腫瘍性疾患

神経サルコイドーシス 診断

日本サルコイドーシス学会:診断基準など掲載されています

概念
サルコイドーシスは、肺、リンパ節、皮膚、眼、心臓、筋肉など全身諸臓器に乾酪壊死を認めない類上皮細胞肉芽腫が形成される全身性の肉芽腫性疾患で、Th1関与の過敏性免疫反応が関与すると考えられています。発症の原因の一つにアクネ菌感染が疑われていて、病変部にPropionibacterium acnes抗体(PAB抗体)陽性のシグナルが検出されることが良くあります。
典型的には若年女性に好発、肺門部リンパ節腫脹および肺野病変、皮膚、関節(Löfgren症候群など)および眼症状にて初発することが多く、約90%が肺病変を形成するといわれているようです。
そのうち、神経症状は全サルコイドーシスの5%程の認められる比較的な稀な合併症で、病型として中枢神経病変、髄膜病変、水頭症、血管病変、末梢神経病変と分類されます。特に、末梢神経病変の頻度が高く、実質内肉芽腫性病変は比較的まれとされています。

症状

病変部位により様々です

    末梢神経:多くは多発単神経炎様の感覚、運動障害です。神経生検と同時に短腓骨筋を採取すると診断確率が上昇します
    :症候性でもCKの上昇が目立たない例もありますが、逆に無症候性でも筋やPETで筋病変が検出されることが頻繁にあります
    髄膜、硬膜:頭痛、嘔吐、痙攣、脳神経麻痺、水頭症
    脳血管
    脳実質:片麻痺、失語、認知機能障害、下垂体・視床下部機能障害、小脳・脳幹症状などなど
    脊髄:様々なタイプのミエロパチー症状

病変の発症メカニズムとしては軟膜や血管壁の肉芽腫によって、BBBの破壊が起ることで血管周囲腔に肉芽腫が侵入して、血管周囲腔に沿って脳実質に進展していくと考えられています。
さらに、血管周囲腔が脳底部で特に大きいので、視床下部、第三脳室、視神経、脳幹から出る脳神経(特に顔面神経)が障害されやすいのかもしれません。肉芽腫性血管炎によって虚血性変化、梗塞、静脈洞血栓症などを来たすこともあります。

検査

とにかく疑ったら、サルコイド結節探しを行い、病変があれば生検し確定診断が基本です

    血液検査:ACE、リゾチーム、その他の疾患の鑑別
    ツベルクリン反応、QFT
    脳・脊髄造影MRI:硬膜・髄膜の造影増強効果、脳・脊髄実質内の造影病変が有名ですが、びまん性白質病変を含め様々な像を取りえます
    髄液検査:髄液ACE、髄液細胞CD4/8比など
    気管支肺胞洗浄 (BAL):CD4/8比が上昇している場合はサルコイドーシスの特異度は95%
    肺CT
    眼科受診
    ガリウムシンチ
    PET
    生検:脳、末梢神経、リンパ節、経気管支的肺生検 (TBLB)、皮膚などなど

病理像
サルコイドーシスの病理は多彩ですが、リンパ組織や肺に多い肉芽腫性病変、全身性の微小血管炎(ミクロアンギオパチー)が多いとされています。
肉芽腫性病変:肺の場合はリンパ管に沿うように間質に分布することが多いのですが、その癒合性、局在部位、臓器特異性によって様々な形態像をとります。非乾酪性肉芽腫を形成する異物型巨細胞の細胞質に星状小体やShaumann小体がみられることがありますが、特異的な所見ではなく、結核、ベリリウム症でも認められます。肉芽腫性の病変の大部分は自然退縮しますが、硝子化として残存したり、少数例では繊維化へ進展します。
ミクロアンギオパチー:芽腫が血管壁を侵襲し、血管壁の構造破壊によっておこると考えられています。病理学的な検討によると血管壁の肉芽腫の分布は分節的であり外膜から中膜にかけての分布が多いとされています。
sarcoidosis

