脳血管障害

ESUS(Embolic stroke of undetermined source)診断

はじめに
基本的には、今までCryptogenic stroke(潜因性脳梗塞)と呼ばれていた集団に対して、診断基準を設定し、必要最低限の検査によってESUS集団を分類し、最適な二次予防につなげるというpracticalな概念です。
神経内科医はESUSと診断して満足してはいけません。ESUSには、PAF、PFOなどの奇異性塞栓、大動脈原生塞栓など様々な病態が含まれています。理想的な二次予防とは、原因疾患を解明し、その原因疾患特異的な治療を行うことであり、従来となんら変わることはありません。

どうしてESUSという概念が作られたのか?
もともと脳梗塞の病系分類はTOAST分類が使用されます。この中で、心原性の原因疾患がなく、アテローム病変がなく、ラクナ梗塞でもないものを、「その他の原因」及び「分類不能」に分類します。この二つの分類の中で、「その他の原因」に分類される脳梗塞とは、凝固異常、血管攣縮、血管炎、動脈解離、薬剤性など特殊な原因による脳梗塞になります(「その他の原因」と「分類不能」の病型の違いは紛らわしいですね)。
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ESUSが含まれるのは、上手の赤四角で囲った「分類不能」の集団です。TOAST分類では、この集団を以下の3つに分類しています。

    1. 検査不完了
    2. 2つ異常の原因
    3. 異常所見なし:これが本当のcryptogenic strokeです

この分類不能の集団に対しては、二次予防として現段階の治療ガイドラインではアスピリンの使用が推奨されています。しかしながら、この「分類不能」の集団には、PAF、PFOなどの奇異性塞栓など、抗凝固療法が予防効果の高い基礎疾患が多く含まれていることがわかっています。
したがって、ESUSという集団を診断基準を作成して必要最低限の検査で積極的に診断し、抗凝固療法と抗血小板療法のどちらが二次予防効果が強いのか?ということを解明するために作られたと考えられます。

診断基準
診断には、必要な検査が定められていて、これらの検査結果から診断を満たすかどうかを判断します。
1. 診断基準

    画像上非ラクナ梗塞である(病変の長径がCTで1.5cm以上 or MRIで2.0cm以上のもの)
    脳梗塞の近位部の動脈が開存(50%以上)している
    主要な心内塞栓源がない*
    他の特殊な脳卒中の原因がない
    (動脈炎、動脈解離、片頭痛/血管攣縮、薬剤)

2. 必要な検査

    非ラクナ梗塞を証明するための頭部CTまたはMRI
    経胸壁心エコー
    心電図および24時間以上の心臓モニター
    脳虚血領域を供給する頭蓋内外動脈の画像検査

3. 限界と問題点

    経食道心エコーと大動脈弓の精査は要求しない
    植込み型心電図記録計の精査ももちろん要求しない
    Branch atheromatous diseaseが含まれてしまう

* ESUS診断において、主要な心内塞栓源とされているのは以下の心疾患です(TOAST分類の主要な心内塞栓源とは若干異なっていることに注意が必要です)

    Permanent or paroxysmal atrial fibrillation
    Sustained atrial flutter
    Intracardiac thrombus
    Prosthetic cardiac valve
    Atrial myxoma or other cardiac tumours
    Mitral stenosis
    Recent (<4 weeks) myocardial infarction Left ventricular ejection fraction less than 30% Valvular vegetations Infective endocarditis

疫学
上記の診断基準を満たしたESUS集団では、実際に将来的にどのような基礎疾患が見つかるのかは、それほど解明されていません。ESUSの概念を発表した論文(Lancet Neurol 2014)では、以下のような疾患が隠れている可能性が指摘/類推されています。

1. 潜在性発作性心房細動(PAF:おそらくこれがESUSの最多基礎疾患です

2. 動脈原性塞栓

    大動脈弓部粥腫
    脳動脈非狭窄性粥腫+潰瘍

3. 奇異性塞栓症

    卵円孔開存
    心房中隔欠損
    肺AVM

4. 悪性腫瘍関連

    covert non-bacterial
    tumor emboli from occult cancer

5. 低リスクの心内塞栓源

    僧帽弁逸脱を伴った粘液腫性弁膜症
    僧帽弁輪石灰化

非心房細動性心房性不整脈と鬱滞

    心房性無収縮と洞不全症候群
    心房性頻拍のエピソード
    左心耳の血流低下を伴った鬱滞

左室

    中等度収縮期・拡張期機能異常
    心室性ノンコンパクション、心内膜線維化

大動脈弁

    大動脈弁狭窄
    石灰化大動脈弁

心房構造異常

    心房中隔瘤
    キアリネットワーク

小脳梗塞 診断/治療

参考小脳の血管支配

はじめに
小脳の血管障害は脳血管障害全体のうち10%以下を占め、小脳の血管障害は約90%が脳梗塞、脳出血全体の約10%が小脳出血である。脳梗塞全体では小脳梗塞は約3%程度を占めるにすぎないが、後頭蓋窩はスペースが少なく、脳浮腫から容易に脳幹圧迫、水頭症をきたし致死的になり得る。一方、症候としてはめまいや頭痛、時には耳鳴りなどの非特異的症状が多く、まずは小脳の血管障害を疑うことが重要である。脳幹圧迫や水頭症からの意識障害は発症直後より数日後にピークがあるため、すみやかな入院管理のもと慎重に経過をみる必要がある。小脳梗塞では水頭症や脳幹圧迫による中等度以上の意識障害をきたしている場合は開頭減圧術、小脳出血では血腫3cm以上で進行性のものまたは脳幹を圧迫し水頭症をきたしているものは開頭血腫除去術の適応となる。

