発作性、機能性

ナルコレプシーおよびカタプレキシー 診断

概念
通常若年者に1/2000の割合で発症、日中過眠・カタプレキシー・入眠時幻覚・睡眠麻痺の4徴を特徴とします

病態
特にカタプレキシーを伴う病型では、視床下部外側野で産生されるorexin (hypocretin)の髄液中での減少が原因と考えられます

原因

    特発性
    二次性:腫瘍、頭部外傷、血管奇形、MS、NMOなどの視床下部後方から中脳にかけての病変で来たすことがあり、二次性の場合はカタプレキシーはあまり出現しません

検査

    終夜脳波:SOREM(Sleep Onset REM)など確定診断に必須の検査です
    血液検査:特発性の場合は、95%でHLA-DR2陽性
    髄液検査:オレキシン (hypocretin-1)が低下します
    脳MRI:二次性の原因となる疾患の検索のために必須の検査です

二次性過眠症の原因
視床下部後方〜中脳病変により二次的に過眠症が出現します。代表的な疾患は以下の通りです。

三叉神経痛 治療

日本神経治療学会ガイドライン

基本的には、軽度の症状であれば薬物療法、中等度であればペインクリニックあるいは外科的治療になります
1. 薬物療法

    テグレトール:王道です
    その他:リリカ、ガバペン、ラモトリジン、デパケン、フェニトイン、oxcarbazepineなど

2. 外科的治療
CISS法によりneurovascular compressionが認められ、自覚症状と一致し、薬物療法での効果がいまいちの場合に適応になります。

    微小血管減圧術(MVD: microvascular decompression: Janetta手術)
     Interposition:血管と神経の間にガーゼを挟む
     Transposition:血管を移動させる。最近はこちらが主流

3. その他

    γナイフ
    三叉神経・Gassel神経節ブロック
    神経根切断術

微小血管減圧術(MVD: microvascular decompression)について
1964年にJanettaにより考案された方法で、手術直後から疼痛が消失することも多く成績も良いようです。一方で、手術後1ヶ月程度かけて徐々に改善する例も知られています。
効果発現のメカニズムとして、血管拍動による神経インパルス誘発の低下、異所性伝導の低下、髄鞘再生などが想定されています。
合併症として次のものがあります。無菌性髄膜炎、聴力障害、三叉神経領域の感覚障害、髄液漏、脳梗塞、慢性硬膜下血腫などなど

可逆性白質脳症 (PRES) 診断

概念
PRES(posterior reversible encephalopathy syndrome)は、その名の通り主に後頭葉白質に可逆性の病変を来す疾患です。もともとは、1996 年にHincheyが、高血圧性脳症や産褥子癇、免疫抑制剤の使用を背景として、可逆性で特徴的な臨床症候と画像所見を呈した15 症例をもとに提唱した疾患概念です。
その後、血液関連疾患や一部の膠原病をはじめ、様々な 背景因子がPRESの原因として報告されています。

病態
背景因子をもとに血管内皮細胞の障害、血液脳関門の破綻がおこり、血圧上昇が加わることによって血管原性浮腫が生じてPRESの像を呈する。という説が有力のようです。
一方で、一部の症例で経過中に可逆性の脳血管攣縮をみとめたとの報告もあって、脳血管攣縮による細胞障害性の浮腫が血管内皮や血液脳関門の破綻を助長させる機序も推測されています。
なぜ,posteriorなのか?ということに関しての明確な答えはありません。直接の証拠はないものの、椎骨脳底動脈系では内頚動脈系に比べて脳循環の自動調節能に重要な交感神経系の支配が乏しいため、脳循環自動調節能の破綻により生じる血管原性浮腫が生じる場合には椎骨脳底動脈系が好発部位となると説明していますが、、、

原因

    高度の高血圧症
    腎障害
    高度の貧血に対する輸血
    子癇
    肝不全,肝移植
    薬剤:シクロスポリン、タクロリムス、シスプラチン、メソトレキセート、シタラビン髄注
    膠原病・自己免疫疾患:SLE、TTP、MPN 、ウェジナー肉芽腫症
    血液系悪性腫瘍
    内分泌・代謝疾患:褐色細胞腫、高カルシウム血症
    頭部外傷