髄膜に単核球が多数存在し炎症が示唆されますが、さらに多核巨細胞を伴う非乾酪性肉芽腫が見られます

海綿状血管腫 診断

病態
海綿状血管腫(cerebral cavernous malformation: CCM)は、中枢神経系に発生する血管病変で,病理組織学的には古い血腫と異常に拡張したcapillary cavity(洞様血管)が,介在する脳組織を伴わずに密に集合していることが特徴です。つまり、腫瘍というよりも血管奇形の性格をもっている良性の病変ですが、 出血するたびごとに大きくなり、時に脊髄の中に出血し重大な症状を引き起こすことがあります。
脳出血や痙攣などを来すことがあり、神経内科では痙攣症例の原因として診察することが多いと思われます。
海綿状血管腫は孤発例のほかに家族発症性(優性遺伝)も稀ならず認められています(疾患名通り、CCMなどの遺伝子変異が知られています)。家族発症例では孤発例に比べて多発病変が多く、出血や痙攣などの症候を呈するなどの特徴があります。

疫学
30歳代に多く、出血発症例は女性に多いようです。年間出血率は0.7%程度ですが、出血発症例における年間出血率は4.5%と出血発症例では再出血の危険が高く治療の適応となります。
常染色体優性遺伝の場合があります。原因遺伝子は、CM1, CCM2, CCM3遺伝子変異によるKRIT1蛋白異常です

症状

    頭痛
    痙攣
    巣症状:出血した部位による

検査
遺伝子検査
脳CT:検出能力が弱く、正常に見えることもありますが。一部のCCMでは陳旧性出血や石灰化を反映して高信号として描出されます
脳MRI:最も有用な検査で、特徴的な所見は二つ。また、多発しているかどうかの判断も重要です。

    popcorn lesion:内部は様々な時期の出血、血栓、石灰化を含んでいるため、T1やT2で高信号域と低信号域が混在しており、popcornlikeな構造を示します
    Hemosiderin rim:周辺はT2<T2*<SWIで低信号を示します。

血管造影:一般的には異常は検出されません。静脈奇形、AVMなどとの鑑別が必要な場合に行います。一方で、出血を伴った腫瘍、 血栓化した静脈奇形、毛細血管拡張症などとの鑑別が画像のみでは難しいと考えられています

Eaton-Lambert症候群 (LEMS) 診断

概念
神経筋接合部でのアセチルコリンの放出障害で、肺癌の小細胞癌に随伴する腫瘍随伴症候群に属します。
中年以降の男性が多い。

原因
腫瘍随伴症候群 (特に肺小細胞癌)
腫瘍に対する抗体がシナプス前のカルシウムイオンチャネル VGCC と交差反応を生じ、これを破壊します。
つまりVGCC に対する自己抗体が原因となります。 神経終末でのCa チャネルを阻害するためアセチルコリンの放出が障害されますが、重症筋無力症と異なり筋側のアセチルコリン受容体 は正常です。 自律神経のカルシウムイオンチャネルが損傷されるため、自律神経症状も高率に合併します。

症状

    筋力低下 :眼症状や球症状の合併は稀で、近位筋優位の筋力低下が頻度が高いように思います。ただ、反復運動で一過性に筋力が増大します。
    易疲労性
    自律神経障害:口渇、インポテンス、発汗異常
    小脳失調症状
    深部腱反射低下(反復運動後は亢進)

検査所見

    負荷試験
    アンチレクスはMGほどの劇的な症状の改善は見られませんが、注意深い観察によって改善が観察されることもあります。サクソン試験による唾液分泌量の低下は、LEMSの自律神経系の評価として最も有用です。
    H-M test:低頻度で waning phenomenon、高頻度で waxing phenomenon
    3, 4-diaminopyridine(3, 4-DAP)で症状、筋電図の改善が見られる
    自己抗体:抗VGCC抗体、抗glia核抗体
    肺小細胞癌検索:60%に肺小細胞癌の合併があります。胸部造影CT、PET、腫瘍マーカー(ProGRPと神経特異的エノラーゼ (NSE) )。その他、悪性リンパ腫、白血病、胸腺腫など

