CLIPPERS (chronic lymphocytic inflammation with pontine perivascular enhancement responsive to steroid)
概念
脳MRI造影画像が非常に特徴的です。
2010年に、Pittockらが提唱した「脳幹の小血管周辺の炎症」を病変の主座とする炎症性中枢神経疾患です。CD4有意の炎症細胞が見られますし、制御性T細胞(Treg)も頻度高く検出されるようです。
疫学
発症年齢は16歳から86歳と幅広く、平均45歳程度で性差はあまりありません
症状
亜急性進行性に以下のような脳幹症状が出現します
複視
失調
構音障害
片麻痺,感覚障害,嘔気や浮動感など
検査
血液検査:特異的所見はありませんが、他疾患の鑑別に重要
髄液検査:軽度の細胞数、蛋白上昇、OCB陽性は半数以下、CD4/CD8比の上昇
電気生理検査:VEP、ABR、SEPなど
脳MRI:以下のような特徴があります
橋,小脳脚,小脳などの脳幹に点状結節状の「造影増強病変」が両側に広がる
個々の病変は小さいが癒合することもある.Mass effectは伴わない
病変は脊髄や基底核や小脳白質にも出現しうるが,脳幹から離れるほど密度が薄くなる
DWI高信号や,著明なT2WI高信号や,血管造影での異常を認めない
髄膜の造影増強効果はない

鑑別
特に脳幹病変の頻度が高い神経ベーチェットは重要な鑑別診断だと思われます
感染性疾患
多発性硬化症:似た疾患概念かも知れませんが、、、
血管炎(ベーチェット病、膠原病など)
リンパ腫様肉芽腫症LYG(lymphomatoid granulomatosis)
悪性リンパ腫:当初CLIPPERSと考えられていたものの過中に悪性リンパ腫と診断された報告もあります[ref]
病理学的所見
多発性硬化症と同様に血管周囲のリンパ球浸潤が見られますが、脱髄が目立たず、CD4陽性細胞が優位な点が特に異なると思われます。以下のような特徴が知られています
生検組織で脳幹の小動脈・静脈周囲を中心にリンパ球浸潤を認め,間質組織まで進展することもある.
浸潤細胞はCD4+ T cellの割合が多く,ミクログリアの浸潤もある.
軸索障害が主で、脱髄は少ない.
明らかな血管炎の所見はない