脳血管障害

血管型Ehlers-Danlos症候群 (EDS IV) 診断と治療

はじめに
COL3A1遺伝子変異により、線維芽細胞からのIII型コラーゲン産生能が低下することにより、III型コラーゲンに富む大動脈や腸管、子宮の破裂を来しやすくなる疾患です。20歳未満では25%、40歳未満では80%で大動脈破裂、腸管破裂をきたすようです。約50%に遺伝歴(常染色体優性遺伝)を認めます

症状
古典的Ehlers-Danlos症候群のように、皮膚過伸展や関節過可動性は目立たない例も多いようです。

    皮膚症状:薄く透ける皮膚,易出血性
    骨/軟骨症状:Osteoporosis、特徴的顔貌 (Madonna face)
    靭帯:膝関節脱臼など
    血管病変:解離や動脈瘤を来します。大動脈24%、内蔵動脈35%、腸骨動脈21%の頻度が高いですが、約10%に内頸動脈、椎骨動脈に解離や動脈瘤を来たし、脳梗塞、SAH、脳出血の原因になります。

検査

    血液検査:他疾患の除外目的
    皮膚生検:病理、生化学検査が獨協医科大学皮膚科で解析可能
    大血管の評価:MRAやCTAにて評価を行います。血管造影検査はほぼ禁忌です。
    遺伝子検査:COL3A1遺伝子変異の検索

禁忌
血管の脆弱性が強いため、血管造影、外科的血管治療、抗血栓療法はbenefitがriskを十分に上回ると考えられる特殊な状況以外は禁忌です。

治療
1.脳血管障害発症時の治療
本疾患により動脈解離を原因とした脳梗塞を発症することはありますが、一般的な動脈解離に伴う脳梗塞の一般的な治療である抗血栓療法は禁忌です。血管造影も基本的には禁忌ですので、MRA、BPAS、CTAなどで極力血管を評価します。
また、血管病変の進展予防として、III型コラーゲンの代謝を抑制する目的でCeliprolol (β1遮断薬投与)が推奨されます。
2. その他
動脈や消化管の病変,破裂に対すしては外科治療を行います。
また、血管型EDSの妊娠女性は高リスク妊娠として管理する必要があります。
突然説明不明の疼痛を自覚した時にはただちに医療機関を受診するよう指導し、日常生活上での外傷のリスクを最小限にするために、身体接触を伴うスポーツや力仕事、ウエイトトレーニングを避ける必要があります。

急性期脳梗塞 血管内治療(脳梗塞)

頭蓋内血管ステント、血栓除去デバイス適正治療指針>日本脳卒中学会website

超急性期脳梗塞に関しては、現在の所i.v. rt-PAが最もその効果のエビデンスが強く、さらに血管内治療と比較して治療開始までの時間が短縮されますので、血管内治療がi.v. rt-PA治療より優先されるケースは少ないと考えられますが、以下のような場合は比較的血管内治療のbenefitが得られやすいのかもしれません。あるいは、i.v. rt-PA投与後すぐに血管内治療を行うことも行われるようになっています。ちなみに、血管造影での脳血管の再開通に関してはTICI scoreで評価します。

    1. 急性脳低動脈閉塞症(BAO)
    2. rt-PAの治療可能時間である発症4.5時間以上経過し、8時間以内の脳梗塞で、比較的ペナンブラ領域が広いと類推されるもの
    3. rt-PA投与しても再開通が得られず、ペナンブラ領域が広いと類推されるもの
    4. 内頸動脈閉塞:rt-PA投与後に血管内治療を行うことが多いです

方法

    1. 選択的血栓溶解療法
    UK(ウロキナーゼ)が用いられることが多いと思います。i.a. rt-PAは比較的出血の合併症が多いようで殆ど行うことはありません。本治療法は、rt-PAの静注後にcombinationで行うのは出血の副作用を鑑みてあまり推奨されないと思います
    2. 血栓吸引やマイクロカテーテルによる血栓破砕
    3. 機械的血栓除去(mechanical thrombectomy)
    これらの機械的血栓除去のtherapeutic time windowは脳梗塞発症8時間以内です
     Merci:no RCT
     Penumbra System:no RCT
     Solitaire [ref]:Merciよりも治療効果が高いことが報告されています
     TREVO2 [ref]:Merciよりも治療効果が高いことが報告されています

rt-PAとのbridging therapy
meta analysisでは、内頚動脈の急性閉塞に対してi.v. rt-PA治療後に血管内治療を加えることが予後の改善が期待できる可能性があるようです。ただし、最も予後の悪いT occlusion (Terminus occlusion)に関してはbridgingによる改善効果は期待できないようです