癌性髄膜炎 update

Leptomeningeal metastases in the MRI era. Neurology 2010 74: 1449-1454.
MRI時代であっても癌性髄膜炎の予後は不良で、生存期間中央値は充実性癌で2.3ヶ月、血液系癌で4.7ヶ月であった

Dural metastatic adenocarcinoma mimicking meningioma. Neurology 2010 74: 1396.
髄膜腫類似の画像所見を示した腺癌硬膜転移の69歳男性例

New Strategies in the Management of Leptomeningeal Metastases. Arch Neurol. 2010;67(3):305-312.
癌性髄膜炎に対する薬剤デリバリーと新たな治療薬に関する総説

Papilledema as the Sole Magnetic Resonance Imaging Finding in Leptomeningeal Metastasis. Arch Neurol. 2010;67(3):362-363.
脳MRIでの異常所見が乳頭浮腫のみであった癌性髄膜炎の54歳女性例

Neoplastic Meningitis Related Prognostic Significance of the Karnofsky Performance Status. Arch Neurol. 2009;66:74-78.
カルノフスキー・パフォーマンス・ステータスが70点以下の癌性髄膜炎症例は予後が特に悪い

二次性脳悪性リンパ腫 update

Clinicopathological features of neuropathy associated with lymphoma. Brain. 2013;136:2563-78
悪性リンパ腫による末梢神経障害(neurolymphomatosis)の臨床的、病理学的特徴

Guideline on the prevention of secondary central nervous system lymphoma: British Committee for Standards in Haematology. Br J Haematol. 2013 Aug 27
悪性リンパ腫の中枢神経浸潤予防のためのガイドライン

ABVD Alone versus Radiation-Based Therapy in Limited-Stage Hodgkin’s Lymphoma. N Engl J Med. 2011 Dec 11.
限局期ホジキンリンパ腫患者において,ABVD 化学療法単独は,放射線療法を単独で行った場合や放射線療法と ABVD 化学療法を併用した場合よりも長期(12 年)生存率が高く,治療関連晩期死亡も有意に少なかった

Teaching NeuroImages: Primary diffuse large B-cell lymphoma of the cranial vault. Neurology 2009 73: e84-e85.
頭蓋冠に腫瘤を形成した骨原発びまん性大細胞型リンパ腫の67歳女性例

T-cell neurolymphomatosis involving cauda equina and sciatic nerves. Neurology 2009 72: 98.
FDG‐PETで腰神経根と坐骨神経に病変を検出できた神経T細胞リンパ腫症の1例

Burkitt Lymphoma Presenting as a Rapidly Evolving Cavernous Sinus Syndrome. Arch Neurol. 2008;65:1668.
海綿静脈洞症候群を来たしたバーキットリンパ腫の33歳女性例

傍腫瘍性末梢神経障害 update

Paraneoplastic neuropathy: wide-ranging clinicopathological manifestations. Curr Opin Neurol. 2011;24:504-10.
傍腫瘍性末梢神経障害の病型、病態に関する総説

Neuropathy in lymphoma: a relationship between the pattern of neuropathy, type of lymphoma and prognosis? JNNP 2008;79:778-82. Epub 2007 Oct 30.
リンパ腫に伴う末梢神経障害は,ホジキンリンパ腫では脱髄性多発神経障害がみられ,重症B細胞リンパ腫では局所浸潤による神経根症が多いが,脱髄性多発神経障害が全体としても多く予後は,神経根症や多発単神経障害よりもよい

神経膠腫 update

Pregnancy increases the growth rates of World Health Organization grade II
gliomas.Ann Neurol. 2010;67:398.
妊娠中は前後に比べて,WHO grade IIの神経膠腫の増大が早くなる.

