脳血管障害

TOAST分類 脳梗塞/脳卒中

脳梗塞急性期における病型分類は、TOAST(The trial of Org 10172 in Acute Stroke Treatment))分類がよく、使用されます。ESUSの分類記事も参照ください。
病型の把握は、治療法選択などに重要ですので是非とも病型を分類した上で、治療を考える癖をつけてください。

TOASTによる脳梗塞の病型分類

A. 急性期脳梗塞の分類

     1. 大血管アテローム硬化(large-artery atherosclerosis)
     2. 心原性脳塞栓(cardioembolism)
     3. 小血管病変(small-vessel occlusion)
     4. その他の確定的な原因(other determined etiology):凝固異常、動脈解離、血管炎など
     5. その他の不確定な原因(Undetermined)
       二つ以上の原因(two or more cause identified)
       異常所見なし(negative evaluation)
       検査未完了(incomplete evaluation)

補助検査所見によりpossible、probableに分類

B. 心原性脳塞栓における塞栓源

    1. 高リスク塞栓源(high-risk source)
    人工弁、心房細動を伴う僧帽弁狭窄症、心房細動(孤立性を除く)、左房血栓、洞不全症候群、心筋梗塞(4週未満)、左室血栓、拡張型心筋症、左室壁運動消失、左房粘液腫、感染性心内膜炎
    2. 中等度リスク(medium-risk source)
    僧帽弁逸脱、僧帽弁輪石灰化、心房細動を伴わない僧帽弁狭窄症、左房もやもやエコー、心房中隔瘤、卵円孔開存、心房粗動、孤立性心房細動、生体弁、非細菌性心内膜炎、うっ血性心不全、左室壁運動障害、心筋梗塞(4週以上6ヶ月未満)



TOAST分類に準拠した脳卒中臨床診断のフローチャートStroke 1993Stroke 2000
実際には、脳梗塞後、心エコー、MRI、MRA、頚部血管エコーなどを行い、下記のように病型を診断していきます。
TOASTフローチャート



心原性脳塞栓症 診断

TOASTでは以下のように分類されます(TOAST分類の詳細は>こちら
TOAST CES

検査
多くの場合、原因は非弁膜症性心房細動です。最近は非弁膜症性心房細動が半数以上、70%を占めるとの報国もある

    血液検査:D-dimerなど凝固線溶系マーカーも
    脳MRI、CT
    MRA
    頚動脈エコー、頚部血管3DCTA
    心エコー
    ホルター心電図

CES MRI

心原性脳塞栓の脳MRI
拡散強調画像(左)、T2強調画像(右):右側頭葉皮質を含み、中大脳動脈領域に虚血病巣を認めます。DWIでは、信号強度は一様に上昇していて、このようなパターンは心原性脳塞栓でよく見られます

感染性心内膜炎 診断

循環器病の診断と治療に関するガイドライン

循環器疾患にもかかわらず、脳梗塞やくも膜下出血などを併発することが比較的多く、なぜか循環器から神経内科へコンサルテーションがなされることもあります
生命予後は悪いですが、治療が奏効することもあり迷わず即入させてください。書くまでもありませんが、、、

検査

    血液培養:疑ったら必ず3本(最低でも場所を変えて2本)
    経胸壁心エコー
    経食道心エコー
    以下はそれぞれ必要時に
      塞栓部位の検索:胸腹CT、脳MRI、検尿
      細菌性動脈瘤の検索:MRA
      細菌性髄膜炎併発の検索:髄液検査、髄液培養

IE echo

僧帽弁前尖に可動性のある疣贅を認めます。このように経胸壁心エコーで疣贅やMRの所見がない場合も多いので、疑った場合は経食道心エコーも必ず行います。

細菌性[感染性]動脈瘤

臨床画像 Vol.28, No.4増刊号, 2012より抜粋。多くの場合、感染性動脈瘤はIEに伴って、菌血症から数日で形成されます。図のように中大脳動脈遠位部に多いですが、このような嚢状のものではなく、紡錘状動脈瘤を形成することもあるため、検出が難しいことも少なくありません。

アテローム血栓性脳梗塞 診断

TOASTでは以下のように分類されます(TOAST分類の詳細は>こちら
TOAST ATBI

検査
血栓性梗塞の場合が多く、塞栓性、血行力学性の頻度は血栓性の機序に比べると低いようです

    血液検査:D-dimerなど凝固線溶系マーカーも
    脳MRI、CT
    MRA
    頚動脈エコー、頚部血管3DCTA
    心エコー
    ホルター心電図

ATBI

アテローム血栓性脳梗塞の脳MRI
拡散強調画像(左)、T2強調画像(右):放線冠を中心に虚血病巣が見られますが、皮質にも小さな虚血病巣が見られます。主幹動脈に強い狭窄病変がある場合、A to A的なメカニズムによるのか、このように多発する虚血病巣を来たすこともあり、内頸動脈の評価を行うことはもちろんですが、心原性脳塞栓症、過凝固疾患やIEなどによる脳梗塞との鑑別を注意深く行う必要があります

