末梢神経疾患

慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP) 診断

慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー、多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン〈2013〉

概念
病因は不明ですが、自己免疫的な機序(immune-mediated)により末梢神経の脱髄が生じる疾患です。再発寛解や進行性の経過を示すことも多いため、多発性硬化症の末梢神経版のような疾患です。
重症筋無力症の様に抗体依存性なのか、多発性硬化症のように細胞依存性なのかは不明ですが、双方の要因が複合したもと思われます。臨床的にも病態的にもheterogeneousな状態が含まれています。

  • 抗体依存性:免疫グロブリン療法、抗CD20抗体(リツキサン)療法に反応する。自己抗体も見つかり始めている。P0抗体陽性患者血清でラットに類似の症状を再現できる
  • 細胞依存性:ギラン・バレー症候群と異なり自己抗体が陰性のことが多い。Tリンパ細胞のclonal expansionが見られる。

病型の分類

EFNS/PNS改訂診断基準では、臨床的及び電気生理学的に以下の6つの病型に分類しています(病型と治療は>こちら

1. 典型的CIDP(Typical CIDP)
対称性の運動感覚障害で、遠位と近位筋が同様に侵される

2. 非典型的CIDP(atypical CIDP)

  • 遠位優位型(distal acquired demyelinating symmetric:DADS):遠位優位型の感覚障害で筋力低下を伴うこともある
  • 多巣性感覚運動型(multifocal acquired demyelinating sensory and motor:MADSAM):多発単神経障害パターンで、左右非対称の症状
  • 局在型(focal):一側の上肢などに限局した運動感覚障害で、非常に稀
  • 純粋運動型(pure motor):対称性で臨床的、電気生理学的に運動神経障害のみ。非対称性でGM1 IgM抗体が検出されるMMNと鑑別が必要
  • 純粋感覚型(pure sensory):対称性の純粋感覚障害

CIDPと自己抗体
最近、CIDPに関連する自己抗体が多く見つかっています。検出された抗体に関連した臨床症状の違いが少しづつ判明しています。また、特にIgG4サブクラスの抗体は、Renvier絞輪部の病態にチャック目したnodopathy/paranodopahtyという概念が提唱されるきっかけとなりました。

  • NF155抗体(IgG4主体):振戦や失調症状を伴う、比較的対照的な四肢の運動感覚障害で若年発症が多い。神経根などの神経肥厚が目立つ。髄液蛋白の増加が目立つ [proposal of diagnostic criteria]。中枢病変を合併することもある(i.e. CCPD)。
  • Contactin-1抗体(IgG4主体):高齢に多く、運動失調を伴うことが多い。髄液蛋白の増加が目立つ
  • NF140/186(IgG4主体)
  • Caspr1(IgG4主体):振戦や痛みの例の報告
  • LM1抗体:高齢に多く脳神経障害は稀で、運動失調を伴うことが多い

検査
初発の場合、診断は決して簡単ではありませんし、他の疾患の除外も重要です。鑑別すべき脱髄性末梢神経障害の一覧はこちらの総説によくまとまっています。
髄液:髄液蛋白の著増、細胞数は増加しない
電気生理学的検査:ガイドラインの診断基準を参考、CB検索に適宜SEP、MEPも
血液検査:CIDP関連自己抗体の測定(上記)、免疫グロブリン増加(単クローン性)の有無を確認、他疾患の鑑別目的で、IgMにclonalityが検出された場合はMAG/SGPG抗体を提出、その他、糖鎖抗体測定、VEGFはPOEMS症候群の鑑別が必要な場合に提出(これらの鑑別には、適宜骨シンチやPETも)
神経エコー:神経腫大やエコー輝度変化(低下は浮腫?上昇は繊維化?)
造影脊髄MRI:馬尾、神経根、神経叢の腫大や造影効果
腓腹神経生検:小池先生は電顕によるマクロファージの変化を重視しています [ref]。光顕では、神経上膜内の小血管周囲やfascicule内に少数のリンパ球浸潤。現在進行形の脱髄を示唆するnaked axon、thin myelinated fiberの増加、稀にonion bulb
脱髄、再髄鞘化の所見が電顕で5つ以上の線維、あるいはときほぐしで6/50以上の線維にあるとCIDPを示唆する所見ですが、認められなくても否定はできません。