血管内治療後に認められる、脳CTでのHCA

左:血管内治療直後の単純脳CT、右:血管内治療16時間後の単純脳CT

神経内科ではあまり見ることは少ない画像上の変化として、血管内治療後に認められる単純脳CTでのHyperdense lesionがあります。出血なのか造影剤の漏出なのか区別が難しいため、hemorrhage/contrast staining areas (HCA)などと呼ばれています。この画像変化は、予後不良や梗塞の拡大との関連はあまりないとする報告が多く認められます。造影剤の漏出の場合は1日以内に速やかに高信号が消失、出血の場合はもう少し持続することが多いのですが、厳密にはT2*画像などで鑑別しましょう。

コレステロール結晶塞栓症 (Cholesterol crystal embolization : CCE) 治療

有効な治療法はほとんどありませんが、少数例で有効であった治療法はいくつか報告されています。

1.原因の除去
さらなる血管内操作の中止、抗凝固療法の中止

2.ステロイド療法、エンドキサン
炎症を抑えるという意味で、理論的にはbenefitはありそうです

3.スタチン
予後改善効果の報告はあります

4.プロスタサイクリン

5.LDLアフェレーシス、血漿交換療法

6.血管内治療
一見、危なそうな感じもしますが、blue toeに対するバルーンや、塞栓予防デバイスなどの報告があります

7.その他
腎不全に対する透析、皮膚病変に対する皮膚科治療など


予後
死亡率は60%程度との報告もあり、非常に予後不良の疾患です。一方で最近では、従来見過ごされてきた軽症例の報告も増えています。

コレステロール結晶塞栓症 (Cholesterol crystal embolization: CCE) 診断

概念
コレステロール結晶塞栓症 (Cholesterol crystal embolization : CCE) は、全身性の心血管系疾患の1つで、カテーテル操作や抗凝固療法などの機械的および化学的損傷が誘因となって、大血管に存在する粥状硬化巣とそれを覆う防御的血栓が損傷されて、その構成成分であるコレステロール結晶が飛散して全身の末梢小血管を塞栓しすることによって、多彩な臓器障害をきたす疾患です。
つまり、強い粥状硬化病変を持つ方が、何らかの操作後に、皮膚症状と腎機能障害が出現するときに強く疑われます。
非常に危篤で予後不良になる可能性が高いようです。

原因

    大動脈の手術操作
    心臓、大動脈、頸動脈などの大血管カテーテル操作
    抗凝固療法
    血栓溶解療法

症状

    皮膚:Livedo reticularis、blue toe syndrome(最も早期に検出できる臨床徴候として重要です)
    腎臓:急性から亜急性腎不全(皮膚症状に加え、腎機能障害の出現があるとかなり疑われます)
    :一過性脳虚血発作、脳梗塞
    心臓:心筋梗塞
    消化器:腸管の出血、虚血、潰瘍形成など
    その他:発熱、筋痛などの血管炎症状に似た症状、膵炎、副腎不全などなど


Blue toeの写真(内科専門医セルフトレーニング2016より抜粋):足趾が青色~紫色に変色しています。

検査
もちろん有症状臓器の詳しい検索は必須ですが、その他一般的な検査として以下のようなものが必要です

    血液検査:好酸球が上がる例が多いようです。その他、赤沈/CRP上昇、補体低下などの炎症所見、コレステロール上昇、腎機能障害
    尿検査:蛋白尿±血尿
    生検:症状のある臓器(皮膚、腎臓、筋肉)から行いますが、コレステロール結晶が検出できない場合もしばしばです

病態
末梢血管に存在するコレステロール結晶(50-200μm)は、好中球、好酸球、マクロファージ、血小板に囲まれ炎症を来します。引き続き、血管内皮細胞が活性化し血栓傾向を来します。最終的には線維化を来します。
生検標本で、コレステロール結晶を検出するのはなかなか難しく、特殊な標本処理が必要のようです。