症状
基本的には急性発症の、頭痛、意識障害、痙攣発作などが多く見られます

    頭痛
    意識障害
    痙攣
    視力障害:後頭葉病変位よる半盲以外に、高血圧による網膜剥離の合併例もあります
    など病変部位により様々

鑑別診断

    静脈洞血栓症:脳静脈系の評価、d-dimerの評価が重要です
    脳梗塞:動脈支配に一致しているかどうかですね
    可逆性脳血管連縮 (RCVS) :時に合併します
    急性発症の疾患なので、鑑別に苦慮することは少ないですが、PML多発性硬化症、悪性リンパ腫なども鑑別になるかとは思われます。

PRESの脳MRI
pres

発症時脳MRI:左からFLAIR、DWI、ADC画像
FLAIR:両側後頭葉白質、左半球優位に高信号を認める
DWI:白質病変はDWIの高信号は目立たない、今回の場合、皮質はやや高信号を呈している
ADC:白質病変はADCの上昇を認める。今回の場合、皮質はややADCは低下している
pres post

降圧5日後の脳MRI:左からFLAIR、DWI、ADC画像
FLAIR画像では白質高信号病変の改善を認め、DWIではほぼ異常を検出できない

小脳/脳幹PRES
典型的にはテント上の側頭、頭頂、後頭葉を中心とした皮質、皮質下白質にMRI(特にFLAIR画像)で高信号を呈する疾患ですが、小脳や脳幹に限局したPRESの報告もあります。動脈支配に一致しない脳幹や小脳の多発性の病変分布などの特徴を把握し、特に脳梗塞との鑑別はしっかり行う必要があります。
テント上のPRESよりも重度の高血圧を伴い、痙攣よりも頭痛、嘔気・嘔吐、意識障害、運動失調などの症状が多い様です。後頭蓋窩はスペースが少ないため、PRESであってもその血管性浮腫により水頭症を来した報告もあり、死亡例も報告されています。降圧薬により予後は一般に良好ですが、小脳梗塞・出血と同様に水頭症をきたしやすく、外科的介入を要する場合があることは念頭に置きましょう。

低随圧症候群 診断

脳脊髄液減少症ガイドライン〈2007〉 関連書籍

病態
脳脊髄液の漏出によって、起立時の牽引性頭痛を主症状とする症候群です。
成人の髄液量は150ml弱程度とされていて、脈絡叢で1日に500ml程度産生されています。これらは、くも膜顆粒により吸収されバランスが保たれ、圧は大体100-150mmH2O程度ですが、硬膜、くも膜から何らかの原因で髄液がもれると、頭蓋骨の硬膜が刺激されるなどして痛みを感じます。

原因

    腰椎穿刺後
    硬膜損傷を伴う脊髄、脊椎外傷、頸椎捻挫
    くも膜嚢胞、髄膜瘤
    特発性

症状

    起立性頭痛(立位・座位後30分以内に増悪)
    その他:嘔気、項部硬直、上背部痛、耳鳴り、複視、易疲労性などなど

診断

    低髄液圧:60mmH2O未満
    RI脳槽シンチグラフィー

    腰椎穿刺により、111In-DTPAを注入し、髄液漏出部を確認します。正面像で非対称性のRI異常集積あるいは、クモ膜顆粒に到達するまでの時間が遷延するなどの所見が得られることがあります
    CTミエログラフィー
    同様に腰椎穿刺により造影剤を注入して、CTにより漏出部位を特定します
    MRミエログラフィー
    CTミエロと異なり腰椎穿刺の必要なく、漏出部位の特定もCTミエロに匹敵しお勧めです
    脳造影MRI
    有名な所見は硬膜の血管床増大による硬膜のガドリニウムによる増強効果ですので、造影後Coronal T1画像(脂肪抑制画像も有用)は必須のシークエンスです。その他、硬膜下水腫、硬膜下血腫、頭蓋内静脈の拡張などの所見が見られます。
    このような所見は、以下のMonro-Kellieの法則をサポートするものと考えられているようです。
    「頭蓋骨に囲まれた頭蓋内腔の容積は一定であるため、脳と血管と髄液の容積の総和は一定で、何らかの減少分は、他の要素の増加で補われる」
    全脊椎MRI
    硬膜欠損像などを検索するため、特に髄液でキサントクロミーがある場合、行うと良いでしょう。CISS法がお勧めです