CIDPに見られたconduction block (CB;伝導ブロック):ここでは、肘上部と腋窩の間にブロックがあります

ギラン・バレー症候群 診断

ギラン・バレー症候群、フィッシャー症候群診療ガイドライン〈2013〉:日本神経学会のガイドライン

概念
GBSは、神経内科医が見逃すわけにはいかない疾患です。急性発症の腱反射低下・消失を伴う四肢の筋力低下を主症状として、先行感染の存在と単相性の経過を特徴とする自己免疫性末梢神経疾患で、人口10万人あたりの年間発症率が1〜2人と比較的頻度が高いようです。糖鎖抗体との関連が示唆されています。
先行感染後に四肢筋力低下、嚥下障害などを来たしているかという病歴が重要です。高齢者は発症が少ないように思います。
発症数日から数週間前に風邪、下痢をしていますか?鳥のささ身などを食べましたか?キャンピロバクター、サイトメガロウィルスが原因として多く、前者はAxonal typeを引き起こし重症化する場合があり、後者は脳神経系も犯されることが多い特徴があります。
同様に、急性発症の末梢神経障害は下記の診断基準に掲載されている稀な鑑別診断のほかに、VitamineB1低下の可能性もあります。除外してください。

サブタイプ
電気生理学的には、以下のサブタイプに分類されます。
脱髄障害が主体のもの

    急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(AIDP):CMV感染やGM2抗体と関連?

軸索障害が主体のもの

    急性運動軸索型ニューロパチー(AMAN):IgG抗GM1抗体の陽性率が高い。Campylobacter jejuniの先行感染が多い。重症化する。その他は、GM1b, GD1a, GalNac-GD1a抗体と関連。
    急性運動感覚性軸索型ニューロパチー(AMSAN):GM1, GM1b, GD1a抗体と関連

その他、抗GT1a抗体は咽頭・頸部・上腕の筋力低下を特徴とするサブタイプとの関連が知られ、IgG抗GQ1b抗体はFisher症候群との関連が知られています。ただし、抗GQ1b IgG抗体はGT1aと交叉反応する抗体が多く、咽頭・頸部・上腕の筋力低下にFisher症候群の症状を併せ持ったような臨床上を示すことがあります。

検査

    血ガス、心電図:呼吸筋麻痺と自律神経障害の有無の検索は最も重要です
    髄液検査:発症数日後からは蛋白上昇、細胞数の上昇は乏しい(蛋白細胞解離)
    末梢神経伝導速度検査:伝導遅延、伝導ブロック、振幅低下など、SNAPよりCMAPに強い
    血液検査:サルコイドーシス、膠原病など他疾患の除外のため。ついでにCMV IgG&M測定なども
    血清抗ガングリオシド抗体検査:IgG抗GM1抗体、抗GQ1b抗体は、平成19年8月1日より保険適応となりました。その他は、近畿大学神経内科へ依頼可能
    MRI:他疾患の鑑別が難しければ、適宜脳MRI、頚椎MRIなど
    便培養:C jujuni検索

GBS の診断基準
診断に必要な特徴

    A. 2 肢以上の進行性の筋力低下.その程度は軽微な両下肢の筋力低下(軽度の失調を伴うこともある)から、四肢、体幹、球麻痺、顔面神経麻痺、外転神経麻痺までを含む完全麻痺まで様々である.
    B. 深部反射消失.全ての深部反射消失が原則である.しかし、他の所見が矛盾しなければ、上腕二頭筋反射と膝蓋腱反射の明らかな低下と四肢遠位部の腱反射の消失でもよい.

