMMNを引き起こす副作用から仕様が推奨されていません

POEMS症候群 治療

放射線療法
骨硬化性病変が「1カ所」であることがPETやCT(骨条件)で確認される場合には、まず放射線療法を行います。骨硬化性病変が多発性であるかみつからない場合には、以下の化学療法のうち、移植療法の適応を考慮します。移植療法の適応がない場合にはサリドマイド療法を考慮しましょう。

化学療法

    1.自己末梢血幹細胞移植を伴う大量化学療法
    適応のなる方は第一選択で、PBSCTにより神経症状が改善します。
    大きな流れとしては、auto-PBSCTを目指すことが重要で、IVIg、MP療法などで対症的に治療しないことが重要です
    2.サリドマイド療法
    移植療法は高齢者(66歳以上)や多臓器病変(とくに腎障害)を有する患者には施行できないため、移植の適応にならない患者に対してサリドマイド療法が試みられています。
    3.ベバシズマブ(抗VEGFモノクローナル抗体)
    本疾患で上昇するVEGFに対する分子標的治療ですが、対症療法になります。あくまで対症療法として、急性あるいは亜急性増悪時に用います。
    4.メルファラン大量間歇療法