てんかん重積 治療

てんかん発作重積状態
すぐに、気道確保、酸素投与、輸液ルートを確保し、以下の薬物で発作を止め、採血、血液ガス、必要に応じて脳CTなどを行ってください。

薬物療法
Step 1. ジアゼパム(ホリゾン®、セルシン®など)
セルシン(10mg/ml)5-10mg静注 2-3回まで
これで、止まらなければStep 2へ

Step 2. 以下のいずれかを静注
1. レベチラセタム(イーケプラ®)
500mgを約10分で静注、投与速度は2~5mg/kg/分、追加で1000-3000mgまで投与可能(最大量は腎機能障害時の用量も参照を)
2. ホスフェニトイン(ホストイン®)あるいはフェニトイン(アレビアチン®)

ホストイン静注750mg(10mL)を22.5mg/kg静注、投与速度は3mg/kg/分又は150mg/分のいずれか低い方を超えないこと
or
アレビアチン250mg 静注 50mg/分以下の速度でゆっくり静注します
薬剤の血管外漏出による組織壊死、AVブロックなどの副作用に注意してください
3. フェノバルビタール(ノーベルバール®)
ノーベルバール 20mg/kg 静注
イーケプラ or アレビアチン 2回500mg静注後 or ノーベルバール静注後も止まらなければStep 3へ。止まれば、維持投与へ

Step 3. ミダゾラム(ドルミカム®)
ドルミカム 0.15-0.2mg/kg静注後、0.05-0.5mg/kg/時 持続静注
脳波のモニターで、脳波上のepileptic dischargeが止まっているかどうかの確認も必要です。これでだめなら、Step 4.へ

Step 4. その他
プロポフォール(ディプリバン®)

ディプリバン 1-2mg/kg静注後、2-10mg/kg/時
サイアミラールナトリウム(イソゾール®)
イソゾール 2-3mg/kg静注後、2-5mg/kg/時
期間挿管による呼吸管理と、昇圧剤による血圧管理が必要です

Step 5.
重積状態が落ち着いたら、一般的には血中濃度を参考にしながらフェニトイン(アレビアチン®)あるいはホスフェニトイン(ホストイン®)静注を1日1回投与などで続け、てんかん重積の原因、臓器障害の有無、禁忌などを考慮しながら、最適な経口抗てんかん薬を選択しましょう
経口薬の血中濃度が上昇すれば、静注薬も中止

片頭痛 治療

慢性頭痛の診療ガイドライン 書籍

片頭痛の診断が確からしく、一般的な鎮痛剤でコントロール不可能な中等度以上の頭痛の場合には、トリプタン系薬剤を使用します。重症の場合には、あるいは嘔吐で内服不可能の場合には自己注射などの適応となります。
トリプタン系薬剤
錠剤の場合、頭痛早期に服用し、効果が不十分のときは2時間以上空けて追加投与可能な場合が多いです。副作用は、頚部、胸部、肩などの締め付け感、だるさ、眠気、悪心などです。
禁忌:脳血管障害や虚血性心疾患、コントロールされていない高血圧、MAO阻害薬投与中、血液透析中、HIV protease阻害薬投与中など

    スマトリプタン(イミグラン)
    ゾルミトリプタン(ゾーミック)
    エレトリプタン(レルパックス)
    リザトリプタン(マクサルト)
    ナラトリプタン(アマージ):効果発現は遅いが、再発率が低くなる

トリプタン系薬剤で効果が不十分の時
ポンタール、カロナール、ブフフェン、アセトアミノフェンなどを追加投与。軽症例の場合、これらの薬剤だけでもコントロール可能です。

発作予防

    1. バルプロ酸(デパケン):400-800mg/日程度(血中濃度はてんかんより低めの21-50μg/ml程度でOKです)
    2. ミグシスあるいはテラナス(5mg)2-4T朝夕後
    3. インデラル(10mg)2-3T分2-3:高血圧合併の場合
    その他:アミトリプチリン、バルプロ酸、ARB、トピラマートなど