診断を強く支持する特徴
A. 臨床的特徴(重要順)

    1. 進行:筋力低下は急速に出現するが、4 週までには進行は停止する.約50%の症例では2 週までに、80%は3 週までに、90%以上の症例では4 週までに症候はピークに達する.
    2. 比較的対称性:完全な左右対称性は稀である.しかし、通常1肢が障害された場合、対側も障害される.
    3. 軽度の感覚障害を認める.
    4. 脳神経障害:顔面神経麻痺は約50%にみられ、両側性であることが多い.その他、球麻痺、外眼筋麻痺がみられる.また外眼筋麻痺やその他の脳神経障害で発症することがある.(5%未満)
    5. 回復:通常症状の進行が停止した後、2 から4 週で回復し始めるが、数ヶ月も回復が遅れることがある.ほとんどの症例は機能的に回復する.
    6. 自律神経障害:頻脈、その他の不整脈・起立性低血圧・高血圧・血管運動症状などの出現は診断を支持する.これらの所見は変動しやすく、肺梗塞などの他の原因によるものを除外する必要がある.
    7. 神経症状の発症時に発熱を認めない.

非定形例

    1. 神経症状の発症時に発熱を認める.
    2. 痛みを伴う高度の感覚障害
    3. 4 週を越えて進行.時に4 週以上数週にわたって進行したり、軽度の再燃がみられる.
    4. 症状の進行が停止しても回復を伴わない.または、永続的な重度の後遺症を残す.
    5. 括約筋機能:通常括約筋機能は障害されない.しかし、症状の進展中に一時的に膀胱麻痺が生じることがある.
    6. 中枢神経障害:GBS は通常末梢神経の障害と考えられている.中枢神経障害の存在は議論のあるところである.小脳性と考えられる強い運動失調、構音障害、病的反射、境界不明瞭な髄節性感覚障害などの症状が時にみられるが、その他の所見が典型的であれば診断を除外する必要はない.

B. 診断を強く支持する髄液所見

    1. 髄液蛋白:発症から1 週以降で髄液蛋白が増加しているか、経時的な腰椎穿刺で髄液蛋白の増加がみられる.
    2. 髄液細胞:単核球で、10/mm3 以下

亜型

    1. 症状の発症後1-10 週の間に髄液蛋白の増加がみられない.(稀)
    2. 髄液細胞が11-50/ mm3 の単核球

C. 診断を強く支持する電気生理学的所見

    経過中ある時点で症例の80%に神経伝導速度の遅延あるいは伝導ブロックを認め、伝導速度は通常正常の60%以下となる.しかし、症状は散在性であり、全ての神経が障害されるのではない.遠位潜時は正常の3 倍にまで延長していることがある.伝導速度検査は発症数週間まで異常を示さないことがある.F 波は神経幹や神経根近位での伝導速度の低下をよく反映する.20%の症例では伝導速度検査で正常を示す.伝導速度検査は数週後まで異常を示さないことがある.

診断に疑いをもたせる特徴

    1. 高度で持続性の非対称性の筋力低下
    2. 持続性の膀胱直腸障害
    3. 発症時の膀胱直腸障害
    4. 髄液中の単核球が、50/ mm3 以上
    5. 髄液中の多核球の存在
    6. 明瞭な感覚障害レベル

診断を除外する特徴

    1. ヘキサカーボン乱用の現病歴(揮発性溶剤:n-ヘキサン、メチルn-ブチルケトンなど).塗装用ラッカー蒸気や接着剤を吸入して遊ぶことを含む.
    2. 急性間欠性ポルフィリン症を示唆するポルフィリン代謝異常.尿中へのポルフォビリノーゲンやδ-アミノレブリン酸の排泄増加がみられる.
    3. 最近の咽頭または創傷へのジフテリア感染の既往または所見.:心筋炎はあってもなくてもよい.
    4. 鉛ニューロパチーに合致する臨床所見(明らかな下垂手を伴った上肢の筋力低下、非対称性のことがある.)および鉛中毒の証拠.
    5. 純粋な感覚神経障害のみの臨床像
    6. ポリオ、ボツリヌス中毒、ヒステリー性麻痺、中毒性ニューロパチー(例えばニトロフラントイン、ダプソン、有機リン化合物)など.これらはしばしばGBS と混同される.