鑑別診断

    造影剤による腎機能障害
    虚血性腎不全
    Thrombotic thrombocytopenic purpura (TTP)
    感染性心内膜炎

Xa阻害薬 治療

はじめに
心房細動や心原性脳塞栓症で主に用いられます。Xa阻害薬は、現在3種類発売されています。これに、直接トロンビン阻害薬(ダビガトラン)を加えて、NOACsあるいはDOACs、とさらにワルファリンを含めてOAC (oral anticoagulant)と呼ばれています。Xa阻害薬は直接トロンビン阻害薬と同様に、ワルファリンと比較して有意に頭蓋内出血を減らし、塞栓症のリスク軽減効果もワルファリンと同等ですので、ワルファリンとNOACのどちらも使用可能な場合には、NOACを優先して使用して下さい。
抗凝固マニュアル20160502挿入グラフ.xlsx

ファブリ(Fabry)病 診断

参考サイト
明治薬科大学臨床遺伝学講座
GeneReview Japan Fabry病

概念
リソソームに存在する加水分解酵素の一種、α-ガラクトシダーゼの活性が低下し、糖脂質のセラミドトリヘキシド(CTH)が分解されずに全身の臓器や組織に沈着することにより、中枢神経、末梢神経、皮膚、腎臓、心臓などの臓器障害を引き起こします。
伴性劣性遺伝、alpha-galactosidase (a-GAL) 遺伝子 (GLA)の変異が原因ですが、現在は酵素補充療法が可能です。

症状
伴性劣性遺伝ですのでヘミ接合体である男性は小児や若年時から比較的特徴的な臨床徴候を示しますが、ヘテロ接合体の女性は1つの臓器異常のみの場合や症状が軽く見逃されやすいため注意が必要です。女性の場合も角膜混濁は比較的検出されることが多いようです。

    脳血管障害:40歳以降に多く発症します。遺伝性小動脈疾患の一つとしても有名です[総説]が、稀にlarge vesselの病変の原因にもなるようです
    末梢神経障害:小径有髄繊維優位に障害され強い痛みを自覚します。運動、疲労、ストレスにより増悪します。
    自律神経障害:小径無髄繊維優位の障害を反映して、無汗症などなど
    眼症状:白内障、角膜混濁
    難聴
    心機能障害:左室肥大、肥大型心筋症、心弁膜障害、不整脈
    腎機能障害:蛋白尿、腎不全
    腸管障害:嘔吐、下痢、便秘、腹痛、アカラジア
    皮膚障害:被角血管腫、低汗症

検査

    血液検査、遺伝子検査:男性の場合は血清中のGLA活性で診断がつきますが、女性の場合は血清中のGLA活性低下が強くなく、生化学的検索、遺伝子検査が必要になります(リプレガルの販売元の大日本住友製薬と連絡を取ります)
    脳MRI:小血管病変、微小出血、T1強調画像での視床後部の高信号(pulvinar sign)。脳低動脈の拡張、蛇行。
    末梢神経伝導検査、生検:small fiber neuropathyになります
    心エコー
    腎機能検査、生検

女性Fabryについて
男性患者はヘミ接合体であるため、酵素活性低下が強く症状も強いため比較的診断可能ですが、ヘテロ接合体である女性はもちろんX染色体が2本あります。胎生期に各細胞内の一つのX染色体がランダムに賦活化されるX染色体不活化(ライオニゼーション)により、症状は軽症で、かつばらつきがあり疑うことも難しいことがあります。

COL4A1-related disorders 診断

はじめに
単一遺伝子異常により生じる遺伝性脳小血管病の一つです。CADASILなどと比較して脳出血の合併も多いという特徴があります。特にモデルマウスでは出産時の物理的要因により容易に脳出血を来たします。
基底膜を形成するコラーゲンのうち、Type IV collagen α1 (COL4A1) 遺伝子変異による,常染色体優性遺伝性疾患です。病理学的には、脳小血管、皮膚、腎臓などの毛細血管の基底膜に異常が見られます。
以前より報告されていた以下の臨床型がCOL4A1遺伝子変異による同一の疾患ということが判明しました。

    A condition exhibiting perinatal hemorrhage with porencephaly
    SVD with hemorrhage and infantile hemiparesis or of adult onset
    SVD with Axenfeld-Rieger anomaly
    HANAC syndrome

COL4A1の遺伝子変異と臨床型


臨床徴候
神経系

    Ischemic leukoencephalopathy
    Subcortical hemorrhages
    Asymptomatic or multiple aneurysms
    Porencephaly