対症療法
ナウゼリンなど

誘引の除去
睡眠不足、睡眠過多、飲酒、外出、気候の変化、光、匂い、空腹、肩こりなど様々な誘発因子が存在します

片頭痛 診断

慢性頭痛の診療ガイドライン 書籍

概要
片頭痛は拍動性の多くは片側の強い頭痛に、悪心、嘔吐、光や音過敏などの随伴症上を呈する発作性疾患で、一般的には数時間から数日持続して、頭痛の前にあくび、空腹感、いらいらなどの予兆や、閃光暗点などが出現します。20-40歳に多く、女性が男性の3.6倍です。
片頭痛の痛みに関しては、頭蓋骨内の血管を取り巻く三叉神経終末から神経伝達物質が放出され、血管拡張とともに神経原性炎症が起こるという三叉神経血管説が考えられています。
片頭痛の前兆に関しては、神経細胞の過剰興奮と抑制(Cortical spreading depression)と考えられています。
頭痛の診断はICHD-IIの診断基準を使用しますが、代表的な診断基準二つを以下に示します。

1.1 「前兆のない片頭痛」
解説:
頭痛発作を繰り返す疾患で、発作は4〜72時間持続する。片側性、拍動性の頭痛で、中等度〜重度の強さであ
り、日常的な動作により頭痛が増悪することが特徴的であり、随伴症状として悪心や光過敏・音過敏を伴う。
診断基準:
A. B〜D を満たす頭痛発作が5 回以上ある
B. 頭痛の持続時間は4〜72 時間(未治療もしくは治療が無効の場合)
C. 頭痛は以下の特徴の少なくとも2 項目を満たす

    1.片側性
    2.拍動性
    3.中等度?重度の頭痛
    4.日常的な動作(歩行や階段昇降などの)により頭痛が増悪する、あるいは頭痛のために日常的な動作を避ける

D. 頭痛発作中に少なくとも以下の1 項目を満たす

    1.悪心または嘔吐(あるいはその両方)
    2.光過敏および音過敏

E. その他の疾患によらない

1.2.1 典型的前兆に片頭痛を伴うもの
解説:
典型的前兆には視覚症状、感覚症状、言語症状がある。徐々に進展し、1時間以上持続することはない。前兆には陽性徴候および陰性徴候が混在し、完全に可逆性であり、上記の1.1「前兆のない片頭痛」の基準を満たす頭痛を伴う。
診断基準:
A. B〜D を満たす頭痛発作が2 回以上ある
B. 少なくとも以下の1 項目を満たす前兆があるが、運動麻痺(脱力)は伴わない

    1.陽性徴候(例えばきらきらした光・点・線)および・または陰性徴候(視覚消失)を含む完全可逆性の視覚症状
    2.陽性徴候(チクチク感)および・または陰性徴候(感覚鈍麻)を含む完全可逆性の感覚症状
    3.完全可逆性の失語性言語障害

C. 少なくとも以下の2 項目を満たす

    1.同名性の視覚症状(注1)または片側性の感覚症状(あるいはその両方)
    2.少なくとも1 つの前兆は5 分以上かけて徐々に進展するかおよび・または異なる複数の前兆が引き続き5 分以上かけて進展する
    3.それぞれの前兆の持続時間は5 分以上60 分以内

D. 1.1「前兆のない片頭痛」の診断基準B?D を満たす頭痛が、前兆の出現中もしくは前兆後60 分以内に生じる
E. その他の疾患によらない

特発性頭蓋内圧亢進症 update

Atypical idiopathic intracranial hypertension: Normal BMI and older patients. Neurology 2010 74: 1827-1832.
BMIが正常、あるいは50歳以上で発症する特発性頭蓋内圧亢進症は稀ではあるが、視野症状の予後は典型的な特発性頭蓋内圧亢進症よりも良好であった

Teaching NeuroImages: Idiopathic intracranial hypertension: MRI features. Neurology 2010 74: e24.
脳MRIで視神経の蛇行や視神経周囲の髄液信号及びempty sellaが検出された特発性頭蓋内圧亢進症の31歳女性例

Idiopathic intracranial hypertension in men. Neurology 2009 72: 304-309.
特発性頭蓋内圧亢進症は男性では重度の視覚・視野異常が多く、他の頭痛などの頭蓋内圧亢進症状の自覚の頻度が少なく注意が必要である