ギラン・バレー症候群、フィッシャー症候群 update

Bickerstaff brainstem encephalitis and Fisher syndrome: anti-GQ1b antibody syndrome. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2013;84:576-83.
Bickerstaff脳幹脳炎とフィッシャー症候群に関する総説

Risk of Guillain-Barré syndrome following H1N1 influenza vaccination in Quebec.JAMA. 2012 Jul 11;308(2):175-81.
2009年のパンデミックインフルエンザA(H1N1)ウイルスに対するワクチンでは、非接種群に比べてワクチン接種群では4週時点と8週時点の両方でGBSの相対リスクが有意に高かった(それぞれ2.75、1.80)

Electrodiagnostic criteria for Guillain-Barrè syndrome: A critical revision and the need for an update. Clin Neurophysiol. 2012 Aug;123(8):1487-95.
ギランバレー症候群のサブタイプの電気生理学的な分類には、経時的なNCSの変化やdispersionの定義などを再検討するとよいのかもしれない

Prediction of respiratory insufficiency in Guillain-Barré syndrome. Ann Neurol. 2010;67:781.
GBSの入院時の発症からの日数やMRC合計スコア,顔面や球麻痺をスコア化することにより,最初の1週間に人工呼吸器を必要とするかを予測できる.

p>Distinguishing acute-onset CIDP from fluctuating Guillain-Barré syndrome: A prospective study. Neurology 2010 74: 1680-1686.
ギランバレー症候群では治療に伴う症状の変動は発症8週間以内に1?2回生じることがあり、変動のないものと比較してより重症で感覚障害が目立ち、急性発症のCIDPは人工呼吸器使用や脳神経麻痺が少ないなどの特徴からある程度区別できるかもしれない

Axonal variant of Guillain-Barré syndrome associated with Campylobacter infection in Bangladesh. Neurology 2010 74: 581-587.
バングラデシュ人民共和国では下痢を先行感染症状とするC. jujuni感染による軸索障害型GBSの頻度が90%以上と非常に高い

Autoantibody-Mediated Dysfunction of Sympathetic Neurons in Guillain-Barré Syndrome. Arch Neurol. 2010;67(2):203-210.
ギラン・バレー症候群から精製した血清IgGは、培養交感神経のノルアドレナリンレベルを上昇させ、心筋細胞の心拍変動を来たす

Pharmacokinetics of intravenous immunoglobulin and outcome in Guillain-Barré syndrome.Ann Neurol. 2009;66:597-60
ギランバレー症候群のIVIg後の免疫グロブリンの薬物動態には個人差が大きく,効果とも関連している(血中濃度が高くなる方が,効果が高い).

GM1/GalNAc-GD1a complex: A target for pure motor Guillain-Barre syndrome. Neurology 2008 71: 1683-1690.
GM1/GalNAc-GD1a複合体陽性のGBSでは急性の脱髄性運動性末梢神経障害がおこり、感覚障害や脳神経障害は目立たない

Cerebral Glucose Metabolism in Fisher Syndrome. JNNP 2008 Dec 9. [Epub ahead of print]
Fisher症候群の急性期ではグルコース代謝PETで小脳虫部や半球,橋被蓋部,前頭葉下部の亢進が見られ,自己免疫疾患による炎症をの影響かもしれない.

Clinical predictors of mechanical ventilation in Fisher/Guillain-Barre overlap syndrome. JNNP 2008 Oct 23. [Epub ahead of print]
Fisher症候群から四肢麻痺が出現しGBSに移行するような患者では,GBSに比べて人工呼吸器管理を要することが多い.

Recurrent Guillain-Barre syndrome. JNNP 2008 Oct 17. [Epub ahead of print]
再発するGBSは,30歳以下の若年や軽症例,MFSで多く,再発時も初発時と同様の症状を呈することが多い.

Clinical features, pathogenesis, and treatment of Guillain-Barré syndrome. Lancet Neurol. 2008;7:939-50.
GBSについてのレヴュー

Acute ophthalmoplegia (without ataxia) associated with anti-GQ1b antibody. Neurology 2008 71: 426-429.
抗GQ1b抗体陽性の失調のない急性眼筋麻痺では、外眼筋麻痺.だけでなく内眼筋麻痺も合併することがあり、また片側のみの症状のこともある

GD1b-specific antibody induces ataxia in Guillain-Barre syndrome. Neurology 2008 71: 196-201.
GD1bに真に特異的な抗体が失調型GBSの原因となる

Economic cost of Guillain-Barre syndrome in the United States. Neurology 2008 71: 21-27.
米国でのGBS発症後の治療費用は全体で年間$17億、一人当たり$30万とかなり高額である