小脳梗塞
疫学
小脳梗塞はその血管支配からしばしば脳幹梗塞を合併するがここでは小脳の病変を主体とする場合について解説する。小脳梗塞の頻度は脳梗塞全体の2.3-5.8%程度と報告されており、患者の平均年齢は65-72歳、約3分の2は男性である。
リスクファクターは他の脳梗塞と同様、高血圧、糖尿病、喫煙、脂質異常症、心房細動、一過性脳虚血発作(Transient Ischemic Attack: TIA)の既往であり、年齢を重ねるごとに発症頻度は高まる。後下小脳動脈(Posterior Inferior Cerebellar Artery: PICA)支配領域の梗塞が上小脳動脈(Superior Cerebellar Artery: SCA)支配領域よりやや多く、前下小脳動脈(Anterior Inferior Cerebellar Artery)支配領域が最も少ない。片側の小脳梗塞が88%であるが、片側の小脳梗塞はしばしば1つ以上の血管支配領域(AICA領域とPICA領域など)に病変の広がりを持つ。PICA、AICA、SCAの典型的な支配領域の梗塞に加え、血管支配に一致せず主要血管の分水嶺領域に起こる梗塞も23〜31%あると報告されている。
小脳梗塞の病因は前方循環の脳梗塞と同様、アテローム性と心原性脳塞栓が最も多い。椎骨動脈解離も重要な原因であり、40歳以下の小脳梗塞患者では27%が椎骨動脈解離が原因であったとも報告され、いずれもPICA領域の梗塞であった。また、椎骨動脈解離だけでなく、PICAなどより末梢動脈の解離の症例も報告されており抗血栓療法を行う際には注意を要する。
一方、悪性腫瘍に伴う脳梗塞(Trousseau症候群)も重要な原因となり得る。また、特に若年の患者では、卵円孔開存、凝固異常、血管炎なども考える。主に横静脈洞の血栓症では小脳半球に静脈性の梗塞をきたしうる。
TIAは小脳梗塞の22%に先行し、前方循環と同程度に脳梗塞発症のリスクがある。年齢(Age; 60歳以上で+1点)、血圧(Blood Pressure;収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上で+1点)、臨床症状(Clinical features;一側の筋力低下で+2点、麻痺を伴わない構音障害で+1点)、持続時間(Duration;60分以上で+2点、10〜59分で+1点)、糖尿病(Diabetes;ありで+1点)の点数の合計で脳梗塞への移行のリスクを判定するABCD2スコアは、前方循環と同様に有用であり、めまいで救急外来を訪れた患者のうちABCD2スコアが3以下の患者では1%、4以上の患者では8.1%が脳血管障害を発症したと報告されている(4)。後方循環のTIAの症状として、前方循環と同様の運動症状(顔面、四肢の麻痺)、感覚症状、視野欠損の他に、めまい、バランスがとれない、複視などが挙げられる一方で、めまいや複視などの単独症状のみではTIAとは一般に判断しない(5)ことから、他の症状を合併していたかで慎重に判断する必要がある。

症状、神経学的所見 
小脳梗塞の症状では多い順に、めまい(73%)、嘔気・嘔吐(54%)、歩行障害(48%)、頭痛(37%)、構音障害(29%)が挙げられる。AICA梗塞ではめまい・嘔気などの前庭症状に加え耳鳴難聴などの特徴的な内耳の虚血を示唆する所見があり、末梢性めまい、内耳炎と混同しやすい。PICA内側梗塞でもAICA梗塞と同様の前庭障害のみの症例もあるため注意を要する。めまいは小脳梗塞患者のおよそ4分の3で見られる一方、外来受診する全患者の主訴の5%はめまいであるというほどに多い症状である。めまいを回転性(vertigo)、非回転性(dizziness)に分類しても、それぞれ同程度に脳血管障害を含んでいたとの報告もあり、脳血管障害の診断に必ずしも有用でない。頭痛は脳梗塞一般には少ないとされるが後方循環では前方循環に比較して多く、特に小脳梗塞では多い主訴である。椎骨動脈解離に由来する場合はそのための痛みを訴える場合もあるが、主に後頭部痛で、病変側に多いという報告もある。
診察所見では、四肢の運動失調(58%)、体幹失調(51%)、構音障害(46%)、眼振(44%)、意識障害(29%、うち26%が錯乱、3%が昏睡)が認められる。他に筋トーヌス低下やsaccadeの異常が起こりうるためこれを診察する。
SCA梗塞ではめまいは少なく構音障害、運動失調が起こりやすいとされる。約半数で認められる眼振については、末梢性めまい患者でも多く出現するが、主に垂直性眼振である場合や、水平注視によって誘発される注視方向性の眼振は中枢性を示唆する。脳幹梗塞に由来するホルネル症候群(片側の縮瞳、眼裂狭小化、発汗低下)や瞳孔異常、一側眼球が内下方へ、他側眼球が外上方へ向く斜偏視(skew deviation)の存在、錐体路徴候(運動麻痺、感覚障害など)、意識レベルの低下は脳血管障害を示唆する。前庭眼反射が正常であることを見るHead impulse test (HIT:このページの最下段参照)は、斜偏視や注視方向性眼振と合わせて感度、特異度共に高いとされるが、稀に小脳梗塞でも陽性となるため総合的な判断が必要である。