All the 1p19q codeleted gliomas are mutated on IDH1 or IDH2. Neurology 2010 74: 1886-1890.
1p19q codeletionを認めるグリオーマの100%にIDH1あるいはIDH2変異が認められ、双方の変化を認める群の予後は良い

Diffuse low-grade oligodendrogliomas extend beyond MRI-defined abnormalities. Neurology 2010 74: 1724-1731.
びまん性low-grade gliomaでは、MRIで描出される病変よりも、組織学的にはより1-2cm程度広い範囲に腫瘍細胞が認められる

Efficacy and Safety of Levetiracetam in Patients With Glioma: A Clinical Prospective Study. Arch Neurol. 2010;67(3):343-346.
レベチラセタム (Levetiracetam)は神経膠腫による症候性てんかんに対して効果があり、忍容性も高い

New Insights Into Susceptibility to Glioma. Arch Neurol. 2010;67(3):275-278.
神経膠腫(グリオーマ)発症に関わる遺伝子に関する総説

Bevacizumab for Malignant Gliomas. Arch Neurol. 2010;67(3):285-288.
悪性神経膠腫に対するベバシズマブ (bevacizumab)治療に関する総説

Diffuse Brain Stem Glioma. Arch Neurol. 2010;67(3):368-369.
脳幹にびまん性病変を認めた神経膠腫の55歳女性例

Supratentorial low-grade gliomas in older patients. Neurology 2009 73: 2093-2098.
低悪性度神経膠腫の約8%は60歳以上の高齢者に発症し、若年発症と比較してPSの低下、強い神経症状、腫瘤の増大、切除の割合が少ないことと関連が強く予後不良因子を多数認める例が多かった

IDH1 mutations in low-grade astrocytomas predict survival but not response to temozolomide. Neurology 2009 73: 1792-1795.
低分化型星細胞腫においてisocitrate dehydrogenase 1(IDH1)遺伝子変異は86%に見られ生存期間の延長と関連するが、テモゾロマイドに対する治療反応性とは関連がなかった

Alterations of BRAF and HIPK2 loci predominate in sporadic pilocytic astrocytoma. Neurology 2009 73: 1526-1531.
BRAF遺伝子の再編成は孤発性毛様細胞性星膠腫でよく見られるが、神経線維腫症1型に伴うものではほとんど見られなかった

Serial stereotactic biopsy of brainstem lesions in adults improves diagnostic accuracy compared with MRI only J Neurol Neurosurg Psychiatry 2009; 80: 1134-1139.
MRIで脳幹グリオーマと診断した成人例を病理学的に検索すると多種の疾患が含まれており、病理学的診断が重要である。

Pearls & Oy-sters: Hyperdense or pseudohyperdense MCA sign: A Damocles sword? Neurology 2009 72: e116-e117.
hyperdense MCA様の所見を呈した星細胞腫

Diffuse Leptomeningeal Astrocytoma in a Patient With Infantile Epilepsy. Arch Neurol. 2009;66:408-409.
乳児てんかんや視野障害で発症したびまん性くも膜下星細胞腫(meningeal gliomatosis)の1例

α-Internexin expression identifies 1p19q codeleted gliomas. Neurology 2009 72: 156-161.
α-internexin陽性の神経膠腫は予後が良く殆どの例で1p/19q codeletionが見られる

Novel anti-angiogenic therapies for malignant gliomas. Lancet Neurol 2008;7:1152-60.
悪性グリオーマに対して,VEGFを標的とした治療である程度の成果が得られている抗血管新生治療についてのレビュー.

Bilateral Thalamic Glioma. Arch Neurol. 2008;65:1666-1667.
両側視床のグリオーマの1例

The expanding impact of molecular biology on the diagnosis and treatment of gliomas. Neurology 2008 71: 365-373.
Gliomaの分子生物学的知見に基づいた診断/治療の総説