Immune responses to myelin proteins in Guillain-Barré syndrome.JNNP 2008 79:664-71
GBSでミエリン蛋白(PMP22, P0,P2)に対する抗体の出現は多くないが,これらの蛋白に対する血液単核球のIL-10反応は多くでみられ病態に関与していると考えられる

Ocular Flutter, Generalized Myoclonus, and Trunk Ataxia Associated With Anti-GQ1b Antibodies. Arch Neurol. 2008;65:659-661.
眼球粗動、ミオクローヌス、体幹失調が出現し、抗GQ1b抗体が原因と考えられた37歳女性例

Guillain-Barre syndrome: Incidence and mortality rates in US hospitals. Neurology 2008 70: 1608-1613.
米国でのGBS年間発症率は約1.7人/10万人で死亡率は2.58%、呼吸器系合併症、気管内挿管などが死亡予測因子である

Ganglioside complexes containing GQ1b as targets in Miller Fisher and Guillain-Barre syndromes. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2008 Mar 13 [Epub ahead of print]
フィッシャー症候群やギランバレー症候群で眼球運動障害がみられる症例の約半数の血清に,GQ1bやGT1を含むガングリオシド複合体に対する抗体が認められる.

Eculizumab prevents anti-ganglioside antibody-mediated neuropathy in a murine model. Brain 2008 131(5):1197-1208
マウスMFSモデルにヒト化抗 C5 モノクローナル抗体(エクリズマブ)を投与することで、C5aとC5b-9をブロックし呼吸筋麻痺と神経終末の形態学的変化が予防できた

POEMS症候群 update

Cerebral infarction in POEMS syndrome: Incidence, risk factors, and imaging characteristics. Neurology 2009 73: 1308-1312.
ポエムス症候群では脳梗塞の発症率は5年間で13%と高く、脳梗塞発症集団は血小板の上昇、及び骨髄の形質細胞増加が強かった

Serum VEGF levels in POEMS syndrome and in immune-mediated neuropathies. Neurology 2009 72: 1024-1026.
POEMS症候群や自己免疫性末梢神経障害では血清VEGFが上昇するが、POEMSでは著増する

Neurologic improvement after peripheral blood stem cell transplantation in POEMS syndrome. Neurology 2008 71: 1691-1695.
自家末梢血幹細胞移植療法はPOEMS症候群においてVEGFを急速に低下させ、3ヶ月程度で末梢神経障害の強い改善効果を認める

Thalidomide reduces serum VEGF levels and improves peripheral neuropathy in POEMS syndrome. JNNP. 2008 May 9 [Epub ahead of print]
POEMS症候群に対するサリドマイド投与により血清VEGF濃度は低下し,末梢神経障害が改善する

Neuropathic pain correlates with myelinated fiber loss and cytokine profile in POEMS syndrome. JNNP 2008 Apr 3 [Epub ahead of print]
POEMS症候群での知覚過敏は有髓線維の減少と相関し,血清中のある種のサイトカイン上昇とも関係している.

慢性炎症性脱髄性多発根神経炎 update

Autonomic dysfunction in chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy. Neurology. 2012 Mar 6;78(10):702-8.
CIDPでは約23%に消化器や膀胱などの自律神経症状が認められ、発汗異常や心臓自律神経系の検査異常が検出されることもある

CD8+ T-cell immunity in chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy. Neurology. 2012;78:402-8.
慢性炎症性多発根神経炎ではCD8陽性T細胞のクローン増殖(clonal expansion)が認められ、細胞性免疫が病因の可能性もある

Safety and Tolerability of Immune Globulin Intravenous in Chronic Inflammatory Demyelinating Polyradiculoneuropathy. Arch Neurol. 2010;67(9):1082-1088.
慢性炎症性多発根神経炎に対する免疫グロブリン療法は安全性が高く、忍容性も良好であった

Natalizumab Treatment in a Patient With Chronic Inflammatory Demyelinating Polyneuropathy. Arch Neurol. 2010;67(7):881-883.
従来の治療法に抵抗性であったためナタリツマブを投与したが無効であったCIDPの61歳女性例