検査、診断

    頭部CT:簡便、迅速に行うことが可能で、小脳出血との鑑別にも役立つため、画像検査としてまず行う。脳浮腫の進行が予想される例では、3時間ごとなどに行うこともある。
    脳MRI:CTでは早期の脳梗塞診断が難しいことに加え、後頭蓋窩では骨によるアーチファクトなどからさらに感度が低下するため、疑われた場合は可能であれば脳MRIを撮影する。拡散強調画像(DWI)の高信号で新鮮梗塞を検出する他、MR angiography (MRA)により椎骨脳底動脈系の評価を行うことも重要である。BPAS(Basiparallel anatomical scanning)画像を追加して血管の外観を評価し、MRAのtime-of-flight画像では狭窄または閉塞している血管の外径が不整に拡張している時は、動脈解離を疑う。
    CT angiography (CTA):血管の評価には有用であり、また解離の診断のゴールドスタンダードは血管造影(Digital subtraction angiography: DSA)であるものの、その侵襲性からは適応を選ぶ必要がある。
    血液検査: 脳梗塞一般に出す検査と同様、一般の血算、脂質などを含む生化学、血糖、凝固検査に加え、若年患者ではプロテインS・C欠乏症、抗リン脂質抗体症候群などの凝固異常の検索、血管炎、膠原病関連自己抗体などを提出する。D-dimer、BNPの上昇は潜在的な心房細動の検出に有用である。
    経胸壁心エコー、頚部血管エコー:心弁膜症性疾患や血栓の有無、血管の動脈硬化性変化によるアテロームのリスク評価や解離の有無を見る。必要に応じて経食道エコーを考慮する。

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The radiology Assistantより引用:MRIで検出された病変から閉塞血管を同定することは、病態の把握、血管内治療の適応などにおいて非常に重要です。特に、小脳は簡単なので覚えてしまいましょう。

治療
他の部位の脳梗塞と同様、第一選択はrtPA療法であるが、小脳梗塞のみではNIHSSは高得点となり難く、一般にrtPAの適応とはなりにくい。出血の合併がなければ、脳卒中ガイドライン2015に従いアテローム性であればアスピリン(グレードA)、アルガトロバン(最大径1.5cmを超え発症48時間以内。グレードB)を投与し、心原性脳塞栓症であればヘパリンの投与(グレードC1)を行う。腎障害など禁忌がなければエダラボンを併用する。
小脳梗塞では脳浮腫から脳幹圧迫、閉塞性水頭症のリスクがあり、10-20%の患者に起こるとされる。この浮腫は3日目にピークとなるが、発症1週間以内であればいつでも起こりうるため注意が必要である。出血性梗塞ではそのリスクはさらに増加する。脳幹圧迫を示唆する外転神経麻痺、側方注視麻痺、末梢性顔面神経麻痺、意識障害が出現した場合はすみやかに外科的減圧術を検討する。脳卒中ガイドライン2015ではCT上、水頭症があり、水頭症による昏迷など中等度の意識障害がある症例には脳室ドレナージが考慮される(グレードC1)。CT所見上、脳幹部圧迫を認め、これにより昏睡など重度の意識障害をきたしている症例に対しては減圧開頭術が考慮される(グレードC1)。内科的に可能な脳浮腫への対応としては高張グリセオール(グレードC1)やマンニトール(グレードC1)の投与がある。

予後
小脳梗塞全体の死亡率は7%程度と報告されている。282人のフォローアップでは69%が3か月後に自立していた。めまい、頭痛、嘔気、失調のみで他の神経学的所見を呈さない患者では予後良好である。昏睡に至った患者では外科手術を行わなければ85%が死亡したと報告される一方、手術を行えば半数はmodified Rankin Scale (mRS)0〜2と予後良好であることから、発症早期におけるベッドサイドでの慎重な観察が重要である。