眼科系

    Retinal arterial tortuosities
    Retinal hemorrhage
    Cataract

その他

    Renal multiple cysts
    muscle cramps

Retinal Vasculopathy with Cerebral Leukodystrophy (RVCL) 診断

はじめに
単一遺伝子異常により生じる遺伝性脳小血管病の一つです。
一本鎖DNA分解酵素であるTREX1の断片型蛋白を発現する変異による,常染色体優性遺伝性疾患で、病理学的には)脳,皮膚,腎糸球体,消化管などの毛細血管の基底膜の多層化した所見が得られている疾患です。つまりCOL4A1関連疾患と同様に基底膜が損傷される疾患のようです。以前より報告のある以下の疾患がTREX1関連疾患であることが判明しました。

    HERNS: hereditary endotheliopathy with retinopathy, nephropathy and stroke
    CRV: Cerebroretinal vasculopathy
    HVR: hereditary vascular retinopathy

臨床型

    白質脳症やラクナ梗塞:時に造影効果や浮腫、さらには腫瘍性の病変を示すこともあるのが特徴です。TREX1はSLEとの関連もあり、炎症との関連が示唆されているのでしょうか?
    網膜症:Retinal vasculopathyやRetinal arterial tortuosities
    腎症
    片頭痛
    Raynaud現象



RCVLの脳MRI:基本は虚血性白質脳症(左)ですが、時に造影効果を認めることがあります(真中)。また、さらに腫瘍性病変を来たすこともあります(右)


蛍光網膜動脈造影では、造影剤の漏出が認められます
Neurology. 1997;491322-30.Neurology. 2010;75:1211-3.より画像引用

CADASIL 診断

概要
Cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathyの略で、皮質下性の脳卒中を繰り返す常染色体性優性遺伝性脳動脈病です。第19染色体長腕のnotch3の遺伝子変異により生じる場合が多いと考えられています。

CADASILの症状

    成人発症:(25歳前後に片頭痛,30〜50歳で脳卒中発作が一般的)
    脳卒中様発作:多くはTIAと脳梗塞ですが、出血を来すこともあります
    片頭痛:20-40%が前兆を伴う片頭痛で、これが最初の症状のこともあります。cortical spreading depressionが原因かもしれません
    情動異常:20%に気分障害やapathyを認めて、欝症状を伴います
    皮質下性痴呆:前頭葉徴候、記憶障害、遂行機能障害などなど

検査

    血液検査:凝固異常など多発梗塞を来す基礎疾患の除外を行う
    眼科受診:遺伝性脳小血管病では網膜動脈の狭小化がよく見られるようです
    脳MRI:側頭葉,前頭葉,外包、側頭極に強い白質病変。特に外包、側頭極は特異的です。T2*強調画像、SWIで多数の微小出血病変が主に深部白質や基底核領域に見られます。CAAほどではないですが、皮質の微小梗塞も見られます
    SPECT, Perfusion MRI:アセタゾラミド負荷で血流の著明な増加が見られたとする報告が散見されます
    高次機能検査:WAIS, WAB, 前頭葉機能など
    遺伝子:NOTCH3遺伝子異常
    生検:主には、NOTCH3遺伝子変異が認められない場合に行われます。皮膚や筋肉が用いられます。細小動脈の血管平滑筋の基底層かその周辺に、電顕でオスミウム好性の顆粒状物質(granular osmiophilic material:GOM)を認めます。光顕ではPAS陽性に染色されます。また、Notch3の細胞外ドメインに対する抗体を用いた免疫染色により血管壁に異常沈着の検索
    する方法も熟練した施設であれば有用のようです



脳MRI FLAIR画像:側頭葉極(左)、外包(真ん中)、深部白質(右)に高信号領域を認めます。これに加えて、ラクナ梗塞や微小出血などの血管障害を示唆する所見もあれば完璧です
Notch3遺伝子について

    Notch3は19番染色体短腕(19p13)に座する遺伝子で、33のエクソンから構成され、2321アミノ酸からなる1回膜貫通型受容体です。
    Notch3遺伝子変異は95%以上がミスセンス変異で、エクソン3と4の484塩基に40%以上の変異が集中しています
    小動脈の平滑筋に強く発現し、血管平滑筋の分化や成熟に関連しているようです