Timing and Course of Clinical Response to Intravenous Immunoglobulin in Chronic Inflammatory Demyelinating Polyradiculoneuropathy. Arch Neurol. 2010;67(7):802-807.
CIDPに対する免疫グロブリン療法の治療初期の反応の有無は、3週間空けて2回投与する必要があり、最良の効果発現のためにはその後の維持投与も必要かもしれない

Intramuscular interferon beta-1a in chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy. Neurology 2010 74: 651-657.
慢性炎症性多発根神経炎ではIVIg療法にインターフェロンβ-1a筋注療法を併用しても有意な改善効果はなかったが、重症例に関しては必要IVIg量が減少するかもしれない

Chronic ataxic neuropathies associated with anti-GD1b IgM antibodies: response to IVIg therapy
J Neurol Neurosurg Psychiatry 2010;81:61-64

抗GD1bIgM抗体陽性の慢性失調性ニューロパチー13人中9人でIVIgが有効であった。

Validity of diagnostic criteria for chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy: a multicentre European studyJ Neurol Neurosurg Psychiatry 2009;80:1364-1368
2つの新しいCIDPの診断基準(Koski et alのものとEFNS/PNSのもの)をこれまでのもの(Van den Bergh and PieretとAAN)と比較した。Koski(感度63%/特異度99.3%)、EFNS/PNS(81.3%/96.2%)、Van den Bergh and Pieret(79.5%/96.9%)、AAN(45.7%/100%)。

Chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy sera inhibit axonal growth of mouse dorsal root ganglion neurons by activation of Rho-kinase.Ann Neurol. 2009;66:694
CIDP患者の血清はマウスの後根神経節神経細胞の軸索成長を阻害するが,Rhoキナーゼ阻害剤により改善される.

Single nucleotide polymorphism of TAG-1 influences IVIg responsiveness of Japanese patients with CIDP. Neurology 2009 73: 1348-1352.
SNPsのハプロタイプ解析の結果では、Transient axonal glycoprotein 1(TAG1)は日本人のCIDPの治療の反応性に影響を与えている可能性が示唆された

Incidence and prevalence of CIDP and the association of diabetes mellitus. Neurology 2009 73: 39-45.
CIDPの発生率は1.6/100,000/年程度で、CIDPの約4%が糖尿病に罹患しているが対照群と比較して糖尿病の罹患率は高くない

Teaching NeuroImages: Chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy causing spinal cord compression. Neurology 2009 72: e121.
神経根の肥大により脊髄圧迫による錐体路症状を来たしたCIDPの54歳男性例

Health-related quality-of-life improvements in CIDP with immune globulin IV 10%: The ICE Study. Neurology 2009 72: 1337-1344.
定期的な免疫グロブリン投与によりCIDPの神経機能は有意に改善しQOLの上昇した

Randomised controlled trial of methotrexate for chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy (RMC trial): a pilot, multicentre study.Lancet Neurol. 2009;8:158-64. Epub 2009 Jan 10.
CIDPへのメトトレキセート経口投与(15mg/日まで)40週では,ステロイドの減量効果や症状改善効果においてプラセボと差が見られなかった.

Humoral and cellular immune responses to myelin protein peptides in Chronic Inflammatory Demyelinating Polyradiculoneuropathy. JNNP. 2008 17. [Epub ahead of print]
CIDPでは髄鞘蛋P2蛋白に対する抗体や細胞免疫反応が少数例ではあるものの正常者よりも有意に多くみられる.

Treatment of Chronic Inflammatory Demyelinating Polyneuropathy With Pulsed Oral Steroids. Arch Neurol. 2008;65:1460-1464.
メチルプレドニゾロンパルス(500mg/月初回、その後50?100mg)治療でCIDPの特に病気の短い症例で長期間の治療効果が認められた

Prevalence and incidence rates of chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy in the Japanese population. JNNP. 2008;79:1040-3. Epub 2008 Jan 25.
日本におけるCIDP患者は人口10万人あたり1.61人でやや男性に多く日本国内で地域差はみられず,他の人種や海外での報告と大きな差はない.