Appendix
Head impulse test
Head thrust testとも言う。前庭眼反射を見ることで末梢性の障害であるか中枢性かを見分けるのに役立つ。被検者は検者の前に座り検者の鼻をずっと見ているよう指示される。その上で、検者はすばやく被検者の頭を一方向に約20度回転させる。前庭眼反射が正常であれば被検者は検者の鼻をずっと見続けることができるが、前庭眼反射が障害されている場合は頭部と同じ方向へ眼が動き、その後検者の鼻へ戻るためのすばやい眼の動き(saccade)が生じる。これを陽性とする。小脳梗塞では通常、Head impulse testは陰性である。

小脳の血管支配

はじめに
小脳に分布する血管は椎骨脳底動脈とそこから分岐する左右の上小脳動脈、前下小脳動脈、後下小脳動脈の3種類の小脳動脈より構成されます。

1. 椎骨動脈 (vertebral artery; VA)
椎骨動脈は鎖骨下動脈に起始したあと、上行し、第六頸椎横突孔に入る。各頸椎横突孔を通り上行し、環椎レベルで横突孔を通ったあと、後方に屈曲し、環椎後頭膜を貫通し、大後頭孔を通り、硬膜を貫いて頭蓋内に入る。環椎後頭膜を貫通してから大後頭孔の硬膜を貫く間の椎骨動脈周囲には静脈叢が取り巻いており,海綿静脈洞との類似性から suboccipital cavernous sinusといわれる。 頭蓋内に入った椎骨動脈は後下小脳動を分枝した後に延髄・橋移行部レベルで左右が合流して脳底動脈を形成する。
 椎骨動脈の左右差は多くの症例でみられ,後下小脳脈分岐後の椎骨動脈低形成や欠損もしばしばみられる。頭蓋底部の椎骨動脈からは前髄膜動脈(anterior meningeal artery)や後髄膜動脈(posterior meningeal artery)が分岐する。前髄膜動脈は頚椎レベルの硬膜を栄養するとともに軸椎歯突起周囲で、上行因頭動脈や対側の前髄膜動脈と吻合odontoid arch を形成する。後髄膜動脈は後頭蓋窩を背側正中方向に走行し後頭動脈や中硬膜動脈後方枝などの外頚動脈系末梢枝と吻合する。頭蓋内椎骨動脈からは前脊髄動脈 (anterior spinal artery) や後脊髄動脈 (posterior spinal artery) が分枝し、各々延髄の前部 ・後部を栄養する。前脊髄動脈は しばしば左右の椎骨動脈遠位部から起始し,左右合流する。これら椎骨動脈分枝は硬膜動静脈瘻の経動脈的塞栓術や椎骨動脈解離によるクモ膜下出血時の椎骨動脈閉塞術などを行う際に重要である。

cerebellum

2. 後下小脳動脈 (posterior inferior cerebellar artery; PICA)
 後下小脳動脈(PICA)は解剖学的に延髄と小脳の位置関係から5つのsegmentと2つのloopに分けることができる。通常頭蓋内の推骨動脈V4 segmentから分岐し、延髄の表面を下降しながらまわり、外側に至り(anterior medullary segment)、延髄小脳裂を後方に向かい(lateral medullary segment)、迷走神経および副神経と交叉する。ここで延髄の背外側を栄養する穿通枝を分枝しながら、上方に反転し(caudal loop)、第四脳室後壁に沿って上行し小脳扇桃上局に達し(posterior medullary segment)、小脳扇桃内側上面に沿って後方へ向かう(supra-tonsilar segmentおよびcranial loop)。同部で外側(tonsilohemispheric branch)と 内側 (vermian branch) に分かれ, tonsilohemispheric branch は小脳扇桃や小脳半球下面に分布し、vermian branch は小脳半球間隙から背側小脳中部と小脳半球内側面を栄養する。末梢側 では上小脳動脈と潜在的な吻合を有する。後下小脳動脈の起始には変異が多く,AICAと共通幹を形成するものや、一部がAICAから起始するもの、頭蓋外から起始するもの、duplication, double origin,後髄膜動脈と共通幹を形成するものなど正常変異が多く見られる。

3. 脳底動脈 (basilar artery; BA)
 脳底動脈は左右の椎骨動脈が合流 して始まり橋前面から脚間叢を上行し左右の後大脳動脈に分かれる。途中傍正中動脈(paramedian artery) や短回旋動脈(short circumflex artery)、長回旋動脈(long circumflex artery) など脳幹への穿通枝を出すとともに、前下小脳動脈や上小脳動脈を分枝する。

4. 前下小脳動脈 (anterior inferior cerebellar artery; AICA)
脳底動脈近位部から分岐し,橋前面を外側やや下方に走行橋被蓋外側や中小脳脚を栄養しながら小脳橋角部に至り第VII,VIII脳神経およびLushuka孔域と近接する。内耳孔後方にてループ(meatal loop)を形成しながら走行し、尾内側幹(caudomedial trunk)と吻外側幹(rostrolateral trunk)に分かれる。前者は中小脳脚および小脳前下面に分布し、後者は大水平裂に沿って外方に進み上下半月小葉に分布し発達が良い場合には小脳延髄裂の外側部から後方に走行して、PICAが低形成な場合には、PICA域を代償することがある。またmeatal loop近傍から内耳や顔面神経管に分布する内耳動脈(internal auditory artery)や第4脳室脈絡叢外側部への脈絡動脈、弓状動脈(subarcuate artery)などが分枝する。subarcuate artery はPICAの硬膜枝として、錐体部にて中硬膜動脈のpetrosal branch や後頭動脈のmastoid branchなどとの潜在的な吻合を有する。

