一過性全健忘 (TGA) 診断
7月 1st 2010
概念
おそらく、静脈うっ滞による海馬CA1の機能不全により出現する一過性の健忘を来す疾患です
突然何の前兆もなく、短期記憶の消失と、近時記憶の逆行性健忘で発症しますが、数時間で回復します
発作中は意識清明で、自我認識も保たれていて、日常の動作は変わりなく行うことができるのですが、周囲のことが理解できないため、不安に陥りしつこく家人に問いただします。また、発作中の記憶は永続的に消失します
診断基準(Hodges et al., 1990)
- 発作中の情報が目撃者から得られる
発作中、明らかな前向健忘が存在する
意識障害はなく、高次脳機能障害は健忘に限られる
発作中、神経学的局所徴候はない
てんかんの特徴がない
発作は24時間以内に消失する
最近の頭部外傷や活動性のてんかんのある患者は除外する
検査
ほとんど臨床症状から類推することが多く他覚的検査所見を得るのは難しいのですが、脳MRI
では海馬CA1を中心に小さな異常信号を検出できることがあります
- 脳波:てんかんの鑑別の目的で試行
血液検査:異常所見はありませんが、健忘の鑑別のためVitB1など提出
経静脈超音波:内頚動脈弁不全により、Valsalva手技を加えることにより静脈の逆流が検出されることがあります
SPECTやPET:海馬の血流やブドウ糖代謝の低下が検出されることがあります
脳MRI:発症24-72時間後に海馬にDWI高信号病変が出現します。ただし、病変が小さい(1-5 mm)ため以下のような条件で試行して下さい
1. 3テスラ
2. 海馬を中心に、axialとcoronalのThin slicaで
3. T2とDWIを。DWIのb-値は高めで
4. 発症早期ではなく、発症24-72時間後に試行

最上段:DWI、T2ともに右海馬に高信号病変を認めます
中段:それらの病変は、coronalではCA1に限局して見られます
最下段:発症60日後のMRIでは、急性期に見られた病変は消失しています
図は以下の論文より引用:Transient global amnesia: functional anatomy and clinical implications. Lancet Neurol. 2010;9(2):205-14.





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