Thrombin receptor PAR-1 on myelin at the node of Ranvier: a new anatomy and physiology of conduction block. Brain 2008 131: 1113-1122
ランビエ絞輪に発現するThrombin receptor PAR-1の活性化が炎症時に活性化され末梢神経のconduction blockを悪化させる(Ratの研究)

Child Neurology: Chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy in children. Neurology 2008 71: e74-e78.
小児のCIDPは稀であるが、成人のCIDPより予後は比較的良い

Ramsay Hunt症候群 update

Teaching NeuroImages: MRI in Ramsay-Hunt syndrome after trigeminal zoster. Neurology 2010 74: e33.
脳MRIにて三叉神経脊髄路核と顔面神経に異常信号が検出された三叉神経帯状疱疹後のRamsay-Hunt症候群の22歳男性例

Ramsay hunt syndrome followed by multifocal vasculopathy and posterior circulation strokes. Neurology 2008 70:1049-51.
ラムゼイ・ハント症候群に、多発性の脳血管狭窄と橋梗塞を合併した24歳女性例

ベル麻痺(特発性顔面神経麻痺)

1. 日本神経治療学会ガイドライン:左の「ガイドラインなど」をクリック

顔面神経の浮腫や血流改善のためのステロイドと、単純ヘルペスがその原因と考えられているためアシクロビルの経口投与を併用する効果が、Cochrane reviewにまとめられ使用することが多いと思います。しかしながら、アシクロビル追加の有効性はないとの2007年NEJMの論文もあります。その他、神経再生目的でビタミンB12を投与することもあります。

処方例
1.プレドニゾロン内服:60mg/日(あるいは、1mg/kg)
5-7日間、その後1-2週で徐々に減量中止へ。しかし、神経内科医は40mgぐらいから使用し、漸減することが多い印象があります
2.アシクロビル内服:7-10日間
ゾビラックス錠 1000-2000mg/日 あるいは
バルトレックス錠 1000mg/日
NEJMのデーター重視であれば使用しても効果はないようです。また、アシクロビル脳症などなどの合併症を考えると、無理して使用する根拠はどこにもありません
3.メコバラミン(VitB12)内服
これも治療効果の根拠はとても乏しい治療です。無理に処方する根拠はどこにもありません
バンコミン 1,500μg/日 分3
4.リハビリテーション:治療効果は定かではありません
あまり効果的な方法はありませんが、日本神経治療学会ガイドラインを読む限りバイオフィードバック訓練が効果ありそうです。

5.ボツリヌス毒素
発症の回復に伴い3-4ヶ月後に出現する、病的共同運動(Synkinesis)に対して行われることもあります。
その他
目の乾燥に対して人口涙液(マイティア点眼液など)
星状神経節ブロック、高圧酸素、外科治療などの効果に関する客観的成績はありません。


予後不良因子

高齢、高血圧、味覚障害、耳以外の痛み、顔面筋の完全麻痺

慢性炎症性脱髄性多発根神経炎 (CIDP) 治療

慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー、多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン〈2013〉

ファーストライン治療
CIDPに対して効果が報告されている主要な治療法は以下の三つです。血漿交換、免疫グロブリン大静注療法の効果は数週から2ヶ月持続します(Class I-II)。また、初期治療としてステロイドよりも血漿交換、免疫グロブリン大静注療法の方が効果の発現が早いことを考えると、まず免疫グロブリン大静注療法(あるいは血漿交換)を行い、反応を見てからステロイド経口投与を行う方法がよいと考えられます。ファーストライン治療も、進行抑制療法も握力やINCATスケールで客観的な評価を行いましょう。
1.ステロイド経口投与:60mg/日から開始し徐々に減量
2.免疫グロブリン大静注療法(0.4g/kg 5日間):IgG4抗体関連CIDPへの効果は乏しい様です
3.血漿交換療法:IgG4抗体陽性例ではIAPPは避けて下さい

進行抑制療法
ファーストライン治療抵抗性の場合、再発が多い場合など速やかに進行抑制療法を取り入れましょう。メインは最もエビデンスのある免疫グロブリンですが、その離脱のためステロイドや免疫抑制剤を併用することが多い印象です。
1. 免疫グロブリン:経皮下的免疫グロブリン療法 (subcutaneous immunoglobulins)、外来での3週間おきのIVIg静注(1g/kgなど)
2. ステロイド:少量連日内服や間欠経口パルス
3. 免疫抑制剤(しっかりとしたRCTは行われていません)
アザチオプリン
シクロホスファミド:エンドキサンパルス月1回が有効であった報告があります
シクロスポリン:私は最も使用経験が多いです
Mycophenolate mofetil