5. 上小脳動脈 (superior cerebellar artery; SCA)
上小脳動脈(SCA)は通常脳底動脈末端より数ミリ近位側から側方に起始するが、後大脳動脈との共通幹形成がみられる場合がある。またSCAが複数存在する場合も約30% の頻度でみられる。脳底動脈から分岐後大脳脚の周りを脚間槽から迂回槽、四丘体槽内を進み中脳被蓋背側に達する。迂回漕部から外側辺縁動脈 (lateral marginal artery) や半球枝が分枝し、各々小脳半球前面と上面に分布する。またこの付近から小脳中心前動脈(precentral cerebellar artery)が分岐し上小脳脚に沿って小脳中脳裂に深く入って小脳白質・歯状核を栄養する。lateral marginal arteryなどはAICA と相補的な関係にあり、lteteral marginal arteryが発達している場合にはAICAは小さい場合が多い。上虫部枝 (superior vermian branch)はSCAの終末枝であり、後上方に走行し、山頂を越えて虫部に分布する。SCAからも硬膜枝の分岐はあり、テント外側下面に分布し、横-S状動脈動部の硬膜動静脈瘻などの際にfeederとして認識される時がある。

小脳動脈の発生
前下小脳動脈(AICA)と後下小脳動脈(PICA)は系統発生学的には内頸動脈のcaudal divisionには属さない椎骨脳底動脈系のpial arteryである。発生初期の両動脈は第四脳室内の大きな脈絡叢を栄養する分岐(choroidal brunch)を出す。その後も両動脈は小さなchoroidal brunchを出し、脈絡叢からの血流はlateral recess veinに導出される。特にPICAは発生学的には新しい脊髄の動脈であるが、小脳の発達と共にヒトでは小脳を栄養するようになった。このためPICAおよびAICAの椎骨動脈および脳底動脈からの分岐位置は症例によって異なる場合がしばしばみられ、PICAが無形成(agenesis、15-20%)の場合や同側から複数起始する場合もある。無形成の場合は同じ側のAICAがその領域の灌流を担う(AICA-PICA)が、対側PICAからの灌流はみられないのが通常である。
前述の2つの下小脳動脈に対して、上小脳動脈(SCA)は発生学的には本来小脳を栄養する動脈であり、内頸動脈のcaudal divisionに属し、発生過程で必ず存在する動脈で、下小脳動脈の分枝位置が色々あるのに反してSCAの分岐位置は一定している。つまり脳底動脈からの小脳動脈の分岐点は尾側に向かうほどvariationが多くなるということになる。
古い上SCAと新しいAICA・PICAの間には吻合が豊富にあり、PICAの末梢部(teloverotonsiler segment)での意図的閉塞において梗塞にならないことが多いのはこの発生学的背景があると考えられる

小脳動脈の灌流分水嶺域
3つの小脳動脈の末梢枝間には、大脳の動脈と同様の脳軟膜血管血管吻合があり、側副血行路として機能しうる。小脳動脈間にも境界域があり、PICA-SCA皮質境界領域は小脳水平裂から上半月小葉付近である。このためPICA-SCA皮質境界領域の梗塞巣は横断像では拡大した水平裂のpertial volume effectと鑑別がしにくい。後者は両側対称性にかつ境界不明瞭で、上下の隣接する断面の観察あるいは矢状断や冠状断の併用によって鑑別する。小脳の深部白質領域にもPICA、AICA、SCAの穿通枝間の境界域があると考えられる。

小脳の静脈解剖と静脈環流
上虫部静脈(Superior vein of vermis)は小脳虫部の上方部分とそれに隣接する小脳よりの還流をうけ、大大脳静脈(vein of Galenに注ぐ)。大大脳静脈に還流する前に、小脳中心前静脈よりも鮮明に造影される場合が多く、また側面像においては小脳中心前静脈の前方より大大脳静脈に流入する。
下虫部静脈(Inferior vein of vermis)は天幕静脈洞還流群でもっとも重要な静脈で、小脳虫部下部、その近傍の小脳半球と小脳扇桃部分を還流する。この静脈は左右対をなして正中部を走行し、静脈洞突会、横静脈洞あるいは直静脈洞に、直接または天幕静脈洞(tentorial sinus)を介して流入する。稀に、この静脈が走行中に相互に吻合し、1本の下虫部静脈となることがある。
下小脳半球静脈(Inferior veins of cerebellar hemisphere)は小脳半球の下部の血液を還流し、上方に走行し、おもに横静脈洞に直接または天幕静脈洞を介して流入する。この静脈は小脳後下面の上内側面で最も発達しており、それらは静脈交会洞、天幕静脈洞、または下虫部静脈に合流している
小脳中心前静脈(Precentral cerebellar vein)は中脳背面と小脳前面で、小舌と中心小葉の聞にある小脳中心前裂内を走行し、その近傍より血液を受ける。この裂内では第四脳室上部(屋根)と平行して前方に走行し、その後、下丘の下縁で後上方に転じ、虫部山頂の前に出て、さらに上方に走行し、大大脳静脈槽にはいり、大大脳静脈に合流する。
錐体静脈(Petrosal vein)は小脳脳幹部前面(錐体面)における最大の静脈で、小脳半球の前面又は外側部にある静脈群のほとんどの静脈群より血流を受けている。長さは2-2.5cmで、片葉(flocculus)近傍より三文神経の背側にそって前上方に走行し、 上または下錐体静脈洞に還流する。この静脈は後頭下関頭による手術の際に損傷する危険性があり、注意が必要である。また三叉神経を圧迫し、三叉神経痛の責任血管となることがある。