脊髄梗塞 診断

概念
脊髄梗塞は、脳梗塞の脊髄版のようなものですので、もちろん多くは急性発症で、脊髄障害を起こす疾患です。脳梗塞と比較すると、頻度は低いのですが、その理由として、脊髄動脈波脳動脈と比較してアテローム硬化が少なく、また脊髄の血管は動脈間の吻合が豊富で、これが側副血行路として働くためとされています。

原因
脳梗塞と同様に、アテローム硬化/血栓症などによる脊髄動脈の閉塞が原因となりますが、大動脈解離、大動脈の手術など大動脈疾患に関連するものの頻度が高いようです。また、原因がはっきりしない場合もよく見られます

    Syphilis
    Hypercoagulability
    Giant cell arteritis、Polyarteritis
    Sickle cell anemia
    Intervertebral disc herniation
    Temporary cervical subluxation
    Mitral valve disease and multiple emboli
    Atherosclerosis of aortic vessels and branches
    Hypotension
    Cardiac arrest
    Traumatic rupture of aorta
    Fibrocartilaginous embolism
    Dissection of ascending aorta
    Angiography
    Therapeutic renal artery embolization
    Surgery for aortoiliac occlusive disease

症状
とにかく、急性発症であることが重要です。しかし、5%程度は進行が数日単位で見られることもあり、その場合は脊髄炎やDural AVMなどとの鑑別をしっかり行わなくてはなりません。また、脳梗塞と同様に虚血部位により症状がことなります

    前脊髄動脈症候群
     対麻痺:もちろん錐体路症状は陽性ですが、急性期は深部腱反射が低下する場合もあります
     解離性感覚障害:深部感覚が保たれます
     膀胱直腸障害
     背中の痛み:椎体梗塞による??
    後脊髄動脈症候群
     病巣部以下の深部感覚優位の障害
     深部反射の低下/消失
     膀胱直腸障害
    分水嶺領域
     これは、脊髄中心部に虚血が出現します

検査

    血液検査:凝固能、梅毒、炎症所見など
    胸腹部造影CT:解離性大動脈瘤の検索
    脊髄造影MRI:T1、T2、脂肪抑制T2、可能ならDWI、Dural AVMとの鑑別のため造影T1も。また、線維軟骨塞栓症の可能性を考えて、椎体や椎間板をしっかりと観察することは非常に重要です。

spinal-cord
左:下部胸髄から円錐部にかけて腹側(前脊髄動脈領域)に高信号をみとめます。時々、椎体の梗塞のためか、椎体の異常信号を認めることもありますが、本例では認めません
右:脊髄腹側に高信号を認めます。赤い矢印は大動脈ですが、本例では異常を認めません

脊髄梗塞 update

Teaching NeuroImages: Acute bilateral hand weakness from anterior spinal artery territory cord ischemia. Neurology 2009 73: e13.
下部頚髄の前脊髄動脈梗塞により両上肢の脱力で発症した58歳男性例

脳底動脈閉塞症(BAO) 治療

脳幹が広範囲に梗塞に陥る病態ですので、再開通させない限りは死亡率も予後も非常に悪いことが特徴です。そのため、脳幹出血のリスクはあるのものの、一般的な脳梗塞のrt-PA療法よりはtherapeutic time windowは広くとっても良いと思います。
また、椎骨動脈解離が進展、あるいは解離部からの塞栓により脳底動脈が閉塞することがあります。この場合、血栓溶解療法はSAHなどの出血の危険性は高めるのですが、やはり再開通を目的に、選択的血栓溶解療法を選択するのが望ましいと信じています。経静脈投与よりは、血栓溶解薬の必要量が減ると考えます。
ただし、初発症状から治療開始までの時間、椎骨動脈解離に伴うBAO、脳底動脈解離の場合の治療法に関しては、確立されたデータは皆無です。

治療法
発症6時間以内であれば

    選択的血栓溶解療法
    rt-PAの経静脈投与

のどちらかを行いますが、rt-PAの経静脈投与(intravenous thrombolysis)と選択的血栓溶解療法(intra-arterial thrombolysis)において再灌流率には有意差(53% vs 65%)を認めるるものの、生存率(50% vs 45%)と死亡および要介助(77.6% vs 75.6%)では有意差を認めなかったという報告もあり、どちらを選ぶべきか悩ましいですが、基本的には選択的血栓溶解療法の方が予後がよい印象があります
さらに、経動脈的な選択的血栓溶解による再灌流の成否には年齢と閉塞機転が関与していて、年齢が若い場合と塞栓による梗塞の場合、発症6時間以内の治療開始の場合は、再灌流の確率が高く予後がよくなるようです

脳底動脈閉塞症(BAO) 診断

概念
基本的には脳幹梗塞を引き起こす病態ですが、内頸動脈閉塞と同様に、脳底動脈閉塞(acute basilar occlusion;ABO)は非常に予後が悪く、血栓溶解療法での再灌流が得られなかった場合の死亡率は85-90%程度とされています
そのため、可及的速やかな脳底動脈閉塞部の再開通が必要です
椎骨動脈解離に合併することもありますが、その場合は出血のリスクもありますが、特に若年者では血栓溶解の適応も強く考慮されます