4. その他(非常に難治性の場合に考慮します)
インターフェロンα、インターフェロンβ1a
リツキシマブ
Etanercept
自己末梢血幹細胞移植(Auto-PBSCT):有効だった症例報告はあります

5. 減圧術
NF155抗体陽性例など、神経の肥厚が著しく脊髄を圧迫する様な例では外科的に減圧することもあります

病型と治療戦略(参考ページ
1. 典型的CIDP
ファーストライン治療の有効性が非常に高い病型です。IVIgから治療を行ない、再発した場合は免疫グロブリンを主体とした進行抑制療法を行います。
効果が乏しい場合は、IgG4サブクラス自己抗体の確認を行います。それらが陽性の場合は、IVIgよりはステロイドや血漿交換療法がIVIgよりは効果が高いため導入します。IAPPではIgG4を除去する効果は乏しいため、単純血漿交換をお勧めします。

2. DADS
この病型にはIgG4サブクラス自己抗体が検出されることが多くあります。それらが陰性でも免疫グロブリンの反応性はやや悪い様ですが、それでも陰性例はまずはIVIg治療と免疫ブロブリンによる進行抑制療法を行います。
NF155、CNTN1抗体陽性例は、ステロイドやPEを主体に治療を行います。RECIPE試験でリツキサンの有効性の有無が判明するかと思います。

3. MADSAM
神経根や神経叢を中心に神経飛行がよく見られます。IVIgの効果は半々で、効果がある例はIVIg単独で治療を組み立てていき、乏しい例はステロイドや免疫抑制剤の併用を検討します。

ギラン・バレー症候群 治療

1. ギラン・バレー症候群、フィッシャー症候群診療ガイドライン〈2013〉:日本神経学会のガイドライン(書籍)
2. 神経免疫疾患治療ガイドライン

血漿交換と、IVIg大量静注療法が中心で、効果は同程度です。まずは、呼吸障害、自立神経障害などをしっかりと管理しつつ、臨床経過、髄液所見を参考に、末梢神経伝道速度検査にて確定診断を行ってください。確定診断はつかなくとも、強く疑われる場合も治療の適応になると考えられます。その後、作用、副作用をきちっと患者さんにお話してから最初の二つの治療を選択してもらいすぐに治療を開始します。
下記の二つの治療効果は同程度ですので、IVIGの禁忌(IgA欠損症、溶血性貧血、免疫不全など)がないのであれば、IVIg大量静注療法の方が合併症が少なく好ましいと考えられます。単純血漿交換の後に、IVIg大量静注療法を行うことは、単独治療の効果を超えることはなく推奨されていません。
治療例:
1.単純血漿交換:軽症例2回、中等度以上4回
2.IVIg大量静注療法:症状の改善に乏し再投与する場合は、健康保険状「治療により筋力低下の改善が見られた後、4週間以内に再燃した症例」に限って認められるようです。ただ、血液粘度の上昇もあるので少なくとも初回投与から1週間以上空けて再投与を行います
3. IVIg大量静注+ステロイドパルス:IVIg単独よりも、自力歩行可能となるまでの中央値がやや短縮されるようです

全身管理
上記の治療よりも重要です

    1.呼吸・循環管理:主にはSIMVでの管理が必要になることがよくありますが、長引く場合は気管切開をしてください
    2.深部静脈血栓予防:弾性ストッキング、ヘパリン、ワーファリンなど
    3.感染症コントロール
    4.腸管麻痺の管理
    5.リハビリテーション
    6.感覚障害に対する対症療法

Diabetic Lumbosacral Plexopathy

糖尿病の合併症のうち非常に稀ですが、神経内科医であれば1-2年に一回ぐらいコンサルトを受けることがあるかと思います。最近は造影腰椎MRIで異常(馬尾の造影効果など)をDetectできる場合もあるようです。もちろん血糖コントロールは大事ですが、コントロールしていてもこのタイプの末梢神経障害は起こる可能性があります。
IVIg大量静注療法やステロイドが効果がある場合があり、報告例も散見されます。