Pafのバイオマーカー(脳塞栓症) 診断

脳梗塞症例に置いて、発作性心房細動(paf)が後に検出される可能性が高いマーカーは以下の通りです。塞栓性脳梗塞を疑った場合、施行すべきは植込み型心電計です。しかし、高齢などその施行が難しい場合には、以下のマーカーを測定してみましょう。特に、血清BNP値は重要です。

    iPAB score:Yoshioka K et al., JSCVD. 2015, 2263-2269
    血清BNP/proBNP値Shibazaki K et al., Am J Cardiol 2012;109:1303-1307
    QTc(補正QT時間)Hoshino T et al., Stroke 2015;46:71-76
    RR間隔Vincent NT et al., Neurology 2016;86:261-269.
    左房径の拡大(>40 mm):Fujii S, Clin Neurol, 2009, 49: 629-633
    心房粗動:Vadmann H et al., Heart. 2015 ;101:1446-55
    発作性上室性頻拍(PSVT):Chang SL et al., J Cardiovasc Electrophysiol. 2008;4:367-73
    Supraventricular ectopic activity (SVE):Larsen LS et al., J Am Coll Cardiol. 2015 ;66:232-4

BNPと脳梗塞
脳性ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide; BNP)は主に心室筋細胞から合成・分泌されるホルモンで、1988年に松尾・寒川らによって豚の脳から単離、同定された[1]。その名の通り利尿作用を有し、心臓の負荷が増加したり、心筋の肥大が起こると壁応力(伸展ストレス)に応じて遺伝子発現が亢進し、速やかに生成・分泌される。主には心筋を保護するように働くホルモンで、循環器疾患領域では主に心不全の程度を反映するバイオマーカーとして用いられている。BNP遺伝子よりBNPとNT-proBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント)が等モル比で分泌され、双方ともに心不全マーカーとして測定可能である。

<BNP値と脳卒中の病型診断、重症度>
循環器疾患と密接に関連する脳卒中では、脳出血と比較して脳梗塞が、なかでも心房細動を有する脳梗塞において血漿BNP値が有意に上昇するという本邦からの報告以降[2]、病型/予後予測因子としての役割も検討され、脳卒中診療における有用なバイオマーカーと認識されつつある。血漿BNP値は急性期脳梗塞で上昇し、亜急性期にかけて低下することが知られており[2]、急性期脳梗塞のバイオマーカーとして評価する場合には、発症24時間以内に測定されることが望まれる。
急性期脳梗塞においてBNP値上昇は心原性脳塞栓症との関連が強く、入院時BNP値が140.0pg/mL以上の場合には、心原性脳塞栓症の陽性適中率72.8%、陰性的中率 87.9%と報告されている[3]。したがって、急性期脳梗塞では入院時BNP値が上昇していた場合には心原性脳塞栓症を強く疑うべきである。

<原因不明の脳梗塞症例における心房細動の検出>
脳卒中診療では、突発発症、主幹動脈狭窄病変なし、皮質領域梗塞など心原性塞栓症の要素を満たしながらも、心機能評価で明らかな異常がとらえられずにその他の脳梗塞に分類されることがしばしばある。このような潜在性脳卒中(cryptogenic stroke)の原因として、発作性心房細動(Paf: paroxysmal atrial fibrillation)が占めている割合は多いと考えられ、実際に55歳以上の潜在性脳卒中症例で30日間の非侵襲的携帯型心電図モニターの使用により約16%でPafが検出された(EMBRACE試験)[4]。EMBRACE試験では24時間ホルター心電図での検出率はわずか3.2%と検出効率は低かった。心原性塞栓症は再発リスクも高く、出来るだけ発症早期にPaf出現を予測し抗凝固療法を開始することが望まれるため、バイオマーカーを用いた非侵襲的かつ簡便な検出法も有用と考えられ、近年、発作性心房細動の独立した危険因子に基づいて簡便に算出できるPaf予測スコア(iPAB: identified by Past history of arrhythmia or antiarrtythmic agent use, Atrial dilation, and BNP elevation)スコアが報告された[5]。
このスコアは、既知の心房細動がなく入院時の心電図でも心房細動が検出されなかった急性期脳梗塞患者を前向きに検証し、多変量解析により同定したPafの独立した3つの危険因子、「不整脈の既往および抗不整脈薬服薬歴」(3点)、「左房径拡大 (40mm以上)」(1点)、「血漿BNP値の上昇」(150pg/ml以上3点、90pg/ml以上2点、50pg/ml以上1点)に基づいてスコア(合計7点)を算出し、Pafの高リスク患者を予測するというもので、スコアが高くなるほど罹患率が上昇する傾向が認められた。また、iPABスコアにおけるPaf予測の精度についてROC解析を行い、曲面下面積(AUC)は0.91となり、同スコアを構成するBNPや左房径拡大を単独で用いるよりも予測能が有意に高いことがわかった。さらに、既報告のSTAF(AUC 0.77, 95% CI 0.66〜0.88, P < 0.001)よりも予測能が有意に高いことも判明した。

<BNP値測定の注意点>
BNPの半減期は約20分と短く、病態の変化により変動が強いため脳梗塞発症早期に測定する必要がある。また、血漿濃度は腎機能の低下により排泄能が低下し上昇するため、eGFR 30ml/min/1.73m2未満の症例では増加の程度が大きくなる。高齢者、急性炎症などでも高い値を示すことが知られている。そのため、このような症例ではBNP値による予測能は限定的である。

    1. T Sudoh et al. A new natriuretic peptide in porcine brain. Nature 332, 78-81.
    2. Nakagawa K, et al. Plasma Concentrations of Brain Natriuretic Peptide in Patients with Acute Ischemic Stroke. Cerebrovasc Dis 2005;19:157-164
    3. Sakai K, et al. Brain natriuretic peptide as a predictor of cardioembolism in acute ischemic stroke patients: brain natriuretic peptide stroke prospective study.Eur Neurol. 2013;69:246-51.
    4. Gladstone DJ, et al. Atrial fibrillation in patients with cryptogenic stroke. N Engl J Med. 2014;370:2467-77.
    5. Yoshioka K et al. : A Score for Predicting Paroxysmal Atrial Fibrillation in Acute Stroke Patients: iPAB Score. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2015;24:2263-9.

脳硬膜動静脈瘻 治療

脳卒中ガイドライン2009:硬膜動静脈瘻

dAVFはoutflowの部位で区別したBorden分類がよく用いられ、Type Iは予後良好です。Type II, IIIは、年間死亡率が約10%、重篤な有害事象発生率 15%と報告されています。
Borden分類

    Type I:静脈洞に順行性/逆行性に還流するもの
    Type II:静脈洞に還流し、さらに逆行性に脳表静脈に還流するもの
    Type III:静脈洞に入るがその末梢には還流せず、脳表静脈に還流するもの。あるいは、静脈洞壁から直接、脳表静脈に還流するもの

基本的には、動脈から静脈に流入する血流を遮断することが根治療法となります。血管内治療が可能な症例は第一選択となります。血管内治療には、経動脈的塞栓術(TAE)と経静脈的塞栓術(TVE)の2種類がありますが、動脈を塞栓してもその他のシャントが開いてしまう可能性もあり、可能であればTVEを施行することが成功率を上昇させます。
つまり、AVFではfeeder arteryだけでなく、drainage veinも閉塞(静脈側で遮断)しない限りは再発(duplicated dural AVF)がよくおこるということです。

    1. 血管内治療
    2. 外科的治療:前頭蓋底やテント病変などで推奨されます
    3. 定位的放射線療法
    4. γナイフ

線維筋性異形成(Fibromuscular dysplasia; FMD)

はじめに
中・小動脈を侵す過形成性疾患(非動脈硬化性、非炎症性)で原因がはっきりしていませんが、家族性の発症や女性に多いなどの特徴があります。組織学的には内膜・中膜・外膜の形成異常に分類されます。N Engl J Medのreviewは、こちら

    中膜の過形成
    中膜上の形成異常
    中膜の線維形成肥厚
    内膜の線維形成肥厚

症状
ほとんどが無症状です

    腎性高血圧:腎動脈病変の場合
    めまい、失神、脳卒中など:頸動脈病変の場合

部位
多くは腎動脈と頚動脈に変化が見られることが多いようですが、腸管動脈や鎖骨下動脈など四肢の血管を侵すこともあります。
血管造影上、動脈壁が薄くあまり侵されていない部分に隣接して肥厚した繊維筋性隆起が存在するビーズ紐様所見(string and beads sign)が特徴的ですが、長い管状の狭窄(long tubular stenosis)、動脈の壁の憩室様拡張などの所見を認めることも稀ですがあります [ref]

治療
脳卒中ガイドライン 2009では、降圧療法、外科的治療、血管内治療など

fmd

[ref]より抜粋

微小脳出血 (CMBs) 治療

微小出血(cerebral microbleeds; CMBs)が1つでも認められてしまった場合、脳出血発症の危険性は10倍以上に上昇します。一方で、脳梗塞発症の危険性も4倍程度に増加します。その危険性は特に脳葉型で高くなります。微小出血 診断のページで紹介した原因を特定し加療を行う必要があります。積極的な降圧によって、benefitが得られるのかどうかは不明ですが、なぜか脳卒中ガイドライン2009では、積極的降圧が推奨されています。

脳梗塞治療とCMBs

1. rt-PAとCMBs
systematic reviewでは、今のところCMBsの有無によりrt-PA投与後の症候性脳出血の増加にはつながらないとしています。現時点では、CMBs陽性例であってもrt-PAをためらってはいけません
2. 抗血栓療法とCMBs
いまだ明確なエビデンスはありません。抗血小板療法、ワルファリンによる抗凝固療法ではCMBsの検出頻度があがります。また、おそらく脳葉型CMBs陽性例では、ワルファリンにより死亡率が上昇すると考えられます。そのため、INRの適切なコントロールか、エビデンスはありませんが、新規抗凝固療法薬の使用を考慮します。
抗血小板療法に関しては、出血のリスクの上昇する併用療法は避けた方が無難と予想します。

微小脳出血 (CMBs) 診断

概念
微小脳出血(cerebral microbleeds; CMBs)とは破綻した毛細血管からわずかな赤血球が血管外へ流出する現象を指します。病理学的には流出した赤血球が血管周囲のマクロファージ内に取り込まれ、ヘモジデリンとして蓄積された状態です。多くのCMBsは通常のMRIでは出血巣として描出が難しい約5mm以下のサイズですが、最近になって撮像が可能となったT2*強調画像やsusceptibility-weighted imaging (SWI; 磁化率強調画像) では、微小出血巣に存在するヘモジデリンが点状で円形の低信号領域(シグナル消失領域)として描出することがでるようになりました。そのため、その臨床的意義を検討した報告が飛躍的に増加しています。

疫学
高齢者では健常人でも比較的検出されます。45-50歳では6.5%、80歳以上で35.7%にCMBsが検出されますので加齢によって増加することがわかっています。その他、以下の原因疾患を持つ方は多くのCMBsが検出されます。

原因疾患、鑑別疾患
以下のような病態で、CMBsが検出されます
孤発性
 高血圧性細動脈症
 脳アミロイドアンギオパチー
遺伝性脳小血管病
 CADASIL
 CARASIL
 ファブリー病
 遺伝性アミロイドアンギオパチー など
自己免疫性疾患
 全身性エリテマトーデス(SLE)
 Sneddon症候群 など
血液疾患
 鎌状赤血球症
 播種性血管内凝固症候群(DIC)
 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
その他
 可逆性白質脳症(PRES)
 放射線性血管障害
 頭部外傷
 もやもや病
 感染性心内膜炎
 粘液腫 
鑑別疾患:海綿状血管腫、血管奇形、石灰化(特に基底核)、血管のflow void(フロー・ボイド)、淡蒼球や小脳への鉄沈着、その他フェリチンを含めたミネラルの沈着などが鑑別として上げられます。

病型
CMBsが検出される部位に従って、深部型、皮質/皮質下に分布する脳葉型、両者の混合型に分類されます。原因の鑑別にも有用で、非常に重要です。

    深部型:深部白質/基底核/視床/脳幹にCMBsが検出されて、高血圧性細動脈症、遺伝性脳小血管病などでよく見られます。
    脳葉型:脳アミロイドアンギオパチー(炎症性を含む)に比較的特異的な所見です
    混合型:どちらかというと高血圧性細動脈症が多いかと思われます。ちなみに小脳半球病変も高血圧性変化でよく見られるようです

cmbs deep
T2*強調画像、FLAIR画像:T2*強調画像(左)ではCMBsが点状の低信号病変として明瞭に描出されており、主に深部白質、基底核、視床に分布している。FLAIR画像(右)では虚血性小血管病変が散在しているが、CMBsを示唆する低信号病変は目立たない[refより引用]
cmbs caa
T2*強調画像:脳葉型CMBsの分布で、特に側頭葉、後頭葉の皮質及び皮質下にCMBsが認められます。CAAに特徴的な所見です。

CARASIL 診断

CADASIL(cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy )と混同されることも多いと思いますが、遺伝性脳小血管病という意味では病態が似ています。主には福武先生が疾患概念を確立され、原因遺伝子を新潟大学が発見し報告しました。
HTRA1遺伝子異常によるTGF-βシグナル亢進が原因と考えられています。

臨床像
Triasは、禿頭、変形性脊椎症、虚血性白質脳症です。つまり、TGF-β superfamilyのBMPが関連する骨、毛根などへの障害症状が併発します

    禿頭:特に未成年発症で瀰漫性
    変形性脊椎症:ヘルニア、後縦靱帯硬化症など
    虚血性白質脳症:認知機能障害、性格変化
    脳梗塞

検査
MRI:対称性大脳白質やにびまん性高信号変化、U-fiber比較的保たれます。CADSILで見られる外包、側頭極病変、ラクナ梗塞、微小出血の併存は見られることもありますが特異度か高い変化かどうかは不明です。
MRS:Cho peakの上昇