症状

    意識消失、意識低下
    球麻痺症状
    共同偏視、眼振
    視野障害
    四肢麻痺
    呼吸減弱
    四肢筋トーヌス亢進

検査

    脳CT:脳幹腹側のHyperdense sign(下図左)
    脳MRI:FLAIRで脳底動脈のhyperintense sign(下図中)、両側脳幹の虚血病変
    脳MRA:脳底動脈のFlow消失
    血管造影:脳底動脈閉塞(下図右)

bao

脳CT(左)、脳MRI FLAIR強調画像(真中)では、脳底動脈が高信号に描出され、hyperdenseあるいはhyperintense signなどと呼ばれています。血栓を反映していると思われます。
脳血管造影(右):椎骨動脈より造影剤を注入すると、脳底動脈で血流が途絶しているのがわかります

くも膜下出血 診断

診断

    脳CT:下の写真のように出血が可視化出来ていれば診断は容易です
    脳MRI:脳CTでは検出出来ない出血も検出されることがあります。FLAIR、T2*、DWIは必須のシークエンスです
    脳MRA、3D-CTA:動脈瘤、動脈解離の検索に必須です
    腰椎穿刺:上記検査では出血が検出されない場合もあり、時に髄液のキサントクロミーの確認が必要になります

sah
脳CT:左小脳梗塞以外に、脳幹周辺のくも膜下に出血が見られます


通常では出血性病変を検出することの出来る、T1、T2及び、T2*では検出されないこともあります。この症例では、FLAIR及びDWIでの右大脳皮質周辺の脳溝に沿う高信号が認められ、SAHと診断されました。MRAでは、M1-M2 bifurcation部に動脈瘤を認めます
脳動脈瘤の好発部位

    内頚動脈 38% (IC-PC 25%)
    前大脳動脈 36% (Acom 30% 単独で最多)
    中大脳動脈 21%
    椎骨、脳底動脈 5.5%

SAHの重症度スケール(WFNS 分類

    Grade 1 GCS 15
    Grade 2 GCS 14-13 で片麻痺、失語症などの神経症状を伴わない
    Grade 3 GCS 14-13 で神経症状を伴う
    Grade 4 GCS 12-7
    Grade 5 GCS 6-3

HuntとKonsnikの重症度分類

    Grade     症状
    Grade0   非破裂動脈瘤
    Grade1   無症状、または軽度の頭痛と項部硬直
    Grade1a   急性の髄膜刺激症状はないが神経脱落症状が固定
    Grade2   中等度以上の頭痛、項部硬直はあるが脳神経麻痺以外の神経脱落症状はない
    Grade3   傾眠、錯乱、または軽度の神経脱落症状
    Grade4   昏迷、中等度の片麻痺、除脳硬直のはじまり、自律神経障害
    Grade5   深昏睡、除脳硬直、瀕死状態

Appendix
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海綿状血管腫 診断

病態
海綿状血管腫(cerebral cavernous malformation: CCM)は、中枢神経系に発生する血管病変で,病理組織学的には古い血腫と異常に拡張したcapillary cavity(洞様血管)が,介在する脳組織を伴わずに密に集合していることが特徴です。つまり、腫瘍というよりも血管奇形の性格をもっている良性の病変ですが、 出血するたびごとに大きくなり、時に脊髄の中に出血し重大な症状を引き起こすことがあります。
脳出血や痙攣などを来すことがあり、神経内科では痙攣症例の原因として診察することが多いと思われます。
海綿状血管腫は孤発例のほかに家族発症性(優性遺伝)も稀ならず認められています(疾患名通り、CCMなどの遺伝子変異が知られています)。家族発症例では孤発例に比べて多発病変が多く、出血や痙攣などの症候を呈するなどの特徴があります。

疫学
30歳代に多く、出血発症例は女性に多いようです。年間出血率は0.7%程度ですが、出血発症例における年間出血率は4.5%と出血発症例では再出血の危険が高く治療の適応となります。
常染色体優性遺伝の場合があります。原因遺伝子は、CM1, CCM2, CCM3遺伝子変異によるKRIT1蛋白異常です

症状

    頭痛
    痙攣
    巣症状:出血した部位による

検査
遺伝子検査
脳CT:検出能力が弱く、正常に見えることもありますが。一部のCCMでは陳旧性出血や石灰化を反映して高信号として描出されます
脳MRI:最も有用な検査で、特徴的な所見は二つ。また、多発しているかどうかの判断も重要です。

    popcorn lesion:内部は様々な時期の出血、血栓、石灰化を含んでいるため、T1やT2で高信号域と低信号域が混在しており、popcornlikeな構造を示します
    Hemosiderin rim:周辺はT2<T2*<SWIで低信号を示します。

血管造影:一般的には異常は検出されません。静脈奇形、AVMなどとの鑑別が必要な場合に行います。一方で、出血を伴った腫瘍、 血栓化した静脈奇形、毛細血管拡張症などとの鑑別が画像のみでは難